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  • 「凡庸な悪としての佐川宣寿」小林よしのりライジング Vol.350

    2020-03-25 20:10  
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     自らものを考え、良心を持っていた人が、それゆえに苦しみぬいて自ら死を選び、一方で何も考えず、良心もない人間が出世してのうのうと生き延びる。
     そんな醜悪なことが通用する理不尽な世の中では、絶対にいけない。
     森友学園への国有地売却問題に関して、当時の財務省理財局長・佐川宣寿(のぶひさ)から公文書改竄を強いられ、自殺に追い込まれた財務省近畿財務局職員・赤木俊夫氏(享年54)の妻が、佐川と国に1億1千万円の損害賠償を求める民事訴訟を起こした。
     妻はノートに走り書きされた遺書と、パソコンに遺されていたA4用紙7枚にも及ぶ詳細な手記を公表。これを掲載した週刊文春3月26日号はたちまち完売となった。
     遺書には、震える字でこう綴られていた。
    森友問題
    佐川理財局長(パワハラ官僚)の強硬な国会対応がこれほど社会問題を招き、それにNOを誰れもいわない
    これが財務官僚王国
    最後は下部がしっぽを切られる。
    なんて世の中だ、
    手がふるえる、恐い
    命 大切な命 終止府
    (原文ママ)
     さらに手記には、
    「元は、すべて、佐川理財局長の指示です。
     局長の指示の内容は、野党に資料を示した際、学園に厚遇したと取られる疑いの箇所はすべて修正するよう指示があったと聞きました。」
    として、より詳細な経緯が記されている。
     赤木氏は現場の人間として頑として改竄に抵抗したが、これに対して財務省総務課長の中村稔や国有財産審理室長・田村嘉啓が近畿財務局トップに圧力をかけ、その結果、赤木氏が改竄作業をやらされることになった。
     しかも手記では、近畿財務局には財務省の言いなりになって改竄を行なうことを、何とも思っていなかった者もいたことも暴いていた。
    「本省からの出向組の小西次長は、「元の調書が書き過ぎているんだよ。」と調書の修正を悪いこととも思わず、本省杉田補佐の指示に従い、あっけらかんと修正作業を行い、差し替えを行ったのです。」
     そして手記で特に見逃せないのは、この記述の後に書き加えてあったこの一文だ。
    「大阪地検特捜部はこの事実関係をすべて知っています」
     大阪地検特捜部はこの件をすべて把握していながら、官邸の圧力に屈して立件を見送ったのである。
      この時、官邸の意を受けて捜査にストップをかけるために動いたと言われているのが、当時法務省事務次官だった黒川弘務。現在東京高検検事長で、違法な定年延長が問題になっている人物だ。
     当然、安倍政権はこの「官邸の番犬」の定年を延ばして検事総長にして、追及をかわそうとしているわけで、こうまで思惑見え見えのことをヌケヌケとやれる神経にも呆れ果てる。
      大阪地検特捜部は公文書改竄について一時は捜査に動きながら、結局、佐川はおろか財務省関係者の全員を不起訴処分とした。
     これについては官邸と検察上層部の間で、財務省には触わらず、代わりに近畿財務局の職員を挙げて幕引きをはかるというシナリオが進んでいると噂されていたという。
      そうなると、「トカゲのしっぽ切り」で挙げられる近畿財務局職員とは、赤木氏しかいない。 週刊文春記事によると、実際その頃検事から赤木氏に電話があり、その後、赤木氏は妻にこう話したという。
    「検察は恐ろしいとこや。何を言っても思い通りの供述を取る。検察はもう近畿財務局が主導して改ざんしたという絵を描いている。そのストーリーから逃げられない。ぼくが何を言っても無理や。本省の指示なのに最終的には自分のせいにされる。ぼくは犯罪者や」
     赤木氏は強度のストレスから心身に支障をきたして休職し、平成30年(2018)3月7日、自殺した。
     赤木氏が死の直前まで書いていたと思われる手記の最後は、こう結ばれている。
    〇刑事罰、懲戒処分を受けるべき者
     佐川理財局長、当時の理財局次長、中村総務課長、企画課長、田村国有財産審理室長ほか幹部 担当窓口の杉田補佐(悪い事をぬけぬけとやることができる役人失格の職員)
     この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。
     事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。
     今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(55歳の春を迎えることができない儚さと怖さ)
     家族(最も大切な家内)を泣かせ、彼女の人生を破壊させたのは、本省理財局です。
     私の大好きな義母さん、謝っても、気が狂うほどの怖さと、辛さこんな人生って何?
     兄、甥っ子、そして実父、みんなに迷惑をおかけしました。
     さようなら。
     あまりにもひどいことが行われていたことを知って、慄然とする。
  • 「お辞儀というナショナリズムで防御せよ!」小林よしのりライジング Vol.349

    2020-03-17 20:50  
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     メディアの中で言ってることと身の周りの現実があまりにも異なって、困惑してしまうことが度々あるが、そういう時は自分の生活実感や直観を信用した方がいいとわしは思っている。
     新型コロナウイルスなんか、日本じゃ流行っていないんじゃないか?
     何しろ、わしの身近には新型コロナに感染した者など一人もいない。よしりん企画のスタッフも、いつもは冬になると誰かしら病欠して寝込んでしまうのだが、今シーズンは誰も風邪ひとつ引かず、例年よりも健康なくらいだ。
     それなのにメディア、特にテレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」は、まるでこの世の終わりでも来るかのように、毎日毎日ほとんど全時間を費やして危機を煽っている。
     3月11日の放送では、「北海道大学研究グループの試算によると、感染防止対策を全く取らなかった場合、日本の人口1億2千万人のうち 発症が約1080万人、入院が216万人、そのうち重症化が21万6千人 」と言っていた。
     発症者1080万人というのはインフルエンザと大差ないが、「入院216万人」というのはとんでもない数字で、 現在の全国の病院の病床数が全部で130万程度なので、これが本当なら完全に医療崩壊を起こしてしまう。
     ところが3月14日、安倍首相は記者会見で「現時点で緊急事態を宣言する状況ではない」と述べた上で、以下の状況を明らかにした。
      ・人口1万人当たりの感染者数は、0.06人にとどまり、韓国、中国、イタリアをはじめ、欧州13カ国、イランなど中東2カ国よりも少ない。
     ・感染が確認され、かつ、症状のある人の80%が軽症。
     ・重症化した人でも半数ほどの人が回復。
     ・死亡者は高齢者や基礎疾患のある人に集中。
     ・感染が確認された人のうち、約8割は他の人に感染させていない。
     拍子抜けするほど「安全」という感じの内容だった。
     もちろんこれは厚労省などの専門家の分析によるものであり、実感としても羽鳥モーニングショーに出てくる「専門家」の言うことよりもずっと納得いくように思えた。
     日本じゃ新型コロナなんか、大して流行っていないとしか思えない。検査の数が少ないから感染者数も少ないとか言われるが、本当だろうか?  実際は、検査を広げたってそんなに感染者数は増えないのではないか?
     日本は感染・重症化のリスクが大きい高齢者の人口が多いが、老人ってものはすごく怖がりで、以前は病院をたまり場のようにしていた老人も、病院に感染リスクがあると聞くや一切寄り付かなくなって自宅に閉じ籠り、今では病院もガラガラだ。 
     感染しやすく人口の多い年齢層は外出しないし、若者は感染しづらく、たとえ感染したって無症状だったり、発症しても1週間程度で自然に治っちゃったりするのだから、これでは流行りようもないのではないか。
     そもそも、日本人にはものすごく清潔好きという国民性がある。
     その性格は江戸時代には確立していて、幕末に来日した欧米人は口々にその清潔さについて語っている。
    「世界であらゆる国で貧乏にいつも付き物になっている不潔さというものが、少しも見られない」 (アメリカ総領事 ハリス 安生3年・1856年来日)
    「すべて清潔ということにかけては、日本人は他の東洋民族より大いに勝っており、とくに中国人には勝っている」 (イギリス公使 オールコック 安政6年・1859年来日)
    「日本人が世界でいちばん清潔な国民であることは異論の余地がない。どんなに貧しい人でも、少なくとも日に一度は、町のいたるところにある公衆浴場に通っている」
    「彼ら(日本人)は、われわれが同じハンカチーフを何日も持ち歩いているのに、ぞっとしている 」(ドイツ考古学者 シュリーマン 慶応元年・1865年来日)
    「日本人の清潔好きはオランダ人よりはるかに発達していて、これは家屋だけでなく、人物一般についてもいえるのである。仕事が終わってから公衆浴場に行かないと一日が終わらない」 (フランス海軍士官スエンソン 慶応2年・1866年来日)
      もともとそんな国民性があるから、予防のために手洗いが大切だと言われたら、あっという間に徹底してしまう。
     それに、やはり日本人には公共心が強いという国民性があるのではないか。
     人にうつしてはいけないということを非常に意識して、相当に自己管理するし、外出する際にはあまりにも生真面目にマスクをする。ちょっとその対応は過剰じゃないかと思うほどだ。
     先日、「ゴー宣道場」開催のために岡山に行った時も、街中を歩く人が全員マスクをしていたので驚いてしまった。岡山県は感染者も出ていない上に、すごく爽やかな晴天で、空気のおいしい屋外だというのに、みんなマスクをしていたのだ。行き帰りの新幹線の車内も、乗客が少ない上にみんなマスクをしていて、誰も咳ひとつしなかった。
      清潔好きな上に、こんなところで飛沫感染なんか起こるわけがないというような場所でもマスクをするほど公共心が強くて、そして老人は引きこもっているのだから、これじゃウイルスも広がりようがないだろう。
     その一方で、世界には不潔な国というものもある。
  • 「コロナに対する哲学」小林よしのりライジング号外

    2020-03-10 14:40  
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     来る日も来る日も朝から晩まで新型コロナウイルスの話題ばっかりなので、せめてライジングくらいは話題を変えたいところなのだが、これだけいろんな人がしゃべりまくっていても、わしの考えるような本質的な話が一切出てこないのだから仕方がない。ここで語っておくしかなかろう。
     安倍首相が「対策やってるふり」のパフォーマンスのために思いつきで言い出した「全国一斉休校」のせいで、日本中が大混乱となっている。
     そもそも小中高校を一斉休校にして、イベント等も軒並み自粛させるくらいなら、 高齢者施設だって一斉休業にして、老人を自宅に帰して籠らせなければおかしい。 高齢者ばっかり集まっている施設で感染者が出たらあっという間に感染が広がってしまい、そのリスクは学校の比ではないのだから。
     ところが高齢者に対する感染防止策はほぼ皆無のままで、国会ではなぜ対応をしないのかという質問が出ると、自民党の議員が 「高齢者は歩かないから」 とヤジを飛ばす始末だから、もう無茶苦茶である。
     さらに言えば、 最も感染リスクが高いのは通勤ラッシュの満員電車であることは誰の目にも明らかなのに、その対策も全然ない。
     安倍は外交でも経済でも憲法改正でも、実際には何もやらず、やる気もないのに「やってるふり」だけ見せて7年間支持率を維持してきたが、今回も同じことである。
     そしてまたもや安倍が「対策やってるふり」パフォーマンスの思いつきで突然言い出したのが 「中韓からの入国規制」 、事実上の入国拒否である。
     今回も政府対策本部の専門家にすら一切相談もせずに決めたらしく、専門家からは疑問の声が相次いでいる。
      入国拒否は「水際対策」が有効な時期ならありうるが、本当にそれが必要な時期に、政府は逆に春節のインバウンド需要を見込んで中国人観光客を大量に入国させまくってしまった。
     今さら入国拒否をしても、既に国内に感染が広まっているのだから効果は薄く、今は国内の対策に力を入れるべき時期に入っている。 しかももはや感染地域は世界中に広がっているのだから、本気で入国拒否をするのなら、中韓に限らず世界中の感染国を対象にしなければならなくなる。
     そもそもなぜいまこれを決めたのかといえば、 「習近平の来日延期が決まり、中国に配慮しなくてよくなったから」 だというのは見え見えで、少しは真面目にものを考えろと言いたくなる。
     それでも「羽鳥慎一モーニングショー」の玉川徹は、タイミングが遅すぎることは指摘しつつも、「取れる措置は全て取るべきだ」として、今回の規制自体は支持。玉川は全国一斉休校についても、現場の混乱が報道された後になっても「正しかったと未だに思っている」と安倍支持を表明している。
     そんな大人の都合に振り回されている子供もいい迷惑だろう。テレビでは小学校低学年の子がインタビューを受けて、こんなやり取りをしていた。 
    「学校が急に休みになってどう思った?」
    「まさかって思った」
    「休みはどうするの?」
    「どうせばあちゃんち送りになるから…」
     祖母の家に預けられるのが「ばあちゃんち送り」で嫌だとは、この子にとってばあちゃんちって「収容所」か「刑務所」みたいなものなのか?と笑ってしまったが、ここは子供の言い分を聞くべきであって、いま子供を「ばあちゃんち送り」になどしてはいけないのだ。
     WHO(世界保健機関)の調査報告によれば、 新型コロナウイルスによる子供の感染例は少なく、19歳未満の感染者は全体のわずか2.4%で、感染しても症状は軽いという。
      だが高齢者や持病のある人は重症化や死亡のリスクが高く、80歳を超えた感染者の致死率は21.9%と、5人に1人以上にもなる。
     子供は感染率が低く、感染しても無症状か軽症で済むのだから、普段通りに学校に通わせておけばいいのであって、それを休みにして祖父母の家に預けさせたりして、もしもその子が無症状感染していたら、わざわざ高齢者を感染リスクにさらすことになってしまう。
     つまり「ばあちゃんち送りは嫌だ」という子供の言い分は、エゴイズムのようでいて、結果的に非常にパブリックな意見になっているのだ。
     ばあちゃんちに行きたくないという子供の声は全く正しい。子供って、非常に立派なことを言うなあと思ったものである。
     若者はエネルギーがあり余っているものだから、ひきこもりでもない限り、体調も悪くないのに急に学校が休みになったら、家で一日中じっとしてなどいられるわけがない。やっぱり、カラオケやゲームセンターなどアミューズメント施設に出かけて遊んでしまったりするのだから、これでは休校にする意味など何もない。
      北海道の感染状況を調査した専門家によれば、活発な若年層がリスクの高い場所で気付かないうちに感染し、無症状もしくは軽症の状態で道内各地に移動して、高齢者に感染させたと考えられるという。
     これを受けて政府の専門家会議は、「若者は重症化リスクは低いが、感染を広げる可能性がある」として、若者に対して活動の自粛を求めている。
     しかし、老人が感染したら死ぬかもしれないから、若者が我慢してじっとしてろと行政が言うなんて、とんでもないことだとわしは思う。
  • 「コロナ・政権とマスコミの共犯」小林よしのりライジング Vol.348

    2020-03-04 22:35  
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     さすがにトイレットペーパーの買い占め騒ぎまで起きたのには驚いた。50年近く前のオイルショックの時代にタイムスリップしたかのようだ。
     不安とパニックで、大衆から冷静な判断が失われていく様子は東日本大震災直後のことも連想させられる。
     そしていま、この混乱に乗じた「火事場泥棒」がいる。これは決して見逃してはならない。
     安倍晋三首相は2月27日、新型コロナウイルス対策として全国の小中学校、高校、特別支援学校を3月2日から春休みまで臨時休校にするよう要請した。
     これは法的根拠のない要請で、与党議員にも事前の説明はなく、安倍首相に近いとされる議員もその多くが報道で初めて知って「驚いた」と口々に語った。
     決定はほとんど安倍の独断らしく、官邸内でも危機管理における「政」のトップである官房長官・菅義偉、「官」のトップである官房副長官・杉田和博の両名にすら事前の相談がないという異例の意思決定が行われ、自民党の新型コロナウイルス関連肺炎対策本部長である元厚労相・田村憲久も「事前に聞いていなかったので、突然で驚いた」と述べている。
     この要請、わしには全く理解ができない。
     臨時休校や学級閉鎖などは、その学校ごとに判断すればいいことだ。感染者が続出している北海道なら休校が必要だといえるが、2月29日現在、東北地方の感染者数は仙台に1人、中四国地方は徳島県に1人だけである。全く患者のいない県の学校まで政府が一律に休校とすることに、一体何の意味があるのだろうか?
     これはわしだけが言っていることではない。安倍側近と言われた元文科相の柴山昌彦までが報道で初めて知って、「亡くなった方が出ている所と、感染者が報告されていない所と、一律の対応というのは、柔軟性に欠けるのかなと。唐突ではないかなと思う」と言ったほどである。
     しかも子供の感染例は比較的少ないのだから、それよりも老人に対する診療体制を充実させる方を優先させるべきではないのか。
     それなのに、この要請に対して自称保守のみならず、普段安倍政権を批判している左派メディアからも「英断だ」と絶賛の声が上がったものだから、わしは呆れかえってしまった。
     そもそもここまでの安倍政権の新型コロナウイルスへの対応は「後手後手」どころか「無為無策」と言うに等しく、ここまで感染が広がったのは、阪神淡路大震災の村山政権、東日本大震災の菅政権にも匹敵する、安倍政権の「人災」というべきである。
      本来なら今年1月6日、武漢からの帰国者に初の感染が確認された時点で徹底した水際対策を取らなければならなかった。ところが政府は春節のインバウンド需要欲しさに中国人観光客を入国禁止にせず、ウイルスを国内に招き入れてしまった。
     わしは早い時点で「中国人観光客を入国禁止にしろ」と唱えたが、そういう意見は「排外主義」扱いされる始末だった。
      スイスのロシュ社は、武漢での感染が発覚すると緊急にわずか数日で検査キットを開発し、中国湖北省に無償提供していた。 だからダイヤモンドプリンセスの件では、ロシュのキットをさっさと輸入して、直ちに乗客乗員の全員検査をすればよかった。
     ところが実際は全員検査をせずに乗客乗員を船内に閉じ込め、船をウイルス培養の「巨大シャーレ」にしてしまい、無駄に感染者・死者を出し、その失態を世界中に大宣伝してしまった。
     もともと感染症対策は厚労省だけの問題ではない。国民の行動制限など、厚労省ではできない問題も多く関連するので、全省庁を横断する体制を作り、そのトップに首相が就いてリーダーシップを発揮するというのが当然の形式だ。
      ところが安倍は責任を取りたくなかったのか、これを厚労省マターにして対応を加藤勝信厚労相に丸投げし、自らはずっと表に出てこなかった。
     これは海外から見れば明らかに異常で、米ロイター通信は「Where’s Abe?」(安倍はどこだ?)と揶揄、国内の内閣支持率も急落した。
     なにより安倍首相にとって重要なのは、3月末にも始まる東京五輪の聖火リレーである。東京五輪が中止になったら、莫大な経済的損失が出る。
      それに焦ったものだから、安倍は急にしゃしゃり出てきて、必要ともいえない「全国小中高一斉休校」を唐突に言い出して極端な強権を振るい、「子どもの健康安全を第一に考え」ただの「ここ1、2週間が極めて重要な時期」だのと言って大見得を切ったのだ。
     あまりにも見え見えの、政権維持のためのパフォーマンスである。ところがこれに左翼まで騙されて、「大英断」と絶賛したのだ。安倍は、チョロいもんだと内心舌を出したことだろう。