不定期更新「ジャン斉藤のMahjong Martial Artas」――なんと2年ぶりのコラムはおのののかRIZIN解説を褒めちぎる原稿です!




・ハム・ソヒの強さが「キラー浜崎」を引き出した■藤井惠が見た年末女子格闘技



スポーツの実況・解説の仕事とは「試合の中で起きていること」を視聴者にわかりやすく伝えることだが、その攻防を技術面から解説する以外にも、勝敗を左右する決定的場面などでは興奮の声などを持ってして迫力や熱気を届ける立場でもある。

この2つの動画を見比べてほしい。どちらも2013年WBC日本vs台湾戦9回表の攻防だ。常識破りの二死一塁からの鳥谷盗塁から、鮮やかな井端の土壇場同点タイムリー。WBCの名場面のひとつに挙げられているシーンだ。

J SPORT

地上波

同じゲームでも民放地上波とCSチャンネルのJ SPORTでは、実況解説のボルテージに大きな差があることがおかわりだろう。マニアがじっくり楽しむJ SPORTとは違って、地上波はそこまで野球に詳しくない視聴者もチャンネルを合わせてくる。地上波のハイテンション実況・解説は、野球を深く知らなくても「凄いことが起きている」感が無駄に伝わってくる。どちらが正しいかではない。ターゲットが別なのだ。

こういった大げさなリアクションで格闘技の醍醐味を世間に知らしめていたのは、PRIDE時代の高田延彦だ。「鳥肌立った!」というド直球な決めゼリフで無双していた高田本部長には「まるで解説していない」などと批判が絶えなかったが、じつは「驚き屋」という一番大事な仕事を務めていた。ところがRIZIN以降の本部長はどういうわけか技術解説に色気を見せてしまい迷走中。こちらの鳥肌の立つ解説がとんと聞こえてなくなってしまった。本部長はいい意味でしっかり解説してはいけないのに!

技術解説と「驚き屋」の食い合わせが悪いわけではない。筆者は青木真也、大沢ケンジ、水垣偉弥、藤井恵を「格闘技解説・四天王」と勝手に目しており、この4人の解説者としてのストロングポイントはそれぞれ異なっているが、大沢氏はこの中で唯一「技術解説」と「驚き屋」の能力をどちらも兼ね備えている。大沢氏が解説者として活躍しているAbemaTV格闘技中継を見ればわかるとおり、彼はひとりで大騒ぎしながら、ひとりで技術解説をこなしている。口の悪いマニアは「大沢はうるさい」と批判しがちだが、それは一人二役でブン回しているから。AbemaTVはアナウンサーとのタイマン形式が多いこともあり、必然的にどちらの役割も求められているのだ。

RIZINなどの地上波中継の場合は、実況アナ、技術解説(高阪剛や中井祐樹、藤井恵)、タレント枠がズラリと並ぶ総力戦で役割がそれぞれ異なってくる。タレント枠が必ず用意されるのは「一般目線」の必要性からだろう。

00年代におけるタレント枠の成功例は藤原紀香や小池栄子が挙げられる。彼女たちが解説席に座ることで「格闘技は女性でも楽しめるもの」というイメージアップに多大な貢献を果たしてくれた。中にはただ座っているだけで、とくに当たり障りのないコメントに終止してしまうお客様タレントも数しれなかったが、それはそれで世間との温度差がある意味でエンタメ化していた。2001年から1年間『ワールドプロレリング』のイメージガールを務めた当時・20歳の乙葉の無知&天然な反応がそれである。「三沢光晴さんって有名な方だったんですね~」(乙葉)

現在RIZINタレント枠はどうかといえば、おのののかは大変難しい役割をこなしていると拍手を贈りたい。一般人からすれば意味不明な格闘技用語が飛び交い、攻防が複雑化した全局面型フルコンタクトスポーツのMMAに正面から向き合いながら、「MMAって何?」という一般目線も忘れてないからだ。

「高阪さん、なぜスイッチするんですか?」
「藤井さん、ハム選手はなぜ相手の右手をつかもうとしているんですか?」

選手や格闘技関係者、マニアなら「わかっていること」としてスルーしてしまうポイントを彼女は決して見逃さない。おのさんは、格闘技知識の土台が確実にあったうえで、視聴者の代弁者となっているのだ(じつはPRIDE時代の高田本部長は「どうなのTK?」という尋ね人の役回りもしていたのだが……)。それでいて「ムサエフ選手の好きな食べ物はお寿司で、嫌いな食べ物はシーフードなんですよ。そこからして只者じゃないって思いました!」などど、細かすぎるマラソン解説者・増田明美ばりのミニ情報を放り込んでくるから油断ならない。しっかりと格闘技を勉強して臨んでいる証だ。そのうえ、とびきりカワイイから最高ではないか。FLASH……じゃなくてフレッシュな格闘家と付き合って何か変なことに巻き込まれないでほしい。

もうひとりRIZINタレント枠で忘れていけないのは勝俣州和の存在だ。リング上で何か動きがあると、必ず勝っちゃんの叫び声が飛んできて番組にエンジンがかかる。勝っちゃんのエネルギッシュさはスポーツ中継と相性と抜群なのだ。そして彼はただ、はしゃいでるわけではなく、破壊王・橋本真也と親友の間柄だっただけあってプロレス格闘技が持つドラマ性も充分に理解している。たとえば宮田和幸vs山本アーセンのテーマを芯から理解しているから、こういった言葉が自然に溢れ出てくる。

「KIDさんがアーセン選手を見守ってるんじゃなくて、宮田選手の後ろにKIDさんがいて向かい合ってる」(2018年12月31日RIZIN/宮田和幸vs山本アーセン)

彼女たちは大事な役割を任せられているが、どうしても「何も知らないくせに偉そうにしゃべりがやがって!!」と批判されがちだ。大晦日RIZINメインイベントの試合後に勝者のマネル・ケイプが実況席に雪崩込んできたときに「ドン引きしている」「喜んでいない」などど批判する声があるが、「日本人が負けて面白くないに違いない」などという偏見からそう見えてしまっているのだろう。試合後に興奮した格闘家があんなに勢いよくやってきたらビックリするのはあたりまえだし、おのさんの拍手の手は止まっていない。勝っちゃんに至っては興奮のあまり立ち上がっている。そのあと身構え気味だったのはケイプの暴走キャラをちゃんと理解しているからだ。

b0b68cb2f4985ca6e7a6889c66a8bfeb8ccb0978

新規層に排他的になったジャンルは世間から遠ざかっていき、いずれ見向きもされなくなる。そうだ、我々はGACKTを失ったばかりではないか。GACKTの身に何が起きたかは「スタミナ太郎 GACKT」で検索してほしいが、「スタミナ太郎事件」のようなことが続けば格闘技界に関わろうとする人たちはますます減っていく。

もう細かいことはいいじゃないか。格闘技界のスタミナ太郎ゲージはとっくにゼロよ。おのさんのようにしっかり勉強している分にはこしたことはないが、格闘技をよく知らない俳優・タレントたちでさえ「ちょっと格闘技も仕事にしてみようかな……」と、いっちょかみを試みたくなるジャンルこそ栄えるのではないか。おのののかの声は、世間への架け橋なのである(ジャン斉藤)


Dropkickメルマガ2000記事近くの中から必読人気記事をピックアップしました! 


サイモン・ケリー「プロレスに関わることは倍賞美津子さんに大反対されました」

平本蓮インタビュー「“昔のK-1”を取り戻すために、いずれMMAをやります」

シューティング初代ライトヘビー級王者・川口健次インタビュー

「ボクと真剣勝負してください!」(田村潔司)■名言で振り返るプロレス格闘技

ランペイジ・ジャクソンとPRIDE愛憎劇、ついに完結へ……

【チャーリー徹底解剖】RIZIN海外事業部・柏木信吾12000字インタビュー

新生UWF解散・至近距離の真実……冨宅飛駈15000字インタビュー

【格闘技ラブストーリー】那須川天心vs武尊はなぜ実現しないのか?

Dropkick名物90年代インディ地獄! 戸井克成インタビュー13000字


WWEペイジの伝記的映画『ファイティング・ファミリー』■斎藤文彦INTERVIEWS

ボクシング門戸解放の裏側…那須川天心のバンテージは誰が巻く?■山田武士

朝倉海インタビュー「打倒・堀口恭司の攻略法は、まだ1割しか使ってないです」

「ミスター・プロレス」ハーリー・レイスの偉大さを知ろう■斎藤文彦INTERVIEWS

【大沢ケンジ徹底分析】なぜ堀口恭司は朝倉海に攻略されたのか?

【全女・極悪同盟】クレーン・ユウ14000字インタビュー


朝倉未来「メリットがないからモチベーションは低かったかもしれないですね」

ボクシングの「共同声明」はなぜ反感を買ってしまったのか?

これは今話題のパワハラなのか!? ああ無情、デイビーボーイ・スミス新日本離脱の顛末

さらば英雄!PRIDE最強時代の幕を開けたミルコ・クロコップの軌跡■笹原圭一

地獄の青春!! 平成の昭和格闘技集団「和術慧舟會」を語ろう/門脇英基×大沢ケンジ

「ハッスルがなかったら日本は原始的なプロレスのままだったかも」■証言ハッスル:木原のオヤジ

【プロレス歴史発見・特別編】望月成晃×小佐野景浩〜空手家がプロレスラーになるまで〜

都市伝説的試合映像ブレット・ハートvsトム・マギー、ついに発掘される■斎藤文彦INTERVIEWS

浜崎朱加×アミバ……雷神女王と女マネージャー(?)の女子格対談!

俺と剛竜馬とパイオニア戦志12000字■松崎和彦インタビュー

プロレス番記者が見た「北尾光司の真実」■柴田惣一

U系平成のベストバウトは高田延彦vs北尾光司!■金原弘光

【フジメグ15000字】藤井惠インタビュー「あの頃の女子格闘技は“この先”がずっとなかったんです」

「GSPの日本人スパーリングパトーナー」が語る英雄の真実■赤沢幸典

虐待から救ってくれた一筋の光、それは大日本プロレス■アメプロインディ通信「フリーバーズ

UWF系プロレスラーが語る「エキシビジョンマッチ」■金原弘光

佐山聡に鉄拳指導された当事者が語る「地獄のシューティング合宿の真実」

全女イズム最後の継承者・高橋奈七永インタビュー「リングの中でも外でも潰し合いでした」

追悼ダイナマイト・キッド:「レスラーとして偉大だったが、人としては惨めな人生だった」

柴田惣一☓小佐野景浩 プロレスマスコミ大御所対談「スクープ合戦はガチンコの闘いだった」

「WCWを潰した俳優」デヴィッド・アークエット、血まみれの贖罪

激論!! メイウェザーvs天心は真剣勝負でやるのか■シュウ・ヒラタ☓ジャン斉藤

メイウェザー舞台裏…ケンタッキー60人前と剥がされた神童のバンテージ■笹原圭一RIZIN広報インタビュー

Uのミライを見た女――高岡左千子「私は運気からUWFのスケジュールを組んでいたんです」

運命のバリジャパ、安生道場破り、幻の長州戦真相――中村頼永インタビュー<ヒクソン来襲編>


【2万字超えの激白】山本喧一インタビュー「高田延彦、田村潔司…真剣勝負とUインターの愛憎物語」

山本宜久「ヒクソンと戦ってるとき、放送禁止用語が聞こえてきたんですよ…」 

塩崎啓二
 
元レフェリーの衝撃告白「私はPRIDEで不正行為を指示されました……」 


【検証「1984年のUWF」】船木誠勝「えっ、そんなことが書かれてるんですか?」


『1984年のUWF』はサイテーの本!■「斎藤文彦INTERVIEWS⑬」 


鬱と宗教とUWF……プロレスの信仰心はどこに向かうのか■大槻ケンヂインタビュー


【底が丸見えの底なし沼】『船木誠勝の真実』が真実ではなかった件についての雑談/橋本宗洋


朝日昇インタビュー最終回……修斗分裂騒動の裏側、着せられたクーデターの汚名

村浜武洋“流浪と怒り”のロングインタビュー「やるか!? おう、コラ! ああん!?」

【和術慧舟會創始2万字語り】西良典インタビュー「総合格闘技がなかった時代の話をしよう」


木村浩一郎 
90年代・灰色の狂気――「FMWとリングスで俺はこの業界をナメてしまったんですよ」 

山田学 初代シューターにしてパンクラシストの大冒険 

修斗初代王者/仮面シューター・スーパーライダー 渡部優一 「東映の許可? 取ってますよ(笑)」

高田vsヒクソンの真実とは? 金子達仁『プライド』

アジャコング さらば! 私が愛した全日本女子プロレス

解説、待ったなし!! 元大相撲力士が語る日馬富士騒動/「将軍岡本」あらため岡本将之

プロレスゲーム制作から裏方エキスパートへ…弥武芳郎リングアナが語る“U系インディ”誕生

『ファイヤープロレスリング』とUWF、純須杜夫の死――


「Team DATE名誉顧問」は太気拳創始・澤井健一の弟子だった!! 吉田かずおインタビュー

神取忍インタビュー「ジャッキー佐藤シュートマッチの真実」「北斗晶」「ブル中野」……

柳龍拳 この男は実在する!!合気道の達人ロングインタビュー 

汚れたハンカチ王子騒動……ベースボール・マガジン社の黒歴史 ターザン山本インタビュー

仙波久幸
 芸能スクープはプロレスである~名物記者が語る横山やすしからAKB48まで 

元祖・大仁田信者が50歳で覆面レスラーになるまで〜ワイルド・セブンの告白〜

【インディの怪人、ついに語る】サバイバル飛田「もう客を焼き払うしかなくなった……」

【壮絶!!後編】シャーク土屋に病魔が襲う!! 「もっと生きたい…水が飲みたい!!」

「FMWアイドル女子レスラー」の今はキリスト教伝道師……里美和ロングインタビュー

高杉正彦インタビュー〜剛竜馬とウルトラセブンに愛をこめて〜

上田勝次 FMWを支えたキックボクサー「アイツが死んで以来、ヒジは使ってないよ…」 

金村キンタロー 
理不尽小僧「インディで年収1500万……一銭も残ってないです!」 

ウルトラマンロビン 「あんなにネットで叩かれたら普通は自殺しますよ!」 

 男たちのプロレス屋形船…友情とカネが砕け散ったWJ 

【衝撃の破壊王伝説】至近距離から見た橋本真也――橋本かずみ☓田山正雄レフェリー 

小原道由「石澤が止めなかったら、俺は◯◯を殺していたでしょうね」

草間政一 私が戦った暗黒・新日本プロレス 

田中ケロ ケロちゃんの新日本プロレス伝説 

西村修 「独裁者・長州力に逆らうってエネルギーが必要なんです」 

「90年代ハチャメチャ新日本プロレスと俺が愛した橋本真也」 

村上和成 平成のテロリスト・村上和成――格闘家が挑んだ命懸けのプロレス道!! 

全日本プロレスの「うっかり八兵衛」が明かす全日本秘話■木原文人✕小佐野景浩

あの日の全日本プロレス、SWSを語ろう■北原光騎×小佐野景浩

田上明
さん、どうしてステーキだったんですか? 「ステーキ居酒屋チャンプ」インタビュー

折原昌夫インタビュー後編「天龍さんの引退試合を見に行かなかったのは……」


更級四郎×ターザン山本

G馬場ブレーンの語らい――全日本プロレスが再生した日 

北原光騎 男が男に惚れる天龍劇場「俺にとって天龍さんは“神様”だよ」 

倉持隆夫 元・全日本プロレス中継アナウンサー「作られたスポーツを実況するということ」 

ウォーリー山口 プロレスなんでも屋「ジャイアント馬場と竹内宏介、ふたつのG魂」 


テン年代の仁義なき戦いか……考察・新生K−1の「那須川天心訴訟」問題


いったい何が起きていたのか? トライハードジム「K-1契約問題」記者会見全文


小笠原和彦 リアル・空手バカ一代!「ボクは“やっちゃっていいよ”組なんです」 

青柳政司 「左目を失っても打倒プロレスの旅は終わらない」 

天田ヒロミ K-1天国と地獄「谷川さんがやるようになってK-1はダメになりました」 

小比類巻貴之 「ミスターストイックのキャラは正直、しんどかったです」 

佐藤嘉洋 判定問題のせいで闇に葬り去られていますけど、魔裟斗戦はMAX史上最高の盛り上がりだったと思います 

若鷹ジェット信介
 
黒歴史ファイティングオペラ――ハッスルの最期を看取った男 

没後30周年! 改めてしのぶブルーザー・ブロディ最期の1日

“ローリングサンダー” に全米陶酔! ナスカワマニア暴走中!

レッスルマニア裏話:『ファビュラス・ムーラ記念杯』バトルロイヤルに1万人が反対した理由


アンドレ・ザ・ジャイアントのドキュメンタリー番組 「1日でもいいから普通の大きさになりたい」


地球上最強男スティペ・ミオシッチは、それでも時給14ドルで消防署で働く