2009年に一冊の本が出版されました。
第2次大戦直前、海軍の中枢部の人々が集まり、語り合いました。海軍反省会と呼ばれています。1980年から1991年まで、海軍軍令部等のOBが一般には公にせず内密に組織した旧海軍学習グループです。何人で論議しているから、信頼度は高いと思います。
ここでは海軍が米国と戦争すれば負けると解って戦争にいく像が浮かび上がります。
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大井篤(海軍省軍務部):永野さんはね、(日本の)内乱になるからアメリカとね、妥協すべきでないと。片一方では、戦いはやれば負けると。それだから陸軍と一緒になって負けるしかないという事です。軍令部に(そういう考えが)あったらしいと書くのが奉答ですよ。
佐藤毅(海軍省軍務部員):勝つつもりでやっているのですよ。開戦不可避という状況だったんですね。
保科善四郎
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"永野さんはね、内乱になるから、アメリカとね妥協すべきでない”
私はこの文節に注目します。孫崎先生のご指摘の通り永野海軍大臣は個人的に暗殺を恐れていたのでしょう。
「武」に携わる人間の系譜を見て、幕末の武士たちは暗殺を恐れていない。その傾向は支配者になっても変わっていない。大久保利通なんかその適例。伊藤、山形、桂、西園寺(皇族だけど戊辰戦争で最前線に立っている)に移って行く過程で”葉隠れ”が劣化してきた。永野海軍大臣が一踏ん張りして暗殺覚悟で頑張ったらと思うと残念。彼はトップに立っても保身だけのいじけたサラリーマン。天皇にも嘘をつく。そこには武人の誉はない。天皇は冒涜してはならない規範なのにそれに気が付いてもいない。
ミッドウェイで空母を殲滅していれば、あるいはもっと良い条件で講話に持ち込めたかもしれませんね。でも多分真珠湾前でさえ、暗号は解読されていたでしょうね。アメリカはそうはいっていないでしょうが。後は駄目ですね。軍人のトップが自分の死刑が嫌だから終戦を引き延ばしたとしか思えない。自分が死なずに、特攻兵器で若い命を殺す訳です。もうなんと情けない国になっていたのだろうと思います。
太平洋戦争にはこれといった人物がいないんですね。山本 五十六くらいですが、ほとんど自殺してますね。そういう人物がいない。自分の出世や保身のことしか考えないような人間が日本のトップだった訳です。少なくとも明治の西郷や勝は違った。いまはどうなんだろう?
敵の暗号解読。これは戦争の基本です。又、断定した。反省します。基本だと思います。私の親父は三井造船が陸軍の命令で造った新型輸送船に乗り込んで釜山で関東軍の精鋭3,000人をピックアップしフィリッピンに運ぶ途中、ニミッツ率いる潜水艦の狼群待ち伏せに遭いバシー海峡で撃沈。1944年8月のことでした。米軍は暗号を完全に解読して待ち伏せた。山本五十六も待ち伏せに遭い撃墜された。これにも暗号解読があった。親父は暗号解読されているのを知っていたのに3,000人と共に死んだ。
ナチは暗号作成に天才を発揮し、何度も変えた。イギリスはその度に戦闘、航行を中断し解読に努めた。戦争とはそういうものなのに我が帝国の海兵出、陸士出は何を学んで世界制覇に乗り出したのか?狂っているとしか言いようがありません。
戦争を進めていて、このまま進めば敗戦が明確なのがわかっている時、仮に自分が判断しなければならない立場にあれば、突き進む判断をするでしょう。戦争を止める判断を個人がしても組織を動かして止めさせることができるか。多分できず、自決するしかないことになるでしょう。弱虫の烙印を押され、自決するなら、戦争に突き進む判断もあり得るのです。
侵略戦争などせず、自国を守ることに徹し、外交で問題を解決することが、無意味な死者を増やさない知恵ではないか。
平和憲法は知恵に満ちた教えであり、この教えがわからない人たちは同じ過ちを犯すしかない。