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<リンク>黒化する世界 ――民主主義は生き残れるのか?―― | 北野幸伯 |1,870円 Amazon
6万2000人の読者数を持つ超人気メルマガ「ロシア政治経済ジャーナル」の北野幸伯氏の新刊本をご本人から頂いた。
この本のテーマは、日米欧の西側を中心とした自由民主制を「白側」とし、
ロシア・中国などの権威主義・独裁主義の体制を「黒側」と色分けして、
この両勢力の戦いの行方を論じている。
国際情勢に対して日本人離れした優れた分析力を持つ北野氏は、
この世界を二分している両勢力の戦いを非常に広い視野(時間的、世界的観点)から解説している。
本のタイトルにあるように、ここ数年間、世界は中国やロシアの影響から
「黒化」が一部の地域(香港、ミャンマー、アフガニスタン、カンボジアなど)で進んできた。
白側と黒側の対立に関して、北野氏はここ10年ほどは白側(西側)が
苦戦を強いられてきた。
しかし最終的には白側が勝つだろうと予測している。
それは、黒側の中心勢力であるロシアがウクライナ戦争で大損害をおうため。
また、黒側のラスボスの中国が長期的に見れば衰退していくだろう、
という見方からである。
日本は倫理的にも実利的にも白側につき、中国包囲網に入るべき、ということを述べている。
この本が特筆するべきは、複雑怪奇で難解な現代の国際情勢を、
白VS黒に色分けして、誰にでもわかりやすく理解できるように解説してくれているところだ。
その大まかな流れを述べると
・ソ連崩壊後の前黒化時代(世界の民主化の進展)
→2008年のリーマンショック後の中国の台頭による世界の黒化の連鎖
→白(欧米側)の逆襲
→黒VS白の戦争(現在はここ)
→黒化勢力のラスボス中国の未来(敗北して白化するであろう)
この黒と白の色分けで、ソ連崩壊から現代までの30年間の国際情勢の流れが、
明確な根拠に基づいて理解することができる。
特にプーチン・ロシアが起こしたウクライナ侵攻に対する分析と予測(2月の戦争前からプーチン・ロシアの苦戦と戦略的敗北を指摘)はさすがの一言だ。
ソ連崩壊前からモスクワに28年間暮らしていた北野氏のロシア分析の賜物である。
ソ連崩壊からの30年間の国際情勢を短時間で理解したい方には、
これ以上ないほど、よくまとめられた本である。
是非、一読する事をお勧めする。
一つ気になった点を述べると、私は、ロシアが衰退していく可能性は高いが、
中国経済の将来像に関しては北野氏とは違う考えを持っている。
北野氏は、今後の中国が衰退していく要員を次の3つから予測している。
・1つは国家ライフサイクル
・2つめ深刻な少子化
・3つめは共同富裕政策(習近平が崇拝する毛沢東の掲げた富裕な平等社会を目指すスローガン)
上記の3つが重なり合い日本のバブル崩壊とその後の長期不況を
今後の中国も同じように経験するだろう、と述べている。
しかし、日本のバブル崩壊と、その後の現代まで続く長期不況は、
世界でも稀な特殊事例である。
91年のバブル崩壊以後、日本は全く経済成長しなくなり、
その成長率は世界最低レベルで推移してきた。
この日本の特殊事例を、そのまま中国に当てはめることは出来ないだろう。
日本の世界最低になった経済成長の失敗は、
「実体経済向けの信用創造量の拡大」に失敗し続けたからである。
つまり政策面での失敗であり、経済的な構造の問題ではない。
中国が特殊な事例である日本の後追いをするよりも、
韓国や台湾など(両国とも一人当たりのGDPは日本を上回った)の
一般的な成長事例になる可能性はないとはいえないのである。
また人口規模が大きい国でも、資源と経済政策が機能していれば、
米国(3億人)の事例にみられるように、高い一人当たりGDPは実現できる。
その観点から、今後の中国経済の成長力を過小評価するのは危険だと考える。
私も北野氏と同じように民主主義が拡大することを望んでいる。
そしてロシアと中国が民主化されることを期待している。
現在のロシアのように、市民が戦争反対を述べただけで逮捕される社会が良いはずがない。
一方で、我々が住む民主主義にも改善されなければならない、とてつもない深い闇がある。
この深い闇を改善しながら、普遍的な魅力をもつ民主主義の拡大を目指すことが、
我々西側(白側)に住む市民の目指すべき方向性だろう。
日米欧の白側の民主主義の光と闇の全貌については、以下の新刊を読んでいただきたい。
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(記事終了)
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