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ロシア政治経済ジャーナルの北野幸伯氏の新著『米中覇権戦争の行方』の感想 正確な現状認識を促す力作
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ロシア政治経済ジャーナルの北野幸伯氏の新著『米中覇権戦争の行方』の感想 正確な現状認識を促す力作

2019-11-15 07:05

    読者数が58000人を超える超人気メルマガ「ロシア政治経済ジャーナル」の北野幸伯氏の新著

    『米中覇権戦争の行方』 1760円

    を読んだ。

     

     

     

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    米、中、露(ソ連)、日本の非常に重要な政治経済の情報が過去から現在まで証拠付きで満載されている。

    この本を一冊読めば、現代の複雑怪奇な国際情勢を誰でも簡単に理解できてしまう。

    欧米の情報ネットワークから独立したロシアに長期間滞在し、多角的に国際情勢を分析してきた北野氏ならではの日本人離れした広い視点で描かれている。

     

    今回の北野氏の本の主張を要約すると以下のようになる。

     

    米国と中国の覇権戦争が2017年から始まり、現在はその真っただ中にある。

    この覇権争いは今後も一層激しくなっていく。

    日本はこの二大覇権国の争いの中で、勝つ側につかなければならない。

    勝つのは米国側であると考えられるから米国との同盟を深化させるべき。

    さらにロシア、インド、EU、韓国、台湾、オーストラリア、インドネシアなどの諸国と連携し、中国の覇権に対抗しよう。

     

    上記のように北野氏が考えるようになった経緯が、最新の国際情勢、歴史、各国の特色などの膨大な文献を総合的に網羅したうえで語られている。

     

    以下のような重要な情報が書かれている。

     

    ・戦前の日本は首相が「欧州で何が起こっているか全然分からない」と述べて第二次大戦の4日前に辞職した。現在の日本の政治家も高確率で世界で何が起こっているのか理解していない。

     

    ・ここまで中国が巨大化したのはソ連に対抗するために締結した70年代以降の米中同盟の締結から続いた30年にもわたる米国の過剰なまでの中国支援があったため。それは経済、科学技術、資源、企業、学問、さらには軍事部門にまで及んでいる

     

    ・米国はリーマンショックまで中国を甘く見ていた。中国が態度を一変させて覇権国を狙う野望を顕わにしたのはリーマンショックで米国の衰退を自覚して以降。

     

    ・米国と中国の覇権戦争が開始したのは2015年3月のAIIB(アジアインフラ投資銀行)事件。これ以降、米国は中国を米国の覇権を脅かす真の脅威と認識するようになった

     

    ・トランプのアメリカンファーストは最悪のスローガン。なぜなら自分の利益が第一と公言するエゴイストとは誰もつきあいたくないから

     

    ・米中覇権戦争の勝利者が米国になると思う理由は、次の3つの理由。中国経済の悪化、脆弱な中国の政治体制、戦闘なしの戦争(情報戦など)で中国は勝てない

     

    など。

     

    この本の重要な情報をあげればきりがない。

    北野氏は真のリアリストである。

    日米地位協定などの存在を無視する単純な親米保守とは違い、日本が米国の属国である事、また米国の危険性を分かったうえで、米国との同盟の深化を提言している。

    例えば以下のような文章

     

    (上記本より転載)

    P37

    これは日本が「米英情報ピラミッド」に組み込まれていて、世界の情報が入らないからそう思うのです。

     

    P225

    アメリカの敵になって、ただですむと思いますか?

    アメリカは、現在中国にしているように、全日本製品に高関税をかけて、日本経済を破壊することができます。

    さらに関係が悪化すれば、中東から日本に石油が入ってこないようにすることもできるでしょう。

    そう、アメリカは、極めて短期間で日本を壊滅させることができる力をもっている。

     

     

    そして米国の属国は嫌だが、中国の属国になるのは最悪だ、と述べ米国の側に積極的につくことを提言している。

     

    確かに北野氏の述べるとおり、日本がチベットやウイグルのように中国に完全統治されるなどまっぴらごめんである。それに賛同する日本人は存在しないだろう。

    中国の独裁制に管理されるよりは、きわめて不完全ではあっても現在の日本の民主主義のほうが良いに決まっている。

     

    読んでいて北野氏の様々な意見に納得する一方で、以下のような疑問も持った。

     

    ・北野氏は今後の中国の経済の衰退を日本のバブル崩壊後の経済停滞を事例にして、国家サイクル論(移行期→成長期→成熟期→衰退期)から必然的な流れとして語っている。既に成熟期に入った中国は今後衰退期に入り、日本経済と同じく停滞するのが必然だという。しかし日本のバブル崩壊後の失われた30年は世界的に見ても例外的な事例である。この30年間の日本の経済成長率は、同じように成熟した先進資本主義である欧米諸国と比べても圧倒的に低く世界最低だった。経済成長率が世界最低という例外的事例であるバブル崩壊後の日本を普遍的な事例として引き合いにだし、今後の中国経済は大失速すると述べるのは適当ではない。確かに国家サイクル論は長期に渡る経済成長の特徴を表す理論としては有効だ。しかし今後の中国経済の成長率が日本のバブル崩壊後のように世界最低水準に落ち込む可能性は低いと思う。80年代までジャパン・アズ・ナンバーワンと言われていた日本経済が世界最低の経済成長率になってしまった原因については、日本の特殊な状況を考慮しなければならない。それは、日本が米国の植民地的属国であり、そのもとで経済成長の必要条件である実体経済向け信用創造量の伸びを低く管理されてきたためだ(詳しくは拙著の「世界を騙し続けた詐欺経済学原論」「洗脳政治学原論」をお読みください)。

    全国に米軍基地が張り巡らされている日本と違い、中国は他国の軍事基地が国内に一つもない独立国家であり、実体経済向け信用創造量は政治の管理下にある中央銀行が完全に管理している。

    そのために日本のように他国が意図的に政治経済の政策に関与し経済成長率を低くコントロールすることは不可能である。また中国人はまだまだ一人あたりのGDPが低く、豊かになる欲求も消費の伸びしろも強い。一人あたりのGDPが世界の上位に入るくらいまでは経済成長するインセンティブは強烈に働き続けるだろう。中国の衰退を経済の国家サイクル論から必然的なものだと語ると、今後の中国経済の潜在力を過小評価することになる。

     

     

    ・北野氏は日本が米国から自立を指向し日米同盟が衰弱すると、中国が尖閣諸島及び沖縄を必ず侵略すると述べている。しかし、中国がそのような軍事行動をとれば、日本は再度米国との同盟の必要性を痛感し、日米同盟の再考をするようになる。中国にとって一番嫌なのは、北野氏が述べているように日米が結束して各国に働きかけ中国包囲網を作り上げることだ。せっかく日米が分離してくれたのに、日本を侵略することで再度、日米同盟を構築させる事になることなど中国が行うだろうか?また尖閣はともかく沖縄の侵略となれば、日本は総力をあげて中国と戦争をするようになり中国にも少なからぬ被害が生じる。またそのような行為をする中国のむき出しの覇権主義に対する世界からの批判は避けられない。欧米を含む世界の国々から経済制裁が行われるだろう。それだけの戦争を行うメリットが沖縄の侵略にあるだろうか?それよりも衰退していく日本は放っておけばよく、広大な領土と人口を持つ自国の発展に専念すれば必然的に中国は世界一の超大国になれる。実際、歴代の中国王朝はモンゴル帝国以外は日本のような島国を侵略しようとはせず、広大で豊かな自国の開発に専念していた。こういう条件から日米軍事同盟がなくなれば直ちに沖縄と尖閣が中国に侵略されるというのはかなり物事を単純化した見方のように思える。

     

     

    ・米国との同盟を深化させるというが北野氏も認めているように日米関係は対等ではない。日本には首都にある横田基地も含めて日本全土に米軍基地が張り巡らされている。日米地位協定と日米合同委員会によって戦後の占領状態が継続しており、日本に事実上の主権はない。米国に歯向かうと大変なことになる、ということは北野氏も指摘している通りだ。元NSAの技術者で横田基地にも駐在していたスノーデンは日本が米国との同盟国をやめたときは日本の全電源がストップするように仕掛けをしてある、と述べている(そんな同盟国があるだろうか?同盟国ではなく占領国だ)。この米軍の管理によって日本の政治経済の主権が著しく侵害されており、その結果、前述したようにこの30年間の日本の経済成長率は世界最低である。また米国は世界一の戦争屋であり、戦争、クーデター、テロ、不安定化工作などありとあらゆる謀略を世界各国で行っている。自国民に対してでさえ911テロのような自作自演を行ってきた。このような国に日本は生殺与奪権を握られているのだ。日本の行く末は凶暴な米国支配層の思惑一つという状態が継続するのは極めて危険である。まさに行くも地獄、退くも地獄といった状況だが、私は独立を目指すしかないと思う。大英帝国から非暴力運動を行ったガンジーがインドを独立させたように、日本も大米帝国から独立しなければならない。そうするにはガンジーのように宗主国の良識派とつながりをもち、独立する権利があることを訴えていかなければならない。植民地や属国が独立するには粘り強い運動と交渉が必要になる。日米同盟の深化には、日本が米国と対等になるための枠組みが必要である。そうするには横田基地の撤去、日米地位協定の改定、日米合同委員会の議事録の完全公開、在日米軍に対する日本の主権の確立などを行わなければならない。しかし現在の安倍自民公明政権には対米従属のみでそのような独立への試みはほとんど見られない。

     

     

    ・北野氏は孤立したから日本は第二次大戦に負けた、だから絶対に孤立しないようにしなければならない、と述べている。しかし日本は孤立を恐れたからナチスドイツとイタリアファシストと同盟をしたのではないか。日本はドイツやイタリアと同盟をしないで米国を攻撃せず、東南アジアのイギリスとオランダ領を攻撃すればよかったと述べている。この場合は孤立していても良い事例であるもちろん外交面において孤立しないことに越したことはない。しかし大英帝国の「栄光ある弧立」という言葉があるように孤立しているからこそ適度な距離をもって各国と付き合うことができるというメリットもある。外交についてはどちらかの勢力に偏らず状況に合わせた是々非々の対処でよいのではないだろうか。

     

     

    ・米中覇権戦争の勝利の条件は中国が民主化した時だ、と北野氏は述べている。しかし、民主化したからといって覇権争いは無くなるものだろうか?例えばロシアはソ連崩壊後、一応は民主化したが欧米との争いが絶えない。中国が民主化しても米国との争いが無くなるという事は断言できないだろう。なぜなら米国はユダヤ系財閥とフリーメイソン最上層部が管理してきた国家であり、その理念と方向性と衝突するかどうかが民主主義か独裁かよりも重要なのだ。独裁でも米国の覇権を認める場合はサウジアラビアや中東産油国のように対立はない。一方、民主主義であってもロシアのように米国の覇権を認めず対抗しようとする国には様々な謀略をしかけていく。このような性質を見れば、民主化=米中対立の終わりとはいえないのでは?

     

     

    以上、長々と疑問点とそれに対する私の考えを述べたが、今回ご紹介した北野氏の本は、現在の米中露を軸とした世界情勢の流れを根本から理解できる必読書である。

     

    適切な情報をえることで様々な思考をすることが可能になる。

     

    正確な世界の現状認識をお持ちになりたい方は是非、お読みください!

     

     

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    (記事終了)

     

     

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