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「悪癖」に悩まされている人は多いでしょう。夜中の間食、ダラダラSNS、寝る直前のスマホ、無意味な先延ばしなどが典型例でして、そんな悪癖に飲み込まれるたびに、

 

「やめようと思ってるのに、またやっちゃった……」

「もうこれは“体質”なんだろうな……」

「なんかもう、壊れてる気がする……」

 

みたいな感覚に襲われて困っちゃう人も少なくないでしょう。自分じゃダメだとわかってるのに、なぜか手放せないって問題は誰にでもひとつはあるもんです(私の場合は「早食い」っすね)。で、ここで悪癖を繰り返すたびに、たいていの人は「自分はこういう性格だから」「きっと一生治らない…」とか思いこんで、どんどん病んでいくわけです。

 

で、この問題を解決するために、Dラボでもいろんなテクニックが紹介されてるわけですな。

 

  • イフゼンプランニングを使おうぜ!
  • セルフコンパッションを鍛えようぜ!
  • 環境をデザインしようぜ!
  • 認知の歪みを修正しようぜ!
  • 行動の摩擦を調整しようぜ!

 

もちろん、これらの方法には科学的な裏づけがありますんで、ちゃんとやれば何がしかの効果は得られることでしょう。実際、私もこれらのテクニックにはめっちゃ恩恵を受けております。

 

が、ここで意外と指摘されないのが、「ある“根っこ”が整っていないと、テクニックは上手く機能しない」ってことです。「悪癖が修正できない!」って問題の根っこには、ある共通した特性がありまして、そいつをフィックスしていかないと、せっかくのイフゼンプランニングやセルフコンパッションの効果が弱まったり、すぐに影響力が下がっちゃったりしかねないもんで。

 

というわけで、今回からはじまる本シリーズでは、「悪癖の根っこにある問題」を掘り下げつつ、具体的な対策を見ていくことにします。おそらく、Dラボの知識をまじめに使っている人にほど、大事なポイントになるんじゃないでしょうか。

 

 

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『「自分らしく生きる」とは実際にどういうことなのか問題』の続きです!(#1)

 

前回のエントリでは、「本当の自分を感じられる状態=自己一致」ってテーマを扱ってきました。自己一致ってのは“本当の自分”を感じられる主観的な感覚のことでして、そのためには3つの条件を満たす必要があるよーってことですな。

 

そして今回は、いよいよ「どうすれば自己一致の感覚を取り戻せるのか?」という「実践編」に入ってみましょう。もちろん、すぐに完璧に一致できるわけではありませんが、少なくとも「真実味のある自分に戻るための道順」はありますんで。研究や臨床の知見をもとに、今回はそのプロセスを3ステップに分けてご紹介しましょう。

 

 

 

ステップ1:自分にとって“大事な価値観”を見つける

まず何よりも大事なのは、「自分はどんな人間でありたいか?」を明確にすることです。このブロマガをお読みの方であれば「価値観を探せ!」みたいなアドバイスは聞き飽きたことと思いますが、まあそれだけ何度も取り上げざるを得ないほど重要なポイントなのだってことで、ご容赦ください。

 

で、なんで価値観が必要なのかと言いますと、そもそも「自己一致」ってのが、自分の行動や選択が「自分らしさ」と合っていると感じられる状態のことだからです。つまり、根っこの「自分っぽさ」を理解していないと、自己を一致させようがないってことですね。ここはわかりやすいポイントでしょう。

 

 

が、ここで問題になるのが「自分らしさ」って何と聞かれて、すぐ明確に答えられる人あまり多くないところです。よくあるのが、

 

  • 「なんとなく…人に優しくしたいとは思ってる」
  • 「正直でいたい気はする」
  • 「でも、どういうときに自分がブレてるのか分からない」

 

ぐらいのふわっとした自己認識でして、この状態では、たとえ「うまくやれた」と思っても、それが本当に「自分らしさ」に沿った行動だったかどうか、自己一致の実感が持てなくなっちゃうんですよね。それゆえに、自己一致の第一歩ってのは、「自分はどんな価値観を大事にしているのか?」を明確にすることになるわけです。

 

ということで、ここから自分の価値観を掘り出すために使える方法をいくつか見てみましょう。といっても、自分の価値観を深掘りする方法は過去に「パレオチャンネル」で何度もやってるんで、ここではACTのようなガチの心理療法で使われる「簡易版の価値観発見メソッド」をご紹介します。わりと手軽なものを選んでみたんで、「ちょっと試してみるか……」ぐらいのノリで取り組んでみるのがお勧めです。

 

 

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さて、今回から以下のような問題を考えてみましょう。

 

  • 自分では人当たりよく振る舞ってるはずなのに、なぜか「冷たい人」と言われる

  • 正直に話したつもりが「きつい言い方だった」と言われる

  • 「他人思い」だと思っていたのに、まわりからは「自己中」と思われていた

 

このような「自分の思ってる自分」と「他人が感じてる自分」にズレが起きるような問題を、誰もが一度は経験したことがあるんじゃないでしょうか。「自分が思てたんと違う!」ってモヤモヤしちゃうって話ですな。

 

非常に「あるある」なお悩みだと思いますが、実はこのモヤモヤの原因については心理学の世界で一定の答えが出てまして、それが「自己一致」であります。この考え方がどんなものかをざっくり言うと、

 

  • 「理想の自分像」と「実際の行動」が一致しているとき、人は“本当の自分”とつながっている感覚を持つ!

 

みたいな感じです。たとえば、「自分は正直な人間だ」と思っている人が、きちんと正直にふるまえていれば、心の中でスッと一本筋が通ったような感覚になれるじゃないですか。これが「自己が一致してる状態」であります。

 

が、逆に「正直な自分でいたい」と思ってるのに、どこかでごまかしたり、見栄を張ったりしてしまったら……そのとたんに内側はザワつきはじめるでしょう。これが「自己が一致してない状態」でして、このような「自己像」と「現実」のギャップが広がれば広がるほど、人は不安になったり、自己嫌悪に陥ったりしやすくなるって考え方ですな。この問題については『社会は、静かにあなたを「呪う」』2章でも書いてますんで、興味ある方はチェックしてみてください。

 

で、近ごろドイツのヒルデスハイム大学が発表した論文(R)が、この「自己一致」問題を深掘りしてくれてて良い感じです。こいつは現代心理学の大事なポイントなので、ぜひ内容を押さえておきましょう。

 

この研究は、近年熱いテーマである 「自己一致」と「真の自己感覚」 の関係を理論的に整理したもので、もともと心理学では、「自分が思っている自分(自己像)」と「行動が一致しているとき、人は『本当の自分である』と感じやすい」という仮説があったんですよね。これが上にも書いた「自己一致仮説」です。

 

しかし、困ったことに、これまでの研究では、

 

  • 自分に合った行動をしているはずなのに、本当の自分を感じられない!
  • ポジティブな行動のほうが無条件に本当の自分を感じる人が多い!

 

みたいに、仮説どおりではない実験結果もたくさん出てたんですよ。となると、おそらく「自己一致仮説が成立するためには、なんらかの条件がそろってる必要があるんだろうなぁ……」ってことになりまして、そこでこの研究チーム、「どんな条件がそろったときに自己一致が成立するの?」ってところを分析したんですよ。つまり、この条件を理解することで「どうすれば自分が無理せずラクに生きられるのか?」「どんな行動が長期的な満足感につながるのか?」みたいに、日々の幸福度を高めるための指針を得やすくなるわけですね。

 

 

 

「親切なつもり」だったのに「不親切」と言われた女性の話

では、ここで研究チームが何を言っているのか? 自己一致の条件にふみこむ前に、あらためて「自己一致が壊れると何がマズいのか?」ってところを知っておきましょう。

 

まずわかりやすい事例として、この論文では、具体的にメグさんという女性の体験談が紹介されております。なんでも、メグさんは、かつては自分のことを「人に親切で、誠実で、やさしい性格」だと思っていたんだそうな。いわゆる「いい人でありたい!」みたいな理想像が、彼女の中にはあったわけですね。

 

ところがある日、彼女は第三者からこんなことを言われます。

 

「メグって、なんか冷たくて、あんまり感じ良くないって言ってた人がいたよ」

 

これを聞いた彼女は、「親切さ」のアイデンティティが否定された感覚を覚え、強いショックと混乱に襲われてしまったらしいんですな。

 

このときに彼女が感じたのがまさに「自己一致の崩壊」であります。理想の自分と現実の自分がまったくかみ合ってないのを知ったことで強烈な不安感に襲われ、あたかも世界が足下から崩れ落ちた感覚になってしまうわけですね。いわゆるアイデンティティ・クライシスってやつですな。

 

このように、自己一致がなくなって本当の自分からズレた状態になると、いろんな困りごとが起きてきます。たとえば、

 

  • 常に自分を演じているような感覚になる

  • 自己評価が不安定になる(「私は本当にいい人なんだろうか?」みたいな不安にさいなまれる)

  • まわりの評価がやたら気になってくる

  • 無理に「理想の自分」に合わせようとして疲れる

 

みたいな現象が出てくる感じっすね。要するに、「自分はこういう人間である」と信じたい気持ちと、「いや実は違うかも……」という現実とのあいだで、ずっと綱引きしてるような状態になるわけです。そりゃ、メンタルはやられますな。

 

 

 

人はなぜ“自分に都合のいい真実”しか信じられないのか?

それならば、「なるほど!だったら、もっと正直に自分の姿を見ればいいんだな!」と思うかもしれませんが、話はそう単純でもありませんで、人間ってのは、基本的に「自分に都合のいい自己イメージを維持したい」ってバイアスが働く生き物なんですよ。うっすらと「自分ってイヤなやつかも?」と気づいていたとしても、ついつい「やさしい自分」「賢い自分」「好かれている自分」みたいな理想像を、なんとか守ろうとするのが人間ってものなんですな。

 

皆さんも、おそらく似たような経験はあるでしょう。自分では「やさしい」と思ってるのに、他人からは「冷たい」と言われて、「いや、そんなはずは……」と無意識に否定したくなってしまった……みたいなケースですね。このとき脳内で起動しているのが「自己奉仕バイアス」ってやつでして、こいつは「実際よりもちょっとポジティブに自分を捉えたがる傾向」を意味しております。

 

これは、数あるバイアスの中でも特に研究例が多いものでして、たとえば過去のデータによると、

 

  • 人の85%以上は「自分は平均よりも運転がうまい」と思っている

  • 多くの人が「自分は他人よりも道徳的」と信じている

  • ほとんどの人が「自分は客観的に物事を見られる」と思い込んでいる

 

という報告が出てたりします。要するに、私たちは基本的に“思い上がり”が強い生き物だってことですね。

 

まあ、これはある意味で仕方がないことでして、もし私たちが本当に現実ばかり見ていたら、「自分はダメだ」と思いすぎると、うつっぽくなったり不安が強くなったりしちゃうかもしれませんからね。たとえば、仕事での失敗をいつまでも引きずって自己否定したり、 他人と自分を比較して延々と落ち込んだりみたいなことですな。なので、多少の思い上がりは、心の安定に必要な免疫システムなのだと言えるでしょう。

 

ただし、このバイアスには“副作用”がありまして、この「ちょっと都合よく自分を見ていたい」という欲求が強すぎると、自己一致を妨げる要因にもなっちゃうんですよね。“本当の自分”を直視するには、時に「痛い現実」を受け入れなきゃいけないんだけど、自分の信じていた“理想の自己像”が否定されると、多くの人は以下のような行動を取ったりします。

 

  • 否認する:「あの人がたまたまそう思っただけ」「相手の受け取り方が悪いだけ」 「自分の本質とは関係ない」 「そんな評価は当てにならない」など。

  • スルーする:「気にしないでおこう」「考えるだけムダだ」 「忘れたほうがラクだ」 「そのうちどうでもよくなる」など。

  • 言い訳する:「でも自分は悪気がなかったし…」「状況が悪かっただけ」 「あの時は仕方なかった」 「誰だって同じ立場ならそうする」など。

 

いずれも、「あるあるだなー」って感じでして、これらはすべて心理学的にいうところの防衛機制の一種。「自尊心を守るために、不快な現実を見ないようにする脳の仕組み」なんですけども、この状態が続いていたら、

 

  • 他人のフィードバックを一切受け入れない

  • どこまでも「自分は間違っていない」と思い込む

  • 結果的に、自己像と現実がどんどん乖離していく

 

みたいな状態にハマってしまうのは間違いないでしょう。防衛機制そのものは悪いことじゃないものの、それに頼りすぎると「本当の自分」がどんどん見えなくなるって副作用があるわけですな。

 

 
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著者イメージ

鈴木祐

1976年生まれ。新宿区在住のライター/編集者。パレオダイエットにくわしい人。普段はチャイナ服ではありません。ライター歴は18年ぐらい。科学の知見を自分のカラダで試していくのが趣味で仕事。

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