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  • 「N国党に『公』はない!」小林よしのりライジング Vol.324

    2019-08-06 19:55  
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     以前から選挙のたびに奇矯な「泡沫候補」は出てきた。
     それはただ、普段は決して表には出られないような奇人変人を見て、笑っておけばいいだけのものだったはずだ。
     ところがそれが国会に1議席でも占めてしまうとなると、話は全く変わってしまう。
     今回の参院選で「NHKをぶっ壊す!」のひとことをひたすら繰り返して、何の間違いか1議席を獲得してしまった「NHKから国民を守る党」(N国党)が、とにかくイヤだ。
     なにしろ比例代表で約84万票を獲得、公職選挙法に規定された政党要件である「得票率2%以上」まで満たしてしまったのだから尋常ではない。
     そもそもNHKをぶっ壊すって、それが国家にとって何か重要な話か?
     確かにいまのNHKは政権批判を全然しなくなり、メディアの役割を果たしていないとも言えるし、そういう問題に対してはいくら怒ってもいいが、だからといってその組織や団体すべてを潰してしまえとは、そう簡単には言えない。
     わしはNHKには朝ドラなど、別の面では楽しませてもらっている。来年春から朝ドラの土曜日放送がなくなるのは不満だが、それは「土曜日も働け!」というだけの主張であって、そんなことで「NHKをぶっ壊せ」とか言ったらアホである。
     わしがNHKに対して最も腹を立てたのは10年前、「シリーズ・JAPANデビュー アジアの“一等国”」(2009年4月5日)という、台湾に関するとんでもない偏向番組を放送した時だ。
     それは、日本の台湾領有を全て暗黒に塗りつぶした自虐史観そのものの番組で、わしの『台湾論』を完全否定する内容だった。
     日本李登輝友の会によれば、台湾でもこの番組を観た人からの疑問の声が相次ぎ、若い世代の間でも「僕のおじいちゃんは日本大好きなのに、あの番組は変だよ」「NHKはどうしてこんないい加減な番組を日本人に見せるのだろう」と話題になったという。
     しかしそれでもわしは、その問題ひとつでNHKを潰せとは全く思わなかった。朝日新聞の慰安婦報道は酷いものだったが、それだけで朝日新聞を潰せと思わない。それと同じことである。
     一方、この「JAPANデビュー」の件をきっかけに自称保守・ネトウヨ連中は「反NHK」の運動に沸き立った。
     CS放送局(当時・現在はネット配信のみ)の「チャンネル桜」は原告を募ってNHKを相手に「1万人訴訟」を起こし、「NHKの大罪」と題するキャンペーンを展開。日の丸を掲げて「NHK解体」の文字を大きく染め抜いた黒Tシャツを着た一団が、渋谷のNHK周辺でデモ行進を行った。
     その頃チャンネル桜らと共闘していたのが、今回参院議員になってしまった立花孝志だ。
      立花は元NHK職員で、経理の仕事をしていた。 2005年に不正経理を内部告発、懲戒処分を受けて依願退職した後はパチプロで食っていたようだが、やがてNHK集金人を撃退したり、NHKの「闇」を告発したりといった動画をユーチューブに次々投稿して反NHK運動を始め、ユーチューバーの走りのような存在になっていた。それでチャンネル桜に呼ばれ、共闘関係になったのだ。
     ところが安倍政権が発足するとNHKは政権忖度メディアになり、自称保守・ネトウヨのNHK攻撃は次第に下火となって、ターゲットは朝日新聞に移っていった。
     それと共に、 立花は自称保守・ネトウヨ界隈からは姿を消した。立花は朝日新聞攻撃には全く興味が無く、それどころか、嫌韓・反中とか、慰安婦とか、靖國とか、その他諸々の問題についても一切関心を持たず、やりたいことはただただたったひとつだけ、「NHKをぶっ壊す」だけだったのである!
     そんなわけで立花は「反NHK」の流行がすっかり過ぎ去った後も愚直に「NHKをぶっ壊す!」を唱え続け、2013年に政治団体「NHKから国民を守る党」を設立したのだった。
     しかし、立花はなぜそこまで「NHKをぶっ壊す」ことだけにこだわっているのだろうか?