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[中田薫]【シリーズ廃墟探訪】拡大、衰退、低迷の典型的温泉地…栃木県日光市藤原『きぬ川館本店』
2013-12-09 01:00220pt中田薫 寄稿記事 【シリーズ廃墟探訪】 拡大、衰退、低迷の典型的温泉地… 栃木県日光市藤原『きぬ川館本店』
下流を背にして左岸の「湯の滝」、右岸の「藤原の湯」が昭和2年に一体化されて形成された鬼怒川温泉。川の両岸約4キロにわたり旅館やホテルがひしめく様は、無秩序なアジアの歓楽街を思わせる。本来は日光国立公園の第二種特別地域に指定される温泉町で、建物の高さや外壁の色、看板などに厳しい制限があるはずだが、そんな自然公園法などまったくおかまいなしにホテルを建設、拡張させてきた結果だ。
また、鬼が怒った如く流れる荒々しい激流を「鬼怒川」と呼び、その豪快な景観で人を集めていた温泉地であったのに、その肝心の鬼怒川も上流に造られたダムの完成以降は水の流れが穏やかになり今や凡百の川。温泉町全体のグランドデザインが描けぬまま、資本主義の競争原理だけで肥大、そして衰退した典型的な温泉地なのである。
多くの客室がリバービューを競い合うように両岸からせり出しているため、川を挟んで互いの室内が丸見えといった建物同士も多いが、むしろ現在の客室の窓から見えるのは閉業した旅館やホテルの残骸。東武鉄道の車窓からもこれらの廃墟群が見えるだけに、鬼怒川温泉の落日ぶりは深刻だ。
とりわけ右岸の会津西街道元湯通り側、旧温泉街は今やゴーストタウン。いずれの宿も古くからの創業で老舗ばかりだが、経年劣化で施設が陳腐化し、後発の大資本ホテルの前に次々と討ち死にしていった。その多くは競争と担保価値維持のために融資を受けて増築・改装を繰り返すも、集客減、売上減で返済不能となり、最後は銀行に見放されて閉業というパターンである。
また、
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