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【第420号】実写ドラマ版『ウイングマン』実質『アキバレンジャー』説
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━マクガイヤーチャンネル 第420号 2024/12/25━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━メリークリトリス!マクガイヤーです。
『ウイングマン』最終回に大興奮していたら、すっかり『明石家サンタ』を見逃してしまったのですが、皆さまはどのような聖也を過ごしていたのでしょうか?
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
〇12月29日(日)16時~「Dr.マクガイヤーのオタ忘年会2024」
例年お楽しみ頂いている「オタ忘年会」あるいは「オタ新年会」。
今年も2024年に語り残したオタク的トピックスやアイテムについて独断と偏見で語りまくる予定です。
ゲストとして編集者のしまさん(https://twitter.com/shimashima90pun)をお迎えしてお送り致します。
ちなみに過去の忘年会動画はこちらになります。
2023年(2024年新年会)
2022年(2023年新年会)
〇12月30日(月)9時30分~「町山智浩とDr.マクガイヤーの2024映画ベストテン」(いつもと放送時間が異なります、ご注意ください)
能登半島地震、アメリカ大統領選挙、韓国戒厳令騒動……激動の2024年も暮れようとしています。
映画評論家の町山智浩さん(https://twitter.com/TomoMachi)と、お互いに2024映画ベストテンを挙げ、トークを行います。
ちなみに2023年のベストテン動画はこちらになります。
1年の締めくくりにどうぞ!
〇1月5日(日)19時~「最近のマクガイヤー 2025年1月号」
お題
・時事ネタ
・ビーキーパー
・カルキ 2898-AD
・ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない
・ライオン・キング ムファサ
・型破りな教室
・ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い
・I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ
・クレイヴン・ザ・ハンター
・スピーク・ノー・イーブル 異常な家族
・お坊さまと鉄砲
・どうすればよかったか?
・モアナと伝説の海2
・大きな家
・ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち
・ニッツ・アイランド 非人間のレポート
・雨の中の慾情
・ザ・バイクライダーズ
・ドリーム・シナリオ
・動物界
その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
〇1月27日(月)19時~「『劇映画 孤独のグルメ』と『孤独のグルメ』の文学性」
2025年1月10日に『劇映画 孤独のグルメ』が公開されます。主人公 井之頭五郎を演じる松重豊自身が監督・脚本・主演のすべてを務めることでも話題です
漫画『孤独のグルメ』を原作としたテレビドラマ『孤独のグルメ』は10シーズン、大晦日スペシャルやスピンオフも多数製作され、大ヒットしました。その後、深夜帯で食をテーマとしたドラマが多数放送されるようになり、一つのジャンルを産むことにもなりました。
また、久住昌之 原作を谷口ジロー 作画による漫画『孤独のグルメ』は単行本第一巻分が1994~1996年にかけて『月刊PANJA』で連載された後、ネットを中心として盛り上がりを受けて、『SPA!』誌上で2008~2015年まで単行本第二巻分が不定期掲載されました。2017年に谷口ジローが死去したため続編が描かれることはありませんが、この前後で久住昌之は食を題材とした様々な漫画原作とエッセイを発表しています。そのどれにも共通した要素――「孤高にものを食べるという行為こそ、最高の癒し」――があります。これらは、大袈裟にいえば、夏目漱石や池波正太郎の諸作品に代表されるような、人生のあれやこれやを食と関連づけてどう描写するかという、日本文学の流れの上に存在するのではないでしょうか。
そこで、『劇映画 孤独のグルメ』を解説しつつ、食をテーマとした他のドラマや、久住昌之作品における食と文学性について語るような放送を行います。
〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています
当ブロマガの連載をまとめた藤子不二雄Ⓐ作品評論・解説本『本当はFより面白い藤子不二雄Ⓐの話~~童貞と変身と文学青年~~』の通販をしております。
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また、売り切れになっていた『大長編ドラえもん』解説本『大長編ドラえもん徹底解説〜科学と冒険小説と創世記からよむ藤子・F・不二雄〜』ですが、この度電子書籍としてpdfファイルを販売することになりました。
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合わせてお楽しみ下さい。
さて、本日のブロマガですが、改めて実写ドラマ版『ウイングマン』について書かせて下さい。
●原作漫画から約40年
そもそも自分は原作漫画『ウイングマン』がそんなに好きじゃなかったのですよ。
当時の自分は小学生で、『デンジマン』『サンバルカン』はリアルタイムでメインターゲットの視聴者だったわけです。特に「メタルヒーロー」という概念を作り出した『宇宙刑事ギャバン』のインパクトが強く、とにかく新しくてカッチョ良くて、周囲の友人が皆ハマっていたことを覚えています。今考えてみても、当時なりの『スター・ウォーズ』の東映特撮版ローカライズとして凄く良く出来ていたと思います。
そんな自分にとって『ウイングマン』の何が嫌だったかというと、特撮とラブコメが混ざっていたのが嫌だったのですよ。作者の特撮愛も、美少女キャラへの愛も分かる。しかしそれらを混ぜたものを受け入れるわけにはいかない――という具合です。「女は敵」と考えていた童貞小学生だったので、仕方ないですね。
しかし漫画『ウイングマン』の連載から約40年が経つと、色々と変わるものです。作者も読者も自分も、様々な意味で成熟しました。約40年を経ての実写ドラマ化で、やっと『ウイングマン』のことが好きになれた。
●藤岡真威人版広野健太の狂気
その理由の一つは、実写ドラマ版のキャストの良さでしょう。
しっかりメインヒロインとして位置づけられたアオイさん役の加藤小夏が良いのは、当然といえば当然です。同じ桂正和原作のドラマ版『I"s』やNHK大河ドラマへの出演経験もあり、しっかりした演技が年上ヒロインであるアオイさんにぴったりです。
自分が驚いたのは、藤岡真威人にこんな魅力があったのかということです。
藤岡弘、の息子である藤岡真威人には、ピュアさやイノセントさを通り越した一種の狂気――藤岡弘、に教育という名の洗脳を受けたような危うさがありました。メディアでみる藤岡家は本当に仲良さげで幸せそうなのですが、家父長としての藤岡弘、に狂気があるので、息子や娘たちもその狂気から無縁ではないと感じていたのです。
藤岡弘、が『仮面ライダー1号』に出演した際、共演した仮面ライダーゴースト役の西銘駿が、誰もみていないところでライダースーツにお辞儀しているのをみて「これは大丈夫だと思った」といったようなことを言っていました。「仮面ライダー」という実在しないものに最大限のリスペクトを払っていたことに安心していたわけです。これは特撮に関わる者としては美談ですが、このような態度をプライベートでもとっているような危うさが藤岡弘、にはあります。自分は特撮が大好きなのですが、幼少の頃から「なに、『スター・ウォーズ』観たいだと? ウチでは石ノ森先生原作の東映特撮しか許さん!」みたいなことを言われたら、特撮が嫌いになっていたでしょう――まぁ、全部自分の想像なのですが。
しかしそんな藤岡真威人が、東映特撮に対して異常な愛情を持つ広野健太を演じると、なんだか一周回って、すごく良く感じるわけです。40年前に『デンジマン』や『ギャバン』が好きな中学生であるのと、令和の今にそれらが好きな高校生であるのとでは、オタクとしての熱量に差がありすぎます。何故健太がそれほどまでに東映特撮が好きなのかについては説明されませんが、「藤岡弘、の息子」という一点で納得してしまいます。
実写ドラマ版『ウイングマン』では原作後半の展開が先取りされ、『スパイダーマン』のようにヒーローとしての広野健太のシークレット・アイデンティティが顕になり、リメルやキータクラーといった異次元の敵だけではなく、社会的にも追い詰められます。しかし健太のヒーローとしての軸はぶれません。周囲の友人知人も、健太を守ろうとします。特撮への愛が狂気の如く確固としたものであればあるほど、ヒーローとしてのそれも確固としたものである――この解釈が実写ドラマ版『ウイングマン』の底にあるからこそ、安心して番組を楽しんでしまいました。
●実質『アキバレンジャー』説
80年代当時、スーパー戦隊でも宇宙刑事(メタルヒーロー)でもない「第3の東映特撮」を作ろうというムーブメントがありました。『マシンマン』や『バイクロッサー』がそれで、スーパー戦隊や宇宙刑事とは敢えて違うデザインや、敢えて異なる雰囲気(アクションとコメディ重視)で製作されていました。
『ウイングマン』は、当時の桂正和が自分なりの「第3の東映特撮」であり、同時に「テレビのマネではない自分の考えたヒーロー」になっていたことが最大の魅力でした。
2010年代になり、スーパー戦隊と平成ライダーがそれなりの人気コンテンツとなって以降も、「第3の東映特撮」を作ろうという動きがありました。『アキバレンジャー』や『ザ・ハイスクール ヒーローズ』がそれです。『純烈ジャー』も含まれるかもしれません。80年代と比較して、ある程度高年齢層向けであることや、東映特撮へのメタな視点が特徴になります。
『ウイングマン』は明らかにテン年代以降の「第3の東映特撮」路線の作品です。桃子が健太に負けない特撮オタクとなり、毎回『アキバレンジャー』みたいなメタ台詞で笑いをとるのも納得といえましょう。メタとベタの合間に真剣さがあり、それが最大の魅力となっているのも共通しています。
『ドラマ「ウイングマン」コンプリートガイド』を読むと、坂本浩一監督はシーズン2に意欲的です。是非実現して欲しいのですが、もうちょっと予算と尺を上げてやって欲しいですね。
番組オリジナルグッズも引き続き販売中です。
マクガイヤーチャンネル物販部 : https://clubt.jp/shop/S0000051529.html
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……等々、絶賛発売中!
本メルマガもニコ生の番組内容も、TwitterやFacebookやブログ等で話題にして頂けると、宣伝になるのでとてもありがたいです。常識の範囲内で引用やコピペや文字起こしによる紹介もして頂いて構いません。でも、全文コピペや全文文字起こしは勘弁な!
Dr.マクガイヤー
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【第419号】『ウイングマン』にみる80年代おたく、あるいはオタク第一世代
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━マクガイヤーチャンネル 第419号 2024/12/18━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━おはようございます、マクガイヤーです。
まだクリアできていないのに『ドラクエ3』の攻略本が届いてしまいました。
こうなったら正月休みでゆっくりプレイするしかないと考えております。
マクガイヤーチャンネルの今後の放送予定は以下のようになっております。
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ちなみに2023年のベストテン動画はこちらになります。
1年の締めくくりにどうぞ!
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・I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ
・クレイヴン・ザ・ハンター
・スピーク・ノー・イーブル 異常な家族
・お坊さまと鉄砲
・どうすればよかったか?
・モアナと伝説の海2
・大きな家
・ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち
・ニッツ・アイランド 非人間のレポート
・雨の中の慾情
・ザ・バイクライダーズ
・ドリーム・シナリオ
・動物界
その他、いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
〇1月27日(月)19時~「『劇映画 孤独のグルメ』と『孤独のグルメ』の文学性」
2025年1月10日に『劇映画 孤独のグルメ』が公開されます。主人公 井之頭五郎を演じる松重豊自身が監督・脚本・主演のすべてを務めることでも話題です
漫画『孤独のグルメ』を原作としたテレビドラマ『孤独のグルメ』は10シーズン、大晦日スペシャルやスピンオフも多数製作され、大ヒットしました。その後、深夜帯で食をテーマとしたドラマが多数放送されるようになり、一つのジャンルを産むことにもなりました。
また、久住昌之 原作を谷口ジロー 作画による漫画『孤独のグルメ』は単行本第一巻分が1994~1996年にかけて『月刊PANJA』で連載された後、ネットを中心として盛り上がりを受けて、『SPA!』誌上で2008~2015年まで単行本第二巻分が不定期掲載されました。2017年に谷口ジローが死去したため続編が描かれることはありませんが、この前後で久住昌之は食を題材とした様々な漫画原作とエッセイを発表しています。そのどれにも共通した要素――「孤高にものを食べるという行為こそ、最高の癒し」――があります。これらは、大袈裟にいえば、夏目漱石や池波正太郎の諸作品に代表されるような、人生のあれやこれやを食と関連づけてどう描写するかという、日本文学の流れの上に存在するのではないでしょうか。
そこで、『劇映画 孤独のグルメ』を解説しつつ、食をテーマとした他のドラマや、久住昌之作品における食と文学性について語るような放送を行います。
〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています
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合わせてお楽しみ下さい。
さて、本日のブロマガですが、先日の放送でも扱った『ウイングマン』について書かせて下さい。
●ドラマ版『ウイングマン』もうすぐ最終回
ドラマ版『ウイングマン』も残すところあと一回となりました。
漫画『ウイングマン』を「本家」である東映が特撮ドラマとして実写化したわけですが、令和5年の「いま」がきちんと詰まった実写化なのではないでしょうか。深夜枠での放送で、どう考えても低予算だと思うのですが、子供の頃『ウイングマン』の漫画やアニメを観ていた自分のようなアラフィフおじさんにとってはめちゃめちゃ面白いわけですが、若者にとってどう映っているかが気になるところです。
ただ今回、ジャンプコミックス13巻分を深夜30分枠で全10回での映像化ということで、原作から端折られた要素が多々あります。アイドルの美森くるみは出てこないですし、ウイナア / ウイナルドは(おそらく予算の都合上)出てきません。昨夜放送された第9回は展開の都合上必要もないのにキータクラーが謎のヒーローに変身する忙しさでした。
多分、第二部となる単行本9~13巻の「ライエル編」は今シーズンでは映像化しないでしょう。広野健太のシークレットアイデンティティが公になるという『スパイダーマン』みたいな展開になってきましたが、最終回は皆が記憶を失うという「ライエル編」の結末を先取りするのかもしれません。アメコミを参照するという、桂正和ヒーロー作品の現代的映像化としては正しいやり方です。全体的に駆け足気味ですが、そのおかげでテンポが良い映像化ともいえます。シーズン2や映画版も期待してしまいます。
●渡辺広黄とおたくの暗黒面
自分としては、ヒーローアクション部のオリジナルヒーロー、「セイギマン」が出てこないのが残念です。正確には、セイギイエローこと渡辺広黄が出てこないのが残念でなりません。
何故かというと、『ウイングマン』における渡辺広黄というキャラクターは、80年代おたく(あるいはオタク)の暗黒面が集約されたキャラクターだと自分は考えているからです。
念のために渡辺広黄がどんなキャラなのか説明しますと、ことあるごとに毒舌――というか、女性蔑視的発言をする暗い男です。
当然ながらこのキャラクターは、当時のジャンプ漫画の主人公らしく明るくて皆から愛される広野健太、優等生であるセイギブルー(楠冨青三)やセイギグリーン(北島みどり)の対比となっています。
一種のコメディリリーフで、他人がどう受け止めるかを考えずに失礼な台詞を吐き、周囲から漫画らしい大げさな暴力で制裁される――というのが一つのギャグであり、パターンとなっていました。
極端な表現で笑いをとる描写などは、『究極超人あ〜る』の鳥坂先輩を先取りしていたといえます。
ただ、ちょっと引っかかってしまうのは、この渡辺広黄のキャラクター像――長髪で、眼鏡で、暗く、表情を変えず場の雰囲気を読めないことを言う――というのが、80年代当時の嫌われる「おたく族」そのものなことです。
●おたくの誕生と『ウイングマン』
「おたく」という呼称は、1983年『漫画ブリッコ』で中森明夫が連載したコラム「『おたく』の研究」から生まれたとされています。
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コミケット(略してコミケ)って知ってる?(中略)その彼らの異様さね。なんて言うんだろうねぇ、ほら、どこのクラスにもいるでしょ、運動が全くだめで、休み時間なんかも教室の中に閉じ込もって、日陰でウジウジと将棋なんかに打ち興じてたりする奴らが。モロあれなんだよね。髪型は七三の長髪でボサボサか、キョーフの刈り上げ坊っちゃん刈り。(中略)それで栄養のいき届いてないようなガリガリか、銀ブチメガネのつるを額に喰い込ませて笑う白ブタかてな感じで、女なんかはオカッパでたいがいは太ってて、丸太ん棒みたいな太い足を白いハイソックスで包んでたりするんだよね。普段はクラスの片隅でさぁ、目立たなく暗い目をして、友達の一人もいない、そんな奴らが、どこからわいてきたんだろうって首をひねるぐらいにゾロゾロゾロゾロ一万人!
(中略)それでこういった人達を、まあ普通、マニアだとか熱狂的ファンだとか、せーぜーネクラ族だとかなんとか呼んでるわけだけど、どうもしっくりこない。なにかこういった人々を、あるいはこういった現象総体を統合する適確な呼び名がいまだ確立してないのではないかなんて思うのだけれど、それでまぁチョイわけあって我々は彼らを『おたく』と命名し、以後そう呼び伝えることにしたのだ。
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このコラムは「漫画ブリッコ」1983年6月号に掲載されました。『ウイングマン』が連載されたのは「週刊少年ジャンプ」1983年5・6合併号から1985年39号までです(途中休載あり)。「漫画ブリッコ」と「ジャンプ」の読者はほとんど重ならなかったはずなので、当時のジャンプ読者が「おたく」という言葉を認識していたとは思えません。しかしコミケやヒーローショーやアイドルのコンサートや高校や大学に「日陰でウジウジ」な人たちがいるのは認識していましたし、桂正和や「ジャンプ」の編集者は中森明夫のコラムをちゃんと読んでいた可能性もあります。
ただ、『ギャバン』にハマり『デンジマン』のコスプレをしていた桂正和自身は、特撮もアイドルも大好きだけど、「日陰でウジウジ」な若者ではありませんでした。また、80年代当時のジャンプ漫画主人公のかくあるべき姿、という理想もあります。故に、広野健太は明るくて皆から愛されるキャラクターになったわけですが、周囲にいる「日陰でウジウジ」な人たちも無視するわけにはいかない。何も知らない一般人からは見分けがつかないだろうけど自分は違うんだというという、自嘲やプライドや屈託のようなものがあったのかもしれません。
このことが渡辺広黄以上に出ているのが、ジャンプコミックス第8巻、健太と美紅ちゃんとのデートを邪魔しようとする輩たちの描写です。
普通、こういうシーンに登場する輩たちは、いかにもひどい暴力を奮いそうな怖い不良やヤンキーだと思うのですが、この三人は中森明夫のコラムそのままな(つまりは当時の典型的な)「おたく」です。コマ外に書かれた「こんなさんにんにからまれてもこわくもなんともないね」の文字が、本当は怖い不良を登場させるべきだけどもここではちょっと違うことをしたいんだという言い訳に捉えてしまいます。
健太はウイングマンに変身して三人を撃退するのですが、うち一人が『魔法の天使クリィミーマミ』の紙袋を持っていることにも注目です。当時の魔法少女アニメとしては珍しく明確に日本の芸能界を舞台にしていたこともあって、『クリィミーマミ』は子供だけでなく一部の「おたく」に爆発的な人気を博していたのでした(故に放送後OVAまで作られました)。俺も『クリィミーマミ』観てるけど、紙袋下げてるような奴らとは違うんだ――という心の声が聞こえてきそうです。
この後、宮崎勤事件があり、カタカナ表記「オタク」による再定義があり、秋葉原と『電車男』ブームがあり、おたくあるいはオタクもしくはヲタクの浸透と拡散があり、今があるわけです。実写ドラマ版『ウイングマン』は『非公認戦隊アキバレンジャー』に似ていると思うのですが、『アキバレンジャー』かた十余年が経ち、秋葉原がオタクの街でもなんでもなくなり、和田正人がタモンズ役を演っている今、感慨深いものを勝手に感じてしまいます。
番組オリジナルグッズも引き続き販売中です。
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【第418号】『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』:Roman DreamあるいはMake Rome Great Again
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━マクガイヤーチャンネル 第418号 2024/12/11━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━おはようございます、マクガイヤーです。
なんだか毎日忙しくて、なかなか『ドラクエ3』をプレイできていません。先日発売された『FANTASIAN Neo Dimension』も気になるところなので、早いとこクリアしたいのですが、なんともし難いのが辛いところです。
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詳細未定
いつも通り最近面白かった映画や漫画について、まったりとひとり喋りでお送りします。
〇1月27日(月)19時~「『劇映画 孤独のグルメ』と『孤独のグルメ』の文学性」
2025年1月10日に『劇映画 孤独のグルメ』が公開されます。主人公 井之頭五郎を演じる松重豊自身が監督・脚本・主演のすべてを務めることでも話題です
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また、久住昌之 原作を谷口ジロー 作画による漫画『孤独のグルメ』は単行本第一巻分が1994~1996年にかけて『月刊PANJA』で連載された後、ネットを中心として盛り上がりを受けて、『SPA!』誌上で2008~2015年まで単行本第二巻分が不定期掲載されました。2017年に谷口ジローが死去したため続編が描かれることはありませんが、この前後で久住昌之は食を題材とした様々な漫画原作とエッセイを発表しています。そのどれにも共通した要素――「孤高にものを食べるという行為こそ、最高の癒し」――があります。これらは、大袈裟にいえば、夏目漱石や池波正太郎の諸作品に代表されるような、人生のあれやこれやを食と関連づけてどう描写するかという、日本文学の流れの上に存在するのではないでしょうか。
そこで、『劇映画 孤独のグルメ』を解説しつつ、食をテーマとした他のドラマや、久住昌之作品における食と文学性について語るような放送を行います。
〇藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄の作品評論・解説本の通販をしています
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合わせてお楽しみ下さい。
さて、本日のブロマガですが、先日の放送のまとめとして、『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』について書かせて下さい。ネタバレというか、後半の展開に触れますのでご注意下さい。
●リドスコにしては珍しい続編らしい続編
ある時期まで、リドリー・スコットは自作の続編を作らない監督だと思ってました。アーティストであるリドスコの興味は常に新しい世界観を映像化することにあり、過去作と同じあるいは延長線上の世界観には興味が無いものと思っていたのです。『エイリアン3』の時点でスケジュールが許せば監督したいという意向があったことを知るのは、大分後になってからでした。
その後、リドスコが監督した『プロメテウス』はかなりクセのある『エイリアン』の前日譚でしたし、その続編『エイリアン: コヴェナント』では、マイケル・ファスベンダー演じるアンドロイド、デヴィッド以外のキャラクターは全員死亡していました。『ハンニバル』は他人の監督作の続編でした。『悪の法則』以降の厭世観たっぷりの作風も相まって、素直な続編なんて絶対に作らないぞという意思を感じたものです。
それが『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』では覆されました。ローマ軍の侵攻で妻を喪い剣奴となる主人公ハンノは、中盤で前作主人公マキシマスの息子ルシアスであることが判明します。つまり貴種流離譚です。もう一人の主人公ともいえるアカシウスは、ルシアスの母ルッシラの再婚相手であり、皇帝の命令で他国を侵略するローマの将軍です。マキシマスの要素がハンノとアカシウスに分割されて受け継がれているわけです。冒頭に大規模な戦闘があり、その後はコロッセオでのバトルの間に政治劇が描かれるという構成も前作に倣っています。つまり、リドスコにしては珍しい続編らしい続編です。
●史実よりエンタメ
更に、続編らしく様々な要素がド派手にスケールアップしています。
一番スケールアップしたのは戦闘でしょう。剣奴となったハンノは様々な相手と戦わせられる羽目になるのですが、最初の相手は巨大なヒヒです。……いや、ヒヒにしては毛が無く、獰猛で、巨大すぎます。まるで半人半獣のモンスター、哺乳類版エイリアンのような存在です。リドスコは「南アフリカ共和国のヨハネスブルグで観光客を襲ったヒヒの映像に恐怖を覚えたことが、このシーンを映画に入れるきっかけとなった」そうです(https://jp.ign.com/gladiator-2/71672/news/)。
次にハンノが戦わせられるのはサイなのですが、ただのサイではありません。剣闘士が馬のように騎乗し、自在に操られ、ハンノたちを角でカチあげます。野生動物であるサイをこのように躾けるのは困難を通り越してほとんど不可能だと思うのですが、本作では面白さを優先しています、恐竜に騎乗する『のび太と竜の騎士』を連想してしまったりもしました。
最高だったのは模擬海戦のサメです。
実際にコロセウムに水が貯められ、模擬海戦が行われたことは、ローマの歴史家による記録にきちんと残っているそうです。ローマが大都市として発展した理由の一つに、ローマ水道による豊富な水の供給がありました。水を存分に使えたからこそ、コロセウムに水を張り、模擬海戦が出来たわけです。ローマン・コンクリートという防水技術もありました。地下を通って剣闘士や猛獣が出現する「迫」の機構が作られて以降は水が張られることは無かったそうですが、本作のように深く水を張り、船を使った興行を開催することは、映画のウソとしてまだ許容できます。
しかし、そこにサメがいて、船から落ちた剣闘士をガブガブ食い殺すシーンには、爆笑してしまいました。ローマは海から約25km、地中海で捕まえたサメ(にはみえませんでしたが)をコンクリの水槽に入れてコロセウムに運びこむのは、ワンチャンできると思うのですよ。しかし、海水を張るのは無理でしょう。ローマ水道が成立したのは、高地に沸く淡水は位置エネルギーが大きいからです。位置エネルギーの低い海水を模擬海戦ができるほど大量にコロセウムに運び込むのは、大量の馬車を使ってもほとんど不可能でしょう。淡水に海水魚を入れると浸透圧ショックで死んでしまいますし、かろうじて生き延びても、人間をガブガブ食べられるほど元気でいられるとは考えられません。
海で泳いでいたポニョを水道水に投げ入れる『崖の上のポニョ』と同じ間違いをしでかしているわけです。巨匠は淡水魚と海水魚を混同しがちということなのでしょうか。もしくは、淡水でも生きられるオオメジロザメを紅海やアフリカ沿岸から運んできたのでしょうか? それとも『セーヌ川の水面の下に』のような突然変異体なのでしょうか? ダーウィン進化論以前のローマ市民が「突然変異体」という言葉を使っているシーンを想像するとまた爆笑してしまうのですが、そういえば本作ではグーテンベルクの印刷革命前なのにカフェで新聞を読むシーンがあったのでした。
●史実よりテーマ性
そういった描写はリドスコ映画にありがちです。リドスコには史実や歴史考証を越えてでも描きたいテーマがあるからなのでしょう。
ならばそのテーマはなにかというと、「西欧白人富裕層家父長主義文明の愚かさ」というものになるでしょう。
元々リドスコはキャリアの初めからポストコロニアリズムをテーマとしていました。初の長編である『デュエリスト/決闘者』はポスコロでしばしば引用される『闇の奥』のコンラッドの短編を原作としていましたし、『エイリアン』や『ブレードランナー』も宇宙植民地を背景設定として持っていました。リドスコは物語と同じかそれ以上に世界観を描くことに執心した映画作家ですが、以後のリドスコ作品は女性。アンドロイド・アジア人・黒人・アラブ人……といった、非白人男性の視点を必ず映画に持ち込むこととなります。その意味で、植民地経営に失敗するコロンブスを描いた『1492 コロンブス』はキャリア初期における一つの頂点だと思うのですが、興行的には失敗してしまいました。
『1492 コロンブス』の興行的失敗を、スペクタクル史劇と戦争アクションの合わせ技にすることで解決したのが『グラディエーター』だと思うのですが、一方で「西欧白人富裕層家父長主義文明の愚かさ」というテーマは若干後退してしまいました。だからこそヒットしたのだともいえますが、リドスコとしては虎視眈々とリベンジの機会を伺っていたのではないでしょうか。特に、『悪の法則』以降のやりたい放題偏屈爺期に入ったリドスコとしては、絶対にやりたい。
故に、『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』は、表面上では前作と同じことをやっているようにみえて、実は前作と真逆なことをやっています。
一番の違いは、主人公であるハンノが、植民地として侵略や搾取を受ける側に立っているということです。
本作の冒頭では、史実を捻じ曲げてローマによるヌミディア侵攻が描かれます。ヌミディアがローマ属州になったのは紀元前49年あるいは紀元前25年。カラカラとゲタが共同皇帝として指名を受けたのは209年。200年以上の開きがあります。前作で奴隷友達だったジャイモン・フンスーはヌミディア人という設定で、なぜかヌミディアに二回侵攻していることになるわけですが、リドスコとしては時空を歪ませてでも冒頭で絶対に西欧文明による覇権主義や植民地侵攻を描きたいわけです。遠征直後に「次はペルシャやインドだ」と覇権主義まんまな台詞を皇帝が吐くのも納得です。
ハンノが奴隷としてローマに連行される際、ローマの凱旋門でオオカミの乳を飲むロムルスとレムスの像をみて、「動物の血で育った双子」「この街は病んでいる」という台詞を吐くのも象徴的です。更に、ローマ市民は剣闘士興行というサーカスに夢中であり、市外に住んでいる追放民は天然痘です。つまり、ローマは(史実通り)文明の最盛期を過ぎ、滅亡の兆しを市民のみならず奴隷であるハンノすら認識しているのです。
更に、後半でもう一人の主人公といって良いくらい存在感を増すデンゼル・ワシントン演じるマクリヌスは、元奴隷のムーア人という設定です。マクリヌスは実在の人物で、実際にムーア人で、カラカラ帝の暗殺後に皇帝に即位しましたが、騎士階級出身で上流階級としての教育を受け、奴隷ではありませんでした。
リドスコは本作を監督するにあたって『タイタス・アンドロニカス』を参考にしたそうです。『タイタス・アンドロニカス』はローマの将軍タイタスによって息子を殺されたゴート族の女王タモーラが、ローマ皇帝の妻となってタイタスに復讐するお話でした。策略を練り、タモーラを助ける愛人エアロンがムーア人という設定であり、手練手管を通じてローマの権力中枢に食い込み復讐を果たすムーア人というキャラクター像が本作のマクリヌスに受け継がれたのでしょう。また、「西欧白人文明の権力に食い込み復讐を果たす黒人」というキャラクター像は、『アメリカン・ギャングスタ―』でデンゼルが演じたそれでもあります。
特に、デンゼル・ワシントンがNY訛りの英語を話し、没落したローマを救うために「ローマン・ドリームをもう一度」というスローガンで権力をつかむ姿は意味深です。ハリウッド映画はどの国を舞台にしても英語で演じられるものですが、本作は特に「いま」のアメリカを意識しているようにみえるからです。全体ではなく個人の享楽のために権力をもてあそぶリーダー、明らかに国力や威信が減退する中で「Dream」や「Great」を合言葉に成り上がる政治家、搾取と分断によって成り立つ贅を尽くしたパーティー……
違和感があるのは、最近のリドスコにしては珍しく主人公がそれなりの勝利をつかんでそれなりのハッピーエンドで終わることですが、三部作の二作目ということなら納得もしてしまいます。
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