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福井健策氏:社会を破壊するTPPの著作権条項に注意せよ
2015-02-25 20:00550ptマル激!メールマガジン 2015年2月25日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第724回(2015年2月21日)社会を破壊するTPPの著作権条項に注意せよゲスト:福井健策氏(弁護士)────────────────────────────────────── TPP交渉が大筋で合意に達しつつあるようだ。TPPと言えば日本では農産物の自由化に大きな関心が集まっているが、マル激では著作権分野にとりわけ強い関心を持ってきた。著作権分野は貿易額も自動車や農産物を凌ぐほど大きい上に、その影響は日本の社会のあり方を根底から変えてしまうほどのインパクトを持つと考えられるからだ。 TPPは12ヶ国の政府による秘密交渉なので、政府からは一切正式な発表は行われていない。しかし、ウイキリークスが公表した漏洩情報や政府から非公式に漏れ伝わってくる情報、一部報道などを総合すると、著作権分野ではかねてからアメリカが求めていた著作権期間の70年への延長と、著作権法の非親告罪化で、ほぼ大筋合意に達したとみられている。また、著作権違反に対する賠償金が大幅に増額されることになる法定・懲罰的賠償制度の導入も、合意に達する可能性が高いことが指摘されている。 著作権に詳しい弁護士の福井健策氏は、現在TPPの著作権分野で議論されている論点はいずれも、ディズニーに代表される強力なキラーコンテンツを持つアメリカの著作権強者の権利をさらに強化することになるという。同時に、一般の市民が自由にアクセスできるコンテンツが制約される恐れが強く、表現の自由や知る権利といった民主主義の根本的な理念が損なわれる危険性があると言う。 特に日本はアメリカと比べて、国内で著作権が緩めに解釈されてきたことで、同人誌やパロディなどの二次創作が花開き、クールジャパンと呼ばれるようなコンテンツを生み出す力の源泉にもなってきた。悪質な複製や海賊版の氾濫などは厳しく取り締まる必要があるが、非親告罪化にこれまでグレーゾーンとして黙認されてきた活動まで、誰がいつ通報するかもわからない状態になれば、二次創作の作者たちが萎縮することは間違いない。 TPPは各国政府によって秘密裏に交渉が行われ、途中経過も公開されない。しかし、国際条約であるが故に、一旦批准されれば、国内法よりもより強い拘束力を持つ。とりあえずトライしてみて、具合が悪ければ元に戻すというような融通が一切利かないのが、TPPの特徴なのだ。著作権の枠を超えて、表現の自由やわれわれの知る権利にも大きく影響を与え、更に社会のあり方を根底から変えてしまう可能性のあるTPPについて、ゲストの福井健策氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・TPP著作権条項の本質的な問題とは・交渉の推移と「非親告罪化」の懸念点・著作物の扱いの変化は「一部オタク」の問題ではない・行き過ぎた著作権保護の“潮目”が変わる可能性+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
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岩田正美氏:貧困なる貧困対策から脱するために
2015-02-18 20:00550ptマル激!メールマガジン 2015年2月18日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第723回(2015年2月14日)貧困なる貧困対策から脱するためにゲスト:岩田正美氏(日本女子大学人間社会学部教授)────────────────────────────────────── 安倍政権が2月12日に提出した2015年度予算案では、一般会計の総額は過去最高の96兆3420億円にのぼり、社会保障費も31兆円台にまで膨らんでいる。しかし、世界で有数の格差大国となっている日本にとって最優先課題であるはずの貧困対策は減額されている。 日本における貧困対策の大半を占める生活保護費は受給者が216万人まで増加しているのに対し、歳出額の方は前年から180億円も減額されている。これは厚生労働省が給付基準を見直して、住居費と冬期の暖房費の支給基準を引き下げたことによるものだが、社会保障費を削減するための象徴として生活保護費をカットしようとの財政当局の思惑が見え隠れし、貧困対策の本来の目的が損なわれているのではないかと、社会保障問題や貧困対策に詳しい日本女子大学教授の岩田正美氏は懸念を表明する。 実際に住宅費や暖房費分が削られた今年度の生活保護の支給基準についても、岩田氏が副座長を務める厚生労働省の社会保障審議会生活保護基準部会での議論の内容が正確に反映されないまま、政府の独断で変更されていると岩田氏は言う。 どうも、安倍政権は財政再建を掲げながら必要性が疑わしい公共事業や防衛費の方は増額する一方で、貧困対策、とりわけ生活保護をスケープゴート化しているように見えてならない。 現行の生活保護費の給付基準が、最低限の生活を保障していると言えるかどうかについても疑問が残るところに、捕捉率は2割にとどまるという世界でも類を見ないほどの貧困者切り捨て政策をとっていながら、政府はさらなる生活保護の削減に躍起になっている。一番困っている人たちの給付でさえ削られていることを見せられれば、他の社会保障を削ることが正当化しやすくなるからだ。 先進国でもっとも格差が大きな国になりつつある一方で、財政が次第に危機的な状況を迎えつつある日本において、われわれは社会のセーフティネットをどう構築していくべきなのか。日本人として保障されるべき最低限の生活とはどんなものなのか、それを実現するために今、われわれには何が必要なのか。日本の貧困対策の現状と課題について、ゲストの岩田正美氏とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・日本の社会保障給付が先進国で最低水準なのはなぜか・貧困対策が生活保護しかない日本の現状・男女差、地域差のある貧困対策への考え方・社会保障を「守る」のではなく、「作る」ために+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
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孫崎享氏:安倍外交で日本が渡ろうとしている橋とは
2015-02-11 23:30550ptマル激!メールマガジン 2015年2月11日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第722回(2015年2月7日)安倍外交で日本が渡ろうとしている橋とはゲスト:孫崎享氏(元外務省国際情報局長)────────────────────────────────────── 今まさに日本が渡ろうとしている橋は何という橋で、橋の向こうにはどのような世界が広がっているのだろうか。武装グループ「イスラム国」(ISIS)による日本人人質事件が最悪の結果に終わったことが、日本外交の針路に大きな影響を与えることになりそうだ。 安倍政権はもともと、「戦後レジームからの脱却」という大きな政策目標の一環として、国際社会における日本の役割を、これまでの人道的貢献に限定されたものから、より軍事面を含んだものに転換していく意向を明確に打ち出してきた。そして、昨年来、武器輸出三原則の緩和や憲法解釈の変更などを着実に実行に移してきている。しかし、そうした一連の動きは、少なくともこれまでは日本という一国の枠内の域を出ないものだった。ところが今回、安倍首相がISISと戦う国への支援を約束し、その報復としてISISが日本人の人質の命を奪ったことで、日本は期せずして「テロとの戦い」の表舞台に立つことになった。 安倍首相が先の中東歴訪でテロとの戦いを支援する意思を宣言したことは、日本が変わりつつあることを印象づけると同時に、日本があくまでアメリカと一蓮托生で生きていく道を選んだことを強烈に印象づける結果となった。 安倍首相はこれを積極的平和主義と呼んでいる。外務官僚として国際情報局長、イラン大使などを歴任し、長年外交の最前線に立ってきた孫崎享氏は、一見、安倍首相のイニシアチブに見える積極的平和主義などの外交路線も、相当部分は外務省の入れ知恵によるものとの見方を示す。外務官僚が戦後レジームの脱却を掲げる安倍首相が好みそうな外交路線を示し、その方向に誘導する上で都合のよい情報だけを上げていけば、大枠で官僚が政治家をコントロールすることは決して難しくない。 しかし、より大きな問題は、外務省が日本の国益を最優先で考えて外交を行っているとはとても思えないことだと、孫崎氏は言う。外務省内ではアメリカ一辺倒の路線に対して異論を挟むことが難しくなっているというのだ。そしてそれを支えているものは国益はおろか、外務省という一官庁の省益よりもさらに小さい、私益によるものだと孫崎氏は言う。 安倍首相が自信満々で推し進めている積極的平和主義の行き着く先には何が待っているのか。アメリカと一連託生の道が日本にとって本当に一番幸せな道なのか。その結果、われわれ国民が払わされることになる対価は何なのか。ゲストの孫崎享氏とともに議論した。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・首相の責任を問えない、言論空間の異常さ・「積極的平和外交」の欺瞞・アメリカの思惑に貢献することのメリットはない・日本が今渡ろうとしている橋の先には、何があるか+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
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ピーター・バラカン氏:5金スペシャル 映画が描くテロとの戦い
2015-02-04 22:30550ptマル激!メールマガジン 2015年2月4日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第721回(2015年1月31日)5金スペシャル 映画が描くテロとの戦いゲスト:ピーター・バラカン氏(ブロードキャスター)────────────────────────────────────── 5週目の金曜日に特別企画を無料でお届けする恒例の5金スペシャル。今回の5金では「テロとの戦い」をテーマにした映画を取り上げながら、テロの背後にある貧困や歴史の問題やその対応の是非を議論した。 今回取り上げた作品はCIA女性分析官がオサマ・ビン・ラディンを追い詰めていく過程を描いた『ゼロ・ダーク・サーティ』、ジャーナリストの綿井健陽氏がイラク戦争とその後の混乱に翻弄される家族を10年間にわたり追い続けたドキュメンタリー映画『イラク チグリスに浮かぶ平和』、そして『スーパー・サイズ・ミー』で注目されたモーガン・スパーロック監督の『ビン・ラディンを探せ!~スパーロックがテロ最前線に突撃!』の3本。いずれもテロやテロリストをテーマに、その最前線や狭間で生きる人々を描いた作品だ。 9・11の同時テロ以前からテロリストの最大の標的となり、テロとの戦いの最前線に立ち続けるアメリカは、今もテロリストの掃討に血道をあげる。その甲斐あってか、9・11以降は大規模なテロの押さえ込みには成功しているように見える。しかし、その一方で、テロとの戦いは、イラクやアフガニスタンの一般市民や、掃討するアメリカ側にも多くの犠牲を生みながら、テロとの戦いは全く出口が見えてこない。同時に、テロとの戦いの当事国では一般市民の犠牲が増えるごとに、イスラム圏ではアメリカや西側諸国への怨念が強まり、それがまた新たなテロリストを生むという悪循環を繰り返している。その悪循環は、遂にテロ行為を繰り返す擬似武装国家「イスラム国」の登場まで許してしまった。 そして日本も遅ればせながら、イスラム国と戦う有志連合に名を連ね、今回の中東訪問でも安倍首相はISISとの戦う姿勢を明確に打ち出している。 確かに、先進国の平穏な市民生活を守るためにはテロリストに付け入る隙を見せてはならないだろうし、暴力には力で立ち向かうことが必要な時もあるだろう。しかし、現在のアメリカの「テロとの戦い」を続けることで、本当にテロを根絶することは可能なのか。 われわれはこれからも出口の見えない「テロとの戦い」を続けるのか。そして、日本はそこに全面的にコミットしていく覚悟があるのか。それともテロの背景に目を向け、その解決に本気で踏み出すのか。テロとの戦いを描いた映画から見えてくるさまざまな問題を、ゲストのピーター・バラカン氏とともに神保哲生と宮台真司が議論した。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・テロの背景を考えさせる、3本の映画・日本では報じられない真実と、憎しみの連鎖・戦争の残虐な映像を耐えて見るべき理由・日本人はなぜ風刺すらできないのか+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
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