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集団的自衛権は国連憲章に認められる権利確保というが逆。国連憲章の精神に反する行為
(3239字)
1:最近の動き:尖閣諸島の緊迫化とともに、集団的自衛権を確保すべきだという声が自民党等で活発化している。尖閣諸島での緊張が高まるにつれ、自民党議員を中心に集団的自衛権の行使を実施すべきだという声が強まってきている。
2012年10月15日付朝日新聞は次のように報じている。
「自民党の安倍晋三総裁は15日、アジア歴訪中のバーンズ米国務副長官と党本部で会談し、『政権をとったら集団的自衛権の行使の解釈を改めたい。日米同盟強化にもなるし、地域の安定にも寄与する』と述べ、集団的自衛権の行使を禁じる政府の憲法解釈を見直す考えを示した。」
こうした見解をとりまとめると次のようになる。
① 近年、尖閣諸島、竹島、北方領土等において近隣諸国は従来以上に大胆な行動をとっている。これは、2009年から2010年にかけ、鳩山首相が普天間問題で「最低でも県外に移設すべきだ」と提言し、これによって日米関係が弱体化したためである。
② 日本の安全をより強固にするために集団的自衛権の実施を明確にすべきである。
③ 集団的自衛権は国連で認められた権利であり、これを実施しないのはおかしい。
2:自民党などの憲法改訂の動き
自民党などは憲法改正案を策定している。
集団的自衛権と関連する部分に次のものがある。
(1)自民党「日本国憲法改正草案」
「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動を行うことができる」
(2)たちあがれ日本
「3.安全保障、・・・国際の平和及び安全の維持ならびに人道上の支援のための活動に協力し貢献する旨を規定すべきである。
3:過去の主要者の発言等
(1)小泉首相「小泉首相は27日のNHKの党首討論番組で、現在の憲法解釈では禁じられている集団的自衛権の行使について「日本を守るために一緒に戦っている米軍が攻撃された時に、集団的自衛権を行使できないのはおかしい。憲法ではっきりしていくことが大事だ。憲法を改正して、日本が攻撃された場合には米国と一緒に行動できるような(形にすべきだ)」と述べた。日本防衛にあたる米軍への攻撃排除に限って、集団的自衛権が行使できるよう憲法改正すべきだとの発言だ。」(出典:(06/27 20:24)ソース要チェック)
(2)野田首相の立場
2012年11月03日毎日新聞は『民主:安保で「中道」路線 党内再結束狙う』との表題の下、次のように報じている。
『安倍氏は10月31日の衆院本会議での代表質問で、集団的自衛権について「行使を認めるべく、(憲法)解釈を変更する必要がある」と主張したのに対し、野田佳彦首相は「解釈を変えることはない」と明言。安住氏も2日の講演で「思い切って変えようという意見もあるが、私が責任者である限り、そういう道は取らない」と行使を容認しない姿勢を鮮明にした。
ただ、首相自身はもともと集団的自衛権の行使容認が持論。政府関係者は「周辺が『党内の反発があるからやめましょう』と首相に言っているのだろう。がっかりだ」と指摘。』
4:過去の検討
2008年10月、柳井俊二元外務次官を座長とする「 安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は集団的自衛権についての提言を行ったが、その際、集団的自衛権を4つの類型とした
① 共同訓練などで公海上において、我が国自衛隊の艦船が米軍の艦船と近くで行動している場合に、米軍の艦船が攻撃されても我が国自衛隊の艦船は何もできないという状況が生じてよいのか。
② 同盟国である米国が弾道ミサイルによって甚大な被害を被るようなことがあれば、我が国自身の防衛に深刻な影響を及ぼすことも間違いない。それにもかかわらず、技術的な問題は別として、仮に米国に向かうかもしれない弾道ミサイルをレーダーで捕捉した場合でも、我が国は迎撃できないという状況が生じてよいのか。
③ 国際的な平和活動における武器使用の問題である。例えば、同じPKO等の活動に従事している他国の部隊又は隊員が攻撃を受けている場合に、その部隊又は隊員を救援するため、その場所まで駆け付けて、要すれば武器を使用して仲間を助けることは当然可能とされている。我が国の要員だけそれはできないという状況が生じてよいのか。
④ 同じPKO等に参加している他国の活動を支援するためのいわゆる「後方支援」の問題がある。補給、輸送、医療等、それ自体は武力の行使に当たらない活動については、「武力の行使と一体化」しないという条件が課されてきた。このような「後方支援」のあり方についてもこれまでどおりでよいのか。
5:問題点
(1)「日本を守るために一緒に戦っている米軍が攻撃された時に、集団的自衛権を行使できないのはおかしい」というのは詭弁。
安保条約は「第五条:各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」としている。従って現行法体制の下、この安保条約の履行が予定されている。
(2)現在の安保条約の共同行動は2つのしばりがある。
一つは「日本国の施政下の領域」という地域の限定、今一つは「いずれか一方に対する武力攻撃があった時」である。
つまり今集団的自衛権を目指そうという人々はこの制約を排除することを目指している。「日本の施政下外で」「相手の攻撃がなかった時にも」米軍と共同行動をとることを目指している。
(3)「国連の権利」ということが述べられているがこれも詭弁である。
国連憲章は「第51条:この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」との規定を持つが、ここでも「加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には」という条件が付されている。この枠外の活動を目指している。
(4)米国の現在の戦略は「相手が攻撃した時に軍事行動をする」というものではない。「国際的安全保障環境の改善のため」、「先制攻撃をする」というものである。これは日本の姿勢と全く異なる。
(5)さらに米国等の先制攻撃は必ずしも正当な根拠のあるものではない。
イラク戦争は大量破壊兵器の存在、アルカイダとの結び付きでイラクは攻撃するから先に排除すべしという論理で開始されたが、両者の存在は米国の公的機関によって否定された。
アフガニスタンに対する攻撃は、アルカイダ等の拠点になるのを排除するという論理で戦争を行使しているが、現在アルカイダ等はパキスタン等を拠点としている。この論理で行けばパキスタンと戦争しなければならないこととなる。
(6)要は集団的自衛権とは、自衛隊は自分でお金を払って米国の傭兵的存在になり、海外で米国軍と一緒に活動するための制度である。
「(1972年)3月21日、米国務省筋は沖縄返還に伴い、尖閣諸島の施政権は日本に返還するが、主権の帰属については中立の立場をとる米国の態度には変更はないと語った。3月22日、福田外相は、参議院沖縄および北方問題特別委員会で、米国がこの問題であいまいな態度をとっていると批判し、“現在施政権を行使している米国が中立的な立場をとることを正式に表明すれば、米国政府に対し厳重に抗議する”との意向を明らかにした。佐藤首相も、3月23日の記者会見で米国の態度に強い不満を持っていると語った。牛場駐米大使は政府の訓令に基づき国務省のグリーン国務次官補に会見し、尖閣諸島の帰属問題に関する日本の見解を説明し支持を求めたが、同次官補は従来の米政府の中立の立場を繰り返すにとどまった。」(前述尾崎重義著論評「尖閣諸島の帰属について」)
この当時の首相、外務大臣は今日よりはるかに毅然としている。米国に物申す時には、物申す姿勢を持っている。
(了)
(3239字)
1:最近の動き:尖閣諸島の緊迫化とともに、集団的自衛権を確保すべきだという声が自民党等で活発化している。尖閣諸島での緊張が高まるにつれ、自民党議員を中心に集団的自衛権の行使を実施すべきだという声が強まってきている。
2012年10月15日付朝日新聞は次のように報じている。
「自民党の安倍晋三総裁は15日、アジア歴訪中のバーンズ米国務副長官と党本部で会談し、『政権をとったら集団的自衛権の行使の解釈を改めたい。日米同盟強化にもなるし、地域の安定にも寄与する』と述べ、集団的自衛権の行使を禁じる政府の憲法解釈を見直す考えを示した。」
こうした見解をとりまとめると次のようになる。
① 近年、尖閣諸島、竹島、北方領土等において近隣諸国は従来以上に大胆な行動をとっている。これは、2009年から2010年にかけ、鳩山首相が普天間問題で「最低でも県外に移設すべきだ」と提言し、これによって日米関係が弱体化したためである。
② 日本の安全をより強固にするために集団的自衛権の実施を明確にすべきである。
③ 集団的自衛権は国連で認められた権利であり、これを実施しないのはおかしい。
2:自民党などの憲法改訂の動き
自民党などは憲法改正案を策定している。
集団的自衛権と関連する部分に次のものがある。
(1)自民党「日本国憲法改正草案」
「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動を行うことができる」
(2)たちあがれ日本
「3.安全保障、・・・国際の平和及び安全の維持ならびに人道上の支援のための活動に協力し貢献する旨を規定すべきである。
3:過去の主要者の発言等
(1)小泉首相「小泉首相は27日のNHKの党首討論番組で、現在の憲法解釈では禁じられている集団的自衛権の行使について「日本を守るために一緒に戦っている米軍が攻撃された時に、集団的自衛権を行使できないのはおかしい。憲法ではっきりしていくことが大事だ。憲法を改正して、日本が攻撃された場合には米国と一緒に行動できるような(形にすべきだ)」と述べた。日本防衛にあたる米軍への攻撃排除に限って、集団的自衛権が行使できるよう憲法改正すべきだとの発言だ。」(出典:(06/27 20:24)ソース要チェック)
(2)野田首相の立場
2012年11月03日毎日新聞は『民主:安保で「中道」路線 党内再結束狙う』との表題の下、次のように報じている。
『安倍氏は10月31日の衆院本会議での代表質問で、集団的自衛権について「行使を認めるべく、(憲法)解釈を変更する必要がある」と主張したのに対し、野田佳彦首相は「解釈を変えることはない」と明言。安住氏も2日の講演で「思い切って変えようという意見もあるが、私が責任者である限り、そういう道は取らない」と行使を容認しない姿勢を鮮明にした。
ただ、首相自身はもともと集団的自衛権の行使容認が持論。政府関係者は「周辺が『党内の反発があるからやめましょう』と首相に言っているのだろう。がっかりだ」と指摘。』
4:過去の検討
2008年10月、柳井俊二元外務次官を座長とする「 安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は集団的自衛権についての提言を行ったが、その際、集団的自衛権を4つの類型とした
① 共同訓練などで公海上において、我が国自衛隊の艦船が米軍の艦船と近くで行動している場合に、米軍の艦船が攻撃されても我が国自衛隊の艦船は何もできないという状況が生じてよいのか。
② 同盟国である米国が弾道ミサイルによって甚大な被害を被るようなことがあれば、我が国自身の防衛に深刻な影響を及ぼすことも間違いない。それにもかかわらず、技術的な問題は別として、仮に米国に向かうかもしれない弾道ミサイルをレーダーで捕捉した場合でも、我が国は迎撃できないという状況が生じてよいのか。
③ 国際的な平和活動における武器使用の問題である。例えば、同じPKO等の活動に従事している他国の部隊又は隊員が攻撃を受けている場合に、その部隊又は隊員を救援するため、その場所まで駆け付けて、要すれば武器を使用して仲間を助けることは当然可能とされている。我が国の要員だけそれはできないという状況が生じてよいのか。
④ 同じPKO等に参加している他国の活動を支援するためのいわゆる「後方支援」の問題がある。補給、輸送、医療等、それ自体は武力の行使に当たらない活動については、「武力の行使と一体化」しないという条件が課されてきた。このような「後方支援」のあり方についてもこれまでどおりでよいのか。
5:問題点
(1)「日本を守るために一緒に戦っている米軍が攻撃された時に、集団的自衛権を行使できないのはおかしい」というのは詭弁。
安保条約は「第五条:各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」としている。従って現行法体制の下、この安保条約の履行が予定されている。
(2)現在の安保条約の共同行動は2つのしばりがある。
一つは「日本国の施政下の領域」という地域の限定、今一つは「いずれか一方に対する武力攻撃があった時」である。
つまり今集団的自衛権を目指そうという人々はこの制約を排除することを目指している。「日本の施政下外で」「相手の攻撃がなかった時にも」米軍と共同行動をとることを目指している。
(3)「国連の権利」ということが述べられているがこれも詭弁である。
国連憲章は「第51条:この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」との規定を持つが、ここでも「加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には」という条件が付されている。この枠外の活動を目指している。
(4)米国の現在の戦略は「相手が攻撃した時に軍事行動をする」というものではない。「国際的安全保障環境の改善のため」、「先制攻撃をする」というものである。これは日本の姿勢と全く異なる。
(5)さらに米国等の先制攻撃は必ずしも正当な根拠のあるものではない。
イラク戦争は大量破壊兵器の存在、アルカイダとの結び付きでイラクは攻撃するから先に排除すべしという論理で開始されたが、両者の存在は米国の公的機関によって否定された。
アフガニスタンに対する攻撃は、アルカイダ等の拠点になるのを排除するという論理で戦争を行使しているが、現在アルカイダ等はパキスタン等を拠点としている。この論理で行けばパキスタンと戦争しなければならないこととなる。
(6)要は集団的自衛権とは、自衛隊は自分でお金を払って米国の傭兵的存在になり、海外で米国軍と一緒に活動するための制度である。
「(1972年)3月21日、米国務省筋は沖縄返還に伴い、尖閣諸島の施政権は日本に返還するが、主権の帰属については中立の立場をとる米国の態度には変更はないと語った。3月22日、福田外相は、参議院沖縄および北方問題特別委員会で、米国がこの問題であいまいな態度をとっていると批判し、“現在施政権を行使している米国が中立的な立場をとることを正式に表明すれば、米国政府に対し厳重に抗議する”との意向を明らかにした。佐藤首相も、3月23日の記者会見で米国の態度に強い不満を持っていると語った。牛場駐米大使は政府の訓令に基づき国務省のグリーン国務次官補に会見し、尖閣諸島の帰属問題に関する日本の見解を説明し支持を求めたが、同次官補は従来の米政府の中立の立場を繰り返すにとどまった。」(前述尾崎重義著論評「尖閣諸島の帰属について」)
この当時の首相、外務大臣は今日よりはるかに毅然としている。米国に物申す時には、物申す姿勢を持っている。
(了)
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そもそも、『同盟』とは、何だろう? 「個人・団体または国家などが、互いに共通の目的を達成するために、同一の行動をとることを約束すること。また、それによって成立した関係」という意味らしい。
「共通の目的」とは? 一方の強引な言い分だけを受け入れ、もう一方がそれに黙って従う形で設定された目的だったとしたら、それは「共通の目的」とは言えないのではないか? 有無を言わせず押し付けられた「アンフェアな要求」でしかないのではないか?
そうした不公正な目的を達成する約束は、少なくとも『同盟』とは呼べない。
それでは、『日米同盟』って、どうなの?
歴史的背景も含めて、その意味を知ることは、我々日本国民にとって、今、最も重要な問題だ。
>ラムズフェルド・ドクトリン「同盟国の参加は歓迎するが、何をするかはアメリカが決める」。それなら、「共通の戦略」=「日本がアメリカに従うということ」になる
沖縄県民の反対による日米共同の島嶼部奪還演習中止、基地移設問題の遅々たる進展、常に不安定な政権……いくら自衛隊と米軍の統合運用が進んでも、政治リスクが高すぎて充分な抑止力になってないなぁ。シビリアンコントロールの建前が、最前線に展開する戦力(防衛力。ひいては自衛官の生命)に政治リスクを負わせてしまうのは仕方ないとしても、他国に付け入る隙を与えないくらいまでにはリスク下げなきゃね。その点では、安定した政権あるいはスムーズな与野党合意がなされる国会運営は、緊急時の速やかな意思決定、米国との共同作戦の迅速なる遂行を可能にするために決定的に重要。
上記のような論理の下では、公海上の日本船舶の安全はどのように守られるだろうか。筆者の意見に興味。