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2016年10月の記事 5件

マクガイヤーチャンネル 第91号 【科学で映画を楽しむ法 第2回:『コンテイジョン』――科学的正確さと映画的面白さの両立―― その1】

さて、今回のブロマガですが、今回こそ「科学で映画を楽しむ法」第2回として『コンテイジョン』について書かせて下さい。 科学的正しさは映画的面白さと対立する――そう考えられがちです。 例えば『スター・ウォーズ』では、真空のはずの宇宙空間で、宇宙船の推進音やビームの発射音や爆発音が鳴り響きます。無重力である筈の宇宙空間なのにきっちり上下が決まっていたり、ファルコン号にもX-ウイングにも回転部が無いにも関わらず艦内にはきっちり重力が発生していたりします(スター・ウォーズ世界に「重力井戸」の設定ができたのは旧三部作完結後の1989年です)。 これは、『スター・ウォーズ』が科学的裏づけに支えられたハードなSF映画ではなく、片手に剣、片手に美女でカッチョ良い宇宙船に乗って銀河を又にかけて冒険しまくるというスペースオペラを映画で実現しようという作品だったからです。『スター・ウォーズ』は科学的正しさよりも、『フラッシュ・ゴードン』のようなスペースオペラ的爽快感や格好よさを重視する映画でした。 仮に『スター・ウォーズ』の宇宙シーンを無音にしたら、面白さは半減してしまうでしょう。 例えば『シン・ゴジラ』は、政治的手続きや自衛隊の作戦行動についてはリアリティ溢れる映画です。しかし、作中に出現するゴジラは(他作品のゴジラと同じく)生物学的にありえない存在です。「上陸したら自重で歩けない」どころか骨折してしまうだろうし、エネルギーを得るために共生している細菌は元々どこに棲んでいたのか、そもそも「まるで進化だ!」と呼んでいるあの形態変化は変態なのか「進化」なのか…… しかし、映画の面白さという観点でいえば、日本にありえない危機をもたらすための、生物学的にありえないゴジラこそが正しいのです。ゴジラが生物学的に「比較的ありえる」存在だったエメリッヒ版『GODZILLA』がどれだけつまらなかったか。ゴジラが普通のビルより小さく、ミサイルで倒される存在だったら、あれほど面白くはならなかったでしょう。 多くの映画では、映画的面白さを優先するために、科学的正しさを犠牲にします。当然です。現実ではありえないことを描けることこそが、映画の利点なのですから。 しかし、これはリアリティを犠牲にするという意味ではありません。

マクガイヤーチャンネル 第91号 【科学で映画を楽しむ法 第2回:『コンテイジョン』――科学的正確さと映画的面白さの両立―― その1】
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Dr.マクガイヤー

「ゲロとレイプがある映画は傑作である」と言い切るアラフォーオタク。 ボンクラ映画をこよなく愛する正体不明の冒険野郎。番組中の白衣は自前だ。 番組が気になった人はブログを訪れてみてもらいたい。きっと目眩がすることでしょう。 「冒険野郎マクガイヤーブログ http://d.hatena.ne.jp/macgyer/

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