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記事 3件
  • 「構造改革派・田坂広志の“珍アフター・コロナ論"」小林よしのりライジング Vol.360

    2020-06-09 20:35  
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     学者は「世間知らず」だという実例は、それこそ腐るほど見てきたが、社会のことを全く知らない学者が社会のあり方について「提言」なんかしていたら、それはもう有害だとしか言いようがない。
     6月4日放送のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」では、元内閣参与で多摩大学名誉教授の田坂広志がリモート出演し、コロナ後の社会はどうあるべきかという「提言」をしていた。
     田坂は、今回のように自粛で経済を止め、その補償を国がするようなやり方が続くわけはないから、「持続可能な新たな社会のあり方」を目指さなければならないと言う。
     だがわしに言わせれば、インフルエンザよりも弱い新型コロナなんかを過剰に恐れて自粛してしまったこと自体が誤りであり、普通にインフル程度の感染症予防をして経済を回し、 ただしグローバリスムに依存する新自由主義的な経済を捨てさえすれば、十分「持続可能」な社会になるのだ。
     わざわざ「新たな社会のあり方」なんてものを目指す必要などないのである。
     ところが田坂は 「今後来るであろう第2波、第3波、そしていかなるパンデミックにも耐えうる『社会システム』を今のうちに準備しておくべき」 と主張し、「アフター・コロナ」の時代には社会を変容させ、これまでとは違ったライフスタイルを身につける必要があり、それが 「ニュー・ノーマル」 、新しい常識だと言う。
    「アフター・コロナ」だの「ニュー・ノーマル」だの、わざわざ英語のフレーズをつけたがるところが既に怪しいのだが、ではそれは具体的にどういうものなのか?
     羽鳥慎一がパネルをめくると、こんなことが書いてあった。
     提言<1>“収入が減らない新しい働き方”
    「パンデミック時、人手不足となる企業は仕事を失う職種の人と平時から雇用契約を結ぶ。
     仕事を失う職種の人はニーズのある職種を副業として身につけておく」
     そしてその具体例として、群馬県嬬恋村のキャベツ農家で、新コロのために外国人技能実習生が200人不足したため、自治体が補助金を出して労働者を募集したら、休業を余儀なくされた旅館業の人など300人の応募があったというケースを紹介する。
     また、海外の例として「従業員シェア」なるものを紹介する。
     米ヒルトンホテルが、新コロで仕事がなくなった自社の従業員にアマゾンやフェデックスなど異業種の提携会社の求人を紹介し、ヒルトンに籍を置いたままそこで働けるようにしたという。そしてアマゾンは、ヒルトンホテルを含む提携会社などから、約17万5000人を「物流施設従業員」などに採用する方針だそうだ。
     田坂はこの「従業員シェア」が「アフター・コロナ」の「成功例」だとして、こう語る。
    「従業員シェアという考え方、これからの新しいキーワードになるだろうと思うんですね。今は(従業員シェアと)聞かせられると、えっ、と思いますけど、これからはむしろこれがニュー・ノーマル、新しい常態、従業員シェアというのは別に異常なことでも何でもない、当たり前のこれからのスタイルですねと」
     田坂は本当に社会を知らない。「外国人技能実習生」が、日本人は誰も応募しないような低賃金・重労働で外国人を酷使しているとして社会問題になったことも、アマゾンの「物流施設」の仕事があまりにも過酷で従業員が疲弊しきっているとして社会問題になったことも知らないのだ。
      コロナ禍で仕事をなくした人が、より条件の悪い職種に吸い込まれて行くという、ただそれだけの話のどこが「新しい社会のあり方」で、アフター・コロナの「成功例」なのか?
     ヒルトンのような超一流ホテルで働いていたホテルマンが、アマゾンの物流倉庫などという過酷で全く異なる仕事をせざるを得なくなった時、どんな思いをするか、何も想像できないのだろうか?
     田坂は社会を知らないし、人の心も知らない。
     人間は誰でもどこの何の仕事とも入れ替えの効く、交換可能な部品としか思っていないのだ。
     そして、田坂はこう言うのである。
  • 「新自由主義の見本市・韓国――就職浪人と貧困街タルトンネ」小林よしのりライジング Vol.187

    2016-08-02 23:10  
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     前回のトンデモ見聞録では、先進国の格差社会のなかに生まれる、一見してそうとは把握しづらい《相対的貧困者》の実態として、「格差の先進国アメリカ~貧困だから太る子供たち」を書いた。アメリカ人といえば「ジャンクフードが好きで太っている」という大雑把なイメージを持つ人は多いと思うが、その実態は「カネがすべて」の新自由主義による際限なき競争のなかで、「野菜が買えず、ジャンクフードやスナック菓子しか食べられない」状態に置かれる《家畜化させられた貧困米国民》でもあった。
     こんな米国の奴隷に甘んじ、「NO」と言えずに次々と「構造改革」させられてゆく日本の今後は、一体どうなってしまうのか?
     そこで今回からは、 日本よりも先に米国民間企業からのドメスティック・バイオレンスを浴びまくり、新自由主義を突き進めてしまった韓国の実態 を、何回かに分けて紹介していきたいと思う。
    ◆日本の現状が進行するとこうなる! 韓国の生き残り受験戦争
     非常に深刻な格差社会に陥っている韓国は、いま、 上位1%の富裕層が国家全体の収入の45%を独占し、中間層は崩壊、国民の平均年収は3000万ウォン(約290万円)に満たないという状態 である。
     多くの若者は就職できずにニートとなるか、跋扈するブラック企業に子供の小遣いのような低賃金で搾取され、年金未加入者は増大。晩婚化・少子化・高齢化も急激に同時進行して、結果、 65歳以上のなんと50%が貧困状態、高齢者世帯の負債率は160.9%の借金漬け という凄まじさである。
     日本の若者は「正社員になりたかったけど、派遣でなんとか食うしかない」といった感覚だが、韓国の若者はさらに進行した悲惨さに晒されており、
    「大企業(財閥系企業)に入れない……ならば、死」
     
    といった状態だ。
     なにしろ、自由競争の進みまくった韓国のブラック企業の《ブラックさ》は、日本の比ではない。
     ある有名ホテルは、全従業員140名の従業員のうち、100名を「インターン」として雇い、月収たった3万円で、正社員同様の長時間労働を強いていた。「経歴」が重視される韓国では、インターンとして社会経験を積んでおくと就職が有利になるという考えがあり、多くの就職難の学生たちが、この弱みにつけこまれてインターンとして異常な低賃金で雇われ、残業代も夜勤手当もすべて踏み倒されていたという。
     社員を自己破産に追い込んだ製菓会社もある。社員別に日別の販売ノルマを割り当て、これを達成できない社員は帰宅を許さず、また、担当した菓子の在庫返納も一切認めなかった。結果、精神的にも肉体的にも追い込まれた社員は、売れなくても「全部売れた」と報告し、自腹で売り上げを補填しつづけ、自己破産に至ったという。
     日本に報じられているものがこれだけ壮絶なのだから、平均的な企業でもどれほどブラックな面を孕んでいるのか、想像すると身震いする。
    「我慢してでも働けるだけありがたく思え」
     まともな就職先がない韓国社会、そこに「カネがすべて」と手段を選ばず暴利をむさぼる企業の姿勢が横行してしまうのである。
     この状況のなかで、韓国の親たちは、なんとかしてわが子を熾烈な受験戦争に勝ち残らせようと、巨額の教育費をつぎ込むのだが……ゴールとなるはずの《まともな就職先》、つまり大企業・財閥系の門は、ほんのわずか。実態はなんと、 大卒者の97%が「まともな就職先争奪戦争」に敗れ、再トライを目指して親元に残り、就職浪人と化してしまう のである。
     生き残るために、小さいころから親子一丸となって必死で戦って、戦って、やっと学歴を獲得したのに、中小企業に就職してしまっては、奴隷同然となり一生涯を棒に振る。それならば、親のカネが尽きるまでニートとして粘るほかない、というのが 現実 なのだ。
    ●ニート増加について韓国人の若者たちは……
    「大企業や公務員への就職が難しい中、中小企業に行けば年俸1800~2400万ウォン(約198~264万円)、週6日労働または隔週土曜日勤務、年次休暇なし、手当なし、夜勤・休日勤務手当なし、ビジョンなし、希望なし。ニートが増える訳だ」
    「良質の雇用を求めてニートになっているのではない。みんな自分が食べていくのに汲々としているのが実情だ」
    「外国人や幼い子供たちは理解できないだろうが、これは韓国の若者の問題ではなく、努力しても明るい未来が望めないことに原因がある」
     こうして、韓国には就職浪人が増え続け、ついに2015年、国内の全就業者数のうち、 50代以上の親世代の就業者数(965万5000人)が、20代~30代の青年層の就業者数(936万9000人)を上回るという事態に至ってしまった のである!
    ◆リストラ・早期退職で「自営業」に転向させられる親世代!
  • 「韓国船沈没の悲劇を、日本は他山の石とせよ」小林よしのりライジング Vol.85

    2014-05-13 13:00  
    153pt
     韓国船沈没の悲劇が、韓国人の「 公共性 」のなさを浮き彫りにして、自分さえ助かればいいという「 利己主義 」、カネのために人の命も犠牲にする「 拝金主義 」が批判されている。
     だが、韓国が新自由主義で突っ走り、経済が絶好調だったつい最近まで、日本企業はサムソンに負けた、日本も韓国を見習って規制緩和しろと経済評論家が論じ、テレビで特集していたものだ。
     日本だって原発事故で甚大な被害を出したにも関わらず、国内では早くも安全神話を復活させ、原発ムラの「 拝金主義 」のために再稼働を進め、さらには海外にまで輸出しようとしている。
      カネの為なら倫理も公共性も無視するのは、日本だって同じである。

     韓国は非正規社員が55%だと言うが、日本だってもう40%以上になっている。
     韓国は一度、財政破綻してIMFの管理下に入り、新自由主義に向かうしかなかった。
     だが日本は内需でやっていけるのに、0.1%の大企業のために新自由主義を推し進め、TPP参入にこだわっている。
     中間層を崩壊させ、地方経済を崩壊させ、分厚い貧困層を創出し、子供が産めない社会を作り、人口減を移民で埋め合わせようと考えている。
     なんで韓国に優越感だけ持っていられるのか?

     韓国社会がデタラメだということくらい、わしは「新しい歴史教科書をつくる会」で教科書運動をやってた頃から知っていた。
      顏も整形で「修正」、歴史も反日で「修正」、民族の原点にコンプレックスを抱えた「恨」の国民性だから、自分の真の姿を直視できない「修正主義」の国なのだ。
     慰安婦問題もその一つで、日韓併合の恥辱が「恨」になってるから、真実を見たくない。
     真実がばれないように、世界中に慰安婦像を立てるという、哀れな悪あがきをやっているが、わしは腹が立つよりも、気の毒に思ってしまう。
      顔の整形がいつかばれるように、歴史の修正もいつか世界の人々にばれると思うのだ。

     支那からも、ロシアからも、日本からも、脅威にさらされる地政学上の弱みが、韓国人の「 事大主義 」を育ててしまった。
     国の成り立ちを反日に頼るしかなく、反日なしでは国民の統合が崩壊するという脆弱なアイデンティティーしか持っていないコンプレックスの民は、実は憧れの日本に反発するしかなく、「事大主義」で中国に接近してしまう。
     韓国船の事故に関しても、日本から差し伸べた手を払いのけてしまったが、日本の海猿に頼れば子供たちの命も何名か助かったかもしれない。
     だが一方で貴重な海猿の隊員たちの命を犠牲にしたかもしれないので、断ってくれて良かったと思うエゴイズムもある。よっぽど感謝されて、日韓の友好に役立たなければ、我が国の優秀な海猿の命を危険に晒すことはできない。
     韓国は沈没した船の引き上げで、中国に助けを求めたが、反日ポーズにそこまでしてこだわる幼稚さはやれやれというしかない。
      だがそれを日本人が軽蔑して、優越感で「日本に頼ればいい」と上から目線で言ったって、韓国人はさらにコンプレックスを刺激されるだけだ。
     みっともないよと忠告しても、それもこれも全部、日本が侵略したからだと言い出すだけで、「事大主義」で中国に接近する半島の民の姿は、明治から日本人が見てきたままである。

     だから福澤諭吉の「 脱亜論 」でいいかと言えば、明治期の欧米帝国主義に対抗せざるを得なかった日本人の焦りの時代背景と、今とではまた状況が違う。