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田中良紹:ロッキード事件と私の45年
2021-04-06 13:50昨秋から今年の初めにかけてロッキード事件を巡る2冊の本が出版された。一つは元共同通信記者の春名幹男氏が書いた『ロッキード疑獄—角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』(角川書店)、もう一つは作家の真山仁氏が書いた『ロッキード』(文芸春秋)である。 いずれも「田中角栄の犯罪」とされた事件の構図に疑問を呈し、東京地検特捜部の捜査は事件の真相に迫っていないとみている。事件の主犯は右翼の児玉誉士夫であり、その児玉と最も近い関係にあった政治家は中曽根康弘である。ロッキード社の売込み工作の主役は民間航空機トライスターでなく、自衛隊が導入した対潜哨戒機P3Cということでも一致する。 ただ春名氏は米国特派員を長く務めたことから、米国の公文書を中心に取材を進め、キッシンジャー元国務長官の「田中嫌い」が事件の底流にあることを強調している。米国は独自外交の角栄を葬り、親米反共の岸信介ら巨悪を護ったという見方である。
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