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記事 1件
  • 「『ポエム化社会』にある深刻な問題とは?」小林よしのりライジング Vol.70

    2014-01-21 18:30  
    154pt

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    「ポエム化社会、マジとパロディの両立が必要」  現代は「 ポエム化 」しているという。
     前向きで優しく、聞き心地はよいのだが、大げさで意味不明な詩のような言葉が、社会のあちこちに氾濫しているというのだ。
    「日刊SPA!」のウェブサイト(http://nikkan-spa.jp/507075)にその「症例報告」が載っていたので、その中からいくつか拾ってみよう。
      新築分譲マンションのチラシやパンフレット には…
    「 天空に舞い踊る星々のトレモロ。人々の営みを物語る地上に散りばめられた灯火のロマネスク。あるいは、早朝のまどろみから朝日に洗われつつ姿を現す都会のエクリチュール 」
      旅館やホテルのHP では…
    「 がんばるのに少し疲れたな…と思ったら、『月のうさぎ』におかえりなさい。あなたは現世のかぐや姫。そしてここはあなたの心の故郷。胸のもやもや、隠し事も、ほんのり月夜に消えてしまいます 」
      大学案内 では…
    「 『学び』というペンで、夢を未来を描き出そう。開いたノートが『まだ、まっ白!』でもかまわない。未完成だからこそ、想像以上の私になれる 」
      朝日新聞の『天声人語』 も…
    「 文筆に卒業はない。厳しくも温かい恩師である読者との交流を糧に、外へと踏み出したい。東京は残花を惜しむ週末。ひとひら風に舞って、この国を、また好きになる 」
      ラーメン屋の壁 には…
    「 いま居る処が最後の砦 そしてすべての始まりなんだ がんばろうぜ 」
    「 この人生は一生懸命 私の人生は一笑賢命 いつでもどこでも いっしょうけんめいが いちばん美しい 」
     さらには、 自治体の条例の名称 まで「ポエム化」が蔓延しているそうで、
     熊本県人吉市「 子どもたちのポケットに夢がいっぱい、そんな笑顔を忘れない古都人吉応援団条例 」
     滋賀県草津市「 愛する地球のために約束する草津市条例 」
     北海道厚沢部町「 素敵な過疎のまちづくり基本条例 」
     秋田県横手市「 雪となかよく暮らす条例 」
     新潟県阿賀野市「 みんなで支えよう『こころ』と『いのち』を守る条例(案) 」
     …といった、正体不明の条例が続々と誕生しているという。
     1月14日のNHKクローズアップ現代『 あふれる“ポエム”?!~不透明な社会を覆うやさしいコトバ~ 』は、その「ポエム化」社会をレポートしていたが、特に目を引いたのは、「居酒屋」とそこに勤める若者たちの現状だった。
     居酒屋というのはもともと「ポエム」の宝庫で、 相田みつを まがいの筆文字の「ポエム」が店中の壁一面、トイレにまで『耳なし芳一』みたいに書き込まれた居酒屋なんかもよくあるそうだが、問題はそんなことには留まらない。
     昨年11月、5000人の聴衆を集め、「日本一の居酒屋」を決める「居酒屋甲子園」なるイベントが開催された。
     決勝大会の審査基準は料理の味や接客ではなく、 居酒屋で働くことの「希望や夢」を謳いあげる「魂の“ポエム”」 だという。
     そこでは居酒屋で働く若者が、自らの過去のつらい体験を告白し、 「愛」「希望」「勇気」「絆」「仲間を大事に」「笑顔」 等々の綺麗事の言葉をちりばめて、決して楽ではない居酒屋の現場で働く中で、前向きに生きる希望や夢を見つけることができたという「喜び」を情感たっぷりに訴えかける。
    「 夢はひとりで見るもんなんかじゃなくて、みんなで見るもんなんだ!人は夢を持つから、熱く、熱く、生きられるんだ! 」と絶叫する金髪の若者。
    「 変わりたい。今の自分は嫌だ!みんなから愛される店長になりたい! 」と、目を潤ませながら語る店長。
    「 私にガンが見つかりました。どうして私が、なんでこんなつらい思いを… 」という体験を打ち明ける女性店員…。
     そして、それを聞いた観客も感激して涙ぐんだりしているのだ。
     同様のコンテストは今、居酒屋だけではなくトラックドライバーや介護士、歯科助手、パチンコ店員、エステティシャンなど、10以上の業種で行なわれているという。
     出場者は居酒屋で働く「夢と誇り」を、全身の身振り手振り、満面の表情に浮かべて絶叫し、涙まで流して訴え、観客はそれを見てストレートに感動している。
     そんな「居酒屋甲子園」の様子を見て、わしはどうにもむずがゆくてたまらない気持になった。
     それは新興宗教や、自己啓発セミナーにもよく似た一種異様な光景とも見えたが、ここでわしが連想したのは、かつて毎年成人の日に行なわれていた『青年の主張』だ。
      『 青年の主張 』は昭和31年(1956)からNHKが開催していた弁論コンテストで、毎年テレビ・ラジオで全国放送されていた。
     毎年設定されるテーマに沿って、その年の新成人が「主張」を発表するのだが、その内容はといえば、自分の不幸な過去を告白し、それから綺麗事の言葉を並べ立てて、自分が今、いかに前向きに夢や希望を持って生きているかを訴えるという、青臭く、公に言うのは恥ずかしい、偽善的といってもいいようなものがとにかく目についた。