信濃毎日「小説外務省―尖閣問題の正体」『元外交官が描く政・官の危うさ
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駐イラン大使まで務めたエリート外交官が実名で書いた小説。尖閣問題で適切な対応がとれない政・官のダメさ加減を生々しく描き出す。
小説とは言っても、外務省での著者の経験がふんだんに盛り込まれていて面白い。
米国の意向を代弁するグループが主流を占める外務省。それに批判的な意見を述べた主人公は「10年はやい」と傍流に押しやられる。
国の将来を見据えた外交はない。組織内の昇進だけが重大事。そんなお役所風景が浮かびあがる。
そこに尖閣問題が起きた。
尖閣は日本が「固有の領土」と思っているように、中国も固有の領土と考えている。
だから田中角栄の時代、周恩来首相と「棚上げ」で合意した。双方が声高に領有を主張したら衝突せざるをえず、国
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信濃毎日「著者の中国評価は南シナ海の現状を見ると甘すぎるような気がする」
確かな確信のうえで評価するのでなく、イメージで述べているようだ。「棚上げ」で問題があるのであれば、どうしたらよいかと踏み込まなければ、単なる評論家に過ぎない。領土問題を解決するためには、武力で解決するか、話し合いで解決するしかない。人が済まない島というか岩礁であるが、紛争の主因は地下資源であり、海洋資源であり、領海問題であり、台湾も絡んでいる複雑な構図になっており、簡単に解決する問題ではない。日本が領土と言えば、中国と台湾両国と対立紛争の関係にあることになってしまう。永遠に解決できないだけでなく、両国との友好関係にひびが入ることになる。「棚上げ」より良い解決方法があれば提案すべきであり、イメージで批判するのは民主的解決方法ではないといえる。
この書評は概ね良好ですね。ただ、「著者の中国評価は南シナ海(中国では南中国海)の現状を見ると甘すぎる。。。」というくだりでは信濃毎日の勉強不足だと感じます。西側の報道ばかり見ていると中国が鬼みたいに見えて来るのでしょうか。ジャーナリストなら中国の主張、ベトナムの主張、フィリッピンの主張を正しい裁判官の目をもってよく読みこむ必要があると思います。
日本外務省のアメリカ・スクールと呼ばれるエリート主流派はクリントン、ブッシュ、オバマを信奉しているのでしょうけど、これら3人の大統領はコソボ、リビア、イラク、シリア、イランに関して嘘を西側メデイアに書かせ、それぞれの国の首長の人格破壊を実行してきました。こういった嘘をプロパガンダすることがリアリストと呼ばれるパワーポリテイックス外交だとすれば、ちゃんちゃら可笑しいと私は思います。日本の「固有の領土」論もリアリストの嘘手法なんでしょうね。これは中国には通用しません。今、オバマは嘘をメデイアに書かせプーチンの人格破壊に必死です。これはやり過ぎだということで、米国の良識的ジャーナリストたちは一斉にオバマに反旗を翻しています。
>>2
さすが「信毎」、長野県民として誇りに思います。
地方紙の方が一般的に考察が深く、物事を客観的に見ていることが多い。
>著者の中国評価は南シナ海(中国では南中国海)の現状を見ると
>甘すぎる」というくだりでは信濃毎日の勉強不足だと感じます。
勉強不足というか、メディアが偏った情報ばかり流すせいで、
客観的な考察ができないのだと思います。
南シナ海問題については、あまりに一方的な解釈だけが
されていますね・・。
以前にも此処へ書いたと思いますが、南シナ海問題が複雑化した
背景には、「冷戦時代の負の遺産」と「米中の覇権争い」そして、
「石油メジャー同士の資源獲得競争」があります。
まず、西沙諸島の領有権問題については、これはベトナムよりも
中国側の主張に正当性があると思われます。
なぜなら、北ベトナム(つまり、現在のベトナム)は、1958年の
中国の領海声明を、当時の首相(ファム・バン・ドン首相)が明確に
認めているからです。
この領海声明には、西沙諸島と南沙諸島の海域が含まれています。
<ファム・バン・ドン首相が周恩来総理に宛てた照会文章>
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2014-06/09/content_32611081_6.htm
なぜ、当時の北ベトナムは、中国の領海声明を認めたのか。
それには、時代背景を考察する必要があります。
当時は、冷戦の真っ只中であり、以下のように、西側陣営と東側陣営
の対立構造がありました。
西側陣営: 米国、南ベトナム、フィリピン
東側陣営: 中国、北ベトナム
当時の北ベトナムが、中国の領海声明を認めた理由は、
①ベトナム戦争における支援を中国に受けていること
②中国の領海権が大きくなるほど、東側陣営である北ベトナムが
南ベトナムに対して有利になること
かと思われます。
ここで、重要なことは、
①北ベトナムは、西沙諸島と南沙諸島を含む海域の、中国の領海声明
を当時の首相(ファム・バン・ドン首相)が明確に認めていること
②中国と西沙紛争を争ってきた「南ベトナム」は、ベトナム戦争により、
国そのものが「消滅」していること
そして、中国の領海声明を認めたはずの「北ベトナム」つまり、
現在のベトナムは、1974年になってその主張を覆し、
「西沙諸島」はベトナムの領域であると主張しはじめた。
これに対して、ベトナム側はどのような反論をしているのかというと、
「1958年9月4日に発表された中国の声明は領海に関するものであって、
領土に関するものではない」というものです。
ベトナム側の「領海権は認めても、島の領有権は認めていない」
とする言い訳は、ちょっと無理があるのではないでしょうか。
少なくとも、海底資源に関して口を出す資格はないはずです。
上記の理由から、西沙諸島問題では、中国は強気に出ている。
また、今回の採掘紛争における採掘作業位置は、ベトナムの大陸沿岸
より西沙諸島側に位置します。
<中国企業の採掘作業位置図>
http://j.people.com.cn/n/2014/0609/c94474-8738572.html
今回の採掘リグへの攻撃は、明らかにベトナム側が仕掛けている
といえるのではないでしょうか。
次に、南沙諸島の領有権問題についてですが。
「中国-ベトナム」の間には、領海声明をファム・バン・ドン首相が
領海権を認めてしまっているので、議論余地はありません。
当時ベトナム政府が発行した地図上にも明確に中国領と書かれている。
<ベトナム内閣府測量・地図作成局が1972年に作成した世界地図集>
http://j.people.com.cn/n/2014/0609/c94474-8738572-4.html
しかし、中国の領海声明を、「フィリピン」と「マレーシア」は認めた
わけではありません。
だとすると、南沙諸島における中国の領有権主張の正当性は、
「9段線」の根拠にどれだけの正当性があるかにありますが、
余りにも弱いうえ、地理的にも説得力がありません。
日本は1938年に南沙諸島など新南群島の領有を閣議決定し、
台湾の一部として統治しました。
戦後、南沙諸島は、台湾(つまり中国)に返還される形となった。
台湾は、海軍が同水域や島嶼で研究活動を開始、1947年に
「11点破線」を領域主権と権益の境界線として世界に発表。
それを継承したものが「9段線」の根拠です。
南シナ海の境界は極めて曖昧で、各国がかなりいい加減な主張と
行動をしており(特にベトナム)、かならずしも中国だけが悪い、
とはいえないわけです。
<南沙諸島における各国の領有状況>
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/1f/%E5%8D%97%E6%B2%99%E7%BE%A4%E5%B2%9B2012%E5%B9%B4%E5%BD%A2%E5%8A%BF%E5%9B%BE.gif
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E6%B2%99%E8%AB%B8%E5%B3%B6#mediaviewer/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Spratly_with_flags.jpg
南シナ海問題の背景には、島の領有権の問題以外に、「米中の覇権争い」
と「石油メジャー同士の資源獲得競争」が絡んでいると思っていますが、
時間がないので、それはまた休日にでも書こうと思います。
>>1
>「棚上げ」で問題があるのであれば、どうしたらよいかと
>踏み込まなければ、単なる評論家に過ぎない。
仰るとおりで、私が8月3日の記事で、「旧棚上げ」を再現する
ことの問題点を指摘したのは、まさにそれなんです。
棚上げによる解決を行う場合、「歴史的記録」を保持させた上、
さらに「法的効力(国際条約化)」を持たせることが必要です。
もっといえば、私がここで訴えてる、中国の「親日家化戦略」と
セットで政策とすることで、より完全な効果を発揮します。
孫崎先生、どうか私の案を取り上げてもらえないでしょうか。
>>3
詳しいご説明ありがとうございます。貴兄の以前のコメントで南沙、西沙の説明いただき強い関心をもって種々検索していました。その副産物として、偶然に「政治家が政治を作るのでなくメデイアが作る」という風な視座を獲得しました。そして更に「日本の国際関係分野は独特のエンテイテイ構成になっていて、そのステイクホルダーは米国一国だ」という風な立場に立って日本の国際関係を眺めた方が理解しやすいと考えるようになりました。