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  • 「恐くないのか、特定秘密保護法案?」小林よしのりライジング Vol.61

    2013-11-12 13:25  
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    「恐くないのか、特定秘密保護法案?」
     アメリカ国家安全保障局(NSA)と中央情報局(CIA)が、世界の指導者の電話を盗聴していたという事実が発覚した。ドイツのメルケル首相は11年前から盗聴されていたという。
     これに関連して世耕弘成内閣官房副長官は、テレビ番組(11月2日・日本テレビ「ウェークアップ!ぷらす」)で「 オバマ大統領の電話は絶対傍受されないようセキュリティされているそうですが、安倍首相の電話はどうなんですか? 」
    と質問され、こう答えた。
     「 そんなことは答えられるわけないじゃないですか。常識で判断してくださいよ 」
     こんなヘンテコな答えがあるだろうか?
     具体的に、どんなセキュリティシステムを敷いているかと聞かれれば、それは答えられないのは常識だ。 しかし、セキュリティをしているか、していないかぐらいは答えられるはずだ。というか、こんな時はたとえやっていなくても嘘でも「 している 」と言うものだ。
     世耕は案外嘘のつけない人なのかもしれないが、褒められたものではない。 世耕の発言を「常識で判断」すれば、「 安倍首相の電話のセキュリティは、何もしていない 」と解釈するしかない。
     そうしたら案の定、その事実を証明する報道が出てきた。
     「サンデー毎日」11月17日号に、衝撃的な記事が載っている。
      今年9月上旬、米国防総省の中枢に、NSAとCIAの連名によるリポートが届いた。 その内容は、安倍首相が10月の靖国神社・秋の例大祭に参拝するために、周囲と協議をしているというものだったという。
     そして驚くべきことに、そこには首相官邸でいつどのような会話が交わされたか、日時まで特定して書き起こされていたというのだ。
     「 政権が長期になるので参拝を焦る必要はない 」
     という発言に対して、安倍首相などが
     「 中国や韓国との関係が修復できる気配がない今こそ、参拝に踏み切る絶好のタイミングだ 」
     と主張し、この意見が優勢だったと記されていたらしい。
     首相官邸の会話を、まるでリアルタイムで見聞きしてきたようなリポートが米国防総省に届いている!
     情報提供者の、オバマ大統領のブレーン機関関係者はこう語っている。
    「 堂々とスパイが潜り込んでいるとは思えません。何らかの手段で、通信を傍受していたとみるのが自然でしょう 」
      そのリポートのタイトルはなんと「 増長と暴走の止まらない日本と、有効な制御策 」だったという。
     米国政府は9月の時点で、安倍が10月の例大祭に靖国参拝をしようとしていたのを「 増長と暴走 」と捉え、「 有効な制御策 」を講じていたのだ。 そしてそれが功を奏し、周知の通り安倍晋三は秋の例大祭の靖国参拝を見送ったのである!
     首相官邸内の会話が米国政府に筒抜けになっていて、完全に首根っこを押さえられている状態だというのに、それでも一切「秘密保護」をしようともしない 安倍政権が、自国民に対しては「 特定秘密保護法 」の網をかけようとしている。 これに危機感を覚えなかったらどうかしている。
     以前から自称保守派は全員一致で、「日本はスパイ天国」であり、安全保障のために秘密保護の法律を制定すべきであり、それに反対するのは「左翼」であり、外国勢力に与する者だと主張してきた。だがやはり、自称保守派が全員一致で唱えることは常に間違いだったのだ。
      そもそも、安全保障上の秘密漏洩を防止する法律は既に整備されている。
      2001年、自衛隊法の改正によって防衛秘密保護制度が導入され、指定された情報が漏洩した場合、5年以下の懲役が科せられるようになった。
     また、国家公務員法・地方公務員法では守秘義務違反は1年以下の懲役で、教唆・共謀した民間人も処罰対象となっている。
     他にも、 日米地位協定の実施に伴う刑事特別法 というものがあり、米軍機密を不当に探知、収集、漏洩した者は10年以下の懲役、陰謀した者は5年以下の懲役となる。
     なんで米軍機密の方が自衛隊の機密より重いのかという疑問も湧くが、とにかく、それでも 安全保障上の秘密漏洩が懸念されるなら、これらの法を改正すれば済む話で、新法を制定する必要などないのである。
     10月31日放送のテレビ朝日「モーニングバード!」の「そもそも総研たまペディア」では、この法案の問題点について切り込んでいた。
     VTRには日弁連・秘密保全法制対策本部事務局長の清水勉弁護士が登場。『ゴーマニズム宣言』では薬害エイズの際に登場し、オウム真理教との裁判ではよしりん弁護団の一員だった人である。
     清水氏は今回の法案について、「 条文に定義されている『秘密』の範囲が非常に広くあいまいで、それが処罰とリンクされているため、処罰範囲がどこまで広がるか分からないという非常に重大な問題、欠陥がある 」と指摘する。
     わしもいくつか裁判を経験して、もうイヤというほど思い知らされたことだが、 法律というものは細かい条文の解釈次第でどうにでもなる。 ほんの些細な表現の違和感も、決して放置してはならないのだ。
      法案では、まず「 テロリズム 」の定義がおかしい。
     「テロリズム」とは「暴力行為によって政治上その他の主義主張を他者に強要する行為」である。世界中どこでもそういう定義である。
     最近、バイト先での悪ふざけ画像をツイッター等に投稿する行為が「バイトテロ」と呼ばれ、山本太郎が天皇陛下に手紙を渡したことまで「手紙テロ」という馬鹿までいて、単に「非常識な行動」を「テロ」というような風潮が出てきているが、これが「テロリズム」の定義から完全に外れていることは言うまでもない。
     ところが、特定秘密保護法案におけるテロリズムの定義は、明らかにおかしい。
     繰り返すが、常識的なテロリズムの定義は「 暴力行為 によって 、政治上その他の主義主張を他者に強要する行為 」である。
     ところが、法案では「 政治上その他の主義主張を他者に強要する行為、 又は そのための暴力行為 」となっている。  これは似ているようで全然違う。