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語り処_2023.10.15
2023-10-15 20:45330pt1. ひとことオピニオン
今こそ求められる「自立と共生」の理念
地球上のあらゆるところで貧富の格差が増大し、特に北半球の先進諸国で国民の分断が激しさを増しているのは、かなり深刻な問題です。独仏伊西とユーロ圏の4大経済大国をはじめ、欧州ではほとんどの国が右傾化しています。同時に「人類の普遍的価値として掲げてきた自由と民主主義が本当に我々を幸せに、豊かにしてくれるのか」と懐疑的になっています。これは今まで世界に君臨してきた西洋文明そのものが岐路に立っていることを表し、私は歴史的にみて大航海時代以降、世界を席巻したパクス・ブリタニカ、パクス・アメリカーナに象徴される人間中心主義のキリスト教文化の行き詰まりを意味しているのではないかと考えています。
東西冷戦が終結した1989年以降、世界は安定するのではなく部族間の争いが進み、当時第三世界と言われた国々が台頭し、混沌とした時代になっていくことはある程度予測できたことです。私はそういう危機感のもとで、日本人は21世紀に自己の主張をアピールできるくらいにならないといけないという思いから『日本改造計画』を書き上げました。
あの書籍で本当に重要なことは「自立と共生」という考え方です。日本は自立した個人の集合体により運営される自立した国家となり、それを礎として自然との共生、他民族との共生を実現していくべきだというのが私の主張です。この背景にあるのは人間も万物の一存在でしかない、自然の一部だという哲学です。こうした東洋の倫理観は人間も自然のなかの一つの存在でしかなく、その大きな自然の恵みの中で人類の平和な生活もあるのです。
日本がこうした考えを背景に「自立と共生」の文化を実践していく国家になっていけば、アジアのリーダーとなり、21世紀には経済的にも軍事的にも国連の中心的存在になっているはずだというのが出版当時の私の思いでした。戦後日本はもう一度大志を抱き国際社会に出て重要な一員となることを目指すべきだと私は考えました。ところが日本は太平洋戦争で完璧なまでに打ちのめされ、「膾にこりて羹を吹く」存在となってしまいました。大志を失って無気力となり、アメリカに寄り添うばかりで、自立する勇気と気概を完全に放棄してしまったのです。
しかし、この混沌とした世界の大海原で難破しないためには、毀損されつつある自由と民主主義の意味を東洋的な哲学や倫理観を背景にもう一度練り直す作業を行い、一神教のような排他的でない、より包摂的なものとして再定義していく必要があるのではないでしょうか。日本がその作業をしっかり行うことができれば、21世紀の国際社会と国家のあり方を世界にアピールできる存在に必ずなれるはずです。そのための第一歩としてまず、国民と国家の「自立と共生」を一日も早く実現する必要があります。
2.季節の話題
味覚の秋! 岩手が美味しい
岩手も美味しい季節になってきました。岩手のお米を取り上げた新TVCMが完成し、10月から放映がはじまりました。あまちゃんでお馴染みののんさんと、元子役の新津ちせさんのコンビ「おコメディアンズ」によるシリーズで、コミカルなダンスと楽しい歌にのせて『いわてをもりもり食べてみて!』と二人がいろいろなおかずと共に美味しそうに「銀河のしずく」や「岩手県産ひとめぼれ」を頬張ります。これはJA全農いわての公式Youtubeチャンネルでも公開されていますので、ぜひ皆さんもご覧ください。
この新米に合わせてぜひ食べてもらいたいのが岩手県産のサンマですが、残念ながら例年より小ぶりのものが多いようです。そして10月から12月にかけてピークを迎えるのが秋サケも人工ふ化事業が本格化した昭和59年以降で今年は最低の水揚げ量になる見通しだと言います。盛岡市にも毎年、何匹か鮭がす遡上してくるのです。市内を流れる中津川で鮭の姿を見るのが盛岡の秋の風物詩ですが、年々その数が減ってきているのはとても残念ですし、寂しいです。
3.Q&A
マイナンバーとマイナンバーカードの問題点
グローバル化した時代の国民国家として、自国民とそうでない人を区別するという意味で国家が国民の身分を証明するために番号を付与することには私は反対ではありません。問題はそのマイナンバーを国民の身分証明(ID)以外に使うのかどうかということです。結論からいえば、マイナンバーは国民IDに終止すべきだと私は思っています。
各種手続きをマイナンバーに統一することにより、事務の効率化・迅速化が図れるという議論もあります。しかし、そもそも個人に付与するマイナンバーと、世帯主や家族単位を基本対象とする日本の行政サービスや手続きは1対1で対応しないことのほうが多いと思いその整理が付く前にただただ闇雲になんでもマイナンバーに統合しようというのはあまりにも乱暴で、手段が目的化しています。これではいくら統合しても、事務の効率化・合理化など実現するはずがありません。
そもそも国民の情報をマイナンバーに紐づけして一元管理するというのは、国家がそこまで立ち入るべきではありませんし、個人のプライバシー保護、人権の尊重を考えたときに絶対にやるべきことではありません。
諸外国の例をみても、国民にIDとして番号を付与してはいるものの、一部の国を除いて、納税番号や社会保険番号などと一体化することはほとんどの国で行っていません。これは国民が拒否しているからです。マイナンバーはあくまで国民IDに限るというのが本筋ではないでしょうか。
そして、マイナンバーカードですが、民間企業がカードホルダーを増やすために行うプレミアム・キャンペーンのようなことを政府がやるのは邪道です。今回のやり方は民間企業でも考えられないほどの大盤振る舞いで、そこまでしてマイナンバーカードの保有者を増やす必要がどこにあったのか、なぜそんなにことを急ぐのか全く意味不明です。日本社会で生活していく上で本当にマイナンバーカードが必要ならば、そんなプレミアムをつけなくても国民は進んでカードを持つようになるはずです。しかし、マイナンバーカード自体にそれほどの必要性も魅力もなかったから国民から自発的な動きがなかったということです。いまの現在政府がやっていることは、利便性があるからマイナンバーカードの普及を促進しようというのではなく、マイナンバーカード保有者を増やすことが目的化しており、使用目的は二の次になっています。これでは本末転倒というものです。
行政サービスのマイナンバーカードへの集約は、やがて米国のように民間企業への開放や民間サービスとのクロス化に発展して可能性があります。例えば国民健康保険と自由診療の民間保険をクロスさせてカードに集約して利便性を図ろうという話になり、その延長線上として国民皆保険制度を廃止して民間保険に切り替えていくという流れだって考えられるわけです。つまり「デジタル社会のパスポート」だというマイナンバーカードが、企業が国家という器を利用して国民をターゲットにして利益を貪る新自由主義推進のためのパスポートにされてしまう可能性もあるということです。
マイナンバーは国民IDとしの使用に限り、それ以上の紐づけはしない。そしてマイナンバーカードも本来の趣旨に立ち返り国民の身分証明証としてだけ使う。この原点に立ち返るべきです。
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語り処_2022.10.29
2022-10-29 21:00330pt1. ひとことオピニオン
マイナンバーカード強制の前にやるべきことがある
河野太郎デジタル相は、2024年秋にマイナンバーカードと現在の健康保険証を一体化させ、健康保険証は廃止すると言います。しかし、結論をまず言うと、それはあまりにも拙速であり、日本の政治状況を考えると機が熟していないと言えます。国民がマイナンバーやマイナンバーカードを拒否する最大の理由は、プライバシーの侵害と情報の漏洩、改ざん等に対する不安や不信です。ここ何年かでも、官僚の死者まで出した「森友学園」への国有地売却を巡る決裁文書の改ざん問題や、国会での「情報を捨ててしまいました」「記録はありません」「やっぱりありました」などというおよそ誠実味のない政府答弁はじめ、政府・行政を信用することができない事件が次から次へと起きています。しかも、それらの不祥事は厳しく罰せられることもなく、「ごめんなさい」で全てが済んでしまっているのです。 政府・与党がまず具体的に行っていくべきことは、基本的人権を守ることを政治家一人ひとりがきちんと自覚して政治に取り組み、基本的人権の保護を制度的に確立することです。それは国家が設けるべきセーフティーネットの一つです。そういう土俵ができてはじめて、マイナンバーカードを議論の俎上に乗せることができるのです。 いずれ マイナンバーカード的なものは必要になると思います。しかしその前にまず、日本は根本の問題として、議会制民主主義を定着させなければなりません。長年、一政党に権力が集中しているような国は、とても民主主義が定着しているとは言えず、政権交代によるチェック機能も働かないので、プライバシー保護や人権意識がおざなりにされるのです。人類の歴史は、弱肉強食の社会ではいけないから、国家というものができ、議会制民主主義ができたはずです。そして、特定政党に権力が集中して国家が一党独裁にならないように、政権交代が適宜行われるようにしていく。それが先人たちが編み出した知恵です。その仕組みをもう一度想い起こして、そこから議論をスタートさせていかなくてはなりません。政権交代も起きず、特定政党に権力が固定化されていている日本では、情報が一箇所に集中するマイナンバーカードの導入は危険すぎて時期尚早です 。
2.季節の話題
美味の宝庫、岩手県をもっと知ってもらいたい 秋が深まり、日本酒が恋しくなるシーズンです。奥州市前沢にある岩手銘醸の「特別純米酒奥州ノ龍」が、2022年度の全米日本酒歓評会(The U.S. National Sake Appraisal)の純米酒部門で2年連続金賞に輝くという朗報が届きました。岩手には日本酒だけでなく、松茸、 「銀河のしずく」「金色の風」という独自銘柄、蜜のたっぷり入った良質なりんご短角牛や前沢牛、魚介等々美味しいものがたくさんあります。ただ、岩手県人は商売が下手なので、今ひとつ全国区になれません。最近は達増知事も頑張って、少しずつ知名度が上がってきました。今後も順調に販路を広げていって、岩手の美味しいものが日本全国に広がっていき、岩手県民の経済力が高まっていくことを心から願っています。
3.Q&A
ロシア−ウクライナ戦争後の世界
プーチン大統領はいずれ失敗して淘汰されると思いますが、その後の世界秩序については、さまざまな動向を適確に予測することが非常に難しく、そう単純な話ではないと思います。ただし、一番のポイントになるのはやはり中国の動向です。習近平体制3期目を迎えましたが、中国共産党中央委員会政治局常務委員7人の全てを習近平国家主席と関係の深い人物が占める形になりました。これは恐ろしいほどの独裁体制です。中国の歴史は常に、権力者の出現と、それに対する農民暴動など民衆の蜂起という構図を繰り返してきました。それにより権力者が次々と変わってきたのです。現在の中国は、経済が悪化して格差も広がリ、国民に不満が渦巻く中で、共産党ではなく習近平国家主席個人による独裁強権国家の道を歩んでいるわけです。だから私は、そう遠くないうちに過去の歴史の繰り返しが起きるのではないかと危惧しています。権力闘争に勝った習近平国家主席の高揚感を考えると、台湾有事ばかりでなく、北朝鮮を煽って戦争への口実にしていく可能性もあるとみています。北朝鮮が南下したら韓国はひとたまりもありません。台湾にしろ、朝鮮半島にしろ、アメリカが本気で戦わないことを習近平国家主席は見透かしているので、金門島などの大陸沿岸の台湾領と、朝鮮半島からの両方を一気に動かしてくる可能性もあります。台湾有事はほぼ日本有事です。習近平国家主席の3期目達成は動乱の幕開けとも言え、北東アジアに位置している日本は今世紀最大の大動乱の矢面に立たされる可能性が高いと思います。日本はその自覚と覚悟をきちんと持つべきだと思います。
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