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記事 3件
  • 「『言論の自由』を守る義務は権力にあるのだ」小林よしのりライジング Vol.169

    2016-03-08 20:10  
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     2月29日、田原総一朗、鳥越俊太郎、青木理、岸井成格らジャーナリストが、高市早苗総務相の「電波停止示唆脅迫」に抗議する記者会見を行った。
    【中継録画】http://thepage.jp/detail/20160229-00000005-wordleaf
     わしはこの会見の趣旨に賛成する。
     高市総務相は放送法第4条に 「政治的に公平であること」 という項目があることを根拠に、放送局がこれに従わなかった場合、総務大臣の判断により電波停止の処分を下すことがありうると言ったが、この法解釈は完全に間違っている。
      そもそも放送法は、「 放送をいかなる政党政府、いかなる団体・個人からも支配されない自由独立なものとしなければならない 」という理由から定められたものである。
     これは憲法21条の「 一切の表現の自由は、これを保障する 」の規定に基づいている。
     高市早苗は放送法以前の問題として、憲法の「表現の自由」の意味が分かっていないのではないか?
    「表現の自由」を守らねばならないのは権力の側である。
    「電波停止命令」で民間の表現を規制するかもしれないぞと脅すというのは、 「我々権力者は、憲法違反をするかもしれんぞ」 と言っているに等しいのだ。
     高市は憲法の意義を知らない政治家失格のバカか、そうでなければ、わざと曲解した法解釈を言い、憲法を踏みにじって言論統制をしようとしているか、あるいはテレビ報道の「 委縮 」効果を狙っているかのいずれかだが、 「 委縮 」効果が一番の目的だろう。
     自称保守派の論客の中には、「偏向報道が許されると言うのか」と言ってる馬鹿もいる。
     わしも自虐史観全盛の時には散々「偏向報道批判」をした立場だが、民間人が民間人にそれを言うのは自由である。 問題は権力が「偏向」だと判定するのがマズいのだ。憲法違反になる。
     そもそも偏向か否かの判断は相対的なものだ。右から見れば左が「偏向」しているように見え、左から見れば右が「偏向」しているように見える。
     例えば関口宏の「サンデーモーニング」は護憲派に「偏向」していると思うが、いまここまで徹底した政権批判をする番組は珍しいし、正しいことも言うのでわしは貴重だと思っている。
     むしろ「新報道2001」の方が政権寄りに「偏向」しているので、メディアの意味がないと思って見なくなった。
     誰が「偏向」しているか、どこが「偏向」しているかは、自由な批判の応酬で、論争の末に明らかにしていく他ない。そのためにも、自由に意見を表明する権利は守られなければならないのだ。
     むしろアメリカならば、番組やキャスターが「民主党支持」や「共和党支持」を明らかにして、「偏向」するのが当たり前の報道をしているようだ。視聴者もそれが分かって見ているのだ。
     読売新聞や産経新聞が明らかに自民党寄りで、朝日新聞・東京新聞が左翼寄りなのは誰でも知っているが、テレビ報道もそのように立場鮮明の「偏向」を特色とする番組があってもおかしくないのだ。
      偏向か否か、公平か否かは、権力が判断することではない。総務大臣が「偏向」と判断したら電波を止められるなんていうのは言語道断である。
    「公平・公正」 といえば、例えばAとBの意見が対立していたら、Aの意見を5分流せば同様にBの意見も5分流さなければならないのだろうと思っている人も多いようだが、これは間違いである。
  • 「媚びへつらいのための集団的自衛権」小林よしのりライジング Vol.89

    2014-06-17 18:25  
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     わしが「SAPIO」の『ゴーマニズム宣言』で、時事ネタを描かなくなったからか、新聞がインタビューを求めてくることが多い。
     ありがたいことなのだが、新聞は文字数が限られる。1時間以上話しても、記事ではかなり省かれ、凝縮されるので、どれだけ伝わるのかわからない。
     ライジングでは文字数制限がないので、詳細に書けるのだが、届けられる人数が少ない。やむを得ない。諦観しよう。
     最近の新聞のインタビュー依頼のテーマは「 集団的自衛権 」である。
     日本が「 集団的自衛権 」を行使できるようにするのならば、憲法改正は不可欠である。ところが安倍政権は、改憲をせずに押し切ろうとしている。
     これだけでも言語道断なのだが、実はもうひとつ、集団的自衛権行使を容認するなら改定が不可欠なはずなのに、安倍政権が手をつけずに済まそうとしているものがある。
      それは、「 日米安全保障条約 」である。
     日米安保条約では、米国には日本を守る義務があるが、日本が米国を守る義務はない。 その代わり、日本には米国に基地を提供する義務があり、条約は双務的になっている。
      基地の提供は米国の世界戦略に貢献するだけではなく、日本は在日米軍関係経費、基地交付金など 毎年6400億円 を負担している。
     集団的自衛権の行使容認となれば、「日米による相互防衛」となるから、 日本は米軍への基地提供義務を廃止するか、そうでなければ米国が国内に自衛隊基地を提供する義務でも課さなければバランスが取れない。
      日本だけが基地を提供し、お互い守り合うのであれば、日本にだけ過重な負担を強いる「不平等条約」になってしまうのである。
     対等な独立国同士であれば、「 集団的自衛権行使と引き換えに、基地提供義務を廃止 」という条約改定をやらなければならない。
     ところが安倍政権は安保条約改定には一切触れることもせず、「 日米ガイドライン 」の見直しによって集団的自衛権行使に踏み切ろうとしている。
     日米ガイドラインとは「日米防衛協力のための指針」であり、日本への攻撃や周辺事態(具体的には朝鮮戦争が再開し、日本に飛び火する事態を想定)の際に日米双方の役割分担を定めた文書である。
      米国が基地とカネという既得権益を手放すわけがなく、安保条約改定になど応じるはずがない。
      それがわかっているから、安倍政権は最初から条約改定を一切口にせず、条約よりも下位にある日米ガイドラインの見直しで集団的自衛権の行使をしようとしているわけだ。
     日本の一方的な負担増を、日本の側から申し出ているのだ。あまりにも露骨な米国追従、媚びへつらいである。これを屈辱とも思わないのだから、属国根性極まれりである。
     なぜこんなことをやりたがるのか。実はその理由を、安倍自身が10年前の岡崎久彦との対談本『この国を守る決意』であけすけに語っている。
     安倍は、日米安保条約は「双務的」であり、さらに集団的自衛権まで行使する必要はないという批判に対して、 米国が日本を守り、日本が基地を提供するという現行の条約では「双務性」が足りない と言う。
     そして 「日米安保をより持続可能なものとし、双務性を高める」ために、集団的自衛権の行使が必要だと主張している。
     日米安保条約第5条には、米軍が日本を守ることが規定されている。だが安倍は、条約は「ただの紙」でしかないというのだ。
     安倍はこう言っている。
    信頼関係と連帯のない同盟というのはただの紙でしかありません。それがあって初めて同盟に魂が入り、有効に機能するということです。
    「五条にこう書いてあるではないか」と言って、まるで法の番人のようにアメリカに突きつけたところで、何の効力も発揮しないということなんです。これは相手の立場に立って考えてみればすぐにわかることだと思います。ですからこれからも、日本はその不断の努力が必要であると。 (P61~62)
     その「 不断の努力 」が、米国に対する「 不断の媚びへつらい 」なのだ。
      いざという時に見捨てられないように、とにかく米国に媚びて媚びて媚びまくれ! 尽くして尽くして尽くしまくれ! 基地を提供しているだけでは足りない、さらに米国のために自衛隊員の血まで流してさしあげろ! ここまでやっているのだから、北朝鮮や中国がヤバくなっても見捨てないで下さい、助けて下さいねと、アメリカ様にしがみつけ!!
     安倍が言っているのは、要するにそういうことだ。
     この対談本が出たのは 2004年1月。岡崎久彦がイラク戦争の米軍勝利を確信し、これで世界史的な「アメリカ帝国」ができ上がるぞ、これからは「パックス・アメリカーナ」の時代だぞと欣喜雀躍していた頃 である。
     この本でも岡崎は、イラク戦争を支持したことで「 日米関係がこの150年で最善だ 」と喜び、「 一年前に集団的自衛権の行使を認めていれば、今回のイラク戦争で世界三大国の一つになっていましたよ 」と悔やんでいる。
     それから10年、日米関係は安倍政権によって史上最悪といわれる状態になったし、イラク戦争をめぐる岡崎の発言はすべて間違っていたことも明白になった。
  • 「安倍政権と大マスコミの癒着」小林よしのりライジング Vol.88

    2014-06-10 20:40  
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     新聞に、こんな内容の記事が載っていた。
      アベノミクスによる景気回復で、雇用の改善が進んでいる!
     有効求人倍率はバブル崩壊後の最高値に並んだ!
     人手不足は都市圏に限らず全国に広がり、人材の奪い合いが起きている!
     都心部では、時給1500円でも人が集まらないケースまで発生している!
     人手不足は本格的な景気回復を告げる「福音」だが、さらなる経済成長を阻む不安要因となることも懸念される!
     ……マトモな生活実感を持って暮らしている人なら「一体どこの世界の話だ!?」と思うだろう。事実、ちょっと検証すればこれはトリックだらけの、詐欺同然の記事だとすぐ判明する。
     これが、最初から安倍政権の御用新聞だとわかっている読売新聞や産経新聞に載っていたのならまだわかる。
      だが、この提灯記事が載ったのは5月31日の朝日新聞 。それも1面トップと2面の特集という大々的な扱いである!
      朝日新聞を、安倍政権に対する批判勢力だなんて思わない方がいい。
      朝日新聞は一応、集団的自衛権については批判しているが、景気対策ではデマまで駆使して強力に安倍政権を応援しているのだ。
     政府は5月30日、4月の物価・生産・雇用等の統計を発表、朝日はこれを基に30日の夕刊で「 求人倍率さらに改善1.08倍 4月バブル後最高に並ぶ 」という一報を載せた。
     ただしこの記事はまだマシだった。「有効求人倍率が1倍を超える」というのは「 仕事を選ばなければ 全員が職に就ける状態」であると説明した上で、次のように書いていたのだ。
     ただ、正社員を希望する人でみると、有効求人倍率(原数値)は0.61倍で前月を0.04ポイント下回った。求人は依然、非正規が中心となっている。このため、企業が出した求人のうち、実際に採用に結びついたのは2割にとどまった。   求人は非正規が中心で、正社員の有効求人倍率はわずか0.61倍!
     本当はこれが重要なポイントなのだ。ところが、このことは翌日の1面トップと2面特集の大々的な記事からはスッポリ抜け落ち、「景気回復で求人難」という内容になっていた。
      しかもその特集記事で、「時給1500円」という高額を提示しても人材を確保できない実例として登場するのが、なんと牛丼チェーンの「すき家」なのである!!
     すき家はメニューが多く、券売機方式ではないため、ただでさえ他の牛丼チェーンよりも店員の作業が多い。
     しかも人件費抑制と利益率増大のため店員は必要最低限の人数に抑えられ、深夜時間帯はアルバイト1名のみで1店舗を担当する「ワンオペ(ワンオペレーション)」という勤務を強いられる。
     注文を受けた後、キッチンに入って盛りつけ、提供、会計、片付け、そして報告まで全部ひとりでこなさなければならないのだ。
    「ワンオペ」は防犯上も問題で、すき家では2010年頃から強盗事件が多発。2011年には未遂も含めると78件と、牛丼チェーンの被害総数のうち9割近くを占めたという。
     そしてこの上に今年2月、さらに手間のかかる「牛すき鍋定食」が発売となったことでついにキレたのか、バイトが一斉退職。
     すき家では店員の確保ができずに休業に追い込まれる店舗が続出し、ニュースになった。
     今ではすき家のバイトはあまりにも過酷だということは広く知れ渡っている。だから時給を1500円にしても人員が確保できないのだ。
     もちろん朝日の記者がそれを知らないはずがない。実際、記事中では「 すき家は、深夜帯のアルバイトを一人で任されることもあり、負担が大きいと2月から4月にかけて人手不足が深刻化 」とも書いている。
      朝日新聞は実態を知っていながら、それを「 景気回復によって求人難になり、待遇改善が図られた 」という記事にしたのだ。
      有効求人倍率が「改善」し、企業が「求人難」になっているというのは、景気回復のためでも何でもない。
      ブラック企業を含む求人側が、都合よくこき使えて使い捨てできる人材を大量に求めているからというだけのことだ。
     朝日新聞は、安倍政権のために情報操作をしているのである。
     朝日新聞の安倍政権提灯記事をもう一つ指摘しておこう。5月30日夕刊の記事「 アベ効果?ベア実施6倍 大手企業の46.7% 」である。