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記事 3件
  • 「戦前のテロに対する考察」小林よしのりライジング Vol.448

    2022-09-27 17:35  
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     9月27日(火曜)は安倍晋三元首相の「国葬儀」だ。
     弔いたい人は弔えばいいが、わしにとっては特にありがたい政策をやってもらった首相でもなく、最も重要な皇統の問題を放置されたことが腹立たしく、統一協会を権力の中枢に招き入れたことも、馬鹿馬鹿しい限りで許せることではない。
     アベノミクスでトリクルダウンはないと、最初から見抜いていたし、今もデフレは続いている。
     ただ長期政権だっただけで、なぜ感謝してる人がいるのか、全く分からない。
     弔いたいなら自民党葬でやっておけばよかったのに、わざわざ国葬儀にするから国民全員が文句言う資格が出来てしまい、「反対」の方が多くなるというみっともない世論になってしまった。故人に恥かかせる決定をしただけである。
     安倍氏の生前の業績を、産経新聞やWiLL、Hanadaら自称保守界隈は最大限に美化しようと必死だが、これもいずれ峻厳なる歴史の審判が下ることは間違いない。
     ただ、凶弾に斃れた安倍の最期に関しては、またぞろ「テロに屈するな」だの「テロは断固許してはならない」だのという決まり文句が出て来そうなので、その無意味さについて今回は改めて論じておきたい。
     先週も引いたが、批評家・東浩紀は、安倍殺害犯の山上徹也に同情する声があることについて、AERA8月8日号の巻頭コラムでこう述べた。
    「ネットや一部メディアで容疑者に理解を示す声が聞こえるのも心配だ。戦前でもテロリストに同情が集まった。それは敗戦に至る暗い歴史を準備した。」
     前回検証したとおり、 山上の犯行は個人的怨恨が動機で、「テロ」には当たらない。
     そして今回取り上げたいのは、 「戦前のテロ」 についてである。
    「戦前はテロの犯人に同情が集まったためにテロが頻発し、戦争への道を歩んだ。だから過ちを繰り返さないために、テロリストに同情してはならない」
    …というのも実によく聞く決まり文句だが、この主張は正当なものなのか、この機会に歴史を検証しておこう。
     とはいえ東の記述では、戦前の「テロ」とは具体的に何を指しているのかわからない。
     そこで、似たようなことを言っているノンフィクション作家・保阪正康の主張(毎日新聞 電子版・7月13日)を見てみよう。
     昭和5(1930)年から4~5年の間の要人テロと未遂事件は結局は、昭和の歴史を暗黒に染める役割を果たした。改めて並べてみると、5年の浜口雄幸首相、7年2月の井上準之助前蔵相、3月の三井財閥の団琢磨、そして5月には首相官邸で犬養毅首相の暗殺と続いている(5・15事件)。その後も8年の神兵隊事件や、10年の陸軍省における永田鉄山軍務局長の暗殺、翌年の美濃部達吉銃撃事件、2・26事件と休む間もなく不穏事件が続いていくのだ。まさにテロは連鎖していくのである。
     保阪は続けて 「二度とこういう体験を繰り返さないためにも私たちはあらゆるテロに徹底した批判の姿勢を堅持すべきなのである」 と述べている。
     東の主張と全く同じだ。東はおそらくこの記事を読んでAERAのコラムを書いたのだろう。保阪はマスコミには「昭和史の権威」として扱われているから、学校秀才バカの東は、これを全く疑うことなく丸呑みしたのではないか?
     だが、保阪が言っていることは全くおかしいのだ。
     ここで保阪が挙げた事件は、以下のとおりだ。
    【1】浜口雄幸狙撃事件(1930)
    【2】血盟団事件(1932)
    【3】5.15事件(1932)
    【4】神兵隊事件(1933)
    【5】相沢事件(1935)
    【6】美濃部達吉銃撃事件(1936)
    【7】2.26事件(1937)
     保阪はこの7事件すべてを「テロ」と呼んでいるわけだが、とても歴史家とは思えない粗雑さである。
     先週のおさらいだが、テロリズムとは敵対する当事者や、さらには無関係な一般市民や建造物などを攻撃し、これによって生ずる心理的威圧や恐怖心を通じて譲歩や抑圧などを強いることで、特定の政治目的を達成しようとする行為をいう。
     ただ、テロと一般犯罪との境界はあいまいでもあり、要人が公然と襲われた場合などは、実行者の動機や目的と関係なくテロとみなされてしまうこともあるが、それは大衆が感覚レベルで共有する漠然としたテロイメージであって、法的に定義されるテロとは違う。
     正確に歴史を検証するには、厳密な定義を蔑ろにしてはいけない。
  • 「【テロに屈するな】という標語は無意味」小林よしのりライジング Vol.447

    2022-09-20 19:35  
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     統一協会という「反日・反天皇カルト」を国家の中枢まで招き入れた人物を「国葬」にすることには反対の方が多くなっている。法の根拠がないまま、閣議決定で決めたことには首を傾げるが、弔いたい人はそうすればいい。
     奇しくも昨日、イギリスのエリザベス女王の国葬が行われたから、皮肉な格好になってしまって気の毒でもある。
     これまで散々「安倍マンセー」を唱えてきた言論人は、安倍が選挙に勝つために統一協会と手を組み、そのおかげで「憲政史上最長の政権」を維持していたという「不都合な真実」から目をそらそうと必死である。連中も所詮は 「反日・反天皇カルト」 に与する売国勢力にすぎないのだ。
      普通の宗教なら、自分の正体を隠して、日本人だけを洗脳し、主体性を完全に奪って、集金奴隷に改造するようなことはしない。統一協会は明らかに人権無視のカルトなのだ。
     7月10日、ニコニコチャンネルの参院選開票特番で、国際政治学者・ 三浦瑠麗 、批評家・ 東浩紀 、ノンフィクションライター・ 石戸諭 の3人が、社民党党首・福島瑞穂の発言に対して、常軌を逸した反応を示す一幕があった。
     福島はまず、安倍が殺害された事件について 「いかなる暴力にも反対する」「安倍さんの死に哀悼の意を表する」 と述べ、その上でこう発言した。
    「もし統一教会を応援しているということが問題とされたのであれば、まさに自民党が統一教会によって大きく影響を受けている、ということも日本の政治の中で、これは問題になりうると思っているのですね」
     見事だ!ぴしゃり、当たっている!
     これに東は 「『自民党は統一教会と関係しているからこのようなテロを招いた』と言った」 と口調を荒げ、三浦は 「ほぼそれに近い」 と同調。
     さらに東は 「これは大変な発言ですよね!」 と言い、石戸が 「だから福島さんというか、社民党は小さくなるんですよ!」  と非難し、さらに三浦が 「これはもうニュースになってしまいます。しかし申し訳ないけど私の責任ではないと思います。一度、牽制球を投げましたからね。」 と言ったのである。
     福島は「自民党は統一教会と関係しているからテロを招いた」とは言っていない。あくまでも自民党が統一協会の影響を受けていたとしたら問題ではないかと言っているだけで、それは全く真っ当なことである。
     それなのに三浦瑠麗、東浩紀、石戸諭の3名が、ここまで狼狽するというのは、見るからに異常である。
     実はこの3人こそが、自民党が統一協会と関係があると知れたら大変なことになると心底恐れていて、そこに直接触れる発言がいきなり出てきたものだから、パニックを起こしてしまい、全力で封殺しなければならないと血相を変えたのだろう。
      しかしその後たちまち、統一協会と自民党、特に安倍政権がズブズブの関係だったということは、隠しようのないものとなった。
     すると、「自民党と統一協会に関係があるなんて、その可能性について言うことすらまかりならん!」と言っていたはずの三浦瑠麗は、「自民党と統一協会に関係があったとしても、そもそも統一協会なんて大した問題ではない」という発言を繰り返すようになった。
     8月26日の「朝まで生テレビ!」では 「統一協会で何を今さら騒いでるんですか、みんな知ったことでしょ。私はこの問題に興味ありません」 とまで発言。興味のない問題で、なぜあんなに狼狽したのか?
     さらに三浦は 「すごい献金してて困窮してても、多くの家族は山上みたいに殺人してない!」 だの 「反日なんて言葉使わないで!」 だのと、問題を矮小化しようと必死だった。
     一方の石戸も、 「選挙運動を手伝ったり、政治家のパーティー券を買ったりと政界とのつながりは現在もある (中略) だが、つながりがあることと、影響があることはまったく別の問題である」( サンデー毎日8.14号)だの、統一教会が持つ票数は8~15万票程度だから 「公明党の支持母体・創価学会が持つ600万~700万票にも遠く及ばない」 (SPA!8.2号)だのと書いている。
     統一協会信者の実数は6万人程度で、石戸の言う「8~15万票」より少ないが、選挙ではものすごい僅差で勝敗が決まる激戦区があり、当落ギリギリの候補へ効果的に票を割り振れば、6万票で何人かは当選させられる。実際に安倍は実際統一協会に頼んで票の差配をやっていたし、ましてや地方議会はもっとずっと少ない票数で決まるから、その威力は相当なものとなるのは間違いないのである。
     SPA!の執筆者の批判は、SPA!連載の『ゴーマニズム宣言』で描いてはいけないというルールを強いられているのでここで書くが、石戸は事実を平然とねじ曲げて、統一協会の問題を火消ししようと躍起となっているのだ。
  • 「なぜ統一協会の教義に嵌るのか?」小林よしのりライジング Vol.446

    2022-09-06 16:20  
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     安倍晋三が殺害されて間もなく2カ月になる。
     月刊誌「WiLL」「Hanada」は先月に引き続き今月号でも、大々的に安倍の写真を表紙に配した特大追悼号を組んだ。
     両誌とも表紙は同じ写真で、安倍の家族葬で飾られていた遺影を使っていて、必死に追悼ぶりを張り合っているようだ。
     世間じゃ安倍晋三と統一協会の関係が明らかになるにつれ、追悼ムードというより、国葬反対で沸騰してしまっている。
     安倍の国葬については、唯一賛成が反対を上回っていた読売新聞の世論調査でも、ついに逆転した(国葬実施を「評価しない」56%、「評価する」38%)。
     岸田首相は国葬を決めた理由のひとつに 「安倍元首相に対する諸外国の弔意と敬意」 を挙げ、先月31日の会見でも 「諸外国から多数の参列希望が寄せられている。国として礼節をもって応える必要がある」 と言っていた。
      ところが実際は、案内状の返事が8月中旬の締め切りを大幅に過ぎて9月になっても多くの国から届いておらず、外務省は困惑しているようだ。
      米国のバイデン大統領、フランスのマクロン大統領、そしてドイツのメルケル前首相も参列を見送ることが決まり、中でもG7で一番長く一緒だったメルケルまで来ないことは驚きの目で見られているという。
     この調子だと、「弔問外交」で安倍の権威付けを図った狙いも壮大な空振りになるのではないか。
     国葬費用は2億5000万円と発表されていたが、これには警備費用が計上されていない。ある見積りでは警備費用に35億円はかかるといい、昭和天皇の大喪の礼の警備費用24億円、今上陛下の即位礼正殿の儀の際の28億5000万円を遥かに超えるのは確実だという。
     この調子だと、オリンピックと同じでどこまで費用がふくらむかわかったものではない。昭和天皇の場合は葬儀と陵の造営までを含めて100億円だったそうだが、それを超えることだって起こりかねない。
     左翼はあくまでも「国葬反対」でデモまでやったりしているが、安倍マンセー派は、どうせ「アベガー」の左翼が騒いでるだけと思っている。
     わしとしては 「勝手に国葬していいから、暗殺の原因を徹底究明して、統一協会を排除しろ 」と言いたい。
      暗殺の原因を徹底究明したら、浮上するのは安倍晋三本人だと判明するし、カルト団体が権力の中枢に入っているのは、国家の恥だとわしは主張している。これはあくまでも「保守」の追及の仕方であり、左翼と一線を画すことが出来る。
     世間一般の安倍に対する冷ややかな反応に比べて、「WiLL」「Hanada」の相変わらずの熱狂的な「安倍マンセー」ぶりは、まるで別世界だ。
     統一協会問題については、WiLL巻頭の櫻井よしこと門田隆将の対談で、櫻井が
    「天宙平和連合 (UPF)なる統一教会の関連団体にビデオメッセ―ジを寄せただけで、「広告塔」扱いされています。」
    と、安倍を擁護。
    「統一教会の関連団体にビデオメッセ―ジを寄せただけで」 って!
      そういうのを「広告塔」っていうんだよ!!
     これに門田はさらに、UPFにはトランプ前米大統領、フランス、インド元首相らもメッセージを寄せていて、安倍だけではないと擁護。
      そのギャラは日本の女性信者から収奪したカネだというのに!
     ふたりとも、これで世間を論破できたつもりでいるところがすごい。櫻井は自分が統一協会系団体で講演していた関係があるから、何があっても「問題ない」ことにしなければならないのだろうが、保身のために必死で嘘をついているという様子もなく、むしろすっかりカルトの思考に染まっているようにも見える。
     これが「Hanada」になるともっとすさまじくて、 「総力特集 統一教会批判は魔女狩りだ! 」というページを組み、 しかもその筆頭の記事の著者がなんと「世界日報特別取材班」だ!
     いまや政治家は、過去に世界日報にインタビューが載っていただけでも「統一協会とつながりあり」と見なされて針のムシロに座らなければならないというのに、わざわざ 「世界日報特別取材班」 を、堂々と名乗らせて執筆させているのだから呆れる。
     編集長の花田紀凱という人物は、どんなに人間的にモラルを欠いても商売人の嗅覚だけは鋭かったはずだが、ついにその鼻もカルトの毒にやられたらしい。
     しかもそうまでして招いた世界日報による記事が言っていることが、 「世界日報は統一協会の機関紙ではない」 という、些細な問題に終始している。
     前号の泉美木蘭さんの記事にあるとおり、厳密にいえば世界日報は統一協会の「機関紙」ではないが、 「統一協会系新聞」であることは間違いなく 、協会と一体であることに変わりはない。もちろん、泉美さんが前号で紹介した世界日報の闇の部分などには、一切触れてはいない。
     花田は、こんなどうでもいい記事を載せることと引き換えに、 自ら月刊「Hanada」は「統一協会の友好雑誌」であると宣言したのである。