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ジャイアント馬場のブレーンだった男たちがひさしぶりの再会! 『週刊プロレス』の元編集長ターザン山本と、その『週プロ』の人気連載「ほとんどジョーク」の選者だった更級四郎。ジャイアント馬場の“側近”として、SWS選手大量離脱により崩壊危機にあった全日本の再生に尽力していた2人が90年代を振り返る! イラストレーター・アカツキさんによる昭和プロレスあるある4コマ漫画「味のプロレス」出張版付きでお届けします!
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②北原光騎が天龍引退に万感の思いを込めて「佐山シューティング、天龍同盟、SWS……」
③ビル・ロビンソン最後の弟子・鈴木秀樹「プロフェッショナルレスリングを大いに語る」
④Uと馬場を支えた黒衣の絵描き! 更級四郎 キミは「ほとんどのジョーク」をおぼえてるか?
⑤ご意見番・小原道由が世IV虎vs安川惡斗をぶった斬る!
⑥高校球児がアメリカに渡りUFCを目指すまで〜松田干城のボストン生活〜
⑦小佐野景浩×安西伸一 『ゴング』×『週プロ』天龍番だった男たち
⑧インディの聖地・新木場1stリングとは何か? 管理人を直撃!
⑨達人は実在する! 日本最後の幻想・柳龍拳ロングインタビュー
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山本 更級さん、なつかしいねぇ!
更級 もう長いこと会ってなかったね。
――いつから会われてないんですか?
山本 もう10年以上経つかなあ……。
更級 そうだね。
山本 ボクにとって更級さんは大切な人なんですよ。ベースボール・マガジン社で更級さんと出会わなかったら「ターザン山本」を名乗らなかったし、『週刊プロレス』もあそこまで売れることはなかったと思う。それに更級さんは馬場さんの“恩人”でもあるんですよ!
更級 いやいや、そんなたいそうなもんじゃないよ(笑)。
山本 あれは更級さんが作ったんだけど、もう編集センスが抜群なんですよ。装丁から何からパーフェクト! 『ケーフェイ』は大ロングセラーになったしね。
更級 あれ、売れたの? 俺、ナユタ出版に逃げられたんだけど(苦笑)。
山本 え?
更級 「全然売れない」というハガキが届いて以来、一切連絡がない。
山本 まあ、もともと経営に困っていて、起死回生の策が何かないかということで出た本だったからねぇ。でも、売れたんですよ!
更級 あの『ケーフェイ』というタイトルは、山本さんが考えた3つの中から選んだんですよ。
山本 あれは意味不明なところがいいんですよね。誰も聞いたことがなかった。ボクにケーフェイという言葉を教えてくれたのは、ジミー鈴木なんですよ。「アメリカのプロレス界では、レスラーや関係者が控室で重要な会話してるときに、部外者が入ってきたらケーフェイと合図して話をやめるんですよ……」と。コピーのアイデアを出す1週間前にタイミングよく聞いたんですよ。
――実際にレスラーたちがそうやって口にする場面ってあったんですか?
山本 あるよ。長州(力)、新間(寿)さんも使ってた。「なんのことだろう……?」と思ってたんだけど。
――それは山本さんが嫌われていたわけじゃなくて?(笑)。
山本 それもありますよぉ!
更級 そりゃあ山本さんは嫌われるよね(苦笑)。「山本さんはどういう人?」って聞かれたときはこう言ってたよ。「みんなから妬まれる。それは目立つから」って。
山本 パチパチパチ!(手を叩きながら喜んで)。
更級 しょうがないよね、目立っちゃうんだから(笑)。
山本 更級さんがいなかったら、普通の業界人として何も目立つことなく一生を終えたと思う。ベースボールマガジン社の普通の編集者、記者として地味に仕事をやっていた。ところが更級さんが“非・業界人”として背中を押してくれたわけですよぉ!
更級 だってそのほうが面白いじゃない。俺はフリーのイラストレーターとしてベースボールマガジンから仕事をもらってたんだけど、山本さんとか一部の人間だけでしたよ、才能があったのは。
山本 ベースボールマガジンって個人が目立っちゃいけない会社だったわけだけど。更級さんが「山本さんはエッセイを書くべきだ」ってことで始まったのが「ザッツレスラー」だったりするんですよ。
――あのコラムは更級さんのアイデアなんですね。
山本 更級さんですよ! 『週プロ』の編集長として杉山(頴男)さんがいるのに下の人間がそんなもんを書いちゃいけないんですよ。
更級 でも、俺がそう勧めたら「ついに来たか!」という顔をしてたよ(笑)。
――「待ってました!」と(笑)。
更級 山本さんのコラムは当たるべくして当たったんですよ。山本さんは好き嫌いはべつにして、印象に残る人ですよ。今日出掛けにカミさんに「ひさしぶりに山本さんに会うよ」と言ったんですけど、カミさんが言うには「山本さんの原稿は飛び抜けていたよね」と。ほかの記者と比べてもそうだし、文学性があったんです。でも、当時の『週プロ』は山本さんを使わない。たとえば巻頭原稿にしても、新聞調の記事を外部のフリーライターが書いていたんです。で、俺は山本さんに陰で「月に1度は巻頭原稿を書いたほうがいい」と言ってたんですよ。そうしないと『月刊プロレス』のときと変わらずつまらない本になるから。
山本 『週刊プロレス』の巻頭記事は当初、元・講談社の人間が書いてたんですよ。『プロレス少女伝説』を書いた井田真木子さんの旦那さん。杉山さんが「いまプロレス界はこういう状況ですよ」とデータを渡して、アンカーとして書いてもらっていたんです。
更級 内容はまったく面白くないよ。
山本 それにボクが『週プロ』に入ったときは社内原稿はなかったんですよ。ほかのスポーツ新聞の運動部長、テレビ解説者なんかに原稿を頼んでいた。彼らからしても、いいアルバイトなんだけど、それがまたつまらないんだよねぇ。
更級 読む価値がない。
山本 だって手に入れた情報は真っ先に自分たちの媒体に書くわけでしょ。そこからあぶれたものや、後追い情報を『週プロ』に回すわけだから。それじゃ仕方ないから杉山さんに「社内原稿にしましょう」と提案したんだけど、それも最初は壁があってなかなかできなかったんですよ。社内から「なんでおまえが書くんだ!」という声もあったりしてね。
――堅い業界だったんですね。
山本 編集長の杉山さんは『週刊ベースボール』から来た人で、プロレスのことはまったく詳しくないわけよ。しかもプロレスも好きじゃない。出世の糧にするために『週プロ』で勝負しようしたわけ。それでスペシャリストを集めて、月刊から週刊に移行したんだよね。
更級 杉山さんはプロレスに対して軽蔑してたよね。そうハッキリ言っていたし。
山本 全然好きじゃない。会場にもほとんど行かないし。
更級 会場で見たことなかったよね。1回だけ一緒に全日本の会場に行ったかな。渕(正信)さんと会ったとき、杉山さんは俺の後ろに隠れるようにしていたね。
山本 杉山さんは肩身が狭かったと思うんだよね。
更級 たぶん……ね。
山本 やっぱりさ、『ゴング』の竹内(宏介)さんなんかはプロレス団体のトップとガッチリだったじゃない。団体とのパイプを駆使して雑誌を作るのがプロレスマガジンのスタイル。『東スポ』や『ゴング』は団体と一緒に誌面を作ってるわけだけど、それを杉山さんはやらないわけですよ。団体と交渉も付き合いも一切やらない。だから当然『ゴング』のほうが情報やニュースが早い。
――当時の『週プロ』は異端な存在だったんですね。
山本 でも、杉山編集長はベースボールマガジンの社長から「『ゴング』を潰せ!」という命令を受けていた。プロレスは好きじゃないけど、そういう使命感を持っていたわけ。
更級 『ゴング』ってベースボールマガジン社から出ていった人たちが作っていたから。
山本 編集も営業も経理もみんなそうだよ。
更級 竹内さんといえば、冗談だろうけど「『週プロ』のギャラ3倍出すから『ゴング』に移籍してくれ」と言われたことがあった。
――『ほとんどジョーク』の引き抜きですか(笑)。
更級 「タイトルどうするの?」と聞いたら「『ほとんどジョーク』で行きます」と。
山本 パチパチパチ!(手を叩きながら)。
更級 竹内さん言ってましたよ。「更級さん、『ゴング』ができた経緯を知ってるでしょ。『週プロ』を潰したい」と。向こうもそんなことを言ってたんですよ。
山本 じつは『ゴング』のほうが『週プロ』より1・5倍くらいギャラが高いんですよ。そうすることが業界内の竹内さんのポジションを作っていたわけ。こっちは単なるサラリーマンだから自分の裁量で決められないんだけど。
――『ゴング』は社長の竹内さんが自由に決めることができるんですね。
山本 竹内さんのやり方は起業家としてはあたりまえですよね。資本主義の世界では、自分の会社に生き残るためには当然のことだから。杉山さんも頭がいいから、いままでにないプロレスマガジンのスタイルを構築していったんだよね。更級さんの『ほとんどジョーク』もそうですよ!
更級 最初はみんなから「そんなのうまくいかない」と言われたけどね(笑)。「プロレスファンには笑いのセンスはないよ」って。
山本 ボクが『ファイト』にいたときに驚いたのは、投稿ページの充実感なんですよ。「プロレス界には強者が多いな」と思ってたんだけど、『ほとんどのジョーク』の投稿の多さを見て、「やっぱり」って後付けで気づいた。あのコーナーで当選回数が一番多かった人間が◯◯◯◯というんですよ。それが1ヵ月前に新宿ゴールデン街でバッタリ会ってさあ。昨日もフリーダムの興行で会って試合後に一緒に飯を食いましたよ!
――その方はいま何歳なんですか?
山本 40ナンボ。
――いまだにプロレスを見続けてるんですねぇ。
更級 彼は何回も採用されていたよね。でも、杉山さんの最大の功績は、山本さんを『ファイト』から引っ張ったことだと思いますよ。「この人にやってもらう、あの人にやってもらおう」という管制塔の役割に徹していた。変に会場に来たり、猪木さんや馬場さんとメシを食ったりしなかった。独自のやり方で『週プロ』を認知させるまでには至ったけど、人気を出たのは山本さんが編集長になってからですよ。
山本 ボクが「ターザン山本」と名乗るようになったのも、サンボのビクトル古賀先生に命令されたからなんだけど。更級さんと古賀さん、両方から「表に出ろ!」と蹴り出されたわけ。いまでこそこうやって定着したわけど、こんなリングネームみたいものは普通はつけないですよ!
更級 古賀さんは山本さんのことを「ターザン」と言っていて。本当のターザンはさ、身体は逆三角形で山本さんとは全然違う風貌じゃない(笑)。でも、山本さんの神出鬼没さから「ターザン」と名づけたんだよね。それで「ペンネームもターザン山本でいったら?」と。そういうときの山本さんって真面目だから最初のうちは「プロレスラーにターザン後藤という選手がいるからダメだ」と嫌がるんだよね。
山本 そこはやっぱり業界人として守らないといけないこともあったんだけど、徐々に更級さんや松本晴夫さんたちの“非・業界”の世界になびいていったんですよ。
――松本さんは『ザッツレスラー』の挿絵を書かれていたイラストレーターですね。
山本 だって、そっちのほうは居心地がいいしさ、だからこそプロレス界に軋轢とイレギュラーを起こし続けることができたんですよ。それが新日本の取材拒否につながったんだけど……。
――きっかけは更級さんだったんですか(笑)。
山本 ボクはその“非・業界”のスタンスを選んだんですよ。更級さんのセンスにボクは憧れたし、尊敬できた。なにより知的だからさ。
――更級さんがいなかったら、ターザン山本も、活字プロレスの『週刊プロレス』も存在しなかったという。
山本 なかったよ。あと旧UWFもうまくいかなかったんじゃない。もともと杉山さんが『週プロ』でUWFを推していたけど、更級さんは社長の浦田(昇)さんたちから相談されていたんですよ。つまりUWFはメディアを持っている杉山さんと、ブレーンとしての更級さんという、2つのルートを持っていたわけ。UWFは杉山さんの媒体力に頼って、更級さんにはUWFの精神を作ってもらっていたんですよ。たとえば浦田さんが「前田日明しか選手がいない。誰を引き抜こう」という話になったときに、浦田さんは中央大学のレスリング部出身だから「長州でいこう!」となるんですよ。でも、ボクらは「長州はダメですよ!」と反対してね。
更級 ダメだよねぇ。
山本 「長州より藤原喜明ですよ!」と提案するんだけど、当時の藤原喜明は業界的にも名前がないじゃない。浦田さんは「藤原……?」と怪訝そうな顔をしてねぇ。そこで「藤原を入れることでUWFのコンセプトは強力に固まりますよ」と説得したのは更級さんなんですよ。
作/アカツキ
更級 浦田さんはね、借金を抱えて大変でね、UWFもうまくは行かなかったけど、頭がよかったですよ。俺に話を振ると山本さんにも伝わるってわかってた。あと浦田さんは杉山さんとうまくいってなかったから、山本さんのルートは大事にしていたんだよね。
山本 藤原組長のテーマ曲「ワルキューレの騎行」を考えたのは更級さんですよ。凄いセンスだなと思って。絵画や文学とか芸術に関する知識が凄いんですよ!
更級 でも、神(新二、旧UWFスタッフ、新生UWF社長)くんなんかもそうだけど、山本さんや俺たちが一番邪魔だったと思う。UWFが大きくなるに連れ、態度がどんどん変わっていったよね。第2次UWFが横浜アリーナでやったときに控室の通路にいたんだよ。そのとき宮戸優光や山崎一夫とすれ違ったんだけど、俺のことがわかると、凄く嫌な表情をして顔を背けるわけ。昔は「先生、先生」って声をかけにきたのにね。
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