これから24時間以内に起こることを何でもいいので予想します。あとでその答えが当たっていたか確認できることを選んでくださいね。その予想が当たっていても外れていても、あっという間に人生がいいものに変わります。
(以下は私、Jane McGonigalの著書『Super Better』からの抜粋です。)
予想することは、大きなことでも小さなことでも、バカバカしいことでも真面目なことでもいいのです。いくつか例をご紹介しましょう。
・ 次の1時間でEmailを何通受信するか。
・ 今日紫色の服を着ている人に何人出会うか。
・ ひいきの野球チームが次の試合で何本ヒットを打つか。
・ 皿を割らずに何枚片づけられるか。
・ 次のFacebookの投稿にいくつ「いいね!」をもらえるか。
・ 1つのブロックから次のブロックまでどのぐらいの時間で歩けるか。
・ 午後7時ぴったりに気温は何度になるか(天気予報をチェックするズルは無しですよ)。
・ 今この瞬間の銀行口座にある金額はいくらか。
・ 今日眠りにつくまでに何人にありがとうを言えるか。
こんなふうにとても簡単なことでいいのです。小さなことを1つ選んで予想して、それが当たっているか確認してください。予想の当たり外れに関係なく、人生のとらえ方が変わるはずです。
なぜかと言うと、予想することは、脳の報酬回路を活性化するのにもっとも効果的な方法だからです。「あらゆる予想は、どんなに些細なことであっても、脳のドーパミンのレベルを高めます」と神経科学者のJudy Willis博士は言います。
ドーパミンは、もちろん、「報酬」的意味合いのある神経化学物質で、モチベーション、学習、欲望をつかさどります。
そして予想をするたびに、2つの報酬的結果が発生します。予想が当たっている場合には、気分が良くなります。予想が外れた場合でも、次にもっとうまく予想するのに役立つ情報が得られま す。また、驚くべきことに、予想が外れても気分が良くなります。なぜならば、脳は学習が大好きだからです。
「実際に」とWillis博士は言います。「ドーパミンの効果は、成功したときより新しいことや役に立つことを学んだときの方が大きいのです」
ところで、予想するときに発生する神経化学物質は、人を夢中にさせるテレビゲームをするときに発生する神経化学物質と同じものです。
ゲーム『キャンディ・クラッシュ』で10回続けて同じレベルを失敗しても、なぜかもう1回挑戦したくなる、あの理不尽なモチベーションはわかりますよね。あるいは、大変な1日が終わり、すっかり消耗して燃え尽きているのに、ゲームを20分間プレイしただけですっかりエネルギーに満ちあふれて、がんばれる気がしてくるのはどうしてなのでしょうか。
それは、ゲームで動いたり武器を使ったりするたびに、脳がそれをミニ予想として扱うからです。脳は自分の行動が成功だったかとても知りたがり、もし失敗だった場合は、もっといい行動がとれるように、失敗の理由を知りたがります。
これは、ゲームで動くたびにドーパミンの引き金を引いていることになります。動けば動くほど、ドーパミンの分泌が多くなります。遊んでいるときに決して諦めないでいられるのは当然のことなのです。
人生はテレビゲームではありませんが、「予想する」というテクニックを使って、毎日の生活のなかでもやる気が高まった状態を作れます。毎日予想することから始めてみてください。どんな予想でもいいのです。予想が当たっていても外れていても、ドーパミンの効果は得られます。それはWinWinのゲームなのです。
退屈なとき、フラストレーションやストレスを感じるとき、モチベーションとエネルギーを高めたいときは、いつでもこのワザを使ってみましょう。好奇心と注意力を発揮する即効性がありますし、決断力や楽観性などを促進する神経回路も強化されます。
「最悪の場合のシナリオ」で遊んでみる
2、3週間前に、親友のCalvinから便りがありました。彼は博士号を有するコンピューター科学者で、私たちはカリフォルニア大学バークレー校時代から の友達です。過去10年にわたり、Calvinはテクノロジー産業と大学の研究室の両方で働いてきましたが、最近思い切ってアカデミックな仕事を本業とし て探すことにしました。
「5つの大学と面接にこぎつけたよ」というメールの行間から、彼がウキウキしているのが感じられました。しかし、トップクラスの大学での面接に関してはかなりストレスを感じていると彼は認めました。
「去年そこで面接した僕の友人は、面接が終わるころには泣きそうだったと言うんだ。ある教授が面接の始めに『君の論文は完全に無意味だ。君を面接に 呼ぶとは、大学もひどい間違いを犯したものだ』と言ったせいなんだけど」。Calvinがその教授と面接する予定であること考えると、あまり元気の出る話 ではありません。
仕事の採用面接は、どんなに最高の状況であってもストレスになりますが、Calvinが2日がかりの面接をするために大学のキャンパスに到着したときは、緊張が高まるばかりでした。
「最初に面接した2、3人は、どれだけその教授が若い研究者に意地悪なことで悪名高いかを語り、僕に警告したよ。いろいろな人が彼との面接で戦っていたんだ。採用委員会の議長さえ、面接にその教授を入れるかどうか悩んだと言ったぐらいで、言うまでもないけれど、面接前夜の僕はとても神経質になっていたよ。『落ち着かなくちゃ。どうしたら面接を怖れず、ゲームのようにクリアできるだろう』と考え、結局、ビンゴゲームに、その教授が言いそうな思いつく限りの嫌なことを予想しようとしてみたんだ。それで、ビンゴカードをポケットに入れて面接に臨んだんだ」
Calvinがそのビンゴカードの写真を私に送ってくれたので、その解決策を見ることができました。手作りのビンゴのマス目には、面接で言われたくない嫌なことが何種類も書いてありました。
「個人攻撃・批判」「僕の知識・スキルをテストする」「僕の論文の流れ・間違い・ミスを指摘する」「僕になじみのない言葉を引用する」「僕の論文が他人の模倣であり当たり前すぎる内容だと言う」「重要でないかのように無視する」「主義主張に欠けると非難する」などです。
効果はあったのでしょうか? 答えは明白にYesです。「その教授は僕にたくさん否定的なことを言ったけれど、全然気にならなかったよ」と Calvinは言いました。「教授が嫌なことを言うたびに、心の中のビンゴのマスにチェックをつけるというユーモアのおかげで、だいぶラクに面接を乗り切れたよ」
Calvinは2つの勝利をおさめました。まず、彼はビンゴで勝ちました。「教授は真ん中の横の並びを全部引いたのさ」と彼は私に言いました。「彼はみんなが言う通り本当にタチの悪い人だったよ」。それから、その大学から仕事のオファーをもらったのです。結局、彼は別のところに就職することにしまし たが、複数からオファーがあったので、最高の条件で交渉できました。
Calvinの使ったストレスへのアプローチは、毎日の生活を楽しくするのに完璧なやり方でした。彼は意識的にドーパミンが出やすくなるようにしたわけではないかもしれませんが、ビンゴのマス目を埋めるたびにその効能に助けられていたことは間違いありません。
予想するというちょっとした行動が注意力を高めて、ドーパミンを促進したのです。ビンゴのボードを作っただけで、Calvinの精神と楽観性ははるかに高くなったのです。
「最悪のシナリオのビンゴ」はやるのが楽しみだと思うゲームではないかもしれませんね。実際、わざわざストレスを感じたり不愉快だったりする状況に身を置きたい人はいないでしょうから。でも、困難に立ち向かう根性を発揮する必要があるなら、ゲーム心のあるこのやり方を試してみるのもいいでしょう。
Jane McGonigal(原文/訳:春野ユリ)
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