• このエントリーをはてなブックマークに追加

今なら、継続入会で月額会員費が1ヶ月分無料!

記事 58件
  • 「配偶者控除は低賃金の原因ではない」小林よしのりライジング Vol.209

    2017-01-25 00:25  
    150pt

    電子書籍の機能を使用するには、記事を購入してください


     政治学者の三浦瑠麗氏が週刊新潮1月19日号の連載コラム「週刊『山猫』ツメ研ぎ通信」で非正規労働者について論じていて、その中でこんなことを言っている。
     実際のところ、労働者の四割を占める非正規のうち七割は女性です。多くは、「専業主婦」であるパートさん。残り三割の相当部分が定年退職後の高齢男性。若い男性の非正規というのは案外少ないのです。  昨年12月、ゴー宣道場のゲストに招いた時にも同じことを言っていて、その時も、直感的に違和感を覚えた主張である。
    「パートさん」という軽い呼び方にも、わしは違和感を覚えるのだが、非正規労働者とは、専業主婦や定年退職者がせいぜい「家計の足し」か「小遣い稼ぎ」のために片手間で就業しているものではない。真剣に生活がかかっている人たちなのだ。
     言っておくが、わしは三浦氏を個人的には応援していて、天皇退位問題では「天皇の人権」を配慮するリベラルな立場から、常にわしの側についてくれ、男系固執派に打撃を与えてくれたので、感謝している。
     井上達夫氏と同様に根本的な思想が違う部分があるが、権力の暴走を防ぐための徴兵制の効用など、三浦氏には共感するところも多々ある。
     さて、昔は確かにパートは主婦の副業にすぎないという感覚はあった。だから主婦は配偶者控除の「103万円の壁」を超えない程度に、そこそこ働いておけばいいという意識だったのだ。
     だが今は違う。中間層の家庭の主婦が、夫の将来に不安を持ち、子供を貧困層に落としたくなくて、なんとか大学まで行かせたいと願っている。そのための塾を含む膨大な学費を捻出するためにも、主婦が少しでも多く稼がなければならない。
     いったん貧困層に落ちたら、子の世代、孫の世代まで「貧困の連鎖」が続くから、親たちも必死なのだろう。主婦も決して「パートさん」なんて軽い立場じゃないのだ。
     定年退職後の高齢男性にしても、悠々自適だけれどヒマだからちょっと働いているという状態ではない。老人の貧困化は現在急速に進んでいる最中だ。
     60歳で定年退職して、65歳から年金が支給されるとして、その間食いつないでいかなければならないし、65歳を過ぎても、病気の不安や高齢化に伴う不安もあるから、稼げるうちに稼いでおかなければ危ないと、誰もが必死なのである。
     
     そもそも「非正規のうち七割は女性」という事態は、就労環境に男女差別があると考えなければおかしいはずだ。非正規の七割が女性という状況は、専業主婦の片手間仕事の「パートさん」が多いから当然だということではなかろう。
     これでは、結果的に男女差別の存在を黙認することになってしまう。わしの方が「リベラル」なのだろうか?
     なお、残り3割の男性非正規について 「相当部分が定年退職後の高齢男性。若い男性の非正規というのは案外少ない」 という主張も、本当なのかどうか調べてみた。
  • 「共謀罪は独裁への道」小林よしのりライジング Vol.208

    2017-01-17 20:40  
    150pt

    電子書籍の機能を使用するには、記事を購入してください

     安倍政権が今月20日召集の通常国会で「共謀罪」法案の成立を目指すという。
     共謀罪とは、犯罪計画を話し合うだけで処罰対象となるもので、過去には小泉政権が2003年、2004年、2005年の3回にわたって法案を提出し、いずれも野党や世論の反対によって廃案となっている。
     安倍政権は10年以上前に3度も否定された法案を、何としても通そうとしている。その意図は、しっかり見抜いておかなければならない。
      そもそも日本の刑法は「既遂」、すなわち実際に犯罪が行われ、具体的に被害や危険が生じた場合にのみ処罰を行うのが原則である。
     実行行為に及んだものの「未遂」であれば刑を軽減でき、さらに例外的に殺人や放火などの重大犯罪については、実行行為がなくても準備や計画をしただけで罪となる「予備罪」「準備罪」などの規定がある。
      ところが「共謀罪」は犯罪の実行行為はおろか、準備も具体的計画もなく、ただ犯罪計画を話し合っただけで罪に問えるのであり、これは日本の刑事法体系を根本からひっくり返しかねない暴挙なのだ。
      しかもそれを、懲役・禁固4年以上の600以上にも及ぶ犯罪を対象にする方針らしい。
     そしてさらにいえば、実行行為はおろか、準備も、計画の立案にすらも至らない、 「計画を話し合う」だけで処罰の対象になるということは、要するに「内心で考えていること」が罰せられるということであり、憲法で保障された思想信条の自由に対する侵害となるのである。
     菅官房長官は記者会見で、テロ対策のために「国際組織犯罪防止条約」の締結が必要不可欠で、「共謀罪」法案はそのための法整備だと説明している。
     だがこれは、小泉政権下で3度持ち出され、3度論破された理屈なのだ。
     国連総会で2000年11月に採択された同条約は、マフィア対策のため、国際犯罪が多いマネーロンダリング(資金洗浄)や麻薬の密造・販売を取り締まることを目的としたものである。
     同条約は世界180以上の国が締結しているが、その中で条約締結のために新たに国内法を整備した国があるかという国会質問に対して、政府はノルウェー、ニュージーランド、オーストラリアのたった3か国しか挙げていない。
     そもそも国連では同条約については「締約国の国内法の基本的原則と合致した方法で行う」と説明しており、 実際には現行法のままでも「国際組織犯罪防止条約」には十分対処でき、締結は可能なのだ。
     条約締結のために日本の刑事法体系をひっくり返し、600以上もの犯罪に関わる大幅な法改正となる「共謀罪」が必要という説明は、圧倒的に説得力を欠いている。だからこそ法案は3度も廃案になったのである。
  • 「安倍政権の失政総まとめをしておこう」小林よしのりライジング Vol.207

    2017-01-10 21:15  
    150pt

    電子書籍の機能を使用するには、記事を購入してください

     平成29年、最初のライジングである。
     新年にふさわしい、めでたい話題を扱おうと思ったのだが、残念ながら何も思い浮かばない。
     それよりも、いま書いておかなければならないことは、昨年安倍政権が犯した失政の数々である。
     とにかく次から次へとムチャクチャなことをやらかすから、ライジングで取り上げきれなかったものもあるし、もう覚えきれないほどだ。だが忘れてしまえばどんな失政も「なかったこと」にされ、さらなる失政を積み重ねられてしまうのだから、一度列挙しておかなければならない。
    ◆アベノミクス
     第二次安倍政権の最重要政策として位置づけられてきたアベノミクスだが、4年目に入った昨年も、何の成果も挙げられなかった。
     そもそも昨年元旦の「朝まで生テレビ」で、政府の産業競争力会議の一員である竹中平蔵が「トリクルダウンなんてありえない」と断言した時点で、アベノミクスの失敗は確定したのだ。
     アベノミクスとは、「大規模な金融緩和」「拡張的な財政政策」「民間投資を呼び起こす成長戦略」という「3本の矢」によって企業収益を向上させれば、一般市民の所得向上につながるという「トリクルダウン効果」を根拠とした経済政策であった。
     特に日銀による異次元の金融緩和で、「脱デフレ」を目指す予定だったが、それも成らなかった。
     昨年5月、安倍は消費増税の再延期を決定した。
     消費税率は2014年に5%から8%に引き上げられ、当初は2015年10月から10%に引き上げられる予定だった。しかし経済が増税後の落ち込みから回復せず、安倍は税率引き上げを2017年4月まで延期していた。それをさらに2019年10月まで、2年半再延期するというのだ。
     再延期をすれば2014年の増税が失敗だったことを意味するため、安倍は一貫して「再延期はない」と断言していたが、それを撤回したのである。
     ところが安倍は自らの失敗を認めるどころか、こう言ってのけた。
    「今回、再延期するという私の判断は、これまでのお約束とは異なる、新しい判断であります」
     こんな言い草が通用するなら、どんな公約違反をしようとも、「これが新しい判断です」と言えば許されてしまう。ところが実際のところ、なんとなくそれで許されたような形となってしまった。
    「新しい判断」は新語・流行語大賞にノミネートされたが、年が明ければこの言葉も、それを言い放った安倍の非常識もすっかり忘れ去られている。
     アベノミクスが成功していると言い張る人は、「企業収益が増えた」「求人倍率が改善した」という点を挙げる。
     だが、円安によって企業収益が拡大したといっても、その分輸入インフレによって実質賃金が下がり、GDPの6割を占める個人消費が大幅に落ち込んでしまっている。求人倍率の改善は、単に団塊世代の大量退職によって生産人口が減ったからに過ぎない。
     いくら金融緩和でお金を降らせても、庶民には落ちてこない。資産を持っている者は投資も消費もせず、貯蓄するだけだ。ついにタンス預金が日銀の発表で約78兆円にも上っている。そうなる原因は、将来不安に尽きる。
     国民の将来不安を全然払拭しないで、経済がうまくいくわけがない。だが安倍は失敗を認めたくないだけの理由で、 「今こそ、アベノミクスのエンジンを最大にふかす」 などと言い続けたのだ。
    ◆カジノ法案
     一向にアベノミクスが成果を見せない中で、安倍が新たな「成長戦略の目玉」と言い出したのが、なんとカジノなのだからあきれ果てる。
     カジノ法案については、政権べったりの読売新聞までも含む、主要全新聞の社説が一致して反対するほどだったのに、安倍政権はほとんど議論もさせずに強行採決してしまった。
     そもそもカジノの収益とは、「バクチに敗けた客がすった金」に他ならない。
     カジノ法案は、正式名称を「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備推進法案」という。例によっての言葉のごまかしで、あくまでもカジノは「統合型リゾート施設(IR)」の一部に過ぎないように見せかけたいのだ。
     カジノ推進派は決まって「カジノの面積は全敷地の3%で、メインではない。残りの97%はホテルや劇場、ショッピング街などで、あくまでもカジノを含む統合型リゾートだ」とか言う。
     だが海外の実態を見れば、IRの売上高の大半は「面積3%」のカジノが挙げており、「ギャンブル依存症の父親が大損する傍らで、母親と子供が“格安ディズニーランド”で楽しむという構造」だという。
     さらに今回の異常な「暴走審議」の陰には、日本の富裕層の個人資産を狙った、海外カジノ企業の要請があるのではという疑惑もささやかれている。もしそうなら、安倍は日本の国富を海外流出させるために尽力した売国政治家に他ならないし、そうでなくとも、賭博で経済成長などという輩には、二度と「美しい国へ」などと言う資格はない。
    ◆年金カット法案
     安倍政権は昨年、公的年金改革法案という名の「年金カット法案」も強行採決している。
     これにより年金支給額は現在より5.2%も減少。国民年金は年間約4万円減、厚生年金は年間約14.2万円も減る。
     既に安倍政権はこの4年の間に公的年金を3.4%減らし、70~74歳の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げている。
     生活保護受給水準以下で暮らす高齢者は5年間で約160万人増え、高齢者全体の25%を占めている。そこへ年金カット法が施行されれば、間違いなく貧困高齢者は急増していくことだろう。
     安倍政権は2014年12月、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用計画を見直し、国内債券の比率を60%から35%に引き下げ、リスクの高い株式投資の比率を50%まで高めた。
     株価を操作して好景気を偽装し、消費増税の口実を作るためであり、要はアベノミクスの「成果」を捏造するために、国民の年金をバクチにぶっ込んだのだ。
     そしてその結果、たった15カ月間で公的年金積立金が10.5兆円も運用損失で消えてしまった。
     年金カット法案とは事実上、この株式運用の失敗のツケを国民に回し、年金支給額を減らすことで帳尻を合わすための「制度改革」なのである。
  • 「思わせぶりなロシア蝶に騙される安倍オヤジ」小林よしのりライジング Vol.206

    2016-12-27 23:15  
    150pt

    電子書籍の機能を使用するには、記事を購入してください

     12月15、16日に行われた日露首脳会談は、合意内容を「共同声明」「共同宣言」で発表せず、「プレス向け声明」になり、しかも日ロが別々に発表した。
     これだけ見ても国家間の重要な合意や契約がなされたものではないと、マスコミは本来、分かっているはずなのだ。
     完全なる日本の外交敗北なのだが、マスコミは官邸にとって不都合なことは書かないようにした。いかにマスコミが安倍政権に操縦されているのかよく分かる。
     北方領土については歯牙にもかけられない全くの「ゼロ回答」だったのに、「共同経済活動」の名の下に3000億円規模ともみられる「経済協力」をするという。それが領土返還への新しい第一歩だと言うのだから、馬鹿も休み休み言えという話だ。
     この会談の前、メディアには今度こそ北方領土が帰って来るという怪情報が乱れ飛んだ。
     きっかけは9月23日の読売新聞のこんな記事である。
    政府は、ロシアとの北方領土問題の交渉で、歯舞群島、色丹島の2島引き渡しを最低条件とする方針を固めた。平和条約締結の際、択捉、国後両島を含めた「4島の帰属」問題の解決を前提としない方向で検討している。  従来、日本政府が条件としてきた「4島の帰属」、すなわち4島を日本の領土だと認めさせることにはこだわらず、まず2島返還を優先させるという。要するに、鈴木宗男が唱えてきたやつだ。
     ムネオは最近安倍首相と頻繁に会い、ロシア問題の「ブレーン」的な存在になっている。その入れ知恵で官邸は 「帰属先送り・2島先行返還」 に舵を切り、それを読売にリークしたのだろう。
     ムネオは9月28日に行われた日本外国特派員協会の会見でも、日露首脳会談で安倍が北方領土問題について「大きな決断」をし、プーチンも「必ず答えてくれる」と大風呂敷を広げた。そして先の読売新聞の記事についても、確度が高いと評価していた。
     これによってメディアは加熱したが、特にすごかったのが小学館の「週刊ポスト」と「SAPIO」だった。
     
     週刊ポスト10月14・21日合併号は「北方領土が、本当に、戻ってくる!」という特大タイトルで、 「…どうせ戻ってきやしないと諦めていなかったか。だが戦後70年を過ぎた今、いよいよ本当に戻ってくる可能性が現実味を帯びてきた」 とぶち上げた。
     SAPIO12月号は「北方領土返還で日本が変わる 世界が動く」と題し、「いま我々は、歴史の目撃者になろうとしている」と興奮し、捕らぬ狸の皮算用で返還後のシミュレーションまでしていた。
     両誌に登場して、今度こそ北方領土交渉は進展するだろうと煽りまくったデマゴーグが、鈴木宗男の子分の佐藤優だ。結局のところ両誌とも、性懲りもなく鈴木・佐藤に騙されたわけだ。
     こうして期待値だけがやたらと釣り上げられたにもかかわらず、大山鳴動して鼠一匹すら出て来なかったものだから、安倍は今さら何もナシでは引っ込みがつかず、せめて「経済協力」だけでもと突っ走り、結局はカネだけ持って行かれるという惨憺たる事態となってしまったのだ。
  • 「社会保障の財源なき消費増税延期の欺瞞」小林よしのりライジング Vol.179

    2016-06-07 21:15  
    150pt

    電子書籍の機能を使用するには、記事を購入してください

     安倍首相は何でも断言するし、誤りが証明されても、絶対に認めない。
     イラク戦争を支持したのは誤りだったのではないかと質されると、「大量破壊兵器が存在しないことを証明しなかったサダム・フセインが悪い」などとデタラメな断言をした。
     オリンピック招致の際は、福島第一原発事故の汚染水について「私が安全を保証します。状況はコントロールされています」「汚染水は福島第一原発の0.3平方キロメートルの港湾内に完全にブロックされている」「健康に対する問題はない。今までも、現在も、これからもない」と、嘘八百の断言をしまくった。
     安保法案の国会審議の際も、断言、断言、断言の連続だった。
    「戦争に巻き込まれることはないのか。世界の警察であるアメリカに言われたら断れないのではないか」と追及されれば、「戦争に巻き込まれることは絶対にない」と断言。
     徴兵制の是非について質問されれば、「徴兵制の導入は全くあり得ない。今後も合憲になる余地は全くない。子どもたちが兵隊にとられる徴兵制が敷かれることは断じてない」と断言。
     安倍首相がそう言っても、後の政権の判断次第で徴兵制が敷かれることもあるのではないかと重ねて聞かれると、「政権が代わっても導入はあり得ない」と断言。
     集団的自衛権の行使は「専守防衛」の原則を変えるのではないかとついて問われると、「専守防衛が基本方針であることにいささかの変更もない」と断言した。
     同様に断言しまくっていたのが、来年4月に行われるはずだった消費増税だ。
     安倍は一昨年11月、消費増税を延期する際にこう演説した。
    「来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします」
     さらに安倍は、平成29年4月の消費増税は「景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします」と断言し、アベノミクスによって経済成長を達成することで、「必ずやその(増税が可能な)経済状況をつくり出すことができる。私はそう決意しています」と断言した。
     ところがその断言を撤回して消費増税の再延期。そしてこれを「新しい判断」だという。
     普通、こういうのは「判断を変更した」と言うもので、事実上「前の判断は誤っていた」と認めたことになるはずだ。2度も見送るのだから、なおさらである。ところが「新しい判断」という奇妙な言葉によって、なぜか誤りを認めずに済むようなことになってしまっている。
     消費増税の再延期は明らかにアベノミクスが失敗したからなのだが、いくらアベノミクスは失敗だったと批判しても、安倍は失業率が下がったと応戦するだろうし、まだ道半ばだと言い張るだけだから効き目がない。
      失業率が低下した理由は、アベノミクスの成果でも何でもない。団塊世代が65歳に達し、労働力人口が大幅に減少したからである。
      2012年の労働力人口が17万人の減少だったのに対して、2013年以降は毎年117万人ずつも減少しているのだ。
     アベノミクスをやろうがやるまいが、2012年以降は失業率が低下していくことは、日本の人口構造の推移から見て、ずっと以前から予測されていたことだ。今後はさらに人手不足が加速していく。
      問題なのは失業率が改善されたことではなく、実質賃金が下がり続けていることなのである。
  • 「ど~してそ~なった?FX個人投資家たちの落ちた罠」小林よしのりライジング Vol.170

    2016-03-15 16:00  
    100pt

    電子書籍の機能を使用するには、記事を購入してください

     今年2月末、日本初の広告写真制作会社であり、最大手の撮影スタジオが自己破産した。一般の人でもこのスタジオで撮影された広告写真やTVCMは、一度ならず必ず目にしている。鉄道、ビール、お菓子、薬、化粧品、ファッション、家電、映画ポスター、雑誌の表紙……。一時は飛ぶ鳥を落とす勢いで、多くのフォトグラファーを育ててきたが、フィルムからデジタル・ネットの時代となり、ここ数年は「安く・早く」ばかりを要求されて苦慮していたようだ。
     創業61年目の春。老舗は、本当に“老いた存在”になってしまった。
     老いたスタジオの息の根を止めたのは、なにより広告の出稿数の激減だった。
     広告代理店最大手「電通」の調査レポートによると、日本の総広告費は2007年が過去最高で7兆円、そこからみるみる減少して2015年には1兆円減の約6兆円となった。
     ネットゲーム、ネットショップ、エネルギー関連など一部の業種を除き、ほとんどの広告費は、自動車が89%(前年比)、キャラクター玩具84%、飲料91%、家電91%、家具92%、不動産95%と下降し続けている。
     だが、 経済がこのような状況であるにも関わらず、なぜだかハイテンション、アゲアゲエブリナイトでバボォーンッ! ……と財布の紐を緩める人たち がいる。
      小口の個人投資家 だ。
     なかでも盛り上がっているのは FX(外国為替証拠金取引) である。米ドルやユーロ、ポンドなどの外国通貨を売買して、時々刻々と変動する為替レートの差額で損益を出す。モニターを何台も並べて一日中陰気な顔でジトーーーッと折れ線チャートを睨み付け、ポチポチ地味に売ったり買ったりする、あれだ。
     
     私の周囲にも、この頃やたらとFXに興味を持ち始めたという人が増えている。
     投資家なんて、お金の余力のある人がやることだと思っていたが、実態はそうではないようだ。売れているわけでもないフリーのクリエイター、特にお金持ちでもないパート主婦、60代の警備員までが、FXの口座を作ったと言うので驚いている。
     実際、この数年、FX参入企業が次々現れ、ネット上では、カリスマ主婦トレーダーや、タレントトレーダーなどが持ち上げられ、ばんばん広告が打たれている。
    『無料の口座開設で2万円キャッシュバック!』
    『スマホアプリでいつでも簡単取引、副業FX!』
    『5分で口座開設、翌日から取引できちゃう!』
     はあ、ほかの広告はほとんどダメになっているのに、活気のある業界ですなあ。
     ポップな言葉とともに、学生や主婦、年金生活者などの小口利用者を紹介し、「誰にでもできる、簡単で安全な投資」であることを前面に押し出す広告。
     思わずクリックして覗いてしまう気持ちはわかるのだけど、単純に 『リスクがあるに決まってる』『簡単に稼げるなら、いまの不況があるわけない』 という考えがよぎるのですが……。
    ◆どーしてFXになっちゃうの!?
     人はなぜ、大した資産家でもないのに個人投資家になりたがるのか。FXをはじめることにしたという人達に、なにがそんなに魅力的なのかと聞いてみた。
  • 「『言論の自由』を守る義務は権力にあるのだ」小林よしのりライジング Vol.169

    2016-03-08 20:10  
    150pt

    電子書籍の機能を使用するには、記事を購入してください

     2月29日、田原総一朗、鳥越俊太郎、青木理、岸井成格らジャーナリストが、高市早苗総務相の「電波停止示唆脅迫」に抗議する記者会見を行った。
    【中継録画】http://thepage.jp/detail/20160229-00000005-wordleaf
     わしはこの会見の趣旨に賛成する。
     高市総務相は放送法第4条に 「政治的に公平であること」 という項目があることを根拠に、放送局がこれに従わなかった場合、総務大臣の判断により電波停止の処分を下すことがありうると言ったが、この法解釈は完全に間違っている。
      そもそも放送法は、「 放送をいかなる政党政府、いかなる団体・個人からも支配されない自由独立なものとしなければならない 」という理由から定められたものである。
     これは憲法21条の「 一切の表現の自由は、これを保障する 」の規定に基づいている。
     高市早苗は放送法以前の問題として、憲法の「表現の自由」の意味が分かっていないのではないか?
    「表現の自由」を守らねばならないのは権力の側である。
    「電波停止命令」で民間の表現を規制するかもしれないぞと脅すというのは、 「我々権力者は、憲法違反をするかもしれんぞ」 と言っているに等しいのだ。
     高市は憲法の意義を知らない政治家失格のバカか、そうでなければ、わざと曲解した法解釈を言い、憲法を踏みにじって言論統制をしようとしているか、あるいはテレビ報道の「 委縮 」効果を狙っているかのいずれかだが、 「 委縮 」効果が一番の目的だろう。
     自称保守派の論客の中には、「偏向報道が許されると言うのか」と言ってる馬鹿もいる。
     わしも自虐史観全盛の時には散々「偏向報道批判」をした立場だが、民間人が民間人にそれを言うのは自由である。 問題は権力が「偏向」だと判定するのがマズいのだ。憲法違反になる。
     そもそも偏向か否かの判断は相対的なものだ。右から見れば左が「偏向」しているように見え、左から見れば右が「偏向」しているように見える。
     例えば関口宏の「サンデーモーニング」は護憲派に「偏向」していると思うが、いまここまで徹底した政権批判をする番組は珍しいし、正しいことも言うのでわしは貴重だと思っている。
     むしろ「新報道2001」の方が政権寄りに「偏向」しているので、メディアの意味がないと思って見なくなった。
     誰が「偏向」しているか、どこが「偏向」しているかは、自由な批判の応酬で、論争の末に明らかにしていく他ない。そのためにも、自由に意見を表明する権利は守られなければならないのだ。
     むしろアメリカならば、番組やキャスターが「民主党支持」や「共和党支持」を明らかにして、「偏向」するのが当たり前の報道をしているようだ。視聴者もそれが分かって見ているのだ。
     読売新聞や産経新聞が明らかに自民党寄りで、朝日新聞・東京新聞が左翼寄りなのは誰でも知っているが、テレビ報道もそのように立場鮮明の「偏向」を特色とする番組があってもおかしくないのだ。
      偏向か否か、公平か否かは、権力が判断することではない。総務大臣が「偏向」と判断したら電波を止められるなんていうのは言語道断である。
    「公平・公正」 といえば、例えばAとBの意見が対立していたら、Aの意見を5分流せば同様にBの意見も5分流さなければならないのだろうと思っている人も多いようだが、これは間違いである。
  • 「慰安婦問題『解決』への道」小林よしのりライジング Vol.167

    2016-02-23 15:55  
    150pt

    電子書籍の機能を使用するには、記事を購入してください

     引き続き慰安婦問題について、今週はその「解決」はありうるのかということをもう少し考えてみたい。
     先週号で論点整理したとおり、慰安婦問題の「解決」とは決して韓国の納得を得ることではなく、「 日本の父祖の歴史の名誉を、国際社会の中で日本人が取り戻し、未来の日本の歴史を作っていく新しい世代に、正しい歴史を受け継ぐことができるようにすること 」である。
     そこで、どう国際社会を説得するかが問題になってくる。
      今や国際社会の中では強制連行の有無は問題にされず、前借金に縛られて強制的に性を売らざるを得なかったとなれば、性奴隷「sex slaves」と見なされるようになっている。
     このことに対して藤岡信勝氏は、前借金に縛られるというのはあくまでも雇用契約の一種であり、「身売り」という言葉が使われているとはいえ決して人身売買ではなく、欧米でも徒弟制度の雇用関係などに、普通に例はあると言った。
     それは確かにそうだろう。考えてみれば、ドラマの『おしん』を欧米人が見ても、主人公のおしんが米俵一俵で子守奉公に出されるのを「子守奴隷」だとはいくらなんでも言わないはずだ。
      だが、労働の内容が売春だったら「性奴隷」になってしまう。 そこが本質なのだ。 日本人は、特に公娼制度があった時代においては、売春も職業の一種だという認識があるのに対して、キリスト教文化圏では決して売春を職業とは認めない。だから「奴隷」に結びつけてしまうのである。
     これはもう捕鯨の問題と全く同じで、今現在の価値観から過去を断罪してしまう。 過去は今の価値観とは違うとか、民族によって違うという、「文化相対主義」をキリスト教文化圏の者にも、主張し続ける必要があるだろう。
     とはいえ、 国連人権委の「クマラスワミ報告書」に書かれた 「慰安婦の総数は20万人で、その大部分は殺された」 などといった全くのデマは厳重抗議していくしかないし、クマラスワミ報告書も取り下げさせなければならない。
     報告書を書いたスリランカ人の女性人権活動家、ラディカ・クマラスワミは当初、慰安婦の何が問題なのか全然わからなかったという。やはり、キリスト教文化の影響が薄い人が見れば、これはどこの国にもある戦場の娼婦じゃないかと思うものなのだろう。
     ところが報告書の作成過程で、「強制連行」の吉田清治証言やら、シナの古典の残酷話をそのまま写してきた北朝鮮の元慰安婦証言と称する文書やら、ありとあらゆるデマ話が寄せられた。そして一切検証もせずにそれを全部鵜呑みにしてしまったクマラスワミが、なるほどこれは一大事だと、報告書にまとめ上げてしまったのである。
      だから、もしもクマラスワミ報告書がデマだということが国際社会に認められれば、キリスト教文化圏以外からは「じゃあ、何が問題だったんだ?」という疑問も出るようになり、慰安婦問題全体の見直しにつながることもあるかもしれない。
     わずかな可能性かもしれないが、まずは事実に反することを訂正させるのが第一歩である。
      だが今回安倍政権がやった「日韓合意」は、そのためによかったのだろうか?
      むしろ、デマに反論しようとしたら「問題を蒸し返すな」と発言を封じ込まれ、デマが事実として流通していく事態になってしまうのではないだろうか?
     今回の「合意」では、それが一番懸念される問題である。
     いくら慰安婦問題の解決と日韓関係は別問題とは言っても、わしとて日韓関係は改善した方がいいとは思っている。だが今回の「日韓合意」はどう考えてもその役には立たず、到底評価はできない。
  • 「日韓慰安婦『合意』という売国」小林よしのりライジング Vol.166

    2016-02-18 16:15  
    150pt

    電子書籍の機能を使用するには、記事を購入してください

     第53回ゴー宣道場 「慰安婦〈合意〉は正しかったのか?」 を2月14日、拓殖大学客員教授・藤岡信勝氏を迎えて開催した。
     今年は、当時の中学歴史教科書7社全てに「従軍慰安婦」が登場し、この異常事態に対抗すべく「新しい歴史教科書をつくる会」を設立する動きが始まってからちょうど20年に当たる。このとき西尾幹二氏とともに「つくる会」を創設し、その活動にわしを招こうと提案したのが藤岡氏である。
     それから20年、「つくる会」の活動やわしの『戦争論』の影響により、中学歴史教科書から「従軍慰安婦」は消え、日本人の「自虐史観」(この言葉を普及させたのも藤岡氏である)も相当に払拭されたかに見える中、昨年末に唐突に慰安婦問題の「日韓合意」が行われた。
     自称保守論壇の中にはこれを評価・歓迎する向きもあるが、果たしてそれでいいのだろうか?
     論点は多岐にわたるが、今回は事前にブログで以下の5つの論点を提示した。
    1)なぜこのタイミングで日韓合意?
       アメリカの圧力で、ではないのか? 他に理由があるのか?
    2)日韓合意のメリット・デメリット
       本当に韓国を追い込んだと言えるのか?
       7対3で日本の勝利などと言う新聞記者もいるが本当か?
       再び教科書に記述されて、日本が再び自虐史観に戻ることはないのか?
    3)安全保障か、歴史の真実か
       安全保障のためなら譲歩やむなしなら、歴史戦はすべて敗北しかないのではないか?
    4)慰安婦の真実が伝わらない理由
       なぜ慰安婦の真実は伝わらないのか?
    5)慰安婦問題の解決はありえるのか
         前々回のゲスト、松竹さんは「保守先鋒の安倍首相が謝罪する」ことで解決すると言っていたが、今回の〈合意〉で日韓共に解決ということか?
     藤岡氏は、今回の「日韓合意」は「 全く評価できない、やるべきではなかった。大失敗だった。日本外交の世紀の失態だ 」という。この認識はわしも同意である。
     ではこの5つの論点に沿って、当日の議論を整理しておこう。
    1)なぜこのタイミングで日韓合意?
     藤岡氏は、まずアメリカの世界戦略の変化を挙げる。
     中東政策が大失敗し、対ロシア外交でもやられっぱなしという状況の中で、アメリカの世界覇権が怪うくなる一方、世界第二の覇権国である中国が台頭。尖閣諸島をめぐって日本と摩擦を起こし、南沙諸島を軍事拠点化しようとしている。
     ここにきてアメリカは中国との対決姿勢をとるようになり、そのために日本に対して協力を求めている。
      アメリカは4年前の野田政権の頃から、日本と韓国の手を結ばせようと水面下で動いていた。
     これが表面化したのは昨年3月、中国が提唱するAIIB(アジアインフラ投資銀行)に、韓国がアメリカの制止を無視する形で参加、さらにヨーロッパ諸国がこぞって参加するという事態に危機感を抱いたアメリカが、同盟国の締め付けを図った。
     昨年11月の日韓首脳会談で、朴槿恵大統領は安倍首相に慰安婦問題の年内の妥結を求め、このとき安倍は期限を区切ることを拒否。12月15日の外務省の交渉も不調で、年越しは確実と思われていた。
      ところが24日に安倍首相は突如、岸田外務大臣を韓国に送る決定を下し、28日に「日韓合意」となる。
     この急転直下の原因は不明だが、アメリカの圧力なしには考えられないという。
  • 「劣化、幼稚化する国会論議」小林よしのりライジング Vol.165

    2016-02-09 21:30  
    150pt

    電子書籍の機能を使用するには、記事を購入してください

     国会審議で、わけのわからない議論や発言が次から次に出ている。
     安倍晋三首相の発言が 「パート月収25万円」 を始め、滅茶苦茶であるのは今さら言うまでもないが、それを追及する野党の側も負けず劣らず支離滅裂で幼稚な議論をするものだから、途方に暮れてしまう。
     2月3日の衆院予算委では、民主党の岡田克也代表が甘利明前経済再生担当相の疑惑に関して安倍に質問。
     その際、岡田は甘利がアベノミクスやTPP交渉で非常に大きな権限を持っていたことから、この金銭授受によって安倍政権のTPP交渉や経済財政政策が影響を受けたことはないのかと、しつこく問い質した。
     甘利の件は、千葉県の建設業者の意をくんだ甘利事務所が、都市再生機構(UR)に補償金をつり上げる「口利き」をしたという疑惑である。このこと自体、政治家の倫理として大きく問題があるのみならず、あっせん利得処罰法と政治資金規正法に抵触する犯罪であった疑いが極めて濃厚である。
     だが千葉県の建設業者から「口利き」を依頼する賄賂を受け取ったことで、政権の経済財政政策にまで手心が加えられたのではないかというのは飛躍があるし、ましてやほぼアメリカ主導で、12カ国間で行われるTPP交渉に影響したのではないかと言うに至っては、ほとんど言いがかりに等しい。
     安倍は、甘利の金銭授受によって政権の政策が影響を受けたことはないと断言。
     これに対して岡田は 「何を根拠に断言したのか」 と問い質し、安倍は「ないからです」と答える。実際のところ、こんな無理筋の疑いをかけられては「ないものはない」と答えるしかなかろう。
     だが岡田はなおも 「甘利氏が大変大きな権限を持ち、アベノミクスの司令塔として、TPP交渉の最終責任者として、さまざまなことをやっている。きちんと検証すべきではないか」 と質す。
     それに対して安倍は「(TPP交渉や経済財政運営に)影響するはずないじゃないか。一切ないということは、はっきりと申し上げておきたい」と繰り返す。
     それでも岡田は 「こうした、金にルーズな事務所、あるいはご本人が強大な権限をもって、TPPの交渉というのはどうなのか」 として、なおもTPP交渉などに影響がなかったかどうか検証しろと迫り、押し問答の様相を呈したところで、安倍は業を煮やしたようにこう言った。
    ないということをない、と証明するのは悪魔の証明だ。あるものをあるんだ、と言うんだったら、あるということを主張してる側に立証責任がある。当たり前だ。私はないものについてはないと言う以外はないじゃないですか。もしあるんだったら、何かひとつでも具体的なことを言ってほしい。ひとつも挙げられていないなかで、これが疑いだとひとつも言えないにもかかわらず、まるであるかのごとく言っている。これはあまりにもばかげた議論だ。  確かに、立証責任は「ある」と言った側にある。
     もし甘利の金銭授受によってTPP交渉や経済財政政策に影響があったというならば、そう追及する側が証明をしなければならず、「ない」と言っている側に「ない」証明を求めることはできない。
      だが、わしはそもそも安倍晋三が「立証責任」だの、「悪魔の証明」だのを持ち出してきたことに驚いた。
      安倍晋三に、「立証責任は追及する側にある」なんてことを偉そうに言う資格などあるのだろうか?