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記事 6件
  • 「ど~してそ~なった?FX個人投資家たちの落ちた罠」小林よしのりライジング Vol.170

    2016-03-15 16:00  
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     今年2月末、日本初の広告写真制作会社であり、最大手の撮影スタジオが自己破産した。一般の人でもこのスタジオで撮影された広告写真やTVCMは、一度ならず必ず目にしている。鉄道、ビール、お菓子、薬、化粧品、ファッション、家電、映画ポスター、雑誌の表紙……。一時は飛ぶ鳥を落とす勢いで、多くのフォトグラファーを育ててきたが、フィルムからデジタル・ネットの時代となり、ここ数年は「安く・早く」ばかりを要求されて苦慮していたようだ。
     創業61年目の春。老舗は、本当に“老いた存在”になってしまった。
     老いたスタジオの息の根を止めたのは、なにより広告の出稿数の激減だった。
     広告代理店最大手「電通」の調査レポートによると、日本の総広告費は2007年が過去最高で7兆円、そこからみるみる減少して2015年には1兆円減の約6兆円となった。
     ネットゲーム、ネットショップ、エネルギー関連など一部の業種を除き、ほとんどの広告費は、自動車が89%(前年比)、キャラクター玩具84%、飲料91%、家電91%、家具92%、不動産95%と下降し続けている。
     だが、 経済がこのような状況であるにも関わらず、なぜだかハイテンション、アゲアゲエブリナイトでバボォーンッ! ……と財布の紐を緩める人たち がいる。
      小口の個人投資家 だ。
     なかでも盛り上がっているのは FX(外国為替証拠金取引) である。米ドルやユーロ、ポンドなどの外国通貨を売買して、時々刻々と変動する為替レートの差額で損益を出す。モニターを何台も並べて一日中陰気な顔でジトーーーッと折れ線チャートを睨み付け、ポチポチ地味に売ったり買ったりする、あれだ。
     
     私の周囲にも、この頃やたらとFXに興味を持ち始めたという人が増えている。
     投資家なんて、お金の余力のある人がやることだと思っていたが、実態はそうではないようだ。売れているわけでもないフリーのクリエイター、特にお金持ちでもないパート主婦、60代の警備員までが、FXの口座を作ったと言うので驚いている。
     実際、この数年、FX参入企業が次々現れ、ネット上では、カリスマ主婦トレーダーや、タレントトレーダーなどが持ち上げられ、ばんばん広告が打たれている。
    『無料の口座開設で2万円キャッシュバック!』
    『スマホアプリでいつでも簡単取引、副業FX!』
    『5分で口座開設、翌日から取引できちゃう!』
     はあ、ほかの広告はほとんどダメになっているのに、活気のある業界ですなあ。
     ポップな言葉とともに、学生や主婦、年金生活者などの小口利用者を紹介し、「誰にでもできる、簡単で安全な投資」であることを前面に押し出す広告。
     思わずクリックして覗いてしまう気持ちはわかるのだけど、単純に 『リスクがあるに決まってる』『簡単に稼げるなら、いまの不況があるわけない』 という考えがよぎるのですが……。
    ◆どーしてFXになっちゃうの!?
     人はなぜ、大した資産家でもないのに個人投資家になりたがるのか。FXをはじめることにしたという人達に、なにがそんなに魅力的なのかと聞いてみた。
  • 「中国人の爆買いに媚びを売る自虐的『おもてなし』を止めろ!」小林よしのりライジング号外

    2016-02-29 14:55  
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    ゴーマニズム宣言 「中国人の爆買いに媚びを売る自虐的『おもてなし』を止めろ!」  爆買い目当てにやってくる中国人なんかを有難がる連中の気が知れない。
     先日、わしは銀座で映画を見たあとに目薬を買おうと薬局に入ったら、店内はものすごい数の中国人がたかっていてワーワー大声で話しており、商品を見ることもできない状態だった。
     この混雑が引いたら選ぼうと思ったのだが、いつになるやら全くわからず、呆然とするしかなかった。
     たまたまその時は、店員が気づいて何が必要ですかと声をかけてきて選んでくれたが、もう銀座では中国人爆買い客のせいで、目薬ひとつ自分では選ぶことができないのだ。
     京都では、祇園の道端に座り込んでいたり、舞妓さんの通り道をわざとふさいで写メ撮ったり、舞妓さんに直接触ってきたり、傍若無人の振る舞いをしている。
     清水寺の参道なんかは原宿の竹下通りのように人波に埋め尽くされている。しかもカワイイ女の子の竹下通りではなくて、中国人のダサイ恰好をした集団が、一切マナーも守らずにうじゃうじゃ食い歩きをしているのだから、雰囲気がぶち壊しである。
     こんなことがいつまで続くのか知らないが、京都では増加した観光客のためにホテルが足りないからと、建築物の高さの規制緩和まで検討している。
     中国人を特別待遇するために、せかっくの京都の観光資源をぶち壊しにしようというのだから、がっかりだ。
     
     そんなわけでわしは2月20日に 『外国人観光客は目障りだ』 と題したブログを書いた。
    http://yoshinori-kobayashi.com/9602/
     そうしたら、案の定たちまち「炎上」となって、ありとあらゆる罵詈雑言が飛んできた。
     あのブログは偽善者をあぶり出すための「引っ掛け」である。
     ちゃんと「 誰もが排外主義だと思われたくなくて、ヒューマニストを気取り、爆買いが嬉しいなあと、商売人でもないくせに歓迎するふりをしているが、本気なのか? 」という問いも入れておいたのだが、それでも予想通り「入れ食い」でホイホイと釣れたわけだ。
     まとめサイトも複数作られているが、わしの読者が批判に的確に反論しているサイトがなかなかおもしろい。
    http://togetter.com/li/941516
     この炎上の分析は、その中で読者の人たちがやってくれているので紹介しておこう。
    炎上しているようで、ざっと大別すると
    「差別だ!差別的だ!差別扇情的だ!」
    「景観など知らん!目先の金だ!」
    「よしりんのバカ!もう知らない!」
    の三種類しかないな。中でも三つ目が一番多い。(シャキヌさん)
    小林よしのりの外国人観光客への(真っ当な)批判に対し、主にリベラルから「差別だ!彼らはお金を落とす大事なお客様だ!」と反応が出ているようだ。アホかと。風情を守るという観念がないリベラルに、安倍が進めるグローバル経済を批判する資格は無い。(尻毛屋さん)
    小林先生の「目障り」発言に反発してる人たちは絶対に外国旅行に行って欲しくないですね。どんなマナー悪かろうが景観壊れようが、俺たち日本人は金を落とすのだからいいじゃないか、目障りなどと言うな、それは排外主義だ!という、一番手のつけられないタイプですよ。(海風さん)
    たぶん観光客の件でよしりんに反発した左翼は、ほぼ間違いなく移民政策にも賛成するんだろうな。
    それが新自由主義の政策だと頭で解っていても、賛成する自分を止められないのが左翼。
    反国家で地球市民的なイメージに逆らえない体質じゃ反対しようがない。(海風さん)
     そもそも、「爆買い客」目当ての日本人の対応は異様だと感じている人は、わしだけではない。
  • 「経済成長神話から脱却できない日本人」小林よしのりライジング Vol.134

    2015-05-26 17:00  
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     泉美木蘭さんの『中国びっくり紀行』には、毎回本当に驚かされている。
     どこまでも、どこまでも、建てて、建てて、建てまくっている高層マンション群、取材の4日間、ほとんど太陽が見えなかったという深刻な大気汚染。そして「カジュアルに死んでる」としか思えない交通事情。
     全てが経済成長、経済成長、経済成長のためにと驀進している姿なのだが、これを見て不安に思わない人などまずいないだろう。
     週刊現代5月30日号の「騒がれ出した世界経済『6月危機』」という記事によると、「中国経済の失速」は多く報じられてはいるが、その実態は大手メディアの報道よりはるかに惨憺たるものになっているそうだ。
     上海など中国経済の牽引役と言われた地域は、今では賃金上昇などで外資系企業の撤退が止まらず、関連工場が相次いで倒産。その余波で飲食店など工場従業員向けサービス業でも大量に失業者が出て、治安も悪化。上海では「盗みに気をつけろ」が合言葉になっているという。
     さらに不動産市況も、建設ラッシュに沸いた時代に比べれば新規着工件数は大幅に減少。作ったものの買い手がつかずに「ゴースト化」した高層ビルが当たり前のように存在するらしい。
     また、かつては官僚接待のためにブランド品が大量に買われていたが、「反腐敗運動」によって今では高級百貨店に閑古鳥が鳴いているという。
     そしてあまりの不況から、最近では偽札が大流行しているそうだ。
     問題を抱えているのは中国だけではない。世界で唯一好況感のあった米国経済も、実態は相当な惨状だという。
     株高で潤っているのは上位5~10%の富裕層だけで所得格差は依然大きく、引退期を迎えたベビー・ブーマー世代も、蓄えの不足から簡単には引退できない状態で、消費は盛り上がっていない。
     さらに米経済の牽引役が期待されたシェールオイル産業はすでに過剰投資状態で、今後は泡沫企業の倒産が相次ぐ公算が高い。
     グローバル企業もドル高で決算が大きく落ち込んでいるという。
     米中の経済が失速すれば、両国への依存度が高い日本経済は大打撃を受ける。
     そもそも現時点でも、政府が「景気回復まであと一歩」といくら言い続けようと、一般庶民はそんな実感は一切ない。
     円安で一部の大企業が潤い、株高で富裕層が儲けているだけで、大半の中小企業や庶民は円安による物価高と実質賃金の低下に苦しめられている。
     家計は食費以外にお金を使う余裕を失い、エンゲル係数が21年ぶりの高水準という状況だ。
     こうして日米中の経済3大国がそろって火種を抱えている中、経済のプロの間で世界経済の 「6月危機」 が語られ始めていると週刊現代は書いている。
     現在、欧州では財政難にあえぐギリシャがEU(欧州連合)などと金融支援を巡って交渉中だが、その交渉期限が6月末なのである。
     EUは支援と引き換えに大幅な財政緊縮策を求め、ギリシャはこれ以上の緊縮策は無理としながら支援も受けようとしている。
     もしこの交渉が決裂し、ギリシャがEUを離脱するなど最悪の事態になれば、一気に日米中に欧州も加えた世界危機に発展するというのだ。
      一方で、世界経済危機の引きがねを引くのは日本だという見方も強い。
  • 「韓国船沈没の悲劇を、日本は他山の石とせよ」小林よしのりライジング Vol.85

    2014-05-13 13:00  
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     韓国船沈没の悲劇が、韓国人の「 公共性 」のなさを浮き彫りにして、自分さえ助かればいいという「 利己主義 」、カネのために人の命も犠牲にする「 拝金主義 」が批判されている。
     だが、韓国が新自由主義で突っ走り、経済が絶好調だったつい最近まで、日本企業はサムソンに負けた、日本も韓国を見習って規制緩和しろと経済評論家が論じ、テレビで特集していたものだ。
     日本だって原発事故で甚大な被害を出したにも関わらず、国内では早くも安全神話を復活させ、原発ムラの「 拝金主義 」のために再稼働を進め、さらには海外にまで輸出しようとしている。
      カネの為なら倫理も公共性も無視するのは、日本だって同じである。

     韓国は非正規社員が55%だと言うが、日本だってもう40%以上になっている。
     韓国は一度、財政破綻してIMFの管理下に入り、新自由主義に向かうしかなかった。
     だが日本は内需でやっていけるのに、0.1%の大企業のために新自由主義を推し進め、TPP参入にこだわっている。
     中間層を崩壊させ、地方経済を崩壊させ、分厚い貧困層を創出し、子供が産めない社会を作り、人口減を移民で埋め合わせようと考えている。
     なんで韓国に優越感だけ持っていられるのか?

     韓国社会がデタラメだということくらい、わしは「新しい歴史教科書をつくる会」で教科書運動をやってた頃から知っていた。
      顏も整形で「修正」、歴史も反日で「修正」、民族の原点にコンプレックスを抱えた「恨」の国民性だから、自分の真の姿を直視できない「修正主義」の国なのだ。
     慰安婦問題もその一つで、日韓併合の恥辱が「恨」になってるから、真実を見たくない。
     真実がばれないように、世界中に慰安婦像を立てるという、哀れな悪あがきをやっているが、わしは腹が立つよりも、気の毒に思ってしまう。
      顔の整形がいつかばれるように、歴史の修正もいつか世界の人々にばれると思うのだ。

     支那からも、ロシアからも、日本からも、脅威にさらされる地政学上の弱みが、韓国人の「 事大主義 」を育ててしまった。
     国の成り立ちを反日に頼るしかなく、反日なしでは国民の統合が崩壊するという脆弱なアイデンティティーしか持っていないコンプレックスの民は、実は憧れの日本に反発するしかなく、「事大主義」で中国に接近してしまう。
     韓国船の事故に関しても、日本から差し伸べた手を払いのけてしまったが、日本の海猿に頼れば子供たちの命も何名か助かったかもしれない。
     だが一方で貴重な海猿の隊員たちの命を犠牲にしたかもしれないので、断ってくれて良かったと思うエゴイズムもある。よっぽど感謝されて、日韓の友好に役立たなければ、我が国の優秀な海猿の命を危険に晒すことはできない。
     韓国は沈没した船の引き上げで、中国に助けを求めたが、反日ポーズにそこまでしてこだわる幼稚さはやれやれというしかない。
      だがそれを日本人が軽蔑して、優越感で「日本に頼ればいい」と上から目線で言ったって、韓国人はさらにコンプレックスを刺激されるだけだ。
     みっともないよと忠告しても、それもこれも全部、日本が侵略したからだと言い出すだけで、「事大主義」で中国に接近する半島の民の姿は、明治から日本人が見てきたままである。

     だから福澤諭吉の「 脱亜論 」でいいかと言えば、明治期の欧米帝国主義に対抗せざるを得なかった日本人の焦りの時代背景と、今とではまた状況が違う。
  • 「団塊世代の成長神話は厄介だ」小林よしのりライジング Vol.72

    2014-02-04 17:50  
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     世代論は意味ないと思っていたが、それはあくまでも例外がいるし、上の世代が下の世代を理解できずに、批判したり、説教し始めるからである。
     だが、やはり世代の経済状況や風潮に、人格が影響されていることはあるようだ。
      最近は「草食系」とか「さとり世代」という批判が若者に向けられているが、物欲・性欲が少ないのが、資本主義にとって不都合だからである。
     トヨタがAKB48に関わりだして、全国・各県からの応募で選出された少女たちで「チーム8」を作り、そのスポンサーになるという企画が発表された。
     これは車離れした若者たちに関心を持たせて、国内市場の開拓に力を注ぐ必要からだろう。
     果たして「 さとり世代 」に物欲が芽生えるか?
     だがわしは「 バブル世代 」よりも、「さとり世代」の方が好感を持っている。
    「バブル世代」の物欲の強さ、ブランド趣味、派手さ、金銭欲の強さ、マニュアル主義にはうんざりさせられたものだ。
     そのような風潮に天罰を下そうと描いた『マル誅天罰研究会』は人気が最下位になって打ち切り、数年後『おぼっちゃまくん』でバブルを皮肉って大ヒット、雪辱を果たした。
     わしが大学生の頃は、上の世代から「 三無主義 」とか「 シラケ世代 」と言われていた。
      学生運動をやっていた「団塊の世代」からは、わしの世代は「無気力・無関心・無責任」の三無主義に見えていたらしい。
     わしは内ゲバで殺し合いまでしていた学生運動の世代を、高校生の頃、テレビや新聞で見ていて、馬鹿にしていた。
    「学問とは何か?」とか、「大学とは何か?産学共同体でいいのか?」とか、教授陣に詰め寄る学生たちの甘えはアホらしくて見てられないと思った。
     自分で考えろ!大学なんかやめちまえ!と思っていた。
     だから大学に行く気はなかったのだが、漫画家になるためにも読書が必要だと担任の先生に説得され、進学することにした。
      大学では政治には一定の距離をとり、漫画家という自分の現場をとることを目指して、個人主義に徹していた。
     すると新聞や雑誌で、「三無主義」と批判されていることを知ったのである。
    「 馬鹿野郎が!無意味に運動ばっかりして、どうせ卒業したら髪を切って体制側に寝返ったくせに! 」それが団塊世代に対するわしの憤りだった。
     ところが同じ学部にマルクス主義にのめり込んでる男がいて、授業料値上げを撤回させる学生運動に誘われ、貧乏な友人のため、実はわしも貧乏だったこともあり、付き合いでデモに加わったり、学生運動の溜まり場に顔を出すようになった。
     そんな場所に可愛い女がいたので、好奇心が湧いたのだ。
     だがどうしてもヘルメットと顔を隠すタオルがダサくて嫌で、顔を出してたら大学のブラックリストに載ってしまうし、体育会の連中に殴られるのもあほらしいと思い、漫画家になるために進学した原点に戻ろうと決意して、運動の仲間とは決別した。
     それからは講義にも出席せず、毎日自宅に籠もって本を読み、カネが無くなったらバイトして、夜は女とデートしていた。
     そのときの読書と恋愛の体験が、プロの漫画家になってからの人生に影響を与え、政治への批判精神は漫画の中で開花してしまった。
    『東大一直線』も『おぼっちゃまくん』も時代風潮への風刺であり、『ゴーマニズム宣言』はもっと政治に直結する作品となった。
     都知事選に立候補した人物で目立っている者の年齢を見ると、宇都宮健児(67)田母神俊雄(65)舛添要一(65)が「団塊の世代」だ。
     細川護煕(76)だけが小泉純一郎(72)と共に戦中生まれで敗戦後の時代に育っている。
     舛添が「 史上最高のオリンピック 」と言った時に気付いたのだが、いかにも高度経済成長のイケイケ感を体現した「団塊世代」の思考パターンなのだ。
     田母神が原発推進で、公共投資絶対でハコモノ推進の東京五輪を唱えるのも、いかにも「団塊世代」の思考である。
     宇都宮は違う雰囲気に見えるかもしれないが、実はマルクス主義的な、徹底的に弱者からの視点のみを重んじるところが、やはり学生運動が盛んだった「団塊世代」の申し子のような人格である。
  • 「五輪は経済成長の起爆剤になるのか?」小林よしのりライジング Vol.54

    2013-09-17 22:30  
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    第56回「PART3.五輪を経済成長の起爆剤にという皮算用」  メディアの取材で被災地の人が「 五輪どころではない 」と答えたら、ネットでは「 被災者は一体何様のつもりか! 」と叩かれたそうだ。  「 いつまで同情して欲しいのか?国民が一丸となって招致したオリンピックをけなすとは被災者は非国民か? 」とバッシングされたらしい。  たとえ被災者でも五輪招致の不安や違和感を口にすることは出来ないのだ。「被災地復興」を五輪招致の建て前に利用されたにも関わらず。  「 祝賀ムードに水を差す奴は非国民 」というナショナリズムが7年も前に出来上がってしまったのだから、開催が近くなるにつれて、もっと強烈になるのは確実だろう。  支那事変でも、アメリカとの戦争でも、「 戦勝ムードに水を差す奴は非国民 」という世論は圧倒的だった。  マスコミも戦勝ムードを煽り立て、悲観的な報道をすると新聞は売れなくなるし、政府ににらまれて新聞社の存続も危うくなる有り様だった。  ナショナリズムが異論・少数意見を封殺するのは、戦時中も今も全然変わらない。マスコミが商売でナショナリズムを膨張させるのも、過去の戦争の時代と一緒なのだ。  毎年8月の終戦記念日前後だけ反戦一色の報道になっても、ナショナリズムの負の部分を自覚できないマスコミの体質は何も変わっちゃいない。  「 祝賀ムードに水を差す奴は非国民 」、「 戦勝ムードに水を差す奴は非国民 」、こういう悪質なナショナリズムには絶対に屈してはならない。    それにしても、かつては「 金儲けのためのスポーツ 」、「 金儲けのためのオリンピック 」なんてホンネはもう少し隠していたはずだが、いつの間にこうも誰はばかることなく、堂々と言えるようになってしまったのだろうか?  安倍晋三はオリンピックを「 経済の起爆剤 」にすると大はしゃぎしている。  東京都では経済波及効果を3兆円としているが、経済界では100兆円だとか、150兆円だとか目の色変えて捕らぬ狸の皮算用をしている。  テレビや新聞も歓迎ムード一色で、「経済効果は抜群」「若者に夢を与える」など肯定的な評価ばかりだ。 新聞・テレビのスポンサーはオリンピックで儲ける大企業ばっかりだから、これに疑義を呈する意見など取り上げられやしないというのが実態なのだが。  本来、安倍親衛隊のネトウヨは、メディアのこういう体質を批判して「マスゴミ」と侮蔑していたはずだが、五輪招致の件では安倍晋三が強力に推進したものだから、その「マスゴミ」と手を携え、歩調を揃え、声を合わせてオリンピック・マンセーを叫んでいる。つくづく、くだらない連中である。  五輪招致を祝賀する声の中には、「 被災地に元気を与える 」だの「 オリンピックを被災地復興の足掛かりに 」だのというものもあるが、まずそんなことにはならない。   被災地復興と、東京で行われるオリンピックは何の関係もない。オリンピックの理念を見れば、それは明らかである。   サッカーのワールドカップは「国」単位で開催されるが、オリンピックは「都市」単位での開催である。  これは古代オリンピックがギリシアの都市国家同士による競技大会であったことに由来している。 IOCはあくまでも都市に開催権を与えており、国はあくまでも開催都市を支援するという位置づけである。  そしてオリンピック憲章は「1都市開催」を明記しており、複数都市の共催は認めていない。オリンピックにおいて複数都市で競技が行われるのは、内陸都市で開催される場合のヨット競技とか、あるいはサッカー予選で、一都市内に複数のサッカー場がない場合とか、地理的に競技開催が困難な場合に限られる。  実際に平成21年(2009)、2020オリンピックの国内立候補都市を決める際、広島市長と長崎市長が被爆2都市の共催構想を表明、これに対抗して石原慎太郎都知事(当時)が「東京・広島共催」という意味不明の構想を言い出したが、オリンピック憲章に抵触するとして即刻却下されている。   東京オリンピックは日本のオリンピックではなく、あくまでも東京のオリンピックである。   「オール・ジャパン」で取り組むと言っても、それは「オール・ジャパン」で東京をサポートするという意味であり、開催都市から250キロも離れている被災地など本来、何の関係もないのだ。  1964東京五輪が「戦後復興の象徴」というのは十分に説得力があった。東京自体が空襲で10万人以上の市民を殺害され、焼け野原とされたところから都市を再建させたのである。そして国民は、首都の復興は全国の復興につながると思うこともできた。  しかし、東日本大震災でそれほどの被害もなかった東京でオリンピックを開いたところで、それが「 震災復興の象徴 」になどなるわけがない。本当に「震災復興五輪」をやるのなら、福島で開催する以外にないのである。   2020東京五輪には、開催の大義がない。  IOCにしても、開催の大義だけを考えれば、「イスラム圏初」のイスタンブールの方がふさわしいという判断になったはずだ。  東京に決まったのは、イスタンブールよりも、マドリードよりも、 IOCと協賛企業が確実に儲かりそうだから という程度の理由しか考えられない。そうであれば、金儲けに直接つながらない被災地復興事業など、当然後回しにされるだろう。  宮城県の村井知事は、一応五輪開催に歓迎の意思を示した上で、「 震災の復興に関し、資材高騰やマンパワー不足に拍車がかかるのではないかという心配がある。オリンピックに関わる自治体は人手不足になってくると思うので、被災地に応援を出す余裕が無いとなりかねない 」と懸念を示している。  当然の懸念であり、しかもほぼ確実に心配したとおりになるだろう。現状でさえ復興事業は人材不足が慢性化しているのに、 オリンピックに向けたインフラ整備の方に建設業者が投入されるようになれば、復興は間違いなく大幅に遅れる。 2020東京五輪は「復興五輪」どころか、「復興先送り五輪」になるのだ。  成長戦略、成長戦略と呪文のように唱え続ける安倍政権は、『三丁目の夕日』のような高度経済成長時代の再来を望み、五輪開催がその起爆剤になるものと本気で信じている。   だが、実際には1964年の東京五輪が高度経済成長を起こしたわけではない。 1964東京五輪は確かにインフラ整備の契機となり、高度経済成長の象徴とはなったが、決して東京五輪が高度経済成長を起こしたのではなく、 あくまでも既に高度経済成長期に入っていた時に、東京五輪が開催されたのである。  再び東京五輪をやれば、高度経済成長も再び起こるかのような思い込みは、自分の経験を歪めて記憶し、それを絶対視している「発展途上国的ジジイ」の妄想に、若い世代までが巻き込まれているお馬鹿な現象に過ぎない。柳の下にいつもドジョウはいないし、五輪の下にいつも経済成長はない!