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記事 21件
  • 「危うかったTPP協定の正体」小林よしのりライジング Vol.202

    2016-11-22 17:45  
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     先週号では、来年発足するトランプ米政権がTPPを完全に葬り去ることができるか、それとも「言うだけ番長」に終わるかという疑問を呈したが、答えはたちまち出た。
      昨日(11月21日)トランプは動画メッセージを発表、公約通り就任初日にTPP(環太平洋連携協定)を離脱すると明言した。
     TPPは署名12か国の合計GDPの85%以上となる、6か国以上が批准しなければ発効しない。署名国GDPの60%を占める米国が批准しなければ絶対に発効しないので、これでTPPもご破算である。
     すっかり恥さらしな結果となったのは安倍晋三首相である。
     そもそもまだ就任もしていない次期大統領に会いに行くこと自体が異例で、それも当選からわずか1週間後という超スピードですっ飛んで行ったのは、異常と言ってもいいほどだ。
     安倍は会見で「トランプ次期大統領」ではなく「トランプ大統領」と連呼している。現大統領のオバマにも失礼だし、外交上も相当非常識なのだが、そんなことにも気づかないほど舞い上がっていたのだ。
     非公式会談だったためその内容は明らかにされていないが、 安倍は「自由貿易の重要さ」を説き、TPPを離脱しないよう説得したらしい。
     そして笑顔で握手を交わしておべっかを使いまくり、「トランプ氏は信頼できるリーダーだ」とまで言ったのだが、その「信頼」はたった3日で裏切られたわけだ。
     結局、安倍は自己宣伝の上手いトランプに利用されただけだった。トランプに対してまだ先進国のリーダー達が、やや距離を置いて様子見をしている中で、日本の首相がわざわざやってきて「トランプ氏は信頼できるリーダーだ」と発言したのは、かなりの効果があっただろう。
     その一方で、今回安倍がトランプから引き出したものは何ひとつなかったのだ。安倍とトランプでは、ほとんど子供と大人ほどの違いに見える。
      安倍はトランプとの会談後、ペルーのリマで開幕したAPEC(アジア太平洋経済協力会議)でも「自由貿易の重要性」を熱弁しまくった。
     その努力もひとまず水泡に帰することとなったのだが、もしTPPが発効していたらどういうことになっていたのか、検証しておくことは今後のためにも重要である。
     日本の政治家や官僚が、どこまで国を売ろうとするのか、こいつらがいかに警戒しなければならない人間であるかは、知っておかなければならない。
     TPPに先行するケースとして参考になるのは、米国、カナダ、メキシコの3カ国間で1994年に発効した NAFTA(北米自由貿易協定) だ。
     メキシコの主食はトウモロコシ粉のパン・トルティーヤで、メキシコのトウモロコシは日本のコメのようなものである。
      メキシコ国内では 「NAFTAに参加すればトルティーヤが安くなる」 と宣伝され、当初、国民の多くはこれに賛成していた。
     NAFTAの発効により、アメリカからの輸入トウモロコシが激増、さらにトルティーヤを加工・販売するアメリカ資本の食品企業が入ってきて、確かに一時的にトルティーヤは安くなった。
      だが、地域に密着していた従来の中小のトルティーヤの店はことごとく潰れ、メキシコのトウモロコシ農家は壊滅した。
      そうなるとトルティーヤの値段は釣り上げられ、ついにはNAFTA発効前の8倍にまでなったという。
      米国は食糧を「武器」とみなしており、国内の農業に補助金をつけて大増産させ、安価で大量輸出して相手国の農業を壊滅させ、生殺与奪の権を奪うという戦略を繰り広げているのだ。
  • 「トランプは『暴言王』か『言うだけ番長』か?」小林よしのりライジング Vol.201

    2016-11-15 17:35  
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     ドナルド・トランプは、ヘイトスピーチをがなり立て、セクハラやり放題の馬鹿オヤジという雰囲気なので、これが自国のリーダーだったら、そりゃあ残念だろう。
     けれどもアメリカ大統領なのだからザマミロと思っておけばいい。
     ブッシュ大統領のときも酷い単細胞な奴がなったなあと思ってたら、たちまちアフガン・イラク戦争にのめり込んで、米国の国力を著しく弱めてしまった。
     そのせいでオバマ大統領は「もう世界の警察官ではない」と言わざるを得ず、世界中の紛争に介入できなくなってしまった。米国は「内向き」になってしまったのだ。
     トランプがヘイトスピーチをがなり立てるので、戦争を起こすと思ってる馬鹿が日本のサヨク知識人には多いが、トランプはオバマより「内向き」で米国ファーストなのだから、むやみに戦争なんかするわけがない。
     それどころか在日米軍まで本音では撤退させたいと思ってるので、安倍政権はあわてているのである。
     トランプの政治的主張に限って言えば、日本にとっては素晴らしく都合がいいのだから、「隠れトランプ支持」だったわしは、彼が「まとも」にならないことだけを祈っている。
    「すべてのイスラム教徒のアメリカ入国を拒否すべきだ」
    「メキシコは問題のある人間を(米国に)送り込んでいる。彼らは強姦犯だ」
    「メキシコとの国境に『万里の長城』を建設し、メキシコにその費用を払わせる」
     これらがトランプの暴言の一例として挙げられるが、メキシコとの間の国境は、わしとしては気持ちは分かる。国境が陸続きの国の混乱は日本人には分からないだろう。
     だが、他にも人種差別的なヘイトスピーチや、女性差別意識を露わにしているが、まさかここまで暴言を乱発しても、当選するとは思わなかった。よっぽど格差社会の犠牲者たちの不満が膨張していたのだろう。
     ヒラリーは富裕層の代表で、体制側・エリート側、既得権益者の側に立つだけで、オバマ政権が変えられなかったものをヒラリーが変えられるはずがないという判断は全く正しい。
     自由貿易の犠牲になって崩壊しつつある中産階級や、ブルーカラーのアメリカ人も 「TPP」 を恐れているのだ。せめて 「TPP脱退」 だけでもやってくれればトランプ大統領誕生は日本にとっては天の助けである。
     もっとも、アメリカ在住のコラムニスト・町山智浩氏は、そんなトランプの発言について、以前から 「これはすべて演技なんです。ウケるから言っているだけです」 と断言していた。
  • 「自主防衛のコストは大したことない」小林よしのりライジング Vol.178

    2016-05-31 19:40  
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     11月のアメリカ大統領選挙は、米国メディアも「大統領選史上、最も不人気な候補同士」という、共和党ドナルド・トランプと民主党ヒラリー・クリントンの対決となることがほぼ確実だが、最近の世論調査では、初めてトランプの支持率がヒラリーを上回ったという。
     そして「トランプ大統領」が誕生するという事態を、本気で恐れおののいているのが自称保守派の連中だ。
      トランプが、 「日本は在日米軍の駐留経費を全額負担せよ、さもなければ米軍を日本から撤退させる」 といった発言をしているのが、自称保守派は恐ろしくてたまらないらしい。
     かつて自称保守派は、共和党政権であれば日米関係は盤石で、「親中派」のヒラリーが大統領になることは「最悪の事態」のように認識していたはずだが、今はヒラリーの方がいいと思っているのだろう。
      日本が独立国であれば、他国の大統領が誰になろうが、あくまでもその国の問題だと構えていられるはずで、アメリカ大統領が誰になるかで右往左往する態度こそ、属国根性そのものである。
     ともかく自称保守にとっては「在日米軍撤退」とは想像もしたくない悪夢のようで、 産経新聞は5月24日、25日の2日間にわたり、「日米同盟が消える日」という特集を組んで怯え、こう狼狽しまくっていた。
      米軍が撤退すれば、すぐに中国は尖閣に上陸する。「専守防衛」しかできない自衛隊では、最後には尖閣は中国に取られてしまう。
     在日米軍の撤退は在韓米軍の引き揚げに直結し、朝鮮半島の軍事的均衡も崩れる。
    中国による台湾侵攻が現実味を帯び、南シナ海は完全に「中国の海」と化す。国際情勢は一気に予測不能に陥る――
    http://www.sankei.com/politics/news/160524/plt1605240006-n1.html
    http://www.sankei.com/politics/news/160525/plt1605250003-n1.html
     もう、アメリカ様がいなければ夜も日も明けぬといった有様である。
     自称保守はさんざん「中国恐るるに足らず」みたいなことを言っていたはずだが、結局はそれもアメリカ様が頼りだったようである。
     自衛隊では何もできず、米軍がいなくなったら必ず中国にやられちゃうと怯えながら、空威張りしていたのだ。
     もちろんそんな自称保守の性質はとっくに見抜いていたが、こうも無残な本性をさらしながら、それがみっともないということに気づいてもいない狼狽ぶりには、苦笑するしかない。
     そもそも、在日米軍がいなくなったら、日本は国を守れないのか?
     在日米軍を撤退させ、代わりに自衛隊を置いて自主防衛することはできないのか?
      実を言えば、在日米軍がいようがいまいが、日本の防衛はまず自衛隊がすることになっているのだ。
     昨年4月の日米安全保障協議委員会(「2+2」)会合で勧告された「新ガイドライン(日米防衛協力のための指針)」には、こう明記されている。
  • 「アメリカ教からの脱却のために」小林よしのりライジング Vol.171

    2016-03-22 18:35  
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     先週号のQ&Aコーナーに、こういう質問をもらった。
     慰安婦問題について質問です。
     ライジングでキリスト教文化圏では売春は職業とは認められず「性奴隷」と見なされてしまうと書かれていましたがヨーロッパの多くの国では売春は合法ですよね。
     彼女たちは「性奴隷」と見なされているのですか?合法なのだから職業と見なされているのではないのですか?
     売春が合法の国々が国際的に非難を受けていると聞いたことありません。逆に国際的に売春は合法化の流れにあると聞きます。
     この問題は価値観の違いというより単に日本が欧米各国と中韓からいじめられているだけのような気がするのですが?
     確かに鋭い質問である。
     どうやら「キリスト教文化圏」で一括りにしたことが間違いだったようだ。
      調べてみたところ、ヨーロッパでは、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、ベルギー、ギリシャ、チェコ、オーストリア、スイスなどで売春が合法であることがわかった。
     その形態は、大きく二つに分かれる。
      オランダやドイツなどは完全に合法で、売春は職業として正式に公認されている。
     正規の娼婦は個人自由業で、開業届けを出して登録される。所得税も払うので社会福祉年金も出るし、失業手当も出る。
      一方、イタリアやスペインなどは、正確には「合法」というより「グレーゾーン」であり、違法とはされていないものの、法的な位置づけは曖昧になっている。
     イタリアには「売春防止法」があり、業種としての売春は認められていないが、個人による売春行為自体は適法だという。要するに、人身売買などの犯罪が伴わない限り「黙認」というわけだ。
      日本の場合はというと、実態は「イタリア型」に近い。
     日本では「 売春防止法 」の第3条で「 何人も、売春をし、またはその相手方となってはならない 」と規定されており、 明確に売春も買春も「違法」である。 だが、これで売買春が一切禁止されているのかというと、厳密にはそうなっていない。
      売春防止法第3条は罰則規定がない「訓示規定」であり、違反しても法的効力はないのだ。 これは、売春せざるをえない状況にある人を社会的弱者として捉え、保護するという視点から定められたものだという。
     その代わり、売春防止法では売春の勧誘や、売春の斡旋、売春を行う場所を提供したり、売春をさせる業を営んだりという行為を処罰対象としている。だから売春防止法違反で逮捕されるのは必ず風俗業の経営者で、売春をしている当人やその客が逮捕されることはない。
     つまり日本では、個人による売春は「違法だが処罰しない」という「グレーゾーン」で、事実上の「黙認」になっているのだ。
     ソープランドも建前としては、店はただ風呂付き個室を貸しているだけで、売春はあくまでも女性と客が個人的にやっているということになっている。だから客はフロントでまず「入浴料」を支払い、「サービス料」を別途、個室内で女性に直接手渡すという仕組みになっているのだそうだ。
      フランスでは、個人による売春行為自体は合法だが、「売春斡旋」は法律で禁じられている。
  • 「日韓慰安婦『合意』という売国」小林よしのりライジング Vol.166

    2016-02-18 16:15  
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     第53回ゴー宣道場 「慰安婦〈合意〉は正しかったのか?」 を2月14日、拓殖大学客員教授・藤岡信勝氏を迎えて開催した。
     今年は、当時の中学歴史教科書7社全てに「従軍慰安婦」が登場し、この異常事態に対抗すべく「新しい歴史教科書をつくる会」を設立する動きが始まってからちょうど20年に当たる。このとき西尾幹二氏とともに「つくる会」を創設し、その活動にわしを招こうと提案したのが藤岡氏である。
     それから20年、「つくる会」の活動やわしの『戦争論』の影響により、中学歴史教科書から「従軍慰安婦」は消え、日本人の「自虐史観」(この言葉を普及させたのも藤岡氏である)も相当に払拭されたかに見える中、昨年末に唐突に慰安婦問題の「日韓合意」が行われた。
     自称保守論壇の中にはこれを評価・歓迎する向きもあるが、果たしてそれでいいのだろうか?
     論点は多岐にわたるが、今回は事前にブログで以下の5つの論点を提示した。
    1)なぜこのタイミングで日韓合意?
       アメリカの圧力で、ではないのか? 他に理由があるのか?
    2)日韓合意のメリット・デメリット
       本当に韓国を追い込んだと言えるのか?
       7対3で日本の勝利などと言う新聞記者もいるが本当か?
       再び教科書に記述されて、日本が再び自虐史観に戻ることはないのか?
    3)安全保障か、歴史の真実か
       安全保障のためなら譲歩やむなしなら、歴史戦はすべて敗北しかないのではないか?
    4)慰安婦の真実が伝わらない理由
       なぜ慰安婦の真実は伝わらないのか?
    5)慰安婦問題の解決はありえるのか
         前々回のゲスト、松竹さんは「保守先鋒の安倍首相が謝罪する」ことで解決すると言っていたが、今回の〈合意〉で日韓共に解決ということか?
     藤岡氏は、今回の「日韓合意」は「 全く評価できない、やるべきではなかった。大失敗だった。日本外交の世紀の失態だ 」という。この認識はわしも同意である。
     ではこの5つの論点に沿って、当日の議論を整理しておこう。
    1)なぜこのタイミングで日韓合意?
     藤岡氏は、まずアメリカの世界戦略の変化を挙げる。
     中東政策が大失敗し、対ロシア外交でもやられっぱなしという状況の中で、アメリカの世界覇権が怪うくなる一方、世界第二の覇権国である中国が台頭。尖閣諸島をめぐって日本と摩擦を起こし、南沙諸島を軍事拠点化しようとしている。
     ここにきてアメリカは中国との対決姿勢をとるようになり、そのために日本に対して協力を求めている。
      アメリカは4年前の野田政権の頃から、日本と韓国の手を結ばせようと水面下で動いていた。
     これが表面化したのは昨年3月、中国が提唱するAIIB(アジアインフラ投資銀行)に、韓国がアメリカの制止を無視する形で参加、さらにヨーロッパ諸国がこぞって参加するという事態に危機感を抱いたアメリカが、同盟国の締め付けを図った。
     昨年11月の日韓首脳会談で、朴槿恵大統領は安倍首相に慰安婦問題の年内の妥結を求め、このとき安倍は期限を区切ることを拒否。12月15日の外務省の交渉も不調で、年越しは確実と思われていた。
      ところが24日に安倍首相は突如、岸田外務大臣を韓国に送る決定を下し、28日に「日韓合意」となる。
     この急転直下の原因は不明だが、アメリカの圧力なしには考えられないという。
  • 「成立した従米安保法案のペテンを教える」小林よしのりライジング Vol.149

    2015-09-22 18:50  
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     安保法案がついに成立してしまい、日本は集団的自衛権を行使できることとなった。
     集団的自衛権を使う際の前提となる3つの条件の1つに、 「存立危機事態」 というのがある。
     その定義は、以下のとおりである。
    「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」
     これ、平たく言えば、 「米軍が攻撃されたことによって、日本が存立危機になった時」 と書いてあるのだ。
     つまり わが国が「存立危機事態」にある場合しか、集団的自衛権を行使できない ということであり、この条件は、集団的自衛権を無限定に行使させないための「歯止め」とされている。
     ほとんど日本が滅亡の危機に瀕している状態と言うべき「存立危機事態」の時しか行使できないというのだから、一見、非常に厳しい縛りのように思えるのだが、実際には、これは全く無意味な条件なのである。
      そもそも「集団的自衛権」とは「他国を防衛する権利」である。
    「 自国が攻撃されていなくても、他国に対する攻撃を自国に対する攻撃と同じとみなして反撃する 」というのが「集団的自衛権」である。
      ところがこの「存立危機事態」の定義は、「日本は攻撃されていないのに、アメリカが攻撃を受けたことで、滅亡の危機に瀕している事態」というものなのだ。
     一体全体、何のこっちゃ!?
     そんな奇妙奇天烈な状況って、ありうるのか!?
     政府が説明する際に具体例として挙げたのは、日本海で米軍のイージス艦を北朝鮮が攻撃しようとした時に、自衛隊が守るというものだった。
     だが、たとえ米軍のイージス艦が攻撃されたって、それで日本が滅亡の危機に瀕するなんてことがあるわけがなく、これが「存立危機事態」だなんて言えないのは明白である。
     それでも米艦の防護をするというのは、要するに友軍だから絶対に守らなければならないというだけのことである。
      実際には日本の存立危機に何も関係なくても米艦を守ることになっているわけで、「存立危機事態」なるものを設定することに、何の意味もないのである。
     政府は集団的自衛権行使が「限定的容認」だと言い続けてきたが、「限定的」とするための「歯止め」として設定した「存立危機事態」という条件には全く実体がなく、 事実上は歯止めなしの無限定容認となっているのだ。
     そうなっている以上、中東で米軍が襲撃されたら、日本の存立危機に何の関係もなくても、自衛隊を派遣しなければならなくなることは間違いない。
      要するに、日米同盟の信頼性が揺らぐことが「存立危機事態」になっているのだ。
      アメリカの信頼を失ったら、日本は滅亡してしまう、これこそが「存立危機事態」だということになってしまっているのである。
    「存立危機事態」については、もう一つおかしな話がある。
  • 「中国の軍事パレードは有難かった」小林よしのりライジング号外

    2015-09-07 14:50  
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    ゴーマニズム宣言 「中国の軍事パレードは有難かった」  中国が坑日戦勝記念日としている9月3日、中国共産党と軍、政府は「抗日戦争勝利70周年」の記念式典を開き、大規模な軍事パレードを行った。
     他の戦勝国の多くは、日本が東京湾上の戦艦ミズーリで「降伏文書」に調印した9月2日を対日戦争勝利の記念日としているが、中国では国内で祝賀行事が行われた翌3日を記念日としているそうだ。
     10年前の終戦60年の際も記念式典は行われたが、この日に記念行事を開催することが定例化されていたわけでもなく、 法律で9月3日が「抗日戦争勝利記念日」と定められたのは習近平体制になってから。この日に軍事パレードが行われたのは、今年が初めてである。
     中国の軍拡・覇権主義路線に対しては、国際社会、特に欧米からの不信感が増大している最中である。G7の西側諸国の首脳がこの行事に出席しなかったのは、もはや中国の「反日プロパガンダ」が過剰で歪んでいるということを先進諸国が周知しているからであり、「軍事パレード」という覇権主義の誇示が野蛮だという認識も共有されているからである。
     西側諸国のこの反応は習近平にとっては誤算だっただろう。
      日本は「抗日」という言葉に過剰反応する必要はない。支那の兵法の伝統は「指桑罵槐」(しそうばかい)であって、「桑を指さして槐(えんじゅ)を罵る」だから、抗日と言いつつ、武器の陳列を見れば、対アメリカの核弾頭ミサイルが一番目立つ。
      国内的には共産党政権が軍事を一手に握っていることを誇示し、統治を安定 させる目的がある。
     その目論見はある程度は成功し、テレビでパレードを見た庶民の多くは自国が強国であると実感し、好意的に受け止めたらしい。
     とはいえ、この日の北京を青空にするだけのために、周辺地域1万以上の工場が操業停止、車の量や建設工事まで激減させられ、北京周辺の経済状況は一時マヒ状態となった。
     折しも中国経済は減速が懸念されている時でもあり、「こんなことにお金をかけている場合か」と冷ややかに受け止める市民もいて、反応には温度差があったという。
     こんな軍事パレードの映像を朝から晩まで見せられれば、日本人は恐怖を感じるだろう。またしても中国脅威論が感情的に高まることは確実で、安保法制賛成の世論が増えてしまうかもしれない。
      これでは、中国はまるで安倍総理を応援しているようだ。不思議なことに、安保法制成立の最大の応援団が中国という状態である。
      アメリカでは、9月2日の対日戦勝記念日に合わせた声明でオバマ大統領が日米関係について「 かつての敵国が最も安定した同盟国となり、和解の力を表す手本だ 」と称賛し、暗に中国を牽制した。
     こうなると、あたかも日米が手を組み、日本海を挟んで中国と対峙するという、「新冷戦」的な対立図式が出来上がったかのような感覚が生じる。そして、その緊張状態に恐怖して、日本はますますアメリカの属国化を加速させて行くのだ。
      韓国の朴槿恵大統領は記念式典と軍事パレードに出席し、破格の厚遇を受けていたが、これは外交上、完全な失敗である。
     今回の記念式典や軍事パレードには、中国の覇権主義を警戒して西側諸国の首脳が全く出席していない。中国はその点で明らかにメンツをつぶされている。そんな中で韓国だけが出席したのだから、そりゃ厚遇もするだろう。
  • 「『安保法制』わしが安倍首相の説明を丁寧に論破します」小林よしのりライジング号外

    2015-07-11 16:15  
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    ゴーマニズム宣言
    「わしが安倍首相の説明を丁寧に論破します」
     安倍晋三が「お仲間」に囲まれてチヤホヤしてもらえる場所でしか話ができないヘタレであることは十分わかっていたつもりだったが、それにしても、国の行方を左右する大問題である安保法制について、国民に対する説明の場として選んだのがニコニコ生放送のネット番組、しかも「自民党公式チャンネル」という完全に内輪の席とは、あまりにもふざけきっている。
     放送は5回行われたが、視聴者数は毎回1万人程度しかなく、ほとんど自民党に動員されたネットサポーターやネトウヨだけだったようだ。
     こんなのはさすがにわしも見ていないが、中にはご苦労さまにも批判精神をもって視聴して、その内容をネットニュースなどに書いてくれる人がいるので、その放送が「お仲間」以外には一切通用しない、馬鹿げたものだったことはわかる。
     安倍が「お仲間」にしかモノを言えないのは活字媒体でも全く同じで、安倍は「お仲間」しか読んでいない雑誌「WiLL」の8月号に 「『平和安全法制』私が丁寧にわかり易くご説明します」 というタイトルの寄稿をしている。
     そもそも「平和安全法制」なんて名称がゴマカシでわかり難いのに、その名を掲げながら「わかり易くご説明」も何もあったものではない。
     その内容は、安倍がニコ生でしゃべったこととほぼ同じである。破綻しきった同じことを、「お仲間」に向けて繰り返し言い続けるしかないのである。
      今回はこの「WiLL」に載った詭弁を徹底批判しよう。
     簡潔にするため、安倍の主張を要約して 茶色 で示し、それを順次批判するという形式にする(なお、安倍は「平和安全法制」という名称を使っているが、ここでは安倍の発言の要約も「安保法制」で統一する)。
    「いま安保法制が必要である理由は、わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増しているからです。」
     いつも必ず最初にこれを言う。
      まず、日本が存在の危機にさらされているかのように言って、脅しつけることから始めるのだ。
     本当に危機があるのなら仕方がないが、もしありもしない危機を煽っていたら、それはカルトの洗脳の手法と全く同じである。オウム真理教もそうだったが、最終戦争だの天変地異だのと、世界が存在の危機にさらされているかのように煽り、脅しつけ、恐怖心を植え付けて洗脳、支配するというのはカルトの常套手段なのだ。
     それゆえに、本当に現在、日本はそこまでの危機に直面しているのかという検証は必要不可欠である。
    「北朝鮮の弾道ミサイル、核開発の脅威は深刻です。」
      現行の安保条約のままでも、北朝鮮のミサイルが日本に飛んできたら、それは基地を置いている米軍に対する攻撃と同じとみなし、米軍が北朝鮮を攻撃することになっている。 
     もし米軍が出動しなければ日米同盟は崩壊するし、当然ながら日本は純然たる個別的自衛権を行使して、北朝鮮と戦うしかあるまい。それが国家存続の自然権である。
      そもそも、弾道ミサイルの一番の脅威は原発を狙われることであり、その脅威は尖閣諸島や南沙諸島に中国の覇権が伸長することの比ではない。
      若狭湾の原発銀座に弾道ミサイルが数発落ち、青森の六ヶ所村に数発落ちれば、日本は直ちに国家の存立危機を迎える。これを一切考慮しない安保法制など、平和ボケのお花畑の思考に過ぎない。
    「中国による尖閣諸島の領海侵犯などは連日のように繰り返され、中国の国防費は過去10年で3.6倍に増えています。」
     中国が怖いから集団的自衛権、というのが自称保守の全員一致の意見なのだが、 これも本質的に個別的自衛権の問題である。
     そもそも日米安保条約に基づいて米軍が日本を防衛するために出動するには米国議会の承認が必要なのだが、尖閣のようなちっぽけな無人島を守るために中国と戦争することを、米国議会が承認するわけがない。
      米国は中国とは決して戦争はしない!
     中国が脅威なら、自力で守るしかないのだ!
    「自衛隊機のスクランブル回数は、10年前に比べて実に7倍に増加しています。」
  • 「砂川判決は対米従属の決定的証拠である!」小林よしのりライジング号外

    2015-06-15 13:40  
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    ゴーマニズム宣言
    「砂川判決は対米従属の決定的証拠である!」
     集団的自衛権行使を認める安全保障関連法案に関して、6月4日の衆院憲法審査会に参考人として憲法学者3人が招致され、全員が「違憲」と断言した。
     特に自民・公明・次世代が推薦した長谷部恭男早稲田大教授まで「違憲」と断言したのは与党には大ダメージとなったが、そもそも普段の長谷部教授の意見を知っていればこの結果は自明だったわけで、要するに自民党の議員どもは憲法なんか関心もなく、どの学者がどんな学説を唱えているのか調べもしなかったのだろう。
     その前日には、憲法研究者173人が安保関連法案は違憲であるという声明を発表(6月11日現在では226人に増えている)。
     慌てた菅官房長官は「全く違憲でないと言う著名な憲法学者もたくさんいらっしゃる」と発言した。
     これに対して6月10日の衆院特別委員会で辻元清美衆院議員が「違憲じゃないと発言している憲法学者の名前を、いっぱい挙げてください」と当然の質問をすると、菅が挙げたのは百地章、長尾一紘、西修のたった3人。それをさらに辻元が突っ込むと、菅は「私は数じゃないと思いますよ」と居直った。
     自分で「たくさんいる」と言っておいて、たくさんいないとわかると「数の問題じゃない」なんて言っても、ガキの言い訳にすらならない。
     翌11日には、平沢勝栄衆院議員が「合憲」とする憲法学者として10人の名前を挙げ、「『合憲だと思うが名前を出すことは差し控えたい』と言う方も大勢いた」と付け加えた。
     200人を超える憲法研究者が実名を出して「違憲」と表明しているのに、「合憲」を唱える人は10人以外実名が出せないという。これでは「合憲」は実名じゃ言えないほど根拠が乏しいと認めたにも等しく、頭の悪すぎる発言としか言いようがない。
      この安保関連法案は本来、憲法改正なしに成立させることは無理であり、改憲しないまま強行すれば憲法は形骸化し、立憲主義は破壊される。
     これは改憲・護憲の立場には関係ない。改憲派でも護憲派でも、憲法に意義があるという考えを前提にする立場のはずだ。立憲主義を守るべきとするマトモな憲法学者であれば、今の安保法案は「違憲」と言うに決まっている。「合憲」という憲法学者がいたら、それは日米同盟のためなら憲法の形骸化も可とするインチキ学者でしかないのだ。
     国会に招致した憲法学者が全員「違憲」と断じた事態を受け、政府は9日の衆院憲法審査会で安保法案を「合憲」とする見解を野党側に示した。
     その根拠として挙げたのが 昭和34年(1959)の 最高裁砂川事件判決 (以下「砂川判決」)なのだが、ここで砂川判決が出てくるのがデタラメの極みである。
     今回は、砂川判決とは何だったのかを説明しておこう。
  • 「安保法制と戦死者の祀り方」小林よしのりライジング Vol.130

    2015-04-28 18:10  
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     野党の無力と国民の無関心によって、集団的自衛権行使を可能にする安保法制の制定に向けた作業は、まさに「粛々と」進められている。(権力は民意を無視するときにこの「粛々と」を使う)
     大多数の国民はこの安保法制について漠然とした不安感は抱いているようだが、具体的にはわからない、難しすぎると思っているようだ。マスコミも国民に分かり易く伝えようという意欲が薄く、危機感が足りない。
     例えば新聞各紙は、自民・公明両党が他国軍の支援に自衛隊を派遣する際に「 例外なく国会の事前承認を必要とする 」ことで合意したと報じている。
      これだけ見れば、「例外なく事前承認」を求める公明党に自民党が譲歩し、自衛隊の海外派遣に一定の歯止めが掛けられたかのように見える。
     これは怪しい、きっとどこかにトリックがあるはずだと思っていたが、そうしたら案の定、社長が安倍晋三と会食していない東京新聞だけが4月22日の1面トップで「 『例外なく事前承認』は一部 」と報じた。
     そもそも、「安保法制」とは一つの法律のことではない。10個の関連法の改正と1つの新法制定が行われる。そしてここで問題となるのは、以下の2つの法改正と1つの新法である。
    〈1〉 武力攻撃事態法改正案
    〈2〉 重要影響事態安全確保法案 (周辺事態法改正)
    〈3〉 国際平和支援法案 (新法)
     この3つの法の名前からして、意味が伝わってこないし、覚えることも出来ない。わざと難しくして、国民を煙に巻こうとしているからだ。
     この3つのうち、実は 「例外なく事前承認」とされたのは〈3〉だけ。
    〈1〉と〈2〉は「原則、事前承認」ではあるが、 緊急時には例外的に事後承認 を認めることになっている。
     ここをはっきりしておかないと、全ての自衛隊海外派遣に事前承認が必要になったかのような誤解を生んでしまうのだが、マスコミはわざと誤解させようとしているとしか思えない。
     一応は「例外なく事前承認」となっている〈3〉の「 国際平和支援法案 」だが、これは福島瑞穂が言ったとおり、 実態は「国際戦争支援法案」である。
     これまでインド洋への給油艦派遣など、日本の安全には直接関係のない自衛隊海外派遣にはその都度「特措法」を作っていたが、これを「恒久法」にして、 いつでも「 他国での戦争支援 」に、自衛隊を送れるようにしよう というのがこの法律である。
    「国際平和支援法案」には「例外なく事前承認」が必要になったと、マスコミは報じるが、いやいやそれは違う。
     今までは「特措法」を作ることが、国会の「例外なく事前承認」だったわけで、「恒久法」にして「例外なく事前承認」と言ったところで、それは今まで通りなだけである。特別な縛りをかけたわけでも何でもない。
     しかもその国会における事前承認には、「努力規定」とはしているが、7日以内に衆参両議院が可決するという条件が付けられている。
      国会は政府に承認を求められてから、最長でも衆院7日、参院7日、合計たったの2週間で結論を出さなければならないのである。
      そんな短い期間では十分な情報提供と議論が行われる保証はなく、「見切り発車」になる可能性がある。もう抜け穴は開けてあるのだ。
     一方、〈1〉の「 武力攻撃事態法 」は、北朝鮮がミサイル撃ってきたとか、中国軍艦が尖閣に向かってきたとか、直ちに日本の存立が脅かされる事態を想定している。
     こういう緊急事態まで「例外なく事前承認」なんて言ってはいられないのは確かで、この場合は事後承認もありうるのは当然とは言える。
      ただし、これは本質的に個別的自衛権の問題である。
     個別的自衛権を行使するにも現状では様々な不備があるのに、それを放置したまま、集団的自衛権を行使できるように法改正するというのがそもそも本末転倒なのだ。
     そして最も問題なのは〈2〉の「 重要影響事態安全確保法案 」である。