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記事 10件
  • 「女性の活躍で圧勝した『朝ナマ』の議論」小林よしのりライジング Vol.195

    2016-10-04 19:45  
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     9月30日深夜、「激論!象徴天皇と日本の未来」をテーマに行われた『朝まで生テレビ!』に出演した。
     先月に引き続き2か月連続の天皇をめぐる討論になるが、今回は向かい側に「Y染色体カルト」のツートップ、八木秀次と竹田恒泰がそろい踏みである。
     どうなることかと思ったが、相変わらず竹田が天皇陛下の生前退位を一代限りの特措法で「一発でバシッと解決」などと乱暴な主張を繰り返すのに対して、冒頭で八木が特措法にはっきり反対したので驚いた。
     八木はさすがに憲法学者の矜持は残っていたのか、「特措法では裏口入学と裏口即位になる」ということまで認めたので、竹田はすっかり機先を制せられた形となり、議論が進んでいった。
     今回の「朝ナマ」で特に活躍したのは、先月に引き続き登場した弁護士の萩谷麻衣子さんと、国際政治学者の三浦瑠麗さんである。今回はこの女性二人の発言を中心に、議論をまとめておこう。
     萩谷氏は、皇室典範の改正をせずに、特措法で譲位を実現してしまった場合に生じる問題点を列挙した。
     まず皇室典範第8条には 「皇嗣たる皇子を皇太子という。皇太子のないときは、皇嗣たる皇孫を皇太孫という」 という規定しかなく、 皇太子殿下が即位した場合には、秋篠宮殿下は「皇太子」にも「皇太弟」でもなく、単に「秋篠宮家の当主」という扱いにしかならない。
     
     そうなると、第11条2項に 「親王(皇太子及び皇太孫を除く。)、内親王、王及び女王は、前項の場合の外、やむを得ない特別の事由があるときは、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる」 とあり、 秋篠宮殿下も悠仁さまもこの対象となるから、皇室を離れることが可能となってしまう。
     
      さらには皇室経済法の内廷費の問題がある。皇室典範を変えなければ秋篠宮家に「内廷費」は出ない。
     これらの点について、皇室典範に付則をつけて皇太子を皇太弟に読み替えるというようなやり方では済まず、 皇室関連法の整合性を取るには皇太子の定義そのものを皇室典範で変えなければ駄目だと説明した。
     
     萩谷麻衣子さん、まったく凄い!
     秋篠宮殿下を「皇太弟」にするなら、典範改正しかなく、特に「内廷費」の問題は大きく、現在、皇太子一家が住む「東宮御所」には秋篠宮家とは比較にならない額の「内廷費」が出ている。
     典範改正をしないまま、秋篠宮殿下を「皇太弟」と見做し、皇太弟としての公務をお願いしておきながら、今のまま「皇族費」でやり繰りして頂くなど、秋篠宮殿下に対しても失礼である。
     さらに、皇太子殿下が即位して天皇になり、愛子さまが皇太子になれないとなると、東宮に勤めていた膨大な職員が首になってしまうのだが、果たしてそんなことが出来るのか?
     愛子さまが皇太子殿下になれば、東宮職が今まで通り必要になるわけだ。
  • 「花形満の時代、星飛雄馬も左門豊作もいない」小林よしのりライジング Vol.190

    2016-08-30 21:10  
    150pt
     先週に引き続き、リオ・オリンピックのメダルラッシュから考察を進めてみたい。
     先週、今回のメダリストたちにはナショナリズムの感覚が希薄だと指摘したが、もう一つ彼ら・彼女らに希薄…というより、もはや皆無だと感じたものがある。
     それは 「ハングリー精神」 である。
     読者の中に知っている人がどれだけいるか分からないが、60年代後半から70年代の初頭にかけて、『巨人の星』という漫画が大ヒットした。
     スポーツ根性漫画の最高峰で、梶原一騎原作、川崎のぼる作画、アニメも大人気だった。
     この作品の主人公・星飛雄馬は、父親が元プロ野球選手で今は日雇い人夫の貧乏家庭に育ち、そこから「ハングリー精神」でのし上がっていった。
     なにしろ父親が何かというと癇癪起こしてちゃぶ台返しをするシーンが有名になり、息子・飛雄馬に大リーグ養成ギプスをつけて生活をさせるという、今なら児童虐待で放送できないスパルタ教育をしていたものだ。
     また、そのライバルには両親を早く亡くし、5人の弟妹を自分一人で養うために、泥まみれで這い上がろうとする貧乏人の左門豊作というキャラもいた。
    『巨人の星』が大ヒットした60年代後半は、そういう貧乏から「ハングリー精神」でのし上がっていこうという時代だったのだ。
     しかし、今のスポーツ選手は貧乏からの脱出のために能力を磨いた者たちではない。逆に豊かだからこそ、恵まれた家庭環境で好きな競技の練習に没頭し、才能を伸ばすことができた者たちである。
     金メダルを取るには露骨なまでにカネが要る。まず中流以上の家庭で英才教育を受け、才能を開花させて、優秀なコーチやトレーナーに託された選手が、オリンピックに出場できるまでに育つのである。
     実は過去のデータから、オリンピックの金メダルの数はその国のGDP総額でだいたい決まるということは確認されているのだ。
  • 「新自由主義の見本市・韓国――就職浪人と貧困街タルトンネ」小林よしのりライジング Vol.187

    2016-08-02 23:10  
    150pt

     前回のトンデモ見聞録では、先進国の格差社会のなかに生まれる、一見してそうとは把握しづらい《相対的貧困者》の実態として、「格差の先進国アメリカ~貧困だから太る子供たち」を書いた。アメリカ人といえば「ジャンクフードが好きで太っている」という大雑把なイメージを持つ人は多いと思うが、その実態は「カネがすべて」の新自由主義による際限なき競争のなかで、「野菜が買えず、ジャンクフードやスナック菓子しか食べられない」状態に置かれる《家畜化させられた貧困米国民》でもあった。
     こんな米国の奴隷に甘んじ、「NO」と言えずに次々と「構造改革」させられてゆく日本の今後は、一体どうなってしまうのか?
     そこで今回からは、 日本よりも先に米国民間企業からのドメスティック・バイオレンスを浴びまくり、新自由主義を突き進めてしまった韓国の実態 を、何回かに分けて紹介していきたいと思う。
    ◆日本の現状が進行するとこうなる! 韓国の生き残り受験戦争
     非常に深刻な格差社会に陥っている韓国は、いま、 上位1%の富裕層が国家全体の収入の45%を独占し、中間層は崩壊、国民の平均年収は3000万ウォン(約290万円)に満たないという状態 である。
     多くの若者は就職できずにニートとなるか、跋扈するブラック企業に子供の小遣いのような低賃金で搾取され、年金未加入者は増大。晩婚化・少子化・高齢化も急激に同時進行して、結果、 65歳以上のなんと50%が貧困状態、高齢者世帯の負債率は160.9%の借金漬け という凄まじさである。
     日本の若者は「正社員になりたかったけど、派遣でなんとか食うしかない」といった感覚だが、韓国の若者はさらに進行した悲惨さに晒されており、
    「大企業(財閥系企業)に入れない……ならば、死」
     
    といった状態だ。
     なにしろ、自由競争の進みまくった韓国のブラック企業の《ブラックさ》は、日本の比ではない。
     ある有名ホテルは、全従業員140名の従業員のうち、100名を「インターン」として雇い、月収たった3万円で、正社員同様の長時間労働を強いていた。「経歴」が重視される韓国では、インターンとして社会経験を積んでおくと就職が有利になるという考えがあり、多くの就職難の学生たちが、この弱みにつけこまれてインターンとして異常な低賃金で雇われ、残業代も夜勤手当もすべて踏み倒されていたという。
     社員を自己破産に追い込んだ製菓会社もある。社員別に日別の販売ノルマを割り当て、これを達成できない社員は帰宅を許さず、また、担当した菓子の在庫返納も一切認めなかった。結果、精神的にも肉体的にも追い込まれた社員は、売れなくても「全部売れた」と報告し、自腹で売り上げを補填しつづけ、自己破産に至ったという。
     日本に報じられているものがこれだけ壮絶なのだから、平均的な企業でもどれほどブラックな面を孕んでいるのか、想像すると身震いする。
    「我慢してでも働けるだけありがたく思え」
     まともな就職先がない韓国社会、そこに「カネがすべて」と手段を選ばず暴利をむさぼる企業の姿勢が横行してしまうのである。
     この状況のなかで、韓国の親たちは、なんとかしてわが子を熾烈な受験戦争に勝ち残らせようと、巨額の教育費をつぎ込むのだが……ゴールとなるはずの《まともな就職先》、つまり大企業・財閥系の門は、ほんのわずか。実態はなんと、 大卒者の97%が「まともな就職先争奪戦争」に敗れ、再トライを目指して親元に残り、就職浪人と化してしまう のである。
     生き残るために、小さいころから親子一丸となって必死で戦って、戦って、やっと学歴を獲得したのに、中小企業に就職してしまっては、奴隷同然となり一生涯を棒に振る。それならば、親のカネが尽きるまでニートとして粘るほかない、というのが 現実 なのだ。
    ●ニート増加について韓国人の若者たちは……
    「大企業や公務員への就職が難しい中、中小企業に行けば年俸1800~2400万ウォン(約198~264万円)、週6日労働または隔週土曜日勤務、年次休暇なし、手当なし、夜勤・休日勤務手当なし、ビジョンなし、希望なし。ニートが増える訳だ」
    「良質の雇用を求めてニートになっているのではない。みんな自分が食べていくのに汲々としているのが実情だ」
    「外国人や幼い子供たちは理解できないだろうが、これは韓国の若者の問題ではなく、努力しても明るい未来が望めないことに原因がある」
     こうして、韓国には就職浪人が増え続け、ついに2015年、国内の全就業者数のうち、 50代以上の親世代の就業者数(965万5000人)が、20代~30代の青年層の就業者数(936万9000人)を上回るという事態に至ってしまった のである!
    ◆リストラ・早期退職で「自営業」に転向させられる親世代!
  • 「幸せよりもカネが欲しい高齢者」小林よしのりライジング Vol.186

    2016-07-26 16:40  
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      今の高齢者は、圧倒的に「幸せよりもカネが欲しい」と思っている!
     博報堂生活総合研究所が60~74歳を対象にした「シルバー意識調査」の結果を発表した。
     その中に「欲しいもの」を「若さ」や「名誉」など20項目から3つ選ぶという質問項目があり、1位は「健康」、2位が「安定した暮らし」、3位が「お金」となった。
     この結果で注目を浴びたのは、 欲しいものは「お金」と答えた人が40.6%に上り、「幸せ」の15.7%を大きく上回ったことだった。
    「お金で買えない幸せがある」「お金よりも幸せが大事」といったことは常識のように言われてきたし、年配者こそそういう台詞を言うものだと思っていたが、今や年配者が身も蓋もなく 「幸せよりカネ!」 と言うようになってしまったのだ。
     同調査は1986年から10年ごとに同じ方式で実施され、今回が4回目になる。
      初回の86年調査では「欲しいもの」は「幸せ」(31.1%)が「お金」(28.1%)を上回っていたが、2回目の96年に逆転。その後は差が広がり、ついにはお金が欲しい人が、幸せが欲しい人の2.5倍以上にまでなってしまったのだ。
     年々幸せを求める人がどんどん減り、お金を求める人がどんどん増えているわけである。
     しかも「何歳まで生きたいか」という質問に対する回答の平均は「84歳」で、86年の「80歳」から4年も延びている。
     長生き願望は肥大させながら、長く続くであろう老後に対する不安を抱え込んでいるのだから、「お金が欲しい」というのは切実だ。欲しいもの1位の「健康」や2位の「安定した暮らし」も、その不安感の反映だと言える。
     幸せよりもお金が欲しいという理由をよく見ると、 子供などに迷惑をかけたくない ということがあるようだ。
      この場合の「幸せ」とは、具体的には子や孫に囲まれて暮らし、面倒を見てもらいながら安らかに老いていくことだろう。
     しかし、子供に迷惑をかけたくないからそういう「幸せ」は諦めたとなれば、いずれは自分一人で自分の始末をつけなければならなくなる。
     子供と別居して夫婦二人で暮らしても、どっちかが先に死んで必ずどちらかは一人の老後を迎える。そうなれば、まず必要なのはお金だということになる。
     だから幸せよりもお金が欲しいということになるのだ。
     この結果は、ものの見事に今の時代を反映している。
      かつては、子供を産んで育てたのなら、老後は子供に面倒を見てもらうという期待が常識としてあったものだ。
     ただし、それは祖父母から孫までの三世帯同居の大家族だったから成立していた常識だったのである。
     大家族であれば、分担して誰かが老人の面倒を見るから、家族のうちのたったひとりに負担が集中するということはなかった。だから親は家で死ぬのが当たり前だったのである。
      だがこれは、核家族になった途端に崩壊する。
  • 「天皇陛下、生前退位のご意向」小林よしのりライジング Vol.185

    2016-07-19 19:35  
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     天皇陛下が生前退位のご意向を示されているという報道は衝撃だった。
     7月13日にNHKが第一報を報道すると、たちまち全マスコミが後追いし、 天皇陛下が退位して皇太子殿下へ譲位したいと考えておられること は、たちまち疑いない既成事実の扱いとなった。
     皇室典範に生前退位の規定はなく、ご意向を叶えるには典範の改正が必須だが、典範改正は国会が行う国政問題となっている。
     本来、皇室典範は皇室の家法であり、これが「国政問題」になっていること自体がおかしいのだが、天皇は憲法の規定によって国政には関われないことになっているから、もし天皇陛下が「生前退位できるよう、皇室典範を改正してほしい」と言ったら、憲法違反になってしまう。
     報道の直後、宮内庁が「報道されたような事実は一切ない」と否定したが、これは憲法違反の発言ととられることを懸念したためだろう。
     だがその一方で宮内庁は、陛下がご自身のお考えを国民に広く示される方向で検討を進めているという。
     おそらくその際は、天皇陛下は制度の問題に関しては国会に委ねるとして一切触れず、ただご自身の心情を語るという形にするのだろう。
     陛下は憲法に定められた象徴天皇としてどうあるべきかを模索し、日々の公務に加え、戦没者の慰霊や被災者への慰問に積極的に取り組んできた。
     だが宮内庁関係者によれば、陛下はこれらの「天皇としての公務」を年齢や体調などの理由で十分に行えなくなった場合は、大幅に公務を減らしたり、代理に代行させたりといった措置をとって天皇の地位に留まるのではなく、生前退位をするべきだというお考えだという。
     そしてそのお考えを皇后陛下や皇太子殿下、秋篠宮殿下にも伝えられているという。
     そういうことを、あくまでも個人の心情としておっしゃるものと思われる。
     天皇陛下が自らそうおっしゃっても、まだ生前退位に反対し、皇室典範改正を拒み、天皇は死ぬまで、あるいは病気で倒れるまで公務を続けろと言える者などいるだろうか?
      これは暗黙の「聖断下る」である。
      皇室典範が改正されて生前退位が可能となり、現在の皇太子殿下が即位すれば、次の皇太子がいないという事態に直面することになる。
     秋篠宮殿下を「皇太弟」にするというのはまず無理だ。
     皇太子殿下と秋篠宮殿下は5歳しか離れていない。
     例えば皇太子殿下が即位した後、85歳で譲位したら、85歳の天皇から80歳の皇太弟への皇位継承になってしまう。もちろん秋篠宮天皇の元号は著しく短くなるし、悠仁さまが祭祀継承の準備をする期間も当然短くなる。
     そして何よりも、悠仁さまが結婚されて男子が産まれなければ、皇室は消滅してしまうのだ!
     そんなことを、天皇陛下が望まれているわけがない。
      天皇陛下が、皇位の安定的な継承を望んでおられることに疑いの余地はない。
      そしてそれを叶える方法は、女性天皇・女性宮家を公認し、愛子さまが皇太子になり、佳子さま、眞子さまが宮家の当主になれるようにすること。それ以外にないのだ。
  • 「生活保護に潔癖を求めるせちがらい世の中」小林よしのりライジング Vol.182

    2016-06-28 22:05  
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      世知辛い (せちがらい)という言葉が最近使われなくなった。
     暮らしにくい、心にゆとりがない、金銭に細かくてケチくさいという意味だ。舛添都知事の細かいカネの使い道に目くじら立てて、辞職にまで追い込むという不寛容さも、尋常ではない。
     格差社会の貧困層が、自分の分かる範囲でのセコいカネの無駄づかいに、「ずるいぞ、ずるいぞ」と嫉妬しただけのことである。セコい知事に対してセコい追及をする世の中だから、せちがらいと言うしかない。
     石原都知事なら都政には関係ない友人と高級料亭で数十万円の会食を何度もおこなってもOK。ガラパゴス諸島に150万円のファーストクラスで行って、高級宿泊船クルーズで4泊してもOKといった調子で、海外視察には数億円を乱費し、新銀行東京に1400億円を注ぎ込んで失敗してもスルーなのだ。貧乏人が把握しきれない高額ならスルーされるのである。
     傲慢な金持ちには逆らえないが、傲慢な貧乏人は袋叩きにするのが貧困層である。なんとも、せちがらい世の中になったものだ。
     社会のせちがらさは、なんと生活保護費にまで目をつけて、不寛容になる。貧乏人こそが貧乏人に不寛容になるのが格差社会である。
     山形大の戸室健作准教授が1992年から2012年までの20年間の日本の貧困率の推移をまとめているが、それによると、全国の子育て世帯の貧困率を示す 「子供の貧困率」は1992年に5.4%だったのが、2012年に13.8%と、20年で2倍以上に拡大している!
     また、子育て世帯に限らない全国の貧困率も、1992年の9.2%から、2012年には18.3%と倍増していた。
    「貧困率」については先週号で泉美木蘭さんが詳細に書いてくれたとおり、地球規模で貧困国の分布を示す「絶対的貧困率」と、国内の貧困の実態を示す「相対的貧困率」がある。
     ネトウヨや曽野綾子的な人が「絶対的貧困率」を持ち出して「日本には貧困はない」などと言っているのは完全な暴論であり、 先進国の国内における貧困問題は「相対的貧困率」に表れるものである。
     相対的貧困率では、世帯収入から税金・社会保険料を引き、世帯1人あたりが自由に使えるお金を出し、それを低い方から並べた時に、ちょうど真ん中にあたる人を基準とし、所得がその半分に満たない人( いまの日本では単身世帯年間122万円、2人世帯173万円、3人世帯211万円未満 )を 「貧困」 と呼び、厚生労働省・総務省が相対的貧困率調査を公表している。
      これに対して戸室准教授の研究では「相対的貧困率」を使用せず、代わりに 「生活保護基準の収入以下で暮らしている世帯」 を 「貧困」 として、貧困率を算出している。
     生活保護に着目することで、具体的な貧困層拡大のイメージがつかみやすくなっているのが、この研究の特徴といえよう。
      日本では、生活保護基準以下の収入で暮らしている人が、以前は全世帯の9.2%、子育て世帯の5.4%だったものが、20年経ったら全世帯の18.3%、子育て世帯の13.8%に激増したのである!
     さらに地域別に子供の貧困率を見ると、最も高い 沖縄県では37.5%というから、3人に1人以上の子供が貧困 ということになる。これは驚くべき実態だ。
  • 「民主主義批判は実はタブーである」小林よしのりライジング Vol.181

    2016-06-21 20:35  
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     結局は、愚かな民が愚かな政治家を担いでいただけ、民主主義がいかに愚劣なものかということをいやというほど見せつけたのが、「舛添都知事への集団リンチ、舛添おろし」である。
     わしが描いた『民主主義という病い』(幻冬舎)が発売された直後に、本の内容とリンクする現実が、勃発してしまったのだから面白い。
      民衆は自分たちが主権者だと思っているから、「なめていい権力者」だと思ったら情け容赦ない。
     舛添の公私混同の無駄づかいが、民衆の家計の範囲で分かるセコイ金額だったから、「これなら糾弾できる」と自信を持ってしまったのだ。まったくどうしようもない矮小な民衆だ。
     朝日新聞が「メディアタイムズ」という記事で報告しているが、舛添バッシングは各テレビ局でも異例の高視聴率を記録したらしい。辞任を決意するまで日に日に数字が上がったらしく、関東以外の系列局でも視聴率が上がり、まさにキラーコンテンツだったそうだ。
      視聴率はスポンサーがCMを出稿する際の目安になり、CM契約料に直結するから、他局が流しているとやめられなくなるという。
      マスコミが火をつけ、民衆が熱望し、マスコミが民衆の期待に応え、さらに民衆が熱狂して、ポピュリズムの政治家も民衆に抗えず、暴走は止まらない、これが『民主主義という病い』である。
     舛添要一は一時期、世論調査で「首相にしたい政治家」第1位だった。
     2年前の都知事選で候補者選びに難航した自民・公明は、その人気を当て込んで、これなら勝てそうだということで推薦したのだ。
     そもそも舛添は参議院議員時代、自民党が野党に転落して最も苦しかった時期に「自民党の歴史的使命は終わった」と捨て台詞を吐いて離党した人間であり、その際、 自民党は舛添を「 除名処分 」にしている。
     政党の除名処分とは、一般企業でいえば「懲戒解雇」に当たる。それを再び迎え入れて担ぐというのは非常識としか言いようがなく、自民党内には「舛添だけは推すわけにはいかない」と反発する声があった。
      それでも舛添をゴリ押しして、人気があるからと便乗しておいて、今度は参院選に都合が悪いからとポイ捨てだ。こんな卑怯な政党があるだろうか?
     もっとも舛添だって都合が悪いからと自民党をポイ捨てし、風向きが変わったらヌケヌケと組んだ人間だったのだから、どっちもどっちだが。
     しかも舛添は、認知症になった母親を死ぬまで介護したということで好感度を上げ、それで参議院議員に当選して厚生労働大臣にまでなったのに、実は母の介護など 全然しておらず 、たまにやってきては車椅子を押す様子を写真に撮らせて帰っていただけだと親族に暴露されているし、他にも元妻・片山さつきへの DV だの、重度の障害を抱えた婚外子の養育費の減額を要求しただの、デタラメな話が枚挙に暇がない人間ではある。
     舛添がろくでもない奴であることはわかっていたが、お金の収支で言うのなら、やっぱり『レ・ミゼラブル』のエピソードに倣ってコソ泥には銀の食器を与えよ、という方が合理的である。
     ああいうプライドだけ高い小悪党は、容赦してやれば反省して死にもの狂いで働くものだ。実際、舛添は給与を全額返上するから働かせてくれと哀願していたではないか。
      舛添がちょろまかした金額など、これから都知事選で費やされることになる50億円に比べれば、微々たるものだ。
     猪瀬直樹の辞任で行われた選挙からたった2年半。その前の石原慎太郎も任期途中で、政治生活の最後に国政に復帰したいという全く私的な理由で都知事職を投げ出しているから、 この4年間で3度目の無駄な都知事選だ。費用はトータル140億円。巨額の損失じゃないか。
     そもそも、舛添を叩きまくった民衆は、石原慎太郎にはなぜ何も言わなかったのか?
     石原が都知事時代にやらかした公私混同の贅沢三昧など、舛添がやったこととは比べ物にならない。
  • 「アベノミクス『大本営発表』と日本の敗戦」小林よしのりライジング Vol.162

    2016-01-19 18:00  
    150pt
     年明け早々、安倍首相の 「パート月収25万円」 発言が波紋を呼んだ。
     こういう発言が首相の口から出ると、わしとしては「やっぱり自民党というのは、国民の実情をまったく知らないで、経済政策をやっているのだな」と確信する。
    「ただ株価だけしか見ない首相によって、富裕層向けの経済政策しかする気がないんだな」と思わざるを得ない。
     だが、それでも自民党の支持率は50%を超えている。他の政党よりマシだからというニヒリズムな理由によって。
     わしは今回もあえてアベノミクスにこだわろう。
    「パート月収25万円」 発言は1月8日の衆院予算委員会で、民主党の山井和則議員の指摘に反論する中で出てきたものである。
     山井議員は 、民主党政権の時よりも、第2次安倍政権の時の方が実質賃金は減少している と指摘、それに対して安倍はこう反論したのだ。
    「景気が回復し、そして雇用が増加する過程において、パートで働く人が増えれば、一人当たりの平均賃金が低く出ることになるわけであります。
     私と妻、妻は働いていなかったけど、景気が上向いてきたから働こうかということで働き始めたら、(月収で)私が50万円、妻が25万円であったとしたら、75万円に増えるわけでございますが、2人で働いているわけですから、2で割って平均は下がるわけです」
     景気が回復し、雇用が増加する過程においてはそういうデータが出ることもあると言ったわけだが、そこで例として言ったことが、妻がパートで働いて月収25万円…一体、どこにそんな職場があるというのか!?
     今どき、正社員だって月収25万円に満たない人はザラにいる。 最近のパート労働者の平均月収は、厚労省の毎月勤労統計調査によると8万4000円。「世帯主の配偶者」の収入で見ると、6万円程度だ。
     そもそも 「景気が上向いてきたから働こうか」 って、そんな人いるか!? ほとんどの家庭の主婦は、かつかつの家計を少しでも助けようとパートに出ているんじゃないか!
     さすがにこの発言はネット内で「炎上」する事態となったが、中には「例として計算しやすい数字を出しただけ」と安倍を擁護する者もいて、安倍も後日同様の釈明をした。
     バカなことを言ってはいけない。 普通の生活感覚があれば、「主婦がパートで月収25万円」なんて、例としてでも口には出ないものだ。
     安倍は庶民のことなど一切考えてもいない。それどころか、自分に庶民感覚が完全に欠落していることを自覚すらしていない。絶望的なほど世間知らずのバカ坊ちゃんのまま総理をやっているということが、一番の大問題なのである。
     首相の月給は205万円、これにボーナスなどの手当てを加えれば、年収で5000万円ほどになる。安倍にしてみたら「月収で私が50万円であったとしたら」という数字も、計算しやすい例として「安い」数字を挙げたつもりだったのだろう。
     かつて麻生太郎は首相だった頃、国会でカップ麺1個の値段を質問され、 「今、400円ぐらい?そんなにはしない?」 と答えに窮し、あまりにも庶民感覚が欠落しているとマスコミから袋叩きにあった。
      安倍の「パート月収25万円」発言は、それよりもはるかに大きな問題であることは間違いないのに、これがほとんど報道されていない。 マスコミが政権に抑えられている証しである。
     振り返れば第1次安倍政権の時は、
  • 「トリクルダウンがなければアベノリスクは確定」小林よしのりライジング Vol.161

    2016-01-12 17:55  
    150pt

     今年は元旦の『朝まで生テレビ』出演からスタートとなったが、番組はいつもより長丁場で5時間近くに及んだにもかかわらず、そのうち3時間近くがアベノミクスに関する議論に費やされた。
     そのために予定にあった慰安婦問題の「日韓合意」に関する議論は一言も触れられずに「時間切れ」で終わってしまった。
     
     わしはアベノミクスの議論をテレビでやってもしょうがないと思っている。テレビにはスポンサーが必要だし、スポンサーはアベノミクスを批判してほしくないのだし、年頭から景気が悪くなっているという悲観論を好むはずがない。
     大企業はアベノミクスの恩恵を受けているし、円安の為替差益だけでぼろ儲けして、内部留保を溜め込んでいる。
     経団連は安倍政権と蜜月状態なのだから、大企業はアベノミクスを批判するようなテレビ番組のスポンサーにはなりたくないだろう。
     さらにテレビ局の上層部は頻繁に安倍総理とゴルフをしたり、食事会をしたりしてるのだから、政権擁護になるのは仕方がない。
     アベノミクスに不利な番組作りをするはずがないのだから、この議題で3時間を費やすのは、安倍政権の応援としか思えないのだ。
     本気の議論ならわしなんか呼ばずに、浜矩子や榊原英資を呼べばいい。芸能タレント化している森永卓郎では勝てるはずがない。
     それよりも、年末のどさくさ紛れにバタバタと行われ、未だ評価の定まっていない慰安婦問題の「日韓合意」の方が視聴率が取れるはずだし、そのためにわしが呼ばれたのかと思っていた。
     この議論をやれば、共産党の小池氏と、民主党の辻元氏と、リベラルの三浦氏が安倍首相を擁護して、わし一人で批判するという興味深い対立が生まれたはずなのに、最後まで慰安婦問題は触れられなかった。
     それでわしはテレ朝に対する疑惑が生じてしまい、そこに「ヤラセ問題」が発覚したので、愕然としてしまったのだ。
     番組中に観覧席から「一般人」として民主党批判の発言をした大森昭彦なる人物は、実は自民党の大田区議だったという「ヤラセ疑惑」が放送終了後に発覚する事態となった。
     大森は約20年前から朝生のディレクターと知り合いで、当然ながらディレクターも大森が区議であることを知っていた。
     番組では、客席から意見を求める際に進行役の渡辺宜嗣アナが「大田区で建築板金業を営んでいらっしゃる大森さん、いらっしゃいますか」と指名して意見を求めたし、画面では大森がマイクを握ると「大森昭彦さん 建築板金業」という字幕が出た。
     大森が「自民党区議」であることを隠し、一般の「建築板金業者」として発言することは、事前に仕込んであったのだ。特定の政治的意図に基づいた「仕込み」だったのか否か、そこはわしには分からない。
      マスコミに安倍政権の圧力が浸透し、番組スタッフも権力に迎合していると、囁かれている現状があるにも関わらず、「朝ナマ」のこの失態はどうしたことか?
     実はこの件に関しては、今月中に田原総一朗氏と対談することになっている。来月の「SAPIO」に掲載されるだろう。
     とはいえ、いくら周到に安倍政権の擁護工作をしたところで、想定外の事態は起こるものだ。
     この日のわしにとっての最大の収穫は、元総務相・慶応大教授で、今も政府の産業競争力会議の議員を務める 竹中平蔵の口から、 「トリクルダウンなんてありえない」 という発言を引き出したことである。
  • 「恐るべき実態!深刻化する女性の貧困」小林よしのりライジング Vol.84

    2014-05-06 13:20  
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     4月27日に放送されたNHKスペシャル「調査報告 女性たちの貧困~新たな連鎖の衝撃」で見たが、若い女性の貧困化がもの凄いことになっている。
     都内のインターネットカフェで、41歳の母親と、19歳と14歳の娘2人がそれぞれ別のブースでもう2年半も暮らしている。
     母親は10年前離婚し、看護助手として女手ひとつで子供を育てていたが、子育てと仕事の両立に疲れ、生活が困窮、アパートの家賃が払えなくなってここにたどりついたという。
     妹は中学3年だが、もう半年近く学校に通っていないという。
     姉は生活苦で高校を中退、コンビニのバイト代10万円と母親からの数万円が姉妹の生活費だが、1日1食。空腹の時は店内の無料のドリンクバーでしのいでいるという。
     1個のパンを分け合い、ツナ缶をつついている様子は衝撃的だった。
     明日の食事の心配をしなくていい暮らしがしたいというのが、今の姉妹の願いなのだそうだ。
     今は派遣で働いているという母親の姿は映されなかったが、生活に行き詰っても周囲の人や行政には頼らなかったというから、もう少しなんとかなったのではないかという感もある。
     だが、女性の貧困の問題が深刻化しているということは紛れもない事実である。
     番組では、他にも真面目に長時間働きながら貧困から脱出できない女性が何名も登場し、彼女たちは異口同音に、特別な望みはない、ただ普通の暮らしがしたいと言っていた。
      今や働く女性の約6割が非正規雇用である。
     非正規雇用で働く若年女性(15~34歳)の 81.5% 、289万人が、国が生活支援の対策で困窮状態の目安としている 年収200万円を下回っている。
     さらに 国が「貧困」と位置づける 年収114万円未満 は、働く世代の単身女性の 3分の1 、約110万人に上るという。
     安倍政権は女性の活用が成長戦略の柱だとか言っている。
     首相官邸ホームページの「女性が輝く日本へ」を見ると、その政策として挙げているのは「待機児童の解消」「女性役員・管理職の増加」「職場復帰・再就職の支援」「子育て後の起業支援について」の4点だ。
     これを見る限り、 安倍政権がまず念頭に置いているのは企業で役員や管理職になれたり、自ら起業したりという、正規雇用やフリーでバリバリ働ける、ごく少数の有能な女性の活用である。
     あとは、正規社員の職場復帰や、スキルを身に付けた人の再就職支援くらいである。
      どうやら、上記の例に表れているような非正規雇用の女性は、安倍政権の眼中にはないようだ。
     圧倒的多数の普通の女性は、弱肉強食の社会の中に自己責任で放ったらかしでいいと思っているらしい。
      安倍政権の言う「女性が輝く日本へ」なんてものは完全なまやかしである。
     最初から「勝ち組」の女性だけが「輝く女性」として安倍政権の広告塔に使われるだけのことだ。
      結局のところ、女性登用を看板に掲げながら、実は男女共に強者優遇の勝ち組支援、男女共に貧困層切り捨てという政策に過ぎないのだ。
     かつての高度経済成長は人口の爆発的増加という条件があって、会社が家族共同体であり、企業は男性社員の嫁候補として女性を雇っていた。
     給料が必ず上がるから将来の不安がなく、低賃金でも結婚できたし、専業主婦が多かったから貧困化する女性は少なかった。
      だが今にして思えば、専業主婦は潜在的な貧困層だったとも言える。
     グローバリズムの中、少子高齢化時代に突入した日本でさらに「経済成長」のみにこだわれば、限られたパイを勝者が独占する新自由主義を採用するしかない。
     会社が株主のものとなり、終身雇用制が崩れ、会社の共同体としての役割が消滅。格差の米国型拡大で、貧困層を増え続けさせるのである。
      そうなれば、男より女の方がより貧困率は高くなっていく。