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2025年10月の記事 15件

フードノイズの科学#2「GLP-1を人力で再現しよう!」

     「フードノイズの科学」の続きです!(#1)   このシリーズでは、近ごろ栄養学の世界でよく言われるようになった「フードノイズ」をテーマに、   「なんとなくお菓子をつまんでしまう…」 「気づいたら冷蔵庫を開けている…」   みたいな問題がなぜ起きるのか? そして、その問題にはどう立ち向かえばいいのか? ってところをまとめております。シリーズ第1回でも説明したとおり、この“なんとなく食べちゃう”の原因の多くは意思ではなく環境の設計ミスから生まれてますんで、そのあたりをなんとかしようって話ですね。つまり、脳が“食べろ”と命令する前に、そもそもそのスイッチを押させないようにするのが近道だよー、みたいな話っすね。       「GLP-1受容体作動薬」を飲む時、あなたに何が起きているのか? では、具体的にフードノイズの問題をどうすべきかってことで、まずは「GLP-1受容体作動薬」の話を簡単におさらいしておきましょう。前回も触れたとおり、「GLP-1受容体作動薬」は糖尿病(2型糖尿病)の治療のために開発された薬で、セマグルチド(オゼンピック/リベルサス)、チルゼパチド(マンジャロ)などが代表例。こいつを飲むと、「頭の中から食べ物の思考が消えた!」みたいに感じる人がめっちゃ多いんですよね。つまり、「GLP-1受容体作動薬」にはフードノイズを消す作用があり、これがダイエット効果として働いているのではないか、と。   そう考えると、   「GLP-1受容体作動薬」なぜ、これほどまでに“フードノイズ”を消してしまうのか? そして、薬に頼らずにこのメカニズムを再現することはできるのか?   ってポイントを考えることができれば、フードノイズの対策にもなるんじゃないかと思うわけですね。ということで、まずは「GLP-1受容体作動薬」の働きを、脳 × 腸 × ホルモンという三方向から整理してみましょう。     1. 脳で起きていること:GLP-1薬がドーパミンのボリュームを下げる ご存じのとおり、人間の脳は「食べ物はごほうびだ!」として処理しております。特に、側坐核(そくざかく)という領域では、甘い・脂っこい・香ばしいといった刺激でドーパミンが分泌され、「もっと欲しい!」という信号を強化するんですよね。   GLP-1薬は、この報酬ループのボリュームを少しずつ絞る働きを持っており、あるMRI研究(R)では、セマグルチドを投与した被験者は食べ物の画像に対する脳の反応が弱まることが確認されてたりするんですよ。要するに、GLP-1薬ってのは、脳が感じる「食べ物の価値」を下げているわけですね。     2. 腸で起きていること:満腹ホルモンのシンフォニー GLP-1は、もともと腸で作られるホルモンのひとつ。食事を摂ると腸管L細胞がGLP-1を分泌し、血糖を安定させつつ満腹中枢を刺激してくれるんですね。   薬としてのGLP-1受容体作動薬は、このシグナルを数十倍に増幅する働きを持ってまして、その結果として、脳の視床下部で「もう十分だ!」という満腹メッセージが長い時間続くようになるんですよ。さらに、このシグナルには、   胃の排出をゆっくりにして、食後も満腹感を長続きさせてくれる。 インスリン分泌を促進し、血糖変動を抑えることで、「食後の急上昇→空腹クラッシュ」というドーパミンの波を鎮めてくれる。   みたいな働きもあって、こちらも非常にうれしいポイント。言い換えれば、GLP-1薬ってのは“腸が脳を落ち着かせる”状態を人工的に再現しているのだと言えましょう。     3. ホルモン軸で見える「静けさのメカニズム」 GLP-1薬の最大のポイントは、 フードノイズを消すのではなく、「シグナルの順序を整える」ことであります。本来の食欲の働きってのは、   グレリン(空腹ホルモン)が上昇する 食事でGLP-1+レプチンが上昇して満腹シグナルを送る ドーパミンが「よくやった」と快感で締めくくる   みたいな流れになってるんですよ。しかし、現代の環境では、加工食品・ストレス・睡眠不足などの原因でこの流れが崩れてしまい、「グレリン優位 × ドーパミン暴走 × GLP-1低下」って状態が起きるんですね。   その点で、GLP-1薬は、上記の問題を一気にリセットする働きを持ってまして、そのおかげで「食べろ!」というノイズが下がり、「もう十分でしょう」という気分にリセットされるんですね。これがGLP-1薬で体重が減るメカニズムのひとつになっております(まあ、かといって「ちょっと痩せたいなー」ぐらいの人がGLP-1薬を使うのはお勧めしませんが)。    

筋トレは基盤が9割 #5「20週間の『筋力アップロードマップ』」

      「筋トレは基盤が9割」の続きです!(#1,#2,#3,#4)   このシリーズでは、近年の研究で言われる「筋トレのBig Rocks=大きな岩」って考え方をもとに、「筋力を爆上げするために最も大事な要素」をピックアップし、重要なものから順番に解説しております。   で、前回までで重要な要素の説明は終わったので、今回はすべてをひっくるめて、筋力をアップさせるための具体的な実践ロードマップをチェックしてみましょう。筋力アップに欠かせない要素がわかったとしても、ちゃんとした設計図がないと、なかなか取組みづらいですからね。   ということで、このシリーズの最終回として、「20週間の筋力アッププログラム」をご紹介します。これまで紹介してきた“筋力アップの三大要素”を、ひとつの現実的な設計図としてまとめていきますんで、「とにかく機能的で強い体を作りたい!」みたいな方はお試しください。       20週間の「筋力アップロードマップ」 このプログラムは、できるだけ「筋力アップ」をスムーズに行えるように設計されております。ここまで説明してきた、筋力アップの重要な要素をふまえながら、20週間のロードマップを考えてみると、だいたいこんな感じになります。   フェーズ期間メインの目的トレーニングの特徴 フェーズ1:導入期 1〜2週 体を慣らす・ケガ防止 軽めの重量でフォーム習得を心がける。ボリュームは控えめで。 フェーズ2:筋量期 3〜8週 筋肉の“素材”を増やす 中〜高ボリューム、やや軽めの負荷。筋肥大を重視する。 フェーズ3:移行期 9〜12週 筋肥大→筋力への橋渡し ボリュームを減らし、重量を上げていく。 フェーズ4:ピーキング期 13〜18週 最大筋力を引き出す 高重量・低ボリューム。週2〜3回は90%以上の重量。 フェーズ5:試験・調整期 19〜20週 疲労を抜いて最高の1RMを出す ボリュームを減らし、神経系を整える。      

フードノイズの科学#1「『食べたい!』どこまでは脳の誤作動か?」

    近ごろ、海外の栄養業界でよく耳にするワードが「フードノイズ」であります。これは「食べ物のことが頭から離れない!」「つねに“何か食べたい”という思考が脳内でループしてしまう!」みたいな現象のことで、たとえば、   朝から晩まで「次は何を食べよう?」と考えてしまう デスクにあるお菓子が気になって仕事に集中できない ストレスがかかると、急にジャンクフードの映像が頭に浮かぶ 夜中になると、冷蔵庫の中身を思い出して眠れない   みたいな状態が典型例です。こういった頭の中で鳴り響く“食べ物の声”みたいなものを、フードノイズと呼んでいるわけですな。   まあこういった現象は昔からあったんですが、近年よく言われるにようなったのは、「GLP-1受容体作動薬」が一般的になってきたからです。ご存じのとおり、GLP-1受容体作動薬ってのは、糖尿病や肥満の治療に使われるホルモン製剤で、最近では「マンジャロ」などの商品が有名ですね(厳密に言えば、マンジャロはGLP-1とGIPという2つのホルモンの作用を併せ持ってますが)。もともとこの薬は、腸から分泌されるGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)というホルモンを人工的に活性化するもの。GLP-1ってホルモンは、本来は腸から脳に「もう十分食べたよ」と信号を出す働きを持っていまして、これを薬として投与すると、   ・胃の動きをゆるめて満腹を長く保つ ・脳の報酬回路にブレーキをかける ・食への思考そのものを弱める   って変化を得ることができるんですな。そのため、GLP-1受容体作動薬が流行ったことにより、SNSなどで「薬を使い始めたら、食べ物の思考が消えた!」という報告が続出。ここから脳のなかを駆け巡る思考を“フードノイズ”と名づけ、こいつを抑えることこそが、現代人の食べすぎをやわらげるカギだと考えられるようになったんですな。まあ、これはあくまでダイエットのサポートにしかならず、薬をやめた途端にフードノイズが戻る人も多いんですが。       「フードノイズ=食べたい病」ではない ここで大事なのは、フードノイズってのは、単に「食欲が強い」という話ではないってところです。フードノイズってのは、食べすぎること自体よりも、“食べ物を考えずにいられない”って状態にこそ問題があるんですよ。   なので、多くの栄養学者は、フードノイズを「食物キュー反応性(Food Cue Reactivity)」として表現しておられます(R)。これは、食べ物を目にした・匂いをかいだ・考えた、というその瞬間に、脳が「食べろ!」と反応してしまうことを意味しております。   この時、私たちの脳の中では報酬系ネットワークが暴走をはじめてまして、特に「側坐核」と呼ばれる部位が活性化することが知られております。ここは「食べたい!」という快楽のスイッチで、   食べ物の匂いをかぐ 映えるスイーツ写真を見る ストレスで落ち込む   といった刺激を受けることで簡単に活性化し、脳が「この刺激がないと、幸福になれない!」と思い始めるんですよ。つまり、フードノイズによって起きる「食べたい!」って欲求は、空腹ではなく報酬系の暴走だってことですな。本能ではなく、情報とストレスが作った“幻の空腹”であります。   このメカニズムを、もうちょい掘り下げておきましょう。食べ物の写真を見た瞬間、あなたの脳の中では以下の3つの領域が同時に点灯します。   部位役割例えると 側坐核 「報酬のスイッチ」──“食べたい!”気持ちをブーストさせる 欲望のアクセル 前頭前野 「理性と抑制」──“今はやめよう”を冷静に判断する 欲望のブレーキ 扁桃体 「感情の記憶」──“あのケーキおいしかった”を覚えている 欲望の記録係   この3つがバランスよく働いていれば、「おいしそうだけど今はやめておこう!」と冷静に判断できるんですが、ストレス・睡眠不足・情報過多などでこの回路が乱れると、アクセル(側坐核)だけが暴走し、ブレーキ(前頭前野)が効かなくなるって現象が起きるわけです。いったんこうなると、不健康なドカ食いが一気に止められなくなるんですよね。    

「性格を変えて遊ぼうぜ!」#6「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)から性格を捉え直す」

     「性格を変えて遊ぼうぜ!」の続きです!(#1,#2,#3,#4,#5)   このシリーズでは、ジャーナリストのオルガ・カザンが、最新のパーソナリティ研究をもとに行った「性格いじり」実験をベースに、いかにすれば自分の性格を変えていけるのかをまとめております。でもって、前回ですべての性格実験の説明を終えたので、今回は“総まとめ”として、いままでの実験をおさらいしつつ、これまでの手法を実践するためのジャーナリングの方法を見てみましょうー。       自分を少しずつチューニングしようぜ! さて、簡単なおさらいです。オルガ・カザンさんが『Me, But Better』で示したのは、「自分の性格はもう変わらない!」って考え方へのカウンターでした。『社会は、静かにあなたを「呪う」』でも書いたとおり、人間の性格は変わらないと思い込んでいる人は少なくないんですが、ここで彼女は、   性格は、努力ではなく“実験”で変えられる。しかもその変化は、思ったよりも楽しい。   みたいなことを主張しておられます。つまり、カザンさんの主張ってのは、一言で言えば「自分を少しずつチューニングしようぜ!」みたいにまとめられるでしょう。心理学のビッグファイブ──外向性・協調性・勤勉性・開放性・神経症傾向──をそれぞれ実験対象にし、日常の中でどこまで性格を“適応させられるか?”が大事だってことですね。   ということで、このシリーズ最終回では、ここまでの全ての実験を振り返りながら、「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)」との関係性と、皆さまが今日から使える“性格アップデート日記”をチェックしてみましょう。   まずはカザンさんが行った5つの実験を振り返ってみると、こんな感じになります。   ① 外向性を高める:パーティを主催してみた 超内向的だったオルガさんは、「人との交流で何が起こるのか」を確かめるため、あえて自分でパーティを開催。その結果、緊張はMAXだったものの、終わってみると気分が高揚し、「人と話すと幸福度が上がる」という研究を実感したそうな。つまり、外向性とは“才能”ではなく“行動による筋トレ”だってことでして、たとえ内向的でも、少しだけ社交的に振る舞うことで幸福感が上がるということになりましょう。   ② 神経症傾向を減らす:瞑想アプリに挑戦 不安と心配に振り回されていたオルガさんは、ブラウン大学のジャド・ブリューワー博士が開発した「Unwinding Anxiety」ってアプリを実践。毎日のように呼吸を観察し、感情の波がきても“ただ眺める”練習を続けたところ、「不安をなくす」ことはできなかったものの、「不安に巻き込まれず観察できる自分」を見つけたんだそうな。つまり、不安を消そうとするのではなく、距離をとる技術(デタッチメント)が心を軽くするってことですな。   ③ 開放性を広げる:サーフィンと恐怖の対決 未知への好奇心を高めようとして、カザンさんはサーフィンをチョイス。「ボードが頭に当たったらどうしよう」「サメに噛まれたら…」といった恐怖に包まれまくったものの、実際に海に入ると、恐怖の向こう側に“生きている実感”が待ったとのこと。この経験を通して、彼女は「開放性とは恐怖と共存する力」だとの理解にいたっております。未知を避けることは安全だけど、恐怖の中にしか“新しい自分”は生まれないってことですね。   ④ 協調性を上げる:怒りを「計画」に変える もともとオルガさんは短気だったため、「イラッとした瞬間にどう反応を変えるか」をテーマにして実験を実施。心理学者のライアン・マーチンが提唱する「怒り→計画切り替え法」を応用し、「誰かがミスをしたときには、“何を改善できるか”を考える」と自分に課したそうな。それによって最初は爆発寸前の日も多かったものの、数週間後には「他人の意図を想像する」癖がつき、関係のストレスが激減。怒りを抑えるのではなく、怒りを“理解”に変えるスキルこそが協調性の本質だと気づいたらしい。   ⑤ 誠実性を鍛える:未来を先取りする思考法 最後のテーマは誠実性で、オルガさんは「SNSを開く→後悔」というパターンを断ち切るために、行動前に“未来の自分”を思い浮かべる訓練を実施。たとえば、「このままダラダラしたら、明日の朝にどんな気分だろう?」あるいは「今少し頑張ったら、夜の自分はどう感じるだろう?」みたいに考えるトレーニングを積んだところ、目先の誘惑に強くなり、余計なワインのおかわりも自然と減っていったそうな。これはエピソード未来思考と呼ばれて、個人的にもナイスな介入だと思っております。    

筋トレは基盤が9割 #4「補助と小技」

      「筋トレは基盤が9割」の続きです!(#1,#2,#3)   このシリーズでは、近年の研究で言われる「筋トレのBig Rocks=大きな岩」って考え方をもとに、「筋力を爆上げするために最も大事な要素」をピックアップし、重要なものから順番に解説しております。   で、前回までで筋力アップに必要な3大要素の説明は終わったので、今回は筋トレ好きがついこだわりがちな「補助と小技」の効果のほどを見てみましょう。       「もう十分」なのに、なぜ人は“余計なこと”をしたがるのか? トレーニングを続けているうちに、「このままでいいのか?」という不安に襲われたことがある人は多いはず。フォームは安定してきたし、扱う重量も昔より上がったんだけど、鏡を見ても劇的な変化はないし、SNSでは他の人のほうがガンガンに成果を出してるっぽいけどなぁ……みたいなお悩みですね。自分ではがんばってるのに成果が感じられないってのは、トレーニング“あるある”でしょうね。   で、そんなときに多くの人がやりがちなのが「何かを足す」って解決策であります。たとえば、   「もう少し細かいフォーム修正をしよう」 「RIR(Reps In Reserve)法を試してみよう」 「最近話題のアイスバスを導入してみよう」 「スクワット後にブルガリアンスクワットも追加してみよう」   みたいな感じでして、かくいう私も似たような発想で筋トレに取り組んでいた時期がありました。ちょっと停滞を感じると、「何かが足りないのでは……」って気持ちになっちゃうのは、人間なら仕方ないことですからね。   が、筋トレの研究をいくつも見ていると、どうやらこれらの“追加”は9割の人にとって必要ないっぽいんですよ(あくまで私の体感から出た数字ですが)。もっと正確に言うなら「やってもやらなくても大差がない!」ってことに気づいちゃったんですよね。   というわけで、ここまでのシリーズで説明してきた三大要素(努力・負荷・頻度・プログラム設計)さえちゃんとできていれば、ぶっちゃけあなたの筋力はガッツリ成長するはず。なので、今回お伝えする要素は、「世の中では大事そうに言われるけど、実は筋力アップにはたいして役立たないもの」だとお考えください。パーソナルトレーナーさんたちなどは「筋トレは速度を変えると良いんですよ!」とか「限界ギリギリのちょっと手前で止めるといいんですよ!」みたいな細かいテクニックを持ち上げまくることが多いんだけど、実際には、ほとんど大差がないことの方が多いんですよね。      

「性格を変えて遊ぼうぜ!」#5「誠実性の実験」

   「性格を変えて遊ぼうぜ!」の続きです!(#1,#2,#3,#4)   このシリーズでは、ジャーナリストのオルガ・カザンが、最新のパーソナリティ研究をもとに行った「性格いじり」実験をベースに、いかにすれば自分の性格を変えていけるのかをまとめております。そこで前回は協調性について見てみたので、今回は誠実性の介入をチェックしてみましょうー。       未来の自分を脳内再生してズボラを直す 「やるべきことは分かっているのに、なぜか体が動かない」「5分だけSNSを見るつもりが、気づけば1時間」――みたいな問題にハマった経験は多くの方にあると思います。「先延ばしの沼」に沈んで抜け出せなくなるような瞬間っすね。   心理学でいう「誠実性」ってのは、計画性・自己抑制・責任感といった“やるべきことをやり抜く力”をまとめたパーソナリティのこと。ビッグファイブの中でも人生のアウトカムを左右しやすい特性のひとつとされてまして、このパーソナリティ特性が高い人は、仕事のパフォーマンスや健康状態が安定しやすく、収入も高くなる傾向が報告されているんですよ(R,R)。一方で、誠実性が低いと「締切ギリギリ」「片づけが苦手」「衝動買いが増える」などの問題が起きやすくなりますんで、人生の基礎体力としてぜひ鍛えておきたい要素と申せましょう。   しかし、勤勉性を上げるのは簡単ではありません。なぜなら「勤勉性を上げるための練習」そのものに勤勉さが必要、というパラドックスがあるからです。そこで有効なのが、未来の自分を映像的にイメージして、今を変えるエピソード未来思考です。   が、ご存じのとおり、このような問題が起きるのは、あなたの意志が弱いからでも、根性が足りないからでもありません。ここ十数年の心理学的な研究を見てみると、やるべきことができない問題の正体は「未来が十分に見えていないこと」だとされているんですよね(ここらへんは「YOUR TIME」で説明しましたな)。これがどういうメカニズムかと言いますと、   人間の脳は「現在バイアス」というクセを持っており、遠い未来よりも“今”の報酬を過大評価してしまうようにできている。 さらに、未来の出来事を思い描くとき、前頭前野と海馬の連携がうまく働かないと、未来の自分を「他人のように」感じてしまう傾向もある。 その結果、未来の損失や後悔がリアルに感じられず、モチベーションの燃料が弱くなる。   みたいな感じです。そのせいで、「今サボると未来の自分がどんな気持ちになるのか?」ってのを具体的に想像できなくなり、結果として“今だけ得をした気分”を優先してしまうってことですな。脳は“リアルに感じられるもの”しかモチベーションの燃料にしづらいため、未来がぼやけているほど目先の誘惑に流されやすくなるわけです。つまり、未来が見えないほど誠実性が下がってしまうのは、脳の構造的な仕様でもあるわけです。   ってことで、オルガ・カザンさんは、この問題を解決するために「未来を感じる力」を鍛える実験を実施。特に個人的にも実用度が高いと思っている「エピソード未来思考(Episodic Future Thinking)」を使った介入を繰り返してまして、これがなかなか面白いんですよ。       「エピソード未来思考」は脳科学的に合理的な方法 「エピソード未来思考」は、端的に言えば「未来に起きるネガティブとポジティブな事象を頭の中で再現する」技法のことであります。単に「将来こうしたいなー」と抽象的に考えるのではなく、五感を使って細部まで具体的に想像するのがポイントでして、たとえば以下のようにイメージします。   夜中の1時、スマホの光で目が乾いている。 背中が重く、心の中で「また今日もやらなかった」とつぶやいている。 明日に回したタスクを思い出し、ベッドの中でため息が出る。   このようにネガティブな想像をすることで「未来の痛み」を生々しく感じられるようになり、目の前の誘惑に対してより強いブレーキが働くようになるわけです。    

筋トレは基盤が9割 #3「期分け・漸進・テクニック」

      「筋トレは基盤が9割」の続きです!(#1,#2)   このシリーズでは、近年の研究で言われる「筋トレのBig Rocks=大きな岩」って考え方をもとに、「筋力を爆上げするために最も大事な要素」をピックアップし、重要なものから順番に解説しております。   つまり、「いかに強くなるか?」って話をずっと書いてるわけですが、ここまで読んできた方はおわかりのとおり、筋力ってのは意外とロマンがない作業だったりします。ひたすら重いものを持ち上げ、地味に繰り返し、体の反応を待つ……って感じで、めちゃくちゃ退屈なプロセスなんですよね。   が、見方を変えてみれば、その「退屈さ」を戦略にさえ変えることができれば、確実に筋力は強くなれるってことでもあります。そこで今回のテーマは、筋力アップにおいて3つ目に大事な「期分け・漸進・テクニック」を見てみましょう。       期分け・漸進・テクニックとは? まずは言葉を簡単に説明しましょう。「期分け・漸進・テクニック」ってのは、簡単に言いますと、以下のような考え方を意味しております。     1. 期分け(ピリオダイゼーション) こいつは、筋トレの刺激に「時期」をつくる方法のことです。 トレーニングを「量を増やす時期」「重さを上げる時期」「休む時期」に分けて、 それぞれの目的に合わせて体を適応させていくのがメインのゴールで、これによって筋力が上がらなくなる状態を防ぎ、長期的により強くなることを目指すわけです。 “冬に土を耕し、春に種をまき、夏に実を育てる”ようなイメージっすね。   2. 漸進(プログレッシブ・オーバーロード) 筋肉にかかる負荷を少しずつ増やしていく方法のことです。 単に重さを上げるだけじゃなくて、「回数」「セット数」「密度(休憩の短縮)」などでも強度を上げていくのがメインのやり方で、体に「これまでより少しきつい刺激」を与え続けて成長を促すわけです。    3. テクニック 動作の精度と効率を高める力の使い方のことです。 正確なフォームは筋力アップに絶対必要で、怪我を防ぐだけでなく、より多くの筋線維を動員できるようになるため、 同じ努力量でより大きな成果を生んでくれますんで。これにより神経的なコントロール能力を上達させるのが大きな目的であります。言い換えると、“同じ力でも、刀をまっすぐ振れば斬れ味が変わる”ような状態を目指すわけです。     ということで、「期分け・漸進・テクニック」の定義は以上です。言ってみれば、前回までの「努力」と「負荷・頻度・量」を車の燃料だとするならば、「期分け・漸進・テクニック」はナビみたいなものだとお考えください。どんなに燃料を積んでいても、ナビが狂っていたら目的地にはたどり着けないですからね。   では、筋トレの“ナビ”をどう設計すれば、最短ルートで強くなれるのかってことで、順を追って見ていきましょうー。       ナビ1.期分け(ピリオダイゼーション) まず最初に押さえたいのが、「ピリオダイゼーション(期分け)」です。簡単にいえば「トレーニングを季節のようにサイクルさせる仕組み」でして、ズールドス博士はこれを「線形」「非線形」「統合型」の3タイプに分類しておられます。     線形の期分け:段階的に重くしていく 最も伝統的なのがこの手法で、俗に線形モデルと言われております。考え方は簡単で、   最初の数週間はボリューム(セット数・回数)を多く、重さは軽めにする。 でもって、徐々にボリュームを下げながら、負荷(%1RM)を上げていく。   みたいになります。たとえば、最初の4週間は「10回×3セット(70%1RM)」を行い、次の4週間で「6回×4セット(80%1RM)」、最後の4週間では「3回×5セット(90%1RM)」をやる……という感じっすね。   この手法のメリットは、シンプルで扱いやすいところで、初心者〜中級者にとても向いております。ただし、単調になりやすいので、長期的には刺激の新鮮さを失うという弱点もありますね。     非線形の期分け:毎週、負荷を切り替える 次に「非線形」モデルですが、こちらは“毎週の天気がコロコロ変わる”タイプのトレーニングを意味します。たとえば、   月曜:重い重量で3回×5セット(強度重視) 水曜:中重量で6回×4セット(バランス) 金曜:軽めで10回×3セット(ボリューム重視)   というように、週の中で重さと回数を変動させるわけです。これによって体への刺激が多様になり、適応の停滞を防ぎやすくなるし、精神的にも飽きにくいのが魅力っすね   あるメタ分析(R)では、非線形モデルは線形モデルより平均して5%ほど強さの伸びが高いとも報告されてまして、ちゃんと精度が高めのデータで効果が実証されているあたりもポイントでしょう。とはいえ、どちらが優れているかというより、「どちらを長く続けられるか」が重要なんで、そこは注意してくださいませ。     統合型の期分け:最強のハイブリッド 上記のポイントをふまえて、私が最も推奨したいのは、線形×非線形のハイブリッドモデルであります。ざっくり言うと、「全体の流れは線形」しつつ「1週間の中では非線形」にするってやり方でして、たとえば、   全体(3〜5か月単位)では:少しずつ重くしていく(線形) 週の中では:日によって刺激を変える(非線形)   みたいな感じです。このような“統合型”は、全体の方向性を持ちながら、日々の変化で飽きや停滞を防ぐことができまして、個人的にはベストなんじゃないかなーと思っております。   個人的には、20週間のプログラムを「ボリューム期 → ピーク期 → デロード」みたいに3ブロックに分けて、それぞれのブロック内では毎週、軽・中・重の日を配置していくのが良いのではないかと思う次第です。「線形でマクロを動かし、非線形でミクロを動かす」って感じで考えておくのがお勧めっすね。   ということで、ピリオダイゼーションの順番を考えると、 まず“量”で筋肉を作り、 つぎに“強度”で神経を鍛え、 そして“休息”でその成果を固定する。   みたいになります。この順番を守るのがピリオダイゼーションの真髄でして、なにせ筋肉も神経も同時には育たないので、「全部一度にやろう」とするとどれも中途半端になっちゃうんですよね。    

筋トレは基盤が9割 #2「負荷・ボリューム・頻度・種目選択」

     「筋トレは基盤が9割」の続きです!(#1)   このシリーズでは、近年の研究で言われる「筋トレのBig Rocks=大きな岩」って考え方をもとに、「筋力を爆上げするために最も大事な要素」をピックアップし、重要なものから順番に解説しております。   で、前回は、筋トレにおいて最も重要な「努力」について触れましたんで、今回は2番目に大事な「負荷・ボリューム・頻度・種目選択」の問題を掘り下げていきましょうー。       筋肉を“デカく”したい人と、“強く”なりたい人の決定的な違い さて、筋トレに関する質問でよく聞かれるもののひとつといえば、「もっとセット数を増やしたほうがいいのかな?」「週4回じゃ少ない?」といった問題であります。これは筋トレを真面目にやってる人ほどぶつかりやすい悩みで、努力家ほど「量を増やすことこそ正義!」みたいな罠にハマりやすいんですよね。   確かに、この考え方は筋肉量アップについては間違いないんだけど、こと筋力アップって意味では別の話。結論を言っておくと、   筋肥大には「量(ボリューム)」が大事である ただし、筋力(1RM)を伸ばしたいなら、量よりも“負荷の質”が決め手である   みたいな感じになるわけです。筋肉量を増やしたいならボリュームを増やすのは最善なのは間違いなく、有名なメタ分析(R)でも、週20セット前後が効率的とする報告をしてますからね。なかなか大変なラインですけども、筋肉を増やしたい人はここまでやっておくと良いでしょう。   ところが、筋力アップだけを狙うときは、実は5セット程度でも十分というデータ(R)が出てまして、これが面白いところですね。つまり筋力アップに関しては、セットを増やせばいいってもんじゃないわけです。   その理由はシンプルで、筋肥大ってのは“量的な刺激”によって筋繊維を太らせる作業なんですよ。その一方で、筋力アップは“神経的な適応”のほうが大事でして、要するに「いかに効率よく筋肉を動員し、力を出せるか?」というスキルを鍛えるトレーニングに近い面があるんですね。だから、量を積み上げるよりも「高負荷を正確に扱う練習」のほうが重要になったりするんですね。   フロリダ・アトランティック大学の有名な筋トレ学者であるマイケル・ズルドス博士いわく、   1RM(1回で上げられる最大の重量)を伸ばしたいなら、90%以上の重量でのトレーニングを定期的に入れろ。   とのこと。これは単なる精神論ではなく、脳と神経の仕組みの話でして、重い負荷を扱うことで「1回の運動で使える筋肉の量」や「神経の反応」が改善され、結果として筋肉が「全力を出す方法」を学んでいくってことですな。    

筋トレは基盤が9割 #1「なぜ細かいテクニックより“大きな岩”が大事か?」

    こんな仕事をしていると、筋トレについていろんな質問を受けるわけです。たとえば、   サプリはどれが最強? プロテインはトレ後30分以内じゃなきゃダメ? 腕立て伏せの手幅を1cmずらすと効きが違う? 筋力が最もつく時間帯は? サウナは週2か週3か? トレ中に飲む水は常温か冷水か?   みたいなやつですね。もちろん、これらの要素を調整するのも無駄ではないんだけど、ここらへんはどれも完全な「小技」。過去の研究によれば、これらの要素をコントロールすることで、多少の差は出ることが確認されてるんだけど、あくまでどれも枝葉のレベルであります。木の幹を太くする前に葉っぱを磨いても大木には育たないんで、まずは筋トレの幹を太くすることを考えるのが先決なわけです。   で、このような筋トレの太い幹を、一部の研究者は「Big Rocks=大きな岩」などと呼んでおります。筋トレの成果は、いくつかの“基盤”となる要素に大きく左右されるため、まずはそこから動かさない限り、どんなに細部を磨いても意味がない、という考え方ですな。   まあ私たちが「小技」に惹かれちゃうのはしょうがないことで、そもそも人間の脳は「努力が少なくて済む方法」に自然と引き寄せられる傾向を持ってますからね。そのせいで、「たった1日5分で腹筋が割れる!」「筋トレの30分後にプロテインを飲むと筋肉が増える!」と聞いたら、つい飛びつきたくなるものなんですよ。これはしかたないところです。   さらに、ここにSNSやYouTubeの情報が拍車をかけまして、「最新サプリ!」とか「最強の回復法!」みたいな刺激的なフレーズのほうが拡散されやすいんですよね。結果として、私たちは“本質”ではなく“小技”に振り回されやすくなるわけです。   ということで今回は、筋トレの専門家が最も重視する「Big Rocks(大きな岩)」の3大要素を見ていきましょう。まずは筋トレの成果を大きく左右する“基盤”となる要素を押さえて、それをまず動かした後で細部を磨きましょう、ってことですな。当たり前ですけど、 プロテインの摂取タイミングを気にする前に、「昨日はしっかり寝たか?」 サプリを探す前に、「先週は何回ジムに行ったか?」 フォームローラーを買う前に、「今日のメインセットに全力を出せたか?」   って感じで、“正しい順序”でトレーニングを行わないと、「大きな岩」は動かないですからね。なにごとも基盤が大事。 ただし、「筋肉を増やすためにに必要なこと」ってのは以前にもやったことがありますんで、ここでは「筋力をアップするにはどうすればいいか?」に的を絞ります。筋トレと言うと、つい「筋肉がどれだけ増えるか?」に意識が向かいがちなんだけど、実際に健康的な生活を送るために必要なのって筋力ですからね。 実際のところ、人間の健康・寿命・生活の質を根本から支えるのは筋肉の力よりも“筋力”でして、近年の研究でも以下の傾向があきらかにされております。 長寿との関連:大規模な疫学研究では、握力や脚力といった「筋力の指標」が、死亡リスクや病気の発症リスクと強く関連することが繰り返し報告されている。筋肉量よりも“力を出せるかどうか”が寿命を左右する因子だと言える。 ケガ予防と生活の質:日常生活のほとんどは「力の出し入れ」でできている。階段を登る、荷物を持つ、つまずいたときに体を支える──これらを安全に行えるかどうかは筋力に直結する。 メンタル面の恩恵:筋トレによる「自己効力感の向上」や「うつ症状の軽減」もよく知られているが、その裏には“実際に体を動かす力がついた”ことによる自信が働いているとも考えられている。 ということで、つまり筋力ってのは、ただの筋トレ趣味の産物ではなく、人生100年時代を支える“保険”そのものだと申せましょう。では、筋力アップに欠かせない要素を順番に見ていきましょうー。     大きな岩1.「努力──最強の基盤」 筋トレについて最もよく聞かれる質問のひとつが、「どんなプログラムが一番効率的ですか?」というものであります。たとえば「スクワットは週に何回が正解か?」「ボリュームはどのくらいがベストか?」みたいなやつですね。もちろんどちらも大事な疑問だし、最適解を探したくなる気持ちもわかるんですが、最新の研究を追いかけていてわかるのは、どんなプログラムも“努力”なしには成果ゼロということであります。   「はぁ?努力?そんなの当たり前じゃん!」と思った人も多いでしょうが、人間は「当たり前すぎること」をすぐ忘れてしまう生き物なので、あらためてここを心がけておくのはめっちゃ大事なんですよ。特に筋トレの世界では、サプリやテクニックの話が派手に取り上げられる分、「結局どれだけ本気を出せたか?」ってポイントがかすみがちになるんで。   ただし、ここで言う「努力」ってのは、「毎回限界まで追い込め!」とか「吐くまでやれ!」みたいな話とは関係がないので、そこはくれぐれもご注意ください。こういった昭和っぽい根性論にもとづいたトレーニングは逆効果になりやすく、毎回トレーニングで限界まで追い込んでしまうと、疲労が蓄積しすぎて継続できませんからね。ここで重要なのは「今日の自分にとってベストを尽くす」というスタンスでして、    

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鈴木祐

1976年生まれ。新宿区在住のライター/編集者。パレオダイエットにくわしい人。普段はチャイナ服ではありません。ライター歴は18年ぐらい。科学の知見を自分のカラダで試していくのが趣味で仕事。

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