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記事 4件
  • 「やむを得ないからネットでシッター?」小林よしのりライジング Vol.79

    2014-03-25 17:10  
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     埼玉県富士見市のマンションで2歳男児の死体が発見され、この部屋で男児を預かっていた26歳のベビーシッターの男が逮捕された。
     死亡した男児の母親は横浜県磯子区の22歳、無職のシングルマザー。今月14日、2歳の長男と8カ月の次男の二人を預け、16日に引き取ることになっていたが、その日になっても連絡がとれなかったために警察に通報、事件が発覚した。
     死亡した男児は裸にされて口を塞がれたような跡があり、皮膚が変色している部分が数カ所あった。次男も裸にされていて複数のあざのようなものがあり、低体温症になっていて、病院に搬送され入院した。
      母親は子供を預ける10日ほど前から少なくとも7回、男とメールで連絡を取り合ってベビーシッターを依頼したが、男の名字とメールアドレスしか知らなかったという。
     メールだけのやりとりで、しかも男の名字しか知らない。「信用」の二文字を一切考慮せず、我が子を名字しか知らない、本名かどうかもわからない他人に預けられるものだろうか?
    母親は22歳で二児の母、しかもシングルマザーというのが驚くが、ネット依存が普通の世代なのかもしれない。
      母親は以前にもインターネットを通じてベビーシッターを依頼していたが、この時、長男の頬が腫れていたことと背中にあざがあったことがあり、支払いでもトラブルがあったため、利用をやめていた。
     実は逮捕された男は、このトラブルを起こしたベビーシッターと同一人物だった。 ところが男は偽名を名乗り、出迎えにも別人を使いに出していたため、母親は知らずに同じ危険な男に預けていたのだ。
    しかも使いの男は以前に子供を預けたことがあり、問題のなかった人物だったため、安心していたという。
     母親は報道陣の取材に対して「子どもに申しわけない。助けられずに『ごめんね』としかいえないです」と涙を流したという。
     ベビーシッターを利用した理由については、「 経済的な事情で仕事に出る時もあった。お金のこともあって、すぐに預けられる場所がなかった 」と説明している。
     逮捕された男は、「きのうの昼ごろに自分が薬を飲んで寝てしまい、きょうの朝、目が覚めたら死んでしまっていた」と話している。
     男は地元の中学を卒業後、調理師の専門学校に進学、卒業後は調理や運送関係の仕事を転々としたがいずれも長続きせず、昨年11月頃からこのマンションでベビーシッターを始めていた。
      この男はネットの仲介サイトには5つ以上の偽名を使い分け、ウソだらけの経歴を登録していた。
      他にも子供が顔を腫らし、傷を作って戻って来たというケースがあったとか、1~2時間連絡がとれないこともザラだったとか、以前から相当に問題がある人物だったようだ。
     
      ベビーシッターは、国家資格である保育士資格も行政への届け出も必要なく、誰でも開業できる。 そのためにベビーシッターをインターネットで始める事業者も多く、その実態は国も自治体もほとんど把握していない。
     また、 もともとベビーシッターは子供の自宅へ訪問するのが基本 で、外で預かるのは本来のベビーシッターとは「別物」なのだが、法定資格ではないので、これでも「ベビーシッター」を名乗れてしまう。
     この事件について、19日の日本テレビ系『スッキリ!!』で、コメンテーターのタレントで一児の母である大沢あかねは、こんな発言をした。
    「 私は見ず知らずの人に、その人の自宅で預かってもらうっていうことはまず理解できません。(自分が)ベビーシッターさんに預ける時は、必ず信頼できる人の紹介だったり、そのベビーシッターさんに家に来てもらって、5~6回は必ず私も含めてシッティングしてもらうって形でやってます。
     今回2歳と8か月のお子さんを見ず知らずの…2歳と8か月だったら自分の思いも言葉にできない年齢じゃないですか。それを見ず知らずの人に、しかもその人の家で預かってもらうっていうことはやっぱり理解できません 」
     するとネットでは、こんな非難が殺到したという。
    「あなたがちゃんとした人に預けてるのは、お金があるからだよ」
    「5~6回も自分も一緒にシッティングとかそんな余裕のある母はそうはいないぞ」
    「一般人は芸能人みたいに金持ちじゃないんだから預けるしかない場合もある」
    「あなたのようにちゃんとした配偶者もいて、大金持ちでいくらでも預ける相手を選べる人はそうでしょうよ。どうして持たざる者の視点で考えられないのか」
     他にも、この事件で母親側の落ち度を指摘したら、たちまち炎上という事態が相次いでいるらしい。
     わしも、「ゴー宣道場」ブログ17日付で以下のように書いた。
      信頼を担保するものが何もないベビーシッターをネットで見つけて、我が子を預ける母親がいるとは驚きだ。
     馬鹿と言うしかない。
     誘拐犯だったらどうするのだ?
     変質者だったらどうするのだ?
     あまりにも無責任だ。
     ネットの中の他人を信用してはいけない。
     ネットで知り合って、たとえ和気あいあいと話すようになっても、やはり他人だ。
     実は変質者かもしれない。
     実は殺人鬼かもしれない。
     ネットの中の他人との絆なんか信じてはならない。
     ネットのせいで知人と他人の区別がつかなくなっている。
     まったく恐ろしいことだ。
     大沢あかねより過激だから、文句が来るはずだ。ブログやライジングの読者を始め、ゴー宣道場門弟からも反論があった。
      いずれも、働かなくては子供を育てられないシングルマザー、それも若くて収入も少ない母親には、ネット以外の手段がないというものだった。
     子育て経験のある女性からは、幼い子供はよく突然熱を出すし、発熱した子供は保育所では預かってくれず、助けてくれる身内も近くにいないとなると、本当に途方に暮れるので、ベビーシッターに頼りたくなる気持ちはよくわかるという意見が届いていた。
     ネットで見つけるのがダメなら代替案を出せという意見もあった。
      この人たちはネットがなかったら、どうしていたのだろう?
      子供も含む自分の人生はネットと一蓮托生だと決めているのだろうか?
  • 「『アンネの日記』破損事件と日本の右傾化現象」小林よしのりライジング Vol.78

    2014-03-18 14:00  
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     東京都内の図書館や書店で『アンネの日記』などユダヤ人迫害関連本が相次いで破られた事件で、小平市の 36歳の無職男性 が逮捕された。
     男は被害に遭った杉並区の図書館の防犯カメラにも映っていた。
    『アンネの日記』を破る事件はここ最近発覚したが、男は約1年間にわたって豊島区や杉並区で、執拗に本を破る行為を続けていたという。
     男は破った本の紙片をポケットに隠し、自転車で移動中に捨てたと供述しており、その供述通りの場所から紙片が見つかっており、容疑はほぼ固まりつつある。 
     池袋ジュンク堂書店内で、男は「アシスタントとゴーストライターは違う」と書いたビラを貼った容疑で逮捕されたのだが、その文面も「アンネの日記」はアンネではなく、父親が書いたというデマがあるので、そのことを意味してるのだろう。
     もちろんこのデマはオランダ国立戦時資料研究所とオランダ国立法科学研究所の筆跡鑑定と文書調査を中心とした科学的な検証によって公式に否定されている。
     男のパソコンにはインターネットの接続履歴が残っておらず、消去して証拠隠滅を図った可能性があるらしい。
      さて、この事件で最も重要なことは、自民党の議員や、自称保守派の言論人や、桜チャンネルなどの極右メディアや、ネット右翼の連中が、事件が報じられると忽ち犯人を「在日」「韓国人」「中国人」の組織的謀略と主張していたことである。
     3月14日の産経新聞1面コラム「産経抄」でも、最近、日韓両国が反日宣伝の文脈で、日本の「 右傾化 」の例として『アンネの日記』等の破損事件を挙げていることについて、「 どこがどうつながるのか 」と書いている。
      いや、つながる可能性が大なのだ。
     容疑者が逮捕される前、韓国のハンギョレ新聞は「 在日特権を許さない会(在特会)などが主導する“嫌韓デモ”のように、日本社会の病的な右傾化現象とどんな関係があるのか興味深い 」と論説、他の韓国メディアも在日韓国・朝鮮人排斥を訴える「ヘイトスピーチ」と結びつけて報道した。
     反日に凝り固まった韓国マスコミなんか評価したくはないが、在特会のことまで、よく観察している。
     これに対して在特会広報局は「 当会の活動と『アンネの日記』など被害に遭った図書とでは何ら思想信条的な関係性はありません。また、本事件といわゆる『嫌韓』の動きはまったく無関係であります 」という声明を発表した。
     声明の中で在特会は「 むしろ、世界中の図書館で日本海や竹島関連の図書を損壊している者たちの犯行と見たほうが、より現実的である 」と言っている。
     つまり、 世界中で反日活動を行なっている韓国人の仕業だと言うのだ。
     しかも在特会自身が、何の確証もなくそんな主張をしているくせに、
    「 確証もなく、安易に犯人を当会関係者と推定したり、動機を当会の活動と結びつけることは厳に慎み、良識ある報道を心がけていただけますようお願い申し上げます 」と平然と言ってのけるのだから、その身勝手さにはあきれ果てる。
     再度詳述して触れるが、この事件が報じられると、在特会の見解と歩調を合わせるかのように、 事件は日本人に反ユダヤ主義の浸透があるかのように見せて、日本の国際的なイメージを貶めようとする中国・韓国の謀略だ などという陰謀論が公然と流布された。
     ネット右翼だけではない。自称保守の評論家やジャーナリスト、極右メディアでも反日謀略説が平然と語られ、中国・韓国の謀略機関の仕業だと「確信する」とまで言った馬鹿もいた。
     片山さつき議員や、中山成彬議員までが、韓国の関与をほのめかせていた。
     勝谷誠彦は、こういうときは誰が一番得するかを考えるべきだと言い、これは支那人の組織だった犯行だと言っていた。
     自称保守の極右連中は、誰も彼もが在特会と同レベルの陰謀論を主張したのだ。
     わしだって中韓の反日宣伝に同調したくはないが、残念ながら『アンネの日記』破損事件と、日本国内での「排外主義」は繋がっている。
      そもそも「犯人は在日、韓国人、中国人だ」と、ただちに主張すること自体が、排外主義ではないか! 
     公に言ってはいけないことがある。関東大震災の直後のように、朝鮮人が井戸に毒を盛ったと言いふらす人間になるか、そのデマを止める人間になるか、それが問われている。
     もう日本の憎韓・反中は病気である。

      そもそも、在特会の主張と反ユダヤ主義は無関係だという在特会広報の声明は大嘘なのである。
      在特会会長の櫻井誠 は昨年、ユダヤ人団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」が日本におけるヘイトスピーチを問題視し、在特会を監視するよう主張したことに逆上して「 反ユダヤデモやろうかな 」と表明、イスラエル大使館に抗議文を出し、 ユダヤ人を「中東の朝鮮人」と呼び、敵視と憎悪をエスカレートさせている真最中なのである。
     さらに「 在特会会員・大和真実 」と名乗る人物のツイッター
    https://twitter.com/aikokubakusou
    まとめサイト
    http://matome.naver.jp/odai/2139350819657253801
    には、以下のような発言が氾濫している。
  • 「日米関係、歴史問題、消費税増税…どうなる安倍政権?」小林よしのりライジング Vol.77

    2014-03-11 17:10  
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     右翼・左翼のイデオロギーには関係なく、権力には懐疑の念を持ち、「王様は裸だ」と言ってしまう勇気を持つ表現者は必要なのだが、残念ながらそういうオピニオン・リーダーや表現者が若者の中から出現することがなくなった。
      その最も大きな原因はインターネットだろう。
     若手の知識人はインターネットこそが自分たちの文化であり、ネットさえあれば幸福だと言っている。
     20代の知識人が書いた「絶望の国の幸福な若者たち」という書名はまさに今どきの若者の性向を的確に表現している。
      だがネットは言葉を徹底的に劣化させる。
     大学生の40%は読書ゼロという統計もあるが、多分、新聞も読んでないし、ネットしか見てないのだ。
      経済的格差が拡大し過ぎ、将来の不安が大きすぎて、若者の中に「 反権力 」という文化も消滅した。
     日本で排外主義ナショナリストが支持する安倍首相が、ローリングストーンズを見に行き、田母神極右が若者の支持を得ているらしいから、もはや若者文化が育つ素地が失われている。
     国民は惰性で権力の暴走を、指をくわえて見守るだけの時代になってしまったが、この状況を警戒しておられるのは、もはや天皇陛下くらいかもしれない。
     最近の「おことば」で「憲法」に関して踏み込んで発言をされる、天皇皇后両陛下のご様子から、隙のない闘争心を感じる。
     尊皇なきナショナリズムが国民をどこに連れて行こうとしてるのか、我々は監視の目を緩めてはならない。
     鳴り物入りで始めたアベノミクスが蜃気楼だったと気付く国民も、じわじわ増えてきているのではないだろうか。公共投資がほんの一部に経済効果をもたらしただけで、膨大な借金を積み上げつつ、日本は昔のまんまの利権王国に戻りつつある。
     わしは「 たとえ株価が上がっても、実体経済には影響せず、円安で物価が上がるが、一般庶民の賃金は上がらず、生活は一層苦しくなる 」と言い続けてきたが、その通りの現状である。
     輸出から輸入を引いた 貿易赤字 は過去最大の11兆4745億円。貿易赤字が増えても 経常収支 がマイナスでなければ大丈夫なのだが、困ったことに経常収支も赤字に転じた。
     これはグローバリズムの構造的な問題なので、グローバリズムそのものを問題視しなければ解決の道がない。
     自民党や、田母神俊雄ら自称保守&ネトウヨ一派は、貿易赤字を原発停止による化石燃料の輸入増のせいにしようとしていたが、民主党がこの件を国会で追及し出して、ようやく嘘っぱちだと言う者も出てきた。
      化石燃料の輸入量は震災前よりも増加しているが、昨年はわずかながら減少に転じており、赤字が増加したのは円安のせい、つまりアベノミクスのせいなのだ。
     円安になれば回復すると期待されていた輸出が低水準に止まったのは、 製造業が生産拠点の海外移転を進め、国内の産業が空洞化したためであり、今後いくら円安が進んでも輸出の増加には直結しない。
     株価も「異次元の金融緩和」によって、 外国の投資家がマネーゲームで株を買い越しているが、国内の投資家は売り越している。
     アベノミクスの唯一の成長戦略と言っていたTPPは、交渉の閣僚会合が合意に至らず、次回の日程さえ決められないまま閉幕した。もっとも、TPPでグローバリズムがさらに加速されるような政策は悪夢だから、さっさと頓挫してしまった方が良いのだが。
     さらに安倍政権にとって最大の悪夢となっているのが、対米関係の悪化である。
     安倍晋三は首相就任当初、民主党政権時代に崩壊した日米同盟を蘇らせると高らかに宣言したが、 今や日米関係は民主党時代どころではない「戦後最悪」とまでいわれる状態になってしまった。
     米政府が「失望した」なんて強い表現は、鳩山由紀夫にすら使ったことはないのだ。
      ところが日本のいわゆる「親米保守派」は、親米を自称していながら、アメリカがなぜ「失望」するのかが全然理解できない。
     最初のうちはパニック起こして、「失望」と言ったって大した失望ではない、それは翻訳がおかしいなどと、躍起になって過小評価しようとしていた。まるで駄々っ子のように現実を拒否していたのだ。
      米国はイラク戦争の失敗と深刻な財政難による軍事費削減のため、中東や東アジアに対する関与をなるべく控えたいと考えている。
      もちろん中国との衝突なんて米国は一切望んでいない。 中国の台頭には、日・米・韓が緊密に連携して均衡を保つというのが米国の基本戦略なのだ。
     そのため、昨年12月にはバイデン副大統領が日中韓を歴訪。安倍首相との会談では日中の対立激化を防ぐため両国間でより効果的なコミュニケーションをとる必要があると述べ、さらに日韓の関係改善を促した。
      ところが、その直後に安倍は靖国を参拝したのだ。 しかも参拝は見送るようにと米国から忠告されていたのを無視しての強行であり、米国政府は完全に面目を潰された。
     そりゃあ「失望した」と言って当然だ。
     靖国参拝によって中国が喜んだことは間違いない。中国の挑発行動が東アジアの緊張状態を作り出しているというのが国際常識となっていたのに、中国が「 日本こそが緊張の原因だ 」と主張できて、それがある程度説得力を持つようになったのだから。
     しかも、日本と韓国の亀裂が深まったために、 韓国は中国・北朝鮮寄りに外交姿勢を変えようとしている。 韓国の国柄である「事大主義」の面目躍如だ。
     金正恩体制が暴発して、北朝鮮軍が韓国へ軍事進攻することだってあり得るのに、一方の韓国に北朝鮮と戦争する覚悟があるとはとても思えない。
  • 「天皇陛下と皇族方の『おことば』を聞いているか?」小林よしのりライジング Vol.76

    2014-03-04 21:55  
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     天皇皇后両陛下や、皇太子殿下をはじめ皇族方は、式典などで「 おことば 」を発表され、お誕生日などの節目には記者会見で発言をされる。
     天皇皇后両陛下と皇太子ご夫妻、秋篠宮ご夫妻のおことばや記者会見は全文が宮内庁のホームページに掲載され、いつでも簡単に見ることができる。しかし、これに注目している国民は極めて少ないというのが実情だろう。
     それは、どうせ天皇や皇族という立場の人は、無難なあたりさわりのないことしか言えない、言わないに決まっているという先入観があるからではないか。
     お誕生日の前の記者会見など、宮内庁記者会の記者が相手だし、あらかじめシナリオが決められていて、それを無難にこなしているだけなのだろう。
     ましてや式典などの「おことば」なんか、宮内庁の役人あたりが美辞麗句を並べたてた作文を、ただ読み上げているだけなんだろう。
     天皇や皇族が、自分の考えを口にすることなんかあるわけなく、そんな言葉は聞く必要がない…と、多くの人が思っているはずだ。
     だが、それは全くの誤解である。
      天皇陛下も皇族方も、おことばや記者会見を国民にメッセージを届けられる数少ない機会と捉え、その発言はご自身で作成されているのだ。
     もちろん、天皇・皇族に限らず重要な立場にある人ならば、何でもかんでも思いついたことを放言できるわけがない。
     東京オリンピック・パラリンピックの組織委員長の立場にありながら、平気で「あの子は大事なところで必ず転ぶ」なんて放言するような政治家とは、言葉に対する注意がまったく違う。
      天皇陛下や皇族方は、もちろん自らの発言の重みを自覚しておられるから、十分に神経を使い、配慮をして言葉を選ばれる。
     しかしそれは決してただ無難な八方美人の言葉ではない。渾身の努力で、練りに練って選び抜いた言葉で、ご自身のお考えを我々に示しておられるのである。
     ゴー宣道場の師範、高森明勅氏は天皇陛下や皇族方のおことばを読み解くエキスパートで、折につけそのご発言の意味を解説してくれる。
     例えば昨年9月、国際オリンピック委員会(IOC)総会に 高円宮妃久子殿下 がご出席しスピーチをされたが、実はこれは大変なものだったのだ。
     総会ご出席は東京五輪招致活動への「 皇室の政治利用 」になりかねないと、他ならぬ天皇陛下が大変憂慮されていたのだが、それにもかかわらず、安倍政権はゴリ押しで実行させてしまった。
     そんな中でのスピーチで、高円宮妃殿下はこうおっしゃったのである。
    「 IOC評価委員会の委員の皆さまは、本日ここに私がいることを驚いていらっしゃるかと思います。実は、私自身も皆さまと同様に驚いております 」
     要するに 「私は本来、こういうところに出て来てはならない立場なのです」とおっしゃっている のだ。にもかかわらずここにいて、そのことに自分でも驚いているというのは、 無理やりこの場に引っぱり出した安倍政権に対する強烈な異議申し立てなのである。
     そしてさらに妃殿下はこう続けられる。
    「 東京で、皇室の役割や立ち位置についてお話ししたことは、現在でも当てはまります 」
      皇室の役割や立ち位置とは政治には関われないというもの であり、それが今も当てはまると言うことで、 このスピーチは五輪招致を訴えるものではないと表明されたのだ。
     続けて妃殿下は、IOCやスポーツ界による東日本大震災被災地支援への感謝や、スポーツ振興の意義ということに絞って話をされた。そして最後に「 さて、これからいよいよチーム・ジャパンのプレゼンテーションが始まります 」とおっしゃった。
      つまり、自分のスピーチは東京五輪招致のプレゼンテーションではないということを、改めてはっきりと示されたのである。
      懸念された「皇室の政治利用」を避け、安倍政権に対してもそれとなく、しかしはっきりと釘を刺している。 これは考えに考え抜かれたスピーチだったのである。
     2月21日、 皇太子殿下 のお誕生日2日前に行なわれた記者会見における殿下のご発言も、実に奥の深いものだった。
     http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/02/kaiken/kaiken-h26az.html
     皇太子殿下は「この1年を振り返り,印象に残ったことについて」という質問に対して、まず度重なった台風・豪雨災害の犠牲者への哀悼の意と、遺族・被災者へのお見舞いと早期の復興を祈るお気持ちを話され、さらに最近の大雪による被害を心配された。
     さらに、雅子妃殿下と共に東日本大震災被災地を訪問された時のことを挙げ、妃殿下と共に被災地の復興に永く心を寄せていくとおっしゃっている。
     そして次に「 現在、日本社会は、様々な意味で転機を迎えています 」とした上で、社会の中から諸課題を克服するための前向きな取り組みが生まれていることを実感したとして、全国各地でご覧になった実例----東北の被災地で、地域ぐるみで高齢者や子育て層などを支援している仮設住宅、全国障害者スポーツ大会で参加者を支えるボランティア、開発途上国での草の根協力のために派遣される青年海外協力隊など―---を紹介された。
     わしが中でも注目したのは、「 山間地域の皆さんが協力して、里山の景観や伝統的な農法を保存し、継承しながら、努力されるなど地域活性化のために各地で様々な取組が行われていました 」という例を挙げられていることだ。
     これらの実例を紹介した上で、皇太子殿下はこうおっしゃっている。