-
領土問題と教科書(ポツダム宣言の領土問題を何故か記載していない。何故だろう)
2012-11-30 22:4721ptすでに、日本の領土問題を考える際に、ポツダム宣言、カイロ宣言、サンフランシスコ講和条約が基礎であることをみた。 日本の戦後を作ったのは、ポツダム宣言、サンフランシスコ講和条約である。 国民は当然その内容を知っていてよい。 今日、日本のほとんどの人が尖閣諸島に極めて高い関心をもっている。 では「ポツダム宣言、カイロ宣言、サンフランシスコ講和条約で領土の所がどのように記載されていますか」と問うとほぼほとんどの人が知らない。 どうしてだろう。 私達は、高校時代、日本史や世界史を学び、ここで基本的な知識を得る。多分、この時期を除けば、体系的に日本史や世界史を学ぶことはまずない。 その意味で高校教育は極めて重要である。 ではここで、領土問題がどのように記載されているのであろうか。ポツダム宣言は、領土問題にどう記載しているか。 まず、ポツダム宣言をみてみたい。第8項は「カイロ宣言ノ条項ハ履行セラ -
領土問題の法的問題(その2)「無主の地を日本のものとした(先占の法理)」論の正当性
2012-11-30 10:4121pt尖閣諸島でのポツダム宣言、カイロ宣言の問題を領土問題の法的問題(その1)で見た。今度は日本側主張を検証したい。 外務省等は「1895年清国を含むどの国の支配も及んでいないことを慎重に確認した上で,沖縄県編入を行ったものです。この行為は,国際法上,正当に領有権を取得するためのやり方に合致しています(先占の法理)」としている。この論が日本で広く支持されている。例えば日本共産党中央委員会出版局『外交交渉による尖閣諸島問題の解決を』(2012年10月7日)は次のように記している。「志位:当時の明治政府がかなり慎重に確かめた上で、編入の手続きをしているんですね。つまり“無主の地”の“先主”というんですけれども、持ち主のない土地を先に占めるという手続きをとった訳ですから、国際法上、正当だというのが第一点です。 角谷:手続きをとるって、どこにとるのですか。そのころは。 志位:日本がきちんと領有の -
領土問題の法的問題(その1)領土問題のすべての出発点はポツダム宣言にある
2012-11-30 00:3621pt
日本の多くの人は、領土問題を語る時、それが北方領土であれ、尖閣諸島であれ、竹島であれ、日本固有の領土であることについてほとんど疑問を持っていない。
そして、ロシアであれ、中国であれ、韓国であれ、自国領と主張しているのに対して、「日本の固有の領土の横取りを図る怪しからん連中」という感情を持っている。
それは自民党であれ、民主党であれ、共産党であれ、公明党であれ、同じである。
10月16日日経新聞は「1ミリたりとも中国に譲らず」との標題で次のように報じている。
「自民党の安倍晋三総裁は15日バーンズ米国務副長官と会談し、領有権を主張する中国と“話合いの余地はない。尖閣については領土問題がないのだから、我々は1ミリたりとも中国に譲るつもりはない”と述べた」
2012年9月27日時事通信は次のように報じている。「野田佳彦首相は26日午後(日本時間27日未明)、ニューヨーク市内で記者会見し -
荒谷卓著『誰が何を守ってきたか』
2012-11-26 21:0921pt
(講演会記録、平成22年8月6日付、抜粋)
(注:武道家、明治神宮武道場至誠館 第3代館長、元陸上自衛官、陸上自衛隊特殊作戦群初代群長)。
最初に結論を言いますと、戦後日本政府は、終戦直後のGHQ占領にあったときと同じ従属的な日米関係を守ってきたということ。なぜ、そのような歪な日米関係を守ってきたかというと、それによって日本の安全保障と経済的発繁栄が担保されるという啓蒙された期待感と政治的圧力が存在したからです。
では自衛隊は何を守ってきたのでしょうか。本来であれば、自衛隊が国防の主体となり、足らざるところを日米同盟で補完するべきところです。しかし、政府自体が主権国家としての自立した意志を持っていないわけですから、実体は、歪な日米同盟を維持するために自衛隊が政治的に利用されてきたわけです。もっとはっきり言えば、戦後政府は自らが国防の責任を果たすという主体的発想は一度も持ってこな -
中野孝次著『清貧の思想』の紹介
2012-11-24 00:1721pt
私は2009年防衛大学校を退職した。長く外務省にいて、公務員生活を終えた。
その後の定職は特になかった。
もし、この時点で大企業の顧問の職を提示されていたら、文句なく受け入れた。
もし、どこかの大学教授が提示されていたら文句なく受け入れていた。
しかし、それらはなかった。
結果としてそれが幸いした。
誰にも拘束されないが故に、自分の述べたいことを述べられる環境を得た。
それは、日本の文人が求めた環境でもあったのだ。
その当時、時間があったから、本を読んだ。その中の一つに中野孝次著『清貧の思想』がある。
読んだ人もいるだろう。幾つかの記述を紹介しておきたい。
「 日本にはひたすら心の世界を重んじる文化の伝統がある。ワーズワースの「低く暮し、高く思う」という詩句のように、現世での生存を能う限り簡素にして心を風雅の世界に遊ばせることを -
尖閣諸島と米国(その2)尖閣諸島は「米国が仕掛けた時限爆弾」
2012-11-21 18:5221pt1
ポツダム宣言では① 日本が問題なく主権を及ぼすのは本州、北海道、九州、四国である、②その他は連合国側が決めるものとなっている。連合国の中心は米国である。従って、米国の態度は、日本の領土の範囲を決める重要な役割を占めている。
ではこの米国はどの様な対応をしているか。
多くの日本国民は当然米国は「日本の領土である」という立場と思っている。しかし違う。
米国は中立である。
米国は沖縄を施政下においていた時には、尖閣諸島を管轄していた。
1971年6月17日、沖縄返還協定が調印されたが、プレイ国務省スポークスマンは、当日の会見で、尖閣諸島の『施政権』は沖縄返還にともなって日本に返還されるが『主権』の帰属については中立の立場をとるという態度を明らかにした。
さらに、ウィキリークスは1996年9月30日付CRC議会報告書「尖閣諸島;米国の法的関係と義務」で「日本へ -
尖閣諸島の緊張で日米関係の強化を目論む米国関係者
2012-11-20 11:3021pt3尖閣諸島の緊張で日米関係の強化を目論む米国関係者 今回の尖閣を巡る緊張はすべて、石原東京都知事がヘリテージ財団で尖閣諸島を購入することを発表したことからスタートしている。 「アメリカを訪問している東京・石原慎太郎都知事は現地時間16日、ワシントン市内で講演し、沖縄・尖閣諸島を東京都が買い取る方向で調整を進めていることを明らかにした。」(2012年4月17日付日テレニュース) 石原知事がヘリテージ財団で発表したことは重要な意味合いを持っている。 ヘリテージ財団は保守系シンクタンクで国防の強化などを掲げ、米国政府の政策決定に大きな影響力を持っている。 石原知事が講演したヘリテージ財団が2012年11月14日極めて興味あるレポートを発表した。キングナー(Bruce Klingner)著「米国は日本の政治的変化を利用し同盟を進化させるべきである(U.S. Should Use Japanese P -
習近平体制下の中国はどうなるか
2012-11-18 09:0021pt「習近平体制下の中国はどうなるか」
まず現在の中国はいかなる課題を抱えているか、ここから見てみたい。
中国が新体制に移行する直前、2012年11月7日Global Times紙は中国18都市1200名を対象にした世論調査を発表した。その結果は次のとおり。
・最大の関心は経済発展と生活環境。
・約3分の2が過去10年の経済的、社会的発展に満足
・81.4%が政治改革を支持し、69.7%が段階的改革を支持する、
・86.2%が第18回党大会は中国の将来にとって重要である、
・70%が政府は民衆およびメディアの監視下にあるべしとみなしている。
・次いで反汚職努力が69.3%、政府広報の透明性が66.5%である。
・85%が中国は将来より大きい挑戦を受けるであろうとみている。
・社会の安定性を阻害するものとして、第一位は腐敗で39.9%、第2位が
富の不均衡、第3位が社会の治安システム -
孫崎享の推薦図書20冊
2012-11-12 15:0021pt推薦図書20冊(2797字) ある書店から、「孫崎さんの推薦図書コーナーを作りたい」と言われて、本年9月ごろ作成したものです。その後どうなったかは聞いていません。(リスト・推薦図書 選定書それぞれに、50~100字程度のお勧め理由)第1位:イザヤベンダサン「日本人とユダヤ人」 日本人社会をこれだけ適格に、冷徹に分析した本はない。第一級の日本人論である。我々が日本社会の何処に問題が潜んでいるかを最も鋭く指摘した。日本人で、物を考える人間のグループに入りたいのであれば、絶対に読まなければならない必読の書第2位:中野孝次著『清貧の思想』 「最も大切なのは自己の自己に対する誠実である」。私達は他との関係で生きることがあまりに多いのでないか。良寛、光悦などが「自己に対する誠実を貫く」ことを最も重要と考え、自分の環境を整えていったと言える。第3位:寒い国から帰ってきたスパイ (ハヤカワ文庫 NV 17 -
「TPPに参加したい日本」はどのように生まれたか
2012-11-12 12:0021pt2「TPPに参加したい日本」はどのように生まれたか」(4420字) TPPの問題は突然出て来た。菅首相は2011年1月世界経済フォーラム「ダボス会議」で「開国と絆」と題して次のように述べた。「今、日本は改めて“開国の精神”が求められていると思います。私は今年を“第3の開国”を実現するという目標を掲げました。“包括的経済連携に関する基本方針」を閣議決定し、TPPについて昨年関係国との協議に入りました」 大変興味ある演説である。TPPに入ることによって、“第3の開国”をしようとするものだ。 菅首相は“第3の開国”を肯定的にとらえている。 でも、それでいいのか。 私は今年7月24日、『戦後史の正体』を出し、9月上旬で、14万部にきた。 『戦後史の正体』の表紙は軍艦ミズリー号上での降伏文書の署名式である。『戦後史の正体』の表紙の左端に、かすかに星条旗がかかっているのが見える。星条旗の星の数を数えてい
1 / 2