長瀬智也さんと岡田准一さんが落語家を演じたTVドラマ「タイガー&ドラゴン」、国分太一さん主演映画「しゃべれどもしゃべれども」、スクリーンで観る「シネマ落語」、お茶の間で人気の長寿番組「笑点」など......みなさまも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
落語を身近に感じる機会はあるものの、いざ、寄席や落語会に足を運び、落語体験をするとなると、初心者には敷居が高いように感じられるかもしれません。今回は、伝統を踏まえつつ、時代とともに変化していく日本の芸能「落語」について、ご紹介します!
そもそも「落語」って何?
落語とは、江戸時代の日本で成立し、現在まで伝承されている伝統的な話芸。滑稽な話で、「落ち」がつくこととされるため、「落し話(略して「はなし」)」とも呼ばれています。
公演情報はどこで入手できるの?
映画や音楽と違って、落語の情報にふれる機会は少ないかもしれません。「落語の最新情報・公演情報を知りたい」という方におすすめなのが、日本で唯一の演芸情報誌「東京かわら版」(Web版もあります)。
東京を中心とした落語や講談・浪曲など、寄席演芸の情報誌として、寄席やホールなどで開かれているものから若手の勉強会まで、落語会の情報がなんと400件以上も掲載されています!
この他、落語家のサイトや寄席のサイトなどにも情報が公開されています。
寄席はどこにあるの?
落語・浪曲・講談・漫才・手品などの演芸を観客に見せるために「席亭」とよばれる興行主が経営する常設の小屋を「寄席」といいます。江戸末期から大正時代にかけては、江戸だけでもなんと200軒もの寄席があったのだそうです。
現在、都内には、上野の鈴本演芸場、新宿末広亭、西池袋の池袋演芸場、浅草演芸ホールの4軒の寄席があります。このうち都内で最も歴史がある寄席は、1857年創業の上野の鈴本演芸場です。この他、国立劇場演芸場、上野の本牧亭、浅草の木馬亭、有楽町の芸術座などでも落語を楽しむことができます。
いくらで楽しめるの?
2,000円ちょっとで半日から丸一日、笑ってすごすことができるお手頃な娯楽! 新宿末広亭は、18時以降に入場した場合は2,200円、19時~19時45分の間に入場した場合は、1,400円とお得な「夜席割引」を実施中で、実は会社帰りに映画館に足を運ぶような感覚で、ふらりと立ち寄れる場所なのです。さらに、勉強中の落語家さんの落語会を500円で楽しめる「ワンコイン寄席」などもあります。
楽しむ際のマナーは?
寄席は自由席ですので、前の方に座り、奇術の時に積極的に参加したり、後ろの方でのんびりお酒を飲みながらみたり......マイペースに楽しむことができます。
寄席は大衆の娯楽ということで、飲食・持込自由! 食事をしながら、お酒を飲みながら、リラックスし思いっきり笑う。ライブの楽しさと、お茶の間にいるような気軽さを同時に味わえるのも魅力の一つ。
エチケットとして、臭いの強い食べ物や、音が気になるものの持込は控えておきましょう。また一般的な劇場と同様に、大声でのおしゃべり、携帯電話での通話などの迷惑行為には気をつけましょう。
落語家にもランクがあるの?
落語家には、(東京においては)「前座」「二つ目」「真打」といった階級が存在します。
寄席で最後に話す人を「主任(トリ)」と呼び、看板にも大きく名前が書かれ、出演時間も長く、その興行の中で一番格が高く、名誉なこととされています。
一番初めに登場する「開口一番」を務めるのは、見習い期間を経て正式に入門が認められた後の修業期間にあたる「前座」で、通常、修行中の落語家さんが登場します。
知っておきたい! 落語の三種の神器
落語家の3つの必需品といえば、高座(落語家の舞台のことを「高座(こうざ)」と呼びます)にもってでる扇子と手ぬぐい、そして着ている羽織。落語用語で、扇子のことを、風を起こす道具ということから「カゼ」。手拭いを、折りたたんだところが斑なところから「マンダラ」といいます。
扇子は筆になり、杖になり、刀になり、紙になり、杯になり......手拭いは、本になり、徳利になり、小判になり、財布になり......2つの小道具が自由自在に形を変え、話の展開、演出において重要な小道具として活躍します。
落語家は、身に着けている羽織を、落語を進めながらさりげなく脱ぎ、楽屋口へ投げておきます。羽織は「ダルマ」と呼ばれ、羽織を引くことを、「だるまを引く」といいます。投げ捨てられた羽織がしばらく置いたままだと「次の人がまだこない」という合図、すぐに引かれると「準備OK」の合図です。
初心者におすすめの落語は?
初心者でもなじみやすい、これぞ落語といえる名作といえば、「時そば」「饅頭こわい」「目黒のさんま」「鰻のたいこ」「寿限無(じゅげむ)」など......本やDVDで事前に予習しておくと、尚よいでしょう。
おめかしすると、入場料がお得なの?
落語は改まった服装でいく必要はないものの、お気に入りの落語家さんがトリを務める時や、襲名披露興行やなどでは、おめかししてでかけるのも粋! 池袋演芸場には、「浴衣&着物割引」があり、和服で入場すると入場料が安く(2,500円の入場料が2,000円に)なります。
和服で落語を楽しむと粋な上にお財布にも優しいということで、私も落語は和服で楽しむようにしています。
かく言う私もはじめての落語体験は、不思議な緊張感がありました......が一度足を運びその面白さを知ると、「ただいま」と何度も足を運びたくなる。落語は、そんな世界です!
text by 神森 真理子(かみもり・まりこ)
パリ大学で映像・アートビジネスの勉強をし、松竹(株)に入社。ベルギー・フランス生活を通じ、「日本文化の活性化」という生涯の目標を見出し、現在は日本文化の伝道師として、日本文化・食・アートの魅力を発信するイベント企画・プロデュース・執筆・講演などを多数手掛ける。日本を学ぶ大人の学校「和塾」世話人。+ART CLUB/「食とアートの会」主宰。「銀座なでしこ会」幹事。ワインコミュニティ「OWL」主宰。フードアナリスト1級・ワインエキスパート・利酒師。【ブログ】神森真理子の『食を!アートを!日本文化を!楽しもう』。【連載】日本酒を楽しむスマホマガジン「酒ゼミ」にて日本酒コラム執筆中!【監修】現代ビジネス:安倍昭恵「対談『日本の食』を考える」