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[餅田もんじゃ] 新進気鋭の謎の女性ライター『ポジティブな人』
2014-06-09 01:00餅田もんじゃ 寄稿記事 『ポジティブな人』
「ポジティブな人」から目が離せない。ポジティブな人がいる、と認識したが最後、その人を追いかけずにはいられない。なぜなのか、説明すらままならないほどの吸引力がそこにはあるのだ。
たとえば、蓮舫である。政治家としての側面を含め、彼女本人について強く思うことはあまりないのだが、蓮舫のTwitterはとにかくすごい。
まず蓮舫は早起きだ。
『おはようございます!』
朝の6時前に彼女はつぶやく。当然私はその時間には起きていないので、9時台の通勤電車の中、半開きの目でその挨拶をなぞる。その時点で結構くるものがあるのだが、輪をかけてすごいのがフォロワーからの返信だ。
『おはようございます♪』
『おはよう!爽やかな朝ですね!』
『おはようございます、今日も良い一日を!』
『おはようございます!挨拶って大事ですよね^^』
なんだろう、この正しさは。
そもそも『おはようございます』という挨拶自体、生きとし生けるものは当然皆起きるもの、的な一種の強さを持った言葉だが、彼らはそれだけで終わらず、畳み掛けるように「爽やかな朝」や「良い一日」について語りかけてくる。自分がまだ寝汚くベッドにいる間に「挨拶の良さ」を確認していた人がいたという事実は、なんとも言えず内臓のあたりを痒くする。
そういう事象は他にもある。たとえば天気の良い日、時折蓮舫は青空の写真をTwitterにアップする。なぜかポジティブな人は青空が好きで、それを広めるのも好きという傾向がある。そして一人のフォロワーがそれに対してこんなリプライを返す。
『空が青く澄み渡っていますね!』
ポジティブな人は青空が好きだが、また「澄み渡る」という言葉も同じくらいに好きだ。そこはひとまず置いておくとして、それに対しての蓮舫のコメントである。
『僕らはもう1人じゃない!って気分になりますね(^_−)−☆』
空関連のやり取りは、これ以外にも幾度となく蓮舫のTwitter上に展開されている。蓮舫のコメントは『海を目指して歩く♪』『同じ月を見ましょう!^_−☆』などという詩的パターンもあれば、『良い一日を!』と無難に締めるパターンもある。だが一見蓮舫自身は無難でも、フォロワーから『深い漆黒から、少しずつ明るく…そうまるで、“希望色”とも言えるような多色の織り成す彩』などという特筆すべきリプライがついている場合があるので、その点は注意が必要だ。
そう、なぜだかわからないが、ポジティブな人はポジティブな人を引き寄せるのだ。その現象の結果、蓮舫のTwitterはもはやTwitterというくくりを離れ、「蓮舫のTwitter」というひとつのポジティブメディアを確立するに至っている。
そのポジティブメディア現象は、身の回りでも日々勃発している。たとえば私の知人で人材育成系の仕事をしている人は、時折Facebookがこんな感じになる。
『朝、出社時間を少し遅らせてカフェへ。これまでを棚卸しして、これからを見つめ直す。パフォーマンス最大化のために、大切な時間です^^』
「少し遅らせて」と言いつつ、投稿時間は7時数分すぎであり、やはり私は約2時間後、通勤電車の中で死にそうになりながらその投稿を見ている。ちなみにカフェというのは言うまでもなくスターバックスのことである(必ず現在地としてチェックインされている)。
彼は仕事柄、啓発系というか、より良いビジネスマンになるためには、的なノウハウ記事を投稿することが多い。そしてその記事に対するコメントは一様にポジティブである。基本的には『刺激になります!』『私も頑張らないと^^』といったテイストであり、ここにもやはりひとつのポジティブメディアが出来上がっていることを実感する。
以前、日曜朝6時に『社会人としてのスキルアップ』といった類の投稿があったことがあった。その事実単体でも私にとっては衝撃だったが、それに対するコメントの1つがすごかった。
『なんだか体が熱くなってくる感じがします!』
そのコメントは投稿されてからわずか数分で付けられていた。
繰り返すが、日曜朝6時である。私はその時間、ホノルルで厚切りハニートースト(すごく熱い)の早食い競争に参加する夢を見ていた。そんな時間に、スキルアップ云々、成功体験云々の記事を読んで体が熱くなっている人がいる、ということに驚く。そして、やっぱり内臓のあたりがちょっと痒い。
恐らくこの「痒さ」なのだろうと思う。ポジティブな人を否定したいわけではない。批判するわけではない。強いて言うなら、できれば関わりたくない。だけど、そういう人がいるという事実は、自分の感覚をなんともいえないタッチで刺激する。それがこの、痒さだ。もどかしいけど、ちょっとだけ気持ちがいい。
そんなわけで、私は今日もポジティブな人から目が離せない。一度あの感覚を知ってしまうと、もはや後には引けないのだ。
(文:餅田もんじゃ)
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