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中邑真輔やASUKA、伊丹英雄が参戦するWWE/NXTの大会テーマ曲に選ばれたメタルアイドルBABYMETAL。昔から「プロレスとヘビーメタルは相性が良い!」と言われ続けてきましたが、プロレス格闘技ライターでメタル通の高崎計三氏にそのへんの話を聞いてきました〜。
――メタルアイドルBABYMETALの「KARATE」がWWE/NXT『テイクオーバー』の大会テーマ曲に選ばれたということで、プロレスにもメタルにも精通しているライターの高崎さんに話を聞きにきました! メタルボンヤリ層のボクですがよろしくお願いします!
――メタルアイドルBABYMETALの「KARATE」がWWE/NXT『テイクオーバー』の大会テーマ曲に選ばれたということで、プロレスにもメタルにも精通しているライターの高崎さんに話を聞きにきました! メタルボンヤリ層のボクですがよろしくお願いします!
高崎 俺でいいんですかね?(笑)。
――マット界でほかにメタル好きって誰がいるんですかね?
高崎 そうですねぇ……プロレスリングBASARAのFUMA選手がナンバーワンですかね。なんてったって活動テーマがヘビーメタルの布教ですから(笑)。
――それは凄い(笑)。
高崎 女子格闘家の富松恵美選手がメタル好きっていうのも、本人のアピールもあって知られるようになってきましたよね。なにしろ妹さんがプロのメタル・ギタリストで、その生演奏で入ってきたりしますから。
――そういえば「真実を追求するジャーナリスト」ことタダシ☆タナカ先生もメタル好きでしたねぇ。
高崎 たまに会場で着てるTシャツがかぶりそうになることがあるんですよね(苦笑)。タナカ先生といえば、まさしくBABYMETALをテーマにした原稿をネットにアップしてますよ(笑)。
――あら。でもまあタナカ先生って何を書いても「ほかの連中は何もわかってない!!」という結論になるのでスルーしときます!(笑)。BABYMETALの今回に限らず、昔からプロレスとヘビーメタルって親和性が高いとされてますよね。
高崎 そのはず……なんですけども。じつは入場曲にメタルを使ってる選手ってそんなに多くはいないんですよ。
――あ、そうなんですか。
高崎 ロード・ウォリアーズがブラック・サバスの「Iron Man」を使ってるインパクトや、アメプロが80年代のLAメタルから文化的な影響を受けたことで密接な関係だと思われがちなんですけど。WWEなんかはどっちかというとラウドロックが多いんです。リンキン・パークとか。まあ、ラウドロックとヘビーメタルも境目となると難しいですけど。
――格闘家でもリンキン・パークは多かったですね。
高崎 メタルが一番好きなのはメキシコ人レスラーかなあ。ルチャの入場曲にはメタリカとか、メタルが多いんですよ。そういえば新日本のスーパージュニアに来ていたボラドール・ジュニアはマリリン・マンソンを使ってましたね。
――日本人選手もまったくいないわけじゃないんですよね。
高崎 意外に女子プロレスラーが使ってるんですよね。アジャ・コングがジューダス・プリーストでしょ。アイアン・メイデンを入場曲に使ってたレスラーはシャーク土屋とクラッシャー前泊くらいかなあ。
――コンバット・アーミーはメタルの絆(笑)。
高崎 俺の中でコンバット・アーミーはメイデンをテーマ曲に使ってたプロレスラーという認識なんですよ(笑)。井上京子もヴァン・ヘイレンの「Panama」を使ってますし。
――メタルやハードロック方面は女子界隈が強いということですね。
高崎 男子は意外と少ないんですよねぇ。さっき名前を挙げたFUMAは「マノウォー」というメタルバンドの曲を使ってたり、ストロング・マシンも一時期ヴァン・ヘイレンを使ってました。
――格闘家でいえば、ヨアキム・ハンセンもメタルを使ってますね。
高崎 あの人はその時の気分によって曲を変えるんですよ。
――かつてはイングヴェイ・マルムスティーンが高田延彦の入場曲を書き下ろしたこともありましたけど(笑)。
高崎 それこそ高田は旧UWFのときはレインボーの「Still I'm Sad」だったんですよ。しかもライブバージョンのボーカルが入ってるものを使ってて。
――高田はメタル好きなんですかね。
高崎 うーん、どうなんですかね。あの頃のプロレスラーは自分で入場曲を選んでないじゃないですか。テレビの音効さんが選んでいたりするけど、旧UWFってテレビは関係ないからどうなんだろう?
――旧UWFのブレーンだった更科四郎さんが音楽関係を仕切っていたという話もありますけど。
高崎 誰がやっていたかはさておき、あの選曲は凄くよかった(笑)。高校生のときに博多スターレーンに旧UWFを見に行ったことがあるんです。リングでどんな試合があったかは忘れたけど、その曲が流れたことだけはおぼえてるんですよね。
――90年代初頭に新日本レスラーズが自分の好きなメタルをセレクトしたCDが出たんですよね。
高崎 そうでしたっけ(笑)。
――記憶が曖昧ですけど、そんなCDがあった(笑)。そのわりには新日本ってメタルを使ってないなあ、と。武藤敬司(「TRIUMPH~伝説~」)や蝶野正洋(「CRASH ~戦慄~」)がロイヤルハントにオリジナル入場曲を作ってもらってはいましたけど。ちなみにそのレスラー推薦メタルCDでメガデスの存在を知ったんです。
高崎 俺もプロレスラーのテーマ曲から洋楽を聴き始めたんですよ。「プロレスファンあるある」ですよね(笑)。
――ボクが初めて購入した洋楽は、ブルーザー・ブロディのテーマ曲「移民の歌」目当てのレッド・ツェッペリンだったんですけど、オリジナルとプロレスバージョンの違いにちょっとションボリしましたますね(笑)。
高崎 そこに罠があるんですよね(笑)。ビッグバン・ベイダーが使ってた「Eyes of the World 」(レインボー)もボーカル部分がカットされていたり。新日本の場合はテレ朝の音効さんがハードロックとプログレが大好きだったらしくて、よくこんなところからってチョイスが多かった。テレ朝の音効さんじゃなかったら、キャメルの「Captured」も前田日明の入場曲として定着してなかったかもしれない。
――全日本プロレスの中継も日本テレビが関わっていたから選曲センスが優れてましたね。
高崎 そういえば、こないだキャメルが久々に来日したんですけど、ネットで読んだインタビューで「日本で前田日明が入場曲で使ってることを知ってるか?」という質問をしていて。メンバーは「そうらしいね。ボクらにお金が入ってるかどうかはわからないけど、いいことだよね」って笑いながら答えてて。「よけいなことを聞くんじゃないよ!」って思いましたよ(笑)。こういうのって許可だお金だでトラブルになりかねないじゃないですか。「Captured」は「前田日明のテーマ」としてシングル盤も出たから、ある程度のお金は入ったでしょうけどね。
――そういえばファイティングオペラ「ハッスル」が、ヴァン・マッコイ作曲の「ハッスル」を団体テーマ曲に使ってたけど、使用料のトラブルとかで後半はまったく使ってないんですよね(笑)。
高崎 さすが「ハッスル」ですね(笑)。
――PRIDEやK-1のファイターの入場曲も、スタッフが選手のイメージに合わせてテーマ曲を用意してたからハマったと思うんですよね。ヒョードルやミルコが自分で用意すると、もうアレでしたし(笑)。
高崎 格闘技の場合はその選手の好きな曲を選ぶんですけど、その時々で聞いてる曲やいま流行ってるものを使いがちだから、なかなか定着しないんですよね。
――自分の中には「トップファイターは入場曲を変えない」という定説があります(笑)。
高崎 固定しないと観客もなかなか乗れないですよねぇ。いまの選手に言いたいのは、「もっと壮大な感じな曲にしようよ!」ということですね。どうも入場曲っぽくない。最初に「プロレスとメタルの親和性」についてとありましたけど、メタルを聞いてる選手ってそんなにいないと思うんですよね。メタルを聞けば絶対に入場曲で使いたくなりますから!(ドン)。
――若者の深刻なメタル離れ(笑)。
高崎 昔、須藤元気が凝った入場パフォーマンスをやってたじゃないですか。テーマに合わせて入場曲を選ぶんですけど。メタルとして選んだものがメタリカの「Enter Sandman」なんですよ。「ああ、世間でメタルといったら、それが代表曲になるんだよね……」という。そこがギリギリなのかなって。
――「Enter Sandman」発売から17年近く経ってますけど、いまだにいろんなジャンルで使われてますし、メタルの代表曲なんですね。
高崎 翻って日本のメジャーのメタルってそれこそ聖飢魔IIくらいしかいなかったんですよ。同時期でいえばX JAPAN。Xがメタルかどうかは人によって捉え方は違ってきますけど、Xが『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で笑われていたときも「ヘビメタ!」と言われたわけですよね。
――あそこがヘビーメタル初体験の人が多かったかもしれないですね。
高崎 例えば『ミュージックステーション』に定期的に出てくるメタルバンドっていないじゃないですか。それこそラウドネスやアースシェイカーも世間的には知られていなくて、知る人ぞ知るという感じなんですけど。そのジャンルの中で活きのいいバンドはたくさんいるんですけどね。
――そこは格闘技界に似てますね。
高崎 そうですね。いまのシーンで頑張ってる選手は多いんだけど、魔裟斗だKIDだで記憶が止まってて、世間は内藤のび太は知らないでしょうし。
――どこのジャンルにも抱える問題点なのかもしれない。お話を聞くと、選手でメタル好きはどんどん減っているんですかねぇ。
高崎 ミュージシャンはプロレス好きが多いんですけどね。陰陽座という妖怪ヘビーメタルバンドがいるんですけど。
――妖怪ヘビーメタルバンド!
高崎 彼らもプロレスが好きで、ずいぶん前に取材したときに「どうにかして天山広吉選手のテーマ曲を作りたい!」という夢を語ってました。ちょうど「ワールドプロレスリング」中継のエンディングテーマで起用されたときに取材したんですけど、「これで近づいたと思ってるんですよ」と。
――それはぜひ実現してほしいですね。
高崎 繰り返しますが、メタルってプロレスラーの入場にハマると思うんですよね。「これなんかも入場曲にピッタリなんだけどな」って曲がメチャクチャあるんですよ!
――というわけで、高崎さん推薦の「入場曲に合うメタル」を挙げてもらいましょう!
■「The Trooper」 / Iron Maiden
■「Leather Rebel」 / Judas Priest
■「4 Words ( To Choke UPon ) 」/ Bullet For My Valentine
■「Davidian」 / Machine Head
■「The Burning Man」 / W.A.S.P.
――BABYMETALもプロレスに合いますか?
高崎 BABYMETALも合うと思います。ちゃんと聞いたことあります?
――たまに聞いております。
高崎 「紅月-アカツキ-」と「Road of Resistance 」はいいと思います。でも「ヘドバンギャー!!」や「ギミチョコ!!」はメタルというかアイドル曲だと思うんで聞かないですけど。BABYMETALってメタルの音をちゃんと作ってるし、バックバンドはうまいし、ライブの演出も凝ってる。メタル好きのツボは凄く突いてると思うんですよ。
――プロデュースする側がメタルのなんたるかをわかってるんですね。
高崎 BABYMETALにかぎらず、いま世の中で売れてるものってよく練られてるものが多いじゃないですか。「ゲスの極み乙女。」だって、ひとりひとりがメチャクチャうまいし、曲も凄くよくできてるんですよ。全体はすごく複雑なんだけど、サビはすごくキャッチーで。
――売れて当たり前なんですね。
高崎 売れて当たり前の物が溢れてる中で、売れるかどうかは運次第だったりしますよね。勢いだけで売れるものはあるけど、勢いで売れるだけの作りこみはしているというか。BABYMETALもメタルのディテールが甘かったらからここまで支持されてないと思うんですよね。メタルの人たちっていつも「これはメタルか、ハードロックか?」で揉めていたりするから。
――BABYMETALにも「メタルだ、メタルじゃない」という論争はあったんですよね。
高崎 一部ではありますよ。俺もいろんな人に聞かれるんですよ。「じゃあBABYMETALはどうなの?」って。それは「メタル好きにとってBABYMETALはいいの、悪いの?」という聞き方なんです。それはいまの大ブレイクのちょい前にはよく聞かれたんですけど。
――賛否のある存在だったんですね。
高崎 それこそ老舗のヘビーメタル雑誌「BURRN!」ではBABYMETALは扱われていない。「BURRN!」では扱われていないから「ヘドバン」という雑誌がBABYMETALを大フィーチャーして支持を得たり。
――手法として、旧UWFを大フィーチャーした『週プロ』を彷彿させますね(笑)。
高崎 いまでいえば「週プロが取り上げないインディ団体を取り上げたぜ!」みたいな(笑)。いまはもう「BURRN!」に載る・載らない以上に、BABYMETALは海外のフェスに呼ばれたり、ビルボートチャートにも入って地位を確立させてしまいましたけど。それでも「BURRN!」が載っけないのはひとつの姿勢ではありますよね。
――「BURRN!」はなぜ扱わないんですか?
高崎 詳しくは知りませんが、編集長が「BABYMETAL側からプロモーションがあれば載っけてもいいけど……」とコメントしていたのは見ました(笑)。BABYMETALは気がついたら海外で騒がれちゃった感じもありますからね。
――そうしてWWEのアンテナにも引っかかったわけですね。
高崎 NXT責任者でもあるトリプルHは音楽が大好きですよね。モーターヘッドのレミー・キルミスターが亡くなったときも追悼コメントを出していたし、この前はイギリスのメタル雑誌の賞をもらってましたよ(笑)。レッスルマニアでは毎回いろんなバンドが出てきて生演奏してますけど、トリプルHはWWEと音楽の重要性はわかってるんじゃないですかね。それにいまのNXTは中邑真輔にアスカ、伊丹英雄もいるということで、日本括りとしてのBABYMETALがあったかもしれない。なにしろ曲名が「KARATE」ですからね。
――ザ・日本ですね。
高崎 曲を作る側も海外から見える日本のイメージを見越して作っててうまくハマったという。ビルボードアルバムチャートTOP40入りはそれこそ坂本九以来の快挙なわけですよ。
――「SUKIYAKI」と「KARATE」が繋がった(笑)。
高崎 面白かったのは、メタルファンは坂本九以上に、ラウドネスがBABYMETALに抜かれたということに衝撃を受けてるんですよ。日本を代表するメタルバンドのラウドネスが全米進出を掲げてリリースした『THUNDER IN THE EAST』はビルボードで74位でしたから。
――日本初のメタル最高位をBABYMETALが奪取したんですね。
高崎 そこにショックを受けてるメタル好きがいた。いままでいろんな日本の有名アーティストが全米進出を図ったけど、討ち死にの歴史じゃないですか。ラウドネスはバンドの命運を懸けて、アメリカ仕様のアルバムを作って殴りこんだんです。
――狙って攻めたんですね。
高崎 その頃って日本に限らず、いろんなバンドがアメリカ進出していた。マイケル・シェンカーやホワイトスネイクもアメリカ仕様にしてミックスを変えたり、ラジオ用に短くシングルカットしたり。だからギターソロをカットしたり。
――命を削って!
高崎 そういう中、成功するバンド、失敗するバントがあって。ラウドネスはその順位までは行ったんだけど、そこまでしか行けなかったとも言えるんですよ。けど、BABYMETALは合わせに行ったわけではないのにポーンと売れてしまった(笑)。
――だからショックを受けてるメタル好きがいると。
高崎 一方でアリス・クーパーとかメタルの大御所がデレデレしながらBABYMETALと写真を撮るわけですよ。日本の10代の娘があんな格好していたらそりゃあ目尻は下がりますよ(笑)。
――大御所が認めてしまったんですね(笑)。
高崎 かといって、二匹目のドジョウはいないですよ。BABYMETALがここまでの存在になった以上は、もう他のアイドルがメタルには寄りづらいし、それにBABYMETALのメタルへの寄り方は不快感がないんです。たとえばコラボ的に「今回はコレ、次はアレ」って擦り寄っていくんじゃなくて、BABYMETALは最初から「ヘビーメタルしかやりません!」って打ち出してますから。メタルファンって忠誠を誓うことにこだわりますからね。
――あ、そこはプロレスファンにも通じる話ですね。
高崎 そうそう(笑)。俺にも忠誠を誓ってるバンドがいくつかあるし、「メタルしかやりません!」というBABYMETALはメタルファンにとっては信用できると思うんですよね。
――でも、BABYMETALのことを否定するメタル原理主義者もいるんですよね?
高崎 某格闘技マスコミのYはメタル好きなんですけど、「BABYMETAL? 意地があるので聞きませんよ……」と。
――意地!(笑)。
高崎 ある関係者がBABYMETALのビデオクリップのアドレスを送ったら「聞きません!」と断固拒否してましたから。ちなみに俺はYと初めて話したとき、「メタル好きなんですよね」と聞かれて「最近好きなのはシステム・オブ・ア・ダウンとラムシュタインかな」と言ったら「……それ、メタルじゃないですよ」と失笑されましたね。
――あ、高崎さんも「異教徒」扱い。
高崎 いますよ、そういう熱い人間は。
――そういう方はBABYMETALがこうして売れちゃったことに腸が煮えくり返ってるんですかね?
高崎 「俺には関係ねえよ!」っていう感じで、違う世界だと思ってるんじゃないですかね。
――プロレスファンも一括りにされると怒る人間がいるじゃないですか。「は? プロレスファンだけど、いまの新日本は認めねえよ!」って。
高崎 メタルとラウドロックの確執も相変わらずありますからね。
――U系ファンの仲が悪いようなもんですね(笑)。
高崎 「LOUD PARK」ってメタルのフェスが毎年日本でやってるんですけど、ラウド系がトリを飾ることも多いんですよ。でもリンプ・ビズキットとかストーン・テンプル・パイロッツがトリだったときは、ピュアメタル系のファンは途中でどんどん帰ってましたからね。
――うわあ……。
高崎 それは演奏に引きつけられなかったバンドの責任もあるんだけど。「SUMMER SONIC」にメタルが出ると裏切られた感があったり(笑)、まあ俺を含めてメタル好きは厄介で面倒ですよ。
――プロレス界も「忠誠心」は重要ですよね。
高崎 鈴木軍にペットボトルに投げてるNOAHファンがいるじゃないですか。昔ながらの団体への忠誠心を持ってるファンが鈴木軍によって浮き彫りにされたわけですよね。
――「NOAHだけはガチ」はまだ生きている。
髙崎 新日本プロレスは確実に忠誠心の強いファンを生み出す団体なんですけど、その忠誠心の中身が変わってきてますよね。昔はストロングスタイル、猪木イズムが忠誠心を生み出していたけど、いまのファンにとっては何が忠誠心を引き起こしてるんですかね?
――ゼロゼロ年代前半以降は、棚橋弘至と中邑真輔を軸にしての暗黒時代からの脱出、メジャーシーン復帰へのアプローチがプロレスファンの高揚感を生み出してるところはありますね。
高崎 いまは「業界の盟主だから新日本」というファンはいますよね。NOAHも鈴木軍が乗り込んできて抗争したことで盛り上がりましたけど、忠誠を誓うファンからすればそういう問題じゃないんですよね。「鈴木軍なんてものを求めていないんだよ!」という。
――自分が信じられるプロレスの価値観が否定されてしまうときが一番燃えるわけですよね。たとえばPRIDEの田村潔司vs吉田秀彦も競技のランキング戦ではなく、お互いの価値観を巡る争いでした。プロレスから生まれたUというスタイルが、柔道という王道と対峙するという。
高崎 田村潔司はファンが忠誠心を燃やせるシチュエーションを選んでますよね。ヴァンダレイ・シウバとやったときもUを背負ってバーリトゥードを否定してみせるわけじゃないですか。
――そう考えると田村潔司が桜庭和志となかなか戦わなかったのはよくわかりますね。そこは忠誠を誓うファンが被るわけですもんね。
高崎 信者を奪い合うわけですから。田村はそこを皮膚感覚で理解していてうまいんですよ。「巌流島」への出方にしても忠誠心をくすぐりますし。
――メタル好きにもBABYMETALに忠誠心を誓う人が多いんですね。
高崎 そういうことですよね。そこは繰り返しますけど、メタル好きのツボを突いてますから。
――高崎さんが忠誠を誓うくらいですもんねぇ。
高崎 ……………は?(怒) ちょっと待って。俺はBABYMETALに忠誠なんか誓ってないよ!(ドン)。
――……えっ?
高崎 そもそも俺はね、BABYMETALをメタルだとは思っちゃいないですよっ!(ドンドン)。
――ええええええええええええええ!?
高崎 たしかにBABYMETALは素晴らしい、いいんじゃないとは言いましたけど、忠誠を誓ったとは言ってない。
――そ、そういえば……(笑)。
高崎 学生の頃だったら、BABYMETALが好きなファンとつかみ合いのケンカになっていたと思う。
――げ、げ、原理主義者だ!(笑)。
高崎 原理主義者じゃなくて保守派と呼んでほしい(笑)。「メタルじゃない」は言い過ぎかなあ。「明らかにメタルじゃない曲もある」ぐらいにしときます(笑)。
――安心しました。
高崎 BABYMETALがいいのはわかるし、いいと思う曲もありますけど、彼女たちが入る枠は俺の中にはないんですよ。
――ボクが言うのもなんですが、「高崎メタル枠」に入れてくださいよ。せめてケンカはやめてくださいよ。
高崎 いや、なんかねえ、個人的に思い出してるのが、UWFがプロレス界に現れたときに「これがプロレスの未来だ!!」とか叫ばれて。いやいやいやいやいやいや!っていう。UWFがプロレスを利用してたとは言わないけど、UWFは既存のプロレスを否定するところから入ったでしょ。
――極端なことを言うと「UWFこそ本物の戦いだ!」という布教でしたね。
高崎 BABYMETALはそういう主張はしていないんだけど、そういう角度からBABYMETALを褒める人は見かけるんですよ。だから、若い頃だったらそういう奴とケンカになったと思う。
――そこは高崎さんなりのメタルへの忠誠心ですね。
高崎 そうそう。昔、プロレスを好きでもなかった先輩がUWFのドーム大会に誘ってきて、そのときの言葉が「本気プロレスを見に行こうぜ!」だったんですよ! 「なんだなんだ新日本や全日本が本気じゃねえっつーのか!」と頭にきて、もちろんその誘いには乗らなかった。それも俺なりのプロレスへの忠誠心だよね。
――UWFは踏み絵的なところはありましたねぇ。
高崎 俺はオーソドックスなプロレスが好きだったんで。BABYMETALも嫌ってるわけじゃないんですよ。BABYMETALという存在がメタルの間口を広げてくれて、実際BABYMETALを通じてメタルを聴き始めた人もいるのはわかります。UWFを通じてプロレスを見始めた人もいる。でも、何か釈然としないものがある……というのはたしかなんですね。
――鈴木軍のおかげでNOAHの会場にお客が増えても納得しがたいNOAHファンみたいなもんですね。
髙崎 そこは理屈じゃないでしょ。だからって俺はBABYMETALにペットボトルは投げないんだけど(笑)。もう大人ですから「俺の中には彼女たちの枠はない」ことで着地してるんですよ。
――その葛藤は大人として自分の心の中にしまいこんでるという。
高崎 そうですね。大人としてしまいこんでるんですけど……。
――……けど?(笑)。
高崎 たとえばねぇ、BABYMETALによる「メタル復権」とか書かれるわけですよ。おうおう、いつメタルが失権したんだ! ってついカッとしちゃうんだよね!!(ドンドンドンドンドン!)。
――げ、げ、げ、げ、原理主義者だぁ!(笑)。
高崎 保守派だっちゅうの!<おしまい>
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「佐山サトル、前田日明、高田延彦、船木誠勝、石井館長たちがプロ格という魔物を作ったんですよ」
小林聡
野良犬の哲学「選手もプロモーターも群れてちゃ面白くないんですよ」
滑川康仁
地獄のリングス前田道場卒業生
佐野哲也
リアル神代ユウ「格闘技を続けるために警察学校をやめたんですよ」
中井りん
アジア人初のUFC女子ファイター!「日米友好親善と世界平和のために参戦します!!」
ノブ・ハヤシ
K-1逆輸入ファイター 白血病からの復帰
永島勝司
アントニオ猪木と北朝鮮
森谷吉博
「MMA?絶対に無理!!」未来へ飛んだRENA――大晦日出撃その舞台裏!
武田幸三
キックに命を懸けた男
猪木快守
猪木一族の事業欲とは何か?
大家健
ガンバレ☆プロレス代表の麻雀放浪記
中村和裕
PRIDE崩壊後に見えたもの――
安西伸一×小佐野景浩
天龍源一郎が生きた時代~『週プロ』と『ゴング』の天龍番対談~
矢野啓太
ピエロの狂気「胸いっぱいのプロフェッショナルレスリング論」
高岩竜一×田山レフェリー
理不尽とは何か? 90年代新日本プロレス居酒屋トーク
HARASHIMA
「学生プロレス時代、真壁さんとスクワットを延々やってましたね」
岡倫之
ブシロードクラブの怪物「プロレスラーが世界最強であることを証明します!」
内藤のび太
修斗世界王者は仮面を脱いでも“のび太”だった!!
桜井隆多
カール・ゴッチの教えは茨城に生きていた
「多重ロマンチック」漁師JJ
アナタはなぜブログを更新するのか
渋谷莉孔
「プロ相手でも勝てるようになったので“地下格禁止令”が出たんですよ」
中村大介
2014年のUWF――「それでもボクはUスタイルで戦い続けます」
“中条ピロシキ”橋本吉史
学生プロレスとラジオ
今成夢人
「ガクセイプロレスラー・ライジング 卒業後のリアルなリング」
大山峻護
愛と苦しみのPRIDE物語「ハイアン戦の恐怖はしばらく消えませんでした」
木村ミノル
K-1毒舌王「いまの格闘技界はお客さんの目線を気にしすぎなんですよ」
菊野克紀
「最近は武器の型もやってます」沖縄拳法に震えろ!
鈴木信達
極真、米軍、行政書士!! 破天荒人生
浜崎朱加
INVICTAアトム級世界王者インタビュー
マキシモ・ブランコ
「日本は最高の国。街を一人で歩いても殺されない」
矢野卓見
武道の幻想と現実「合気の達人は存在しますよ」
三富政行(元・潮吹豪)
「私が博報堂を辞めてプロレスに浸かる理由」
しなしさとこ
総合格闘技と女性の戦い
福田洋
ジョーカーの狂気とアメリカンプロレス
管理人に直撃!
インディ興行の聖地”新木場1stRINGとは何か?
松本晃市郎
格ゲーを語る「リュウ戦は日本で2番目に強いんです!」
松田干城
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「俺は悪い奴だった……」元カリスマブロガーの懺悔録
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ベビメタのファンですが面白いです。
メタルファンではないけど入場曲の話は面白いなあ
保守派って破滅する時にはじめて自分たちの置かれた状況に気が付くんですよね
良い悪いは別として「保守派や原理主義者に付き合ってたらジャンルが死ぬ」というのが海外メタルメディアやBABYMETALのプロデューサーの認識みたいだけどね
(現実にメタル系雑誌の出版部数は厳しいみたいだし、確実に「失権しつつある」という現状がある)
そういうのってプロレスも同じなんだろうけど、「変化の許容」「本質の維持」の価値観のバランスは難しいのだろうね