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記事 6件
  • 「間違った戦争でも靖国神社に祀るか?」小林よしのりライジング Vol.93

    2014-07-15 20:10  
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    『 保守も知らない靖国神社 』(ベスト新書)が発売された。
     靖国神社をめぐる言論状況は、10年前と現在では全く違っている。それなのに自称保守論壇の頭脳は完全に硬直化していて、10年前の議論をそのまま繰り返し、「首相の靖国参拝に反対している国は中国・韓国だけであり、そんなものは気にせず堂々と参拝すればいい」とばかり言っている。
     昨年末の安倍首相の靖国参拝に対して米国政府が「失望した」と、かつてない強い表現で非難したことの意味など、まともに考えようとはしない。
     自称保守派の知性の劣化現象は目を覆うばかりで、もはや靖国神社が何のための神社であるかも知らず、安倍首相が何のために靖国に参拝したのかを意識することもなく、ただ首相が靖国を参拝したというだけで大喜びしている。
     安倍晋三の参拝は、実は靖国神社を侮辱したものであるということになど気がつきもせずに。
    『 保守も知らない靖国神社 』は、そんな自称保守派にはびこる反知性主義に対する警告として、現在の靖国神社を巡って考えておかなければならない論点を考え得る限り網羅した一冊である。
     発売翌日には、早くもAmazonのレビュー欄に最初の書き込みがあった。ところが評価が☆1つだったため、またネトウヨが読みもせずに罵詈雑言を書き込んだかと思ったのだが、読んでみるとそうではなかった。
    著者の靖国神社擁護論にはまったく賛同できないが、靖国の本質が「日本を戦争できる国にするための神社」であるという主張そのものは、完全に筋が通っている。著者の意図とは裏腹に、靖国神社が日本人にとっていかに危険な存在かを再確認させてくれる、ある意味で貴重な本である。
     …と、主張そのものには「完全に筋が通っている」と認めた上で反対していたのである。
     ただし「著者の意図とは裏腹に」というのは違う。ちゃんとわしが意図して「危険な存在」だと知らせたのだ。平和の施設ではないし、慰霊さえすればいいという施設でもないと。
     さらにレビューはこう続く。
    著者は、保守派とされる政治家が靖国に参拝して、「我々は二度と戦争はしません」と誓うことほど、英霊を侮辱する行為はないと憤る。なぜなら「靖国神社は、日本を戦争できる国にするための神社である」(191頁)からだ。
    米国の戦没者遺骨収集事業を見るがいい。実に専門的、科学的、組織的、そして総合的に行われている。なぜそこまで熱心なのか。「それは、『次の戦争』を前提としているからである」と著者はいう。「若い兵士に対して、たとえいつどこで死ぬことになろうと、自分たちは決してあなたを忘れない、どこで死のうと、必ず骨は祖国に帰してあげるという態度を明確に国として示しておかないと、次の戦争ができないのである」(188-189頁)。この指摘は正しい。国家が戦死者を祀るのには、それなりの理由があるのである。
    靖国神社も「次の戦争」のための神社であらねばならない、と著者は強調する(207頁)。そのためには、参拝者の増減で財政が左右される民間の宗教法人であってはならない。「やはり国営化しかない」(289頁)。靖国神社が国家による戦争を精神的に支える装置であるならば、そのような結論になるのは至極当然である。
     きちんと読んで、内容を理解している。
     だが内容を理解した上で、このレビューは結論において本書を否定するのだ。
    もちろん著者の脳裏には、国家が間違った戦争に国民を駆り立てる可能性など、寸毫たりともよぎりはしないのだろう。もしあなたが国家指導者も誤りを犯すことを知っているならば、彼らが靖国の権威を高めようと躍起になるときは、用心したほうがいい。著者が教えてくれたように、靖国は戦争をするための神社なのだから。
     おそらくレビュー筆者は『 保守も知らない靖国神社 』以外のわしの言論活動は知らないのだろう。
  • 「日米関係、歴史問題、消費税増税…どうなる安倍政権?」小林よしのりライジング Vol.77

    2014-03-11 17:10  
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     右翼・左翼のイデオロギーには関係なく、権力には懐疑の念を持ち、「王様は裸だ」と言ってしまう勇気を持つ表現者は必要なのだが、残念ながらそういうオピニオン・リーダーや表現者が若者の中から出現することがなくなった。
      その最も大きな原因はインターネットだろう。
     若手の知識人はインターネットこそが自分たちの文化であり、ネットさえあれば幸福だと言っている。
     20代の知識人が書いた「絶望の国の幸福な若者たち」という書名はまさに今どきの若者の性向を的確に表現している。
      だがネットは言葉を徹底的に劣化させる。
     大学生の40%は読書ゼロという統計もあるが、多分、新聞も読んでないし、ネットしか見てないのだ。
      経済的格差が拡大し過ぎ、将来の不安が大きすぎて、若者の中に「 反権力 」という文化も消滅した。
     日本で排外主義ナショナリストが支持する安倍首相が、ローリングストーンズを見に行き、田母神極右が若者の支持を得ているらしいから、もはや若者文化が育つ素地が失われている。
     国民は惰性で権力の暴走を、指をくわえて見守るだけの時代になってしまったが、この状況を警戒しておられるのは、もはや天皇陛下くらいかもしれない。
     最近の「おことば」で「憲法」に関して踏み込んで発言をされる、天皇皇后両陛下のご様子から、隙のない闘争心を感じる。
     尊皇なきナショナリズムが国民をどこに連れて行こうとしてるのか、我々は監視の目を緩めてはならない。
     鳴り物入りで始めたアベノミクスが蜃気楼だったと気付く国民も、じわじわ増えてきているのではないだろうか。公共投資がほんの一部に経済効果をもたらしただけで、膨大な借金を積み上げつつ、日本は昔のまんまの利権王国に戻りつつある。
     わしは「 たとえ株価が上がっても、実体経済には影響せず、円安で物価が上がるが、一般庶民の賃金は上がらず、生活は一層苦しくなる 」と言い続けてきたが、その通りの現状である。
     輸出から輸入を引いた 貿易赤字 は過去最大の11兆4745億円。貿易赤字が増えても 経常収支 がマイナスでなければ大丈夫なのだが、困ったことに経常収支も赤字に転じた。
     これはグローバリズムの構造的な問題なので、グローバリズムそのものを問題視しなければ解決の道がない。
     自民党や、田母神俊雄ら自称保守&ネトウヨ一派は、貿易赤字を原発停止による化石燃料の輸入増のせいにしようとしていたが、民主党がこの件を国会で追及し出して、ようやく嘘っぱちだと言う者も出てきた。
      化石燃料の輸入量は震災前よりも増加しているが、昨年はわずかながら減少に転じており、赤字が増加したのは円安のせい、つまりアベノミクスのせいなのだ。
     円安になれば回復すると期待されていた輸出が低水準に止まったのは、 製造業が生産拠点の海外移転を進め、国内の産業が空洞化したためであり、今後いくら円安が進んでも輸出の増加には直結しない。
     株価も「異次元の金融緩和」によって、 外国の投資家がマネーゲームで株を買い越しているが、国内の投資家は売り越している。
     アベノミクスの唯一の成長戦略と言っていたTPPは、交渉の閣僚会合が合意に至らず、次回の日程さえ決められないまま閉幕した。もっとも、TPPでグローバリズムがさらに加速されるような政策は悪夢だから、さっさと頓挫してしまった方が良いのだが。
     さらに安倍政権にとって最大の悪夢となっているのが、対米関係の悪化である。
     安倍晋三は首相就任当初、民主党政権時代に崩壊した日米同盟を蘇らせると高らかに宣言したが、 今や日米関係は民主党時代どころではない「戦後最悪」とまでいわれる状態になってしまった。
     米政府が「失望した」なんて強い表現は、鳩山由紀夫にすら使ったことはないのだ。
      ところが日本のいわゆる「親米保守派」は、親米を自称していながら、アメリカがなぜ「失望」するのかが全然理解できない。
     最初のうちはパニック起こして、「失望」と言ったって大した失望ではない、それは翻訳がおかしいなどと、躍起になって過小評価しようとしていた。まるで駄々っ子のように現実を拒否していたのだ。
      米国はイラク戦争の失敗と深刻な財政難による軍事費削減のため、中東や東アジアに対する関与をなるべく控えたいと考えている。
      もちろん中国との衝突なんて米国は一切望んでいない。 中国の台頭には、日・米・韓が緊密に連携して均衡を保つというのが米国の基本戦略なのだ。
     そのため、昨年12月にはバイデン副大統領が日中韓を歴訪。安倍首相との会談では日中の対立激化を防ぐため両国間でより効果的なコミュニケーションをとる必要があると述べ、さらに日韓の関係改善を促した。
      ところが、その直後に安倍は靖国を参拝したのだ。 しかも参拝は見送るようにと米国から忠告されていたのを無視しての強行であり、米国政府は完全に面目を潰された。
     そりゃあ「失望した」と言って当然だ。
     靖国参拝によって中国が喜んだことは間違いない。中国の挑発行動が東アジアの緊張状態を作り出しているというのが国際常識となっていたのに、中国が「 日本こそが緊張の原因だ 」と主張できて、それがある程度説得力を持つようになったのだから。
     しかも、日本と韓国の亀裂が深まったために、 韓国は中国・北朝鮮寄りに外交姿勢を変えようとしている。 韓国の国柄である「事大主義」の面目躍如だ。
     金正恩体制が暴発して、北朝鮮軍が韓国へ軍事進攻することだってあり得るのに、一方の韓国に北朝鮮と戦争する覚悟があるとはとても思えない。
  • 「なぜ安倍政権は欧米から危険視されるのか?」小林よしのりライジング Vol.75

    2014-02-25 20:15  
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    安倍首相の靖国神社参拝は、中国・韓国だけでなく、欧州からも不評で、何と言ってもアメリカから「失望」声明を出されたことが安倍政権には痛かったようだ。
     米大使館のフェイスブックが、ネット右翼たちの攻撃で炎上してしまったことで、米政府に安倍政権の「コアな支持層」の攻撃性・反知性的な獣性が伝わり、益々、アメリカ人の安倍晋三への警戒心が強まっただろう。
     ネット右翼たちは自分たちが日米関係を阻害し、国益を損ねていることにまったく気づかない。
     自称保守派の言論人は、最初のうちは「失望」という言葉はそれほど重い意味合いはないと主張していたが、今頃事態の深刻さに気付き始めたようだ。
     さらに ダボス会議 で安倍首相が、現在の日中間の緊張を、 第一次大戦前の英独関係 に例えたのは最悪だった。
     これで欧州では、安倍首相は「 右翼のルーピー 」と蔑まれるようになり、中国を利することになった。
     日本人はダボス会議での安倍首相の発言の重大性をわかっていない。自称保守派も含めて、「平和ボケ」のサヨクだからだ。
     安倍首相は欧州の報道陣の前で、「 日中間の悪化した関係が100年前の、第一次世界大戦の前の英独関係を思わせる。だがしかし、日中は、大きな経済的相互依存関係にあり、両国の経済的繁栄が地域の平和における防波堤になっている 」と述べたが、無知の知ったかぶりで「第一次世界大戦前夜」の例をわざわざ出したことが大失敗だった。
     さらに「 中国は年間の軍事費を10%のペースで増加させているし、しかも不透明だ 」と中国を非難し、日中の軍事的緊張関係を強調した。
     そして質疑応答で、 日中戦争の可能性を明確に否定しなかった。
      これに欧米の報道機関は驚き、BBCの記者は恐怖を感じたのだ。
     欧州にとって 第一次世界大戦 は第二次世界大戦よりも恐怖を感じさせる非常にセンシティブな問題である。安倍首相が笑みを浮かべながら堂々と持ち出せる話題ではないのだ。
      1914年のオーストリアの大公夫妻が銃撃されるという小規模な事件が、同盟のコミットメントを引き起こして、連鎖的に広範囲な世界大戦に拡大したのが第一次世界大戦である。
     戦争が 国家総力戦 となった始まりであり、ヨーロッパ全土に亘って悲惨な物的・人的被害がもたらされ、足掛け5年に亘って900万人以上の兵士が戦死した。
     欧米の政治家や知識人たちは、この些細な火種から世界大戦に拡大するシナリオを熟知していて、日中関係をまさに世界大戦前夜として捉え、緊張感を持って論じている。例えばハーバード大学のジョセフ・ナイはこう言う。
    「我々の中で1914年の例を引き合いに出して議論した。誰も戦争を望んでないのはわかっているが、それでも我々は日中双方に対してコミュニケーションの失敗やアクシデントについて注意するよう促した。抑止というのは合理的なアクターたちの間では大抵の場合には効くものだ。ところが1914年の時の主なプレイヤーたちも、実は全員が合理的なアクターたちだったことを忘れてはならない」
     ナイ教授の同僚のグラハム・アリソンもこう言う。
    「1914年の時のメカニズムは非常に役立つものだ。セルビア人のテロリストが誰も名前の聞いたことのない大公を殺したことで、最終的には参戦したすべての国々を破壊させてしまった大戦争を引き起こすなんて、一体誰が想像しただろうか?私の見解では、中国の指導部はアメリカに対して軍事的に対抗しようとするつもりはまだないはずです。しかし中国や日本の頭に血が上ったナショナリストたちはどうでしょうか?」
     1914年当時のドイツの支配層も、民衆からの政権批判を逸らすためにナショナリズムを利用した。
     中国共産党も同様の理由でナショナリズムを利用している。そして日本では自称保守のタカ派やネット右翼が、安倍晋三を衝き動かす構図になっているのだ。
     欧米人が大学の国際関係で最初に学ぶのは、古代ギリシャの「 ぺロポネソス戦争 」である。欧米人の感覚を理解するために、思いっきり大雑把にこの戦争についても解説しておく。
     古代ギリシャでは、優れた民主制度を作り上げていた アテネ を中心とする デロス同盟 が覇権を拡大し、支配力を強めていた。これに スパルタ を中心とする ペロポネソス同盟 は危機感を覚えていた。
     多分、現代の欧米人はアテネをアメリカ、スパルタを中国と連想するかもしれない。
     その緊張関係の中で、コリントスの植民地とアテネの小さな紛争が起こり、これがきっかけとなって、紀元前431年~前404年、二つの同盟は大規模な戦争に発展していった。
     このときアテネ内部で多数現れたのが「 デマゴーゴス(扇動政治家) 」である。
     現在の日本で言えば、強硬なタカ派・右傾化した自称保守のようなものだ。
     この「デマゴーゴス」が、先導的な詭弁や嘘を「 デマ 」という起源である。
      民主制の中で台頭したデマに長けた指導者は、民衆を扇動して、アテネは衆愚政治に陥り、ペロポネソス戦争の和平案を次々と潰していき、国力が衰退して、ついにペロポネソス同盟に降伏することになるのである。
     この戦争はギリシャ全体の衰退の原因となった。
      欧米人はこの戦争から、「最終的に戦争が回避できない」という政策決定者の確信が、戦争を招くという教訓を学ぶ。
     戦争を回避できないとなれば、相手を信頼しない、先に裏切った方が安心ということになり、アテネ人もこの選択で戦争に突入し、破滅した。
      政治家は「最終的な戦争が避けられない」というニュアンスを見せてはならない。
     安倍首相の靖国参拝や、ダボス会議での言動は、欧州の知識人層に、戦争をもくろむ危険な指導者、極めつけの馬鹿、「 右翼のルーピー 」の評価を決定づけ、中国ロビーの「日本が中国を挑発している」という宣伝活動を利する結果になった。
     日本の政治家や自称保守の論客たちは、第一次世界大戦が欧米人に与えた教訓を知らない。
     とんでもない安倍首相のミスを、自民党議員や自称保守派は「通訳が悪い」と言って、通訳に責任転嫁していたのだから、もはや手が付けられないアホである。
  • 「遺骨収集・千鳥ヶ淵墓苑が形骸化する理由」小林よしのりライジング Vol.69

    2014-01-14 22:20  
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    「遺骨収集・千鳥ヶ淵墓苑が形骸化する理由」  安倍首相は昨年4月、大東亜戦争末期の激戦地で、今も日本兵約1万2千の遺骨が残る硫黄島を訪れ、「 遺骨帰還事業を着実に進める 」と表明した。
     これを受け政府は 厚労、防衛、外務各省による作業チームを結成。 事業費として平成26年度予算に数十億円を計上し、部分的な収容と調査を並行して着手するという。
     さらに安倍首相は今年から2年間を目標に、同じく大東亜戦争末期の激戦地だった南太平洋の島国へ、現職首相としては29年ぶりとなる歴訪の方針を固め、合わせて 政府は平成26年度から、南太平洋諸国やミャンマーなどでの戦没者の遺骨収集事業を強化する方針を固めた。
     いずれも日本人戦没者を慰霊し、遺骨収集活動を強化したいとする安倍首相の強い意向によるという。

     南太平洋諸国やミャンマーへの訪問には、中国の進出を牽制する狙いがあるとか、 昨年末の「 靖国神社参拝 」と「 遺骨収集の強化 」を「 慰霊のため 」の一連の行動だと強調する ことで、靖国参拝に対する中国や韓国の反発を和らげようとの思惑があるとか言われている。
    「靖国神社参拝」が「遺骨収集」と同じ「慰霊」だと、国民にも、諸外国にも、強調すること自体が完全に間違っている。
      靖国神社は「特段、英(ひい)でた霊」に対する「顕彰」の施設であって、「慰霊」の施設ではない。
     英霊は犠牲者ではなく、英雄であって、靖国神社に参拝したら、命を賭けて国を守ってくれた英霊に感謝し、我々もその覚悟を誓うのが本当なのだ。
    「遺骨収集」は「犠牲者」に対する「慰霊」だから、靖国神社とは根本的に理念が違う。

     そもそも硫黄島への入島制限を緩和し、事業費を10倍に拡大するなどの方針を打ち出し、同島の遺骨収集事業を大幅に推進したのは民主党の菅政権で、政権交代以前から国による遺骨収集事業は推進される傾向にあった。
     菅直人も以前から遺骨収集には積極的だったということで、当時、菅は
    「 せめて御遺骨を御家族の待つ地にお返ししなければならない。これは国の責務であります 」
    「 われわれは、尊い命を賭して祖国を守ろうと硫黄島で奮闘された英霊に思いを致し、この国の平和と繁栄をしっかり築いていかなければなりません 」
     といった発言をしている。ただ、自称保守派やネトウヨたちが、靖国神社に冷淡な菅直人のやることだから「欺瞞」だと決めつけ、無視していただけのことである。

     遺骨収集など、戦没者慰霊事業の担当部署である厚生労働省によると、海外における戦没者は約240万人で、収容された遺骨は約127万体。海に沈むなどして収容が不可能なものや、国交のない北朝鮮などにある遺骨を除き、まだ約60万体の収集が可能という。
     これらの戦没者を、一人でも多く、一刻も早く「帰還」させたい…実はわしもかつてはそう思っていた。遺骨に魂が宿っているという遺骨信仰がわしの中にも残っていたのだ。
     だが同時にこういう疑念が拭い去れなかった。
      それでは、遺骨が収容されていない戦没者の霊は、日本に「帰還」していないのか?
      太平洋に没した遺骨、シベリアに斃れた遺骨、満州・シナ・朝鮮に埋もれた遺骨はどうなるのか?
      戦没者の霊は、全て英霊として祖国に帰還し、靖国神社に祀ってあるのではなかったのか?
      靖国神社に遺骨はない。祀られているのは「霊」だけだ。
      遺骨収集は日本人の骨への信仰で成り立つのだろうが、その聖地は千鳥ヶ淵墓苑である。
     もともと神様を数える単位である「柱」が、遺骨を数える単位としても使われていることなどから混同されやすいのだが、 遺骨信仰と、霊魂信仰は違う。むしろ、相反するものとさえ言える。
      遺骨が還らなければ帰還したことにならないというのでは、靖国神社の否定につながってしまうのだ。
     だから、菅直人が靖国神社を否定する一方で、遺骨収集事業に熱心だったとしても、これには全く矛盾はない。
      逆に靖国神社と遺骨収集事業を一続きのもののように思っている、安倍政権や自称保守の感覚の方がおかしいのだ。

     遺骨収集は昭和27年の「遺骨送還に関する閣議了解」などに基づき実施されているが、政府が推進する上での法的根拠は弱く、民間が中心となって行なわれてきた。
     この「民間」というのは具体的には各地の 戦友会 や 遺族会 などである。これらの人々にとっては、 戦没者は自分に近しい存在だったわけだから、遺骨を野ざらしにしておきたくはない、できれば日本に帰還させ、きちんと弔いたいという思いは「情」として全く当然のものだった。
     だが平成に入った頃から、戦友会や遺族会の人たちが高齢化し、現地入りすることが困難となってきたのに伴って、戦没者とは直接のつながりを持たないボランティア団体が遺骨収集に関わるようになってきた。ここが、遺骨収集事業の大きな転機となったのである。
  • 「失笑!安倍首相の靖国参拝は『不戦の誓い』だった!」小林よしのりライジング号外

    2013-12-28 13:25  
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      ゴーマニズム宣言 「失笑!安倍首相の靖国参拝は『不戦の誓い』だった!」   首相の靖国参拝はもう新たな局面に入ったのではないだろうかと思っている。 どうせ来月発売の自称保守&ネトウヨ系の言論誌は、安倍首相よくやったと絶賛一色だろうが、国際的な感覚が全くない、内弁慶な議論でしかない。
     以前のように朝日新聞や左翼が中韓にご注進に及んでこの問題をこじらせてきたとか、中曽根総理が「公式参拝」を言い出すまでは普通に靖国参拝していたとか、その頃は中韓も文句を言わなかったとか、そういう歴史的事実を述べても、アメリカを始め世界に対して説得力を持つレベルではなくなった。
     安倍首相の靖国参拝を受け、在日米大使館は「失望した」と声明を出したが、それを安倍政権が軽く受け止めていたため、米国務省がさらに同じ内容の声明を出して、米政府の姿勢を明確にした。
     日米防衛相の電話会談も延期になって、ようやく日本政府も事の重大さに気づき始めたようだ。
     アメリカだけの話ではない。欧州でも安倍政権は失笑されている。
     一国の首相にしては世界からの視線に鈍感過ぎるのではないか?
     安倍首相は世界中から異様なタカ派だと見られている。
     フランスの極右政党党首ルペンや、ロシアの極右政党党首ジリノフスキーのように、短絡的で偏り過ぎた極右の首相と思われているだろう。
     わしの目からは、もはや完全な ネトウヨ首相 だ。ネトウヨと同レベルの国際感覚なのである。
     慰安婦問題もそうだが、首相の靖国参拝は、もう国際的には新たな局面に入ってしまって、自称保守論壇の内向きな強硬意見は、日本を孤立させるだけの自慰行為になってしまった。
     そもそもわしは小泉純一郎の首相在任中の靖国参拝の時も警告を発していたのだが、新自由主義・グローバリズムで、日本の国柄を破壊する政策を遂行するために、ナショナリズムは利用されるようになってしまった。
      靖国参拝はもはや新自由主義の隠れ蓑になってしまったのだ。
     この矛盾がどうしても自称保守&ネトウヨには理解できない。靖国参拝さえしておけば愛国者と認定する単細胞が、今の自称保守&ネトウヨなのである。
     しかもこの連中は皇位継承問題では「男系Y染色体固執」で団結しており、天皇陛下の御意思も踏みにじって恬として恥じない。皇統断絶の危機を将来している一群なのである。
      つまり「天皇なきナショナリズム」だ。
     天皇のため、郷土(クニ)のために戦った英霊たちは、悲嘆に暮れていることだろう。
     しかも自称保守にしても、かつて小泉が8月15日を避けて参拝した時には批判していたはずである。
     だが今回の12月26日という無意味な日の首相参拝には、なぜかこぞって称賛の声を挙げている。
     いつの間にやら靖国参拝のハードルはすっかり下がり、いつでもいいから、とにかく行きさえすりゃいいということになってしまったようだ。
     さらに肝心なことは、首相が靖国神社をどういう場所と捉え、何のために参拝するのかという意識である。
     安倍は今回どういう意識で靖国神社を参拝したのかを、談話で発表している。その談話のタイトルは 「恒久平和への誓い」 というのだ!
    http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/discource/20131226danwa.html
     これだけで、安倍は靖国神社がどういうところか一切理解していないということが明らかである。
  • 「二重低頭外交に向かう日本」小林よしのりライジング Vol.49

    2013-08-13 17:50  
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    麻生太郎副総理兼財務相の「 ナチスの手口見習ったらどうかね 」発言は、さすがに自民党の御用新聞である産経新聞ですら擁護する気になれなかったようだ。  産経は8月3日の社説で「お粗末な失言であり、撤回したのは当然である」「発言は日本のイメージや国益を損なった。麻生氏は重職にあることを自覚し猛省してほしい」「ナチスの行為を肯定すると受け取られかねない表現を用いたのはあまりに稚拙だった」「『いつの間にか』『誰も気づかないで』憲法が改正されるのが望ましいかのような表現は不適切だ」と批判している。珍しく、実に真っ当な社説である。  ところがこんな麻生の失言まで徹底擁護する、デリカシーの欠けた自称保守言論人がいる。 櫻井よしこ だ。  そもそも麻生の今回の失言は、櫻井が理事長を務める「公益財団法人 国家基本問題研究所(国基研)」のセミナーで飛び出したもので、櫻井はその主催者兼司会者という当事者中の当事者だった。  立場上、擁護しなければならないのかもしれないが、その理屈はあまりにもデタラメだ。 何しろ麻生の発言は正当なもので、朝日新聞が発言を「歪曲」して騒動を起こしたと言い張るのだから!  櫻井は8月5日の産経新聞コラム「美しき勁き国へ」で「 朝日の報道は麻生発言の意味を物の見事に反転させたと言わざるを得ない 」と断じ、「 朝日は前後の発言を省き、全体の文意に目をつぶり、失言部分だけを取り出して、麻生氏だけでなく日本を国際社会の笑い物にしようとした 」と非難している。   完全にネトウヨと同レベル、「都合の悪いことは何でもかんでも朝日新聞の陰謀!」という「朝日新聞陰謀論者」になっている。  しかし今回は産経の社説も朝日とほぼ同じ批判をしているが、産経は「陰謀」じゃないのだろうか?  朝日新聞が過去に政治家の片言隻句を文脈から切り取り、歪曲して「失言」をでっち上げたことがあるのは周知の事実だ。だが今回の麻生の発言は既に全文がネットに上がっていて、正当化しようがないシロモノなのは明白である。  ところが櫻井は「 一連の発言は、結局、『ワイマール体制の崩壊に至った過程からその失敗を学べ』という反語的意味だと私は受けとめた 」と言うのだ。  反語的意味?????  ほとんどガキの言い訳だ。こんな言い逃れが通じるのなら、言いたい放題暴言吐いて、非難されたら「 それは反語的意味で、真意は、逆のことを言いたかったのだ 」と言えば済むことになってしまう。   ところが「国基研」は団体の見解としても、「あれは反語」だと表明しているのだから、あきれ果てる。  音声で聞くと麻生はいかにも冗談・軽口といった口調で「 あの手口、学んだらどうかね 」と言っており、それに対して会場から笑い声が上がっている。   だが一国の副総理が公の場で 「 ナチスの手口、見習ったらどうかね 」 なんて、たとえ冗談でも言えないことくらい常識のはずだ。しかもこの発言は文字に起こすと冗談とは一切伝わらない。  さらにナチス云々を別にしても、 憲法を「誰も気づかない間に変わった」手口に学んで改正しろというのは、あまりにも不謹慎、不適切であり到底正当化できるものではない。  こんなことを軽率に口にできること自体が、憲法改正について真面目に考えていない証拠であり、冗談めかして言いながら実際には「 誰も知らないうちに、こっそり憲法改正できたらいいな~ 」というのが本音だとしか思えない。   これに笑っていた客席の感覚も異常だし、まして、これが「反語的意味」なんて解釈はどうひっくり返ったって不可能である。  麻生の発言は二重にも三重にも無知が絡まり合っていて、もう一点根本的な誤りがある。朝日も産経も社説で指摘し、東京新聞(8月8日)が詳しく解説していたが、 麻生はナチスの台頭に関する世界史の常識を全然知らないのだ。  麻生は日本の憲法改正論議を「狂騒の中でやってほしくない」としたうえで、「 ある日気づいたら、ワイマール憲法がナチス憲法に変わっていたんですよ。誰も気づかないで変わった 」と言っている。   まず第1に、「ナチス憲法」なんてものはない。ナチスは「全権委任法」を成立させて、ワイマール憲法を事実上死文化させたのである。   しかもそれは「誰も気づかない間に」行なわれたのではない。それはまさに狂騒の中での出来事だったのである。