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記事 5件
  • 稲場雅紀氏:新型コロナのワクチン開発は自国中心主義から脱却を

    2020-07-29 20:00  
    550pt
    マル激!メールマガジン 2020年7月29日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第1007回(2020年7月25日)
    新型コロナのワクチン開発は自国中心主義から脱却を
    ゲスト:稲場雅紀氏(アフリカ日本協議会国際保健部門ディレクター)
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     あらゆる楽観論を嘲笑うかのように、新型コロナウイルスが再び世界的に猛威を奮い始めている。
     日本でも新たに感染が確認された人の数が再び増加。検査対象者の数を大幅に拡大しているとは言え、東京では23日には新規の感染が確認された人の数が366人と、一日の確認数としてはこれまでで最大となり、大阪、愛知などでもその数は急増しているようだ。
     ロックダウンや行動制限を解除した後に再び感染が拡大に転じる事態は世界各地で発生しており、既に全世界で感染が確認された人の数は1500万人を超え、確認された死者の数も60万人を突破した。
     こうしたなか、ワクチン・治療薬への期待が以前にも増して高まっており、それに呼応するかのように開発競争も過熱してきている。
     今週、医学誌「ランセット」に、イギリスと中国のグループが、それぞれワクチンの免疫の効果を示す結果が臨床試験で得られたと報告。先週は、ドイツとアメリカの製薬会社が開発しているワクチンについてFDAが優先審査をするという発表でアメリカの株価が上昇するなど、今や新型コロナのワクチン開発の進捗状況が、世界を巻き込んだ大ニュースになっている。有効なワクチンや治療薬が登場すれば、全世界規模で需要が見込まれ、その対価は莫大なものとなることが予想されるからだ。
     開発中のワクチンについてはWHOが頻繁にそのリストを更新しており、7月20日現在、人に対する臨床試験が行われているものが24候補、臨床前の段階が142候補ある。一方で、まだ開発途上のワクチンを事前に「青田買い」しようと、アメリカやイギリスは政府が特定のワクチンについて製薬企業等と契約を結ぶという動きも報道され、これがさらに開発競争に拍車をかける結果となっている。
     しかし、仮にワクチンや効果的な治療薬が開発されたとしても、果たしてそれを世界各国にあまねく届けることが物理的に可能なのか。また、ワクチンのアクセスを巡って、国家間や所得階層間に格差が生まれはしないのかなど、開発された後の展開についても課題は多い。特に、途上国の低所得層での感染爆発が危惧される現在、医薬品の特許や価格設定などこれまでもたびたび議論されてきた医薬品アクセスの問題が、今回も避けて通れない。ことに、東京オリンピックを一年後に控えた日本にとってはより重要な課題となっている。世界のどこかで新型コロナが流行している限り、世界規模の祭典でなければならない五輪の開催は難しいと思われるからだ。
     国際社会でのエイズ治療薬の平等なアクセスなどに尽力してきた稲場雅紀氏は、新自由主義が台頭しWTOが知的財産権の保護を強く前面に打ち出した1995年以降、医薬品のアクセスを巡り、国際NGOと製薬企業との間で熾烈な闘いが続いてきたという。その結果、現在、いくつかの国際的な枠組が作られ、新型コロナについても、一部でその枠組みが動き始めている。しかし、こうした動きは日本国内ではほとんど報道されておらず、よって日本ではこうした問題に対する関心はいたって低調だ。
     新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の開発には各国政府や国際機関の資金が相当額投入されていることから、本来開発された医薬品は公共財として扱われるべきものだ。しかし、そのためには国際的な世論の力が必要だ。新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の開発が特定の国や企業の利益を優先した形で使われれば、低所得層や貧しい国々はその恩恵にあずかることができず、結果的に感染症の世界的な流行を抑え込めないということにもなりかねない。
     新型コロナウイルス感染症というグローバルな危機に、人類はグローバルな視点で対応することができるのか。はたまた一国至上主義や自国中心主義、そして市場原理至上主義がそれを凌駕し、開発に成功した一部の先進国の企業や富裕層ばかりがその恩恵に浴することになるのか。そのようなやり方で、われわれはコロナに打ち勝つことはできるのか。国際社会での医薬品アクセス問題に取り組んできた稲場雅紀氏と社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。
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    今週の論点
    ・治療薬の青田買いと、犠牲になる貧困国
    ・不思議な形で国際協調の役割を果たしている日本
    ・国際協調すべき薬に対する知的財産権の問題
    ・難解過ぎる問題に、どうコミットするか
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    ■治療薬の青田買いと、犠牲になる貧困国
    迫田: 現在、7月22日午前9時です。今回は新型コロナウイルスウイルスのワクチンと医薬品、薬の話をしようと思います。「いつできるか」とか「どうなっているのか」ということよりも、これを本当に開発して私たちみんなが使うことができるようになるのか、という議論をしたいのですが、関連の報道が多く、過熱している印象です。
    宮台: ワクチンが万能であるようなイメージが流布していて、それが投資を加速しているような状況です。しかし実際には、マル激でも繰り返し議論しているように、コロナウイルスの変異種はこれからも出てくる可能性があり、アメリカやブラジルで1日3万人以上の新規感染者がいるように、どうも再感染もそうとうありそうです。つまり、免疫の持続時間がよくわからないということです。
    迫田: そもそも抗体ができるのかどうかということもあります。
    宮台: あるいはインフルエンザがそうであるように、抗体ができても免疫になるかどうかがわかりません。なので、投資をするだけの効果がどれだけあるのかが本当はわからない、という前提で考えなければいけません。その意味では、インフルエンザと同じようにワクチンより、抗ウイルス剤が開発された方がいいのかもしれません。ただ、ウイルスは細菌と比較して抗生物質に対して耐性ができる頻度、速度が5倍・10倍で、タミフルに対しても耐性ウイルスがたくさん出てきています。つまり今のところ決定打はないのだ、ということを前提とした上で話をしなければなりません。
    迫田: 今回は国際社会のなかで特にエイズ治療薬などの平等なアクセスに向けて活動されてきました、アフリカ日本協議会国際保健部門ディレクターの稲場雅紀さんにお越しいただきました。
     現在、WHOが毎週のように、世界のワクチンの開発状況を報告しています。臨床試験をしている最中のものが24種類もあり、そのうちフェーズ3の最終段階にあるのが4か5候補あるということです。本当に毎日のように情報が変わっていますが、稲場さんはこの状況をどうご覧になっていますか。 

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  • 林香里氏:メディアはコロナをどう報じてきたか

    2020-07-22 20:00  
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    マル激!メールマガジン 2020年7月22日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第1006回(2020年7月18日)
    メディアはコロナをどう報じてきたか
    ゲスト:林香里氏(東京大学大学院情報学環教授)
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     「普段研究者として指摘しているメディアの問題を、身を以て体験しました」
     東京大学大学院情報学環教授でメディア学が専門の林香里氏は、自身が新型コロナ感染症に罹患し、右へ倣えのメディア取材の現実を自ら経験する貴重な機会を得たという。
    ここに来て東京都の新型コロナウイルスの感染者数の200人超えが続き、危機感が高まっている。確かに緊急事態宣言が解除されて以降、社会全般でコロナに対する警戒心が弱まってきていることは事実だろう。このまま放っておけば再び感染爆発を招きかねない以上、注意が必要なことは言うまでもない。
     しかし、それにしてもコロナを巡るメディア、とりわけテレビ報道はどうだろう。感染者数の200人超えは4月上旬以来のことだというが、そこでいう「感染者」とは実際はPCR検査を受けた人のうち陽性反応を示した人の数であり、当然検査数にある程度比例する形で陽性者数は増える。また、陽性者が200人とは言え、37.4度の熱が4日以上続いていることが条件だった4月と比べると、今回は症状の有無にかかわらず「夜の街」関係者には重点的に検査を行っているので、陽性者は多くてもほとんどが無症状者だ。重症者にいたっては10人しかいない。しかし、テレビはコロナのニュースを報じる際、「どのような人を対象に何人を検査したか」について一切の断り書きをせずに、単に「感染者数」として報じ続けている。このような恣意的な報道は誰のどのような意図を慮った結果なのだろうか。
     新型コロナウイス感染症の蔓延が始まって以来、どういうわけかテレビは常に煽り気味の報道を続けている。より危険な側に立って報道しておくことは予防原則上は好ましいことなのかもしれないが、事実を正確に伝えない報道には予防原則もへったくれもない。その一方で、危機を煽り恐怖感や危機感を刺激することによって、2月以降テレビは例年と比べると大幅に視聴率を稼いできた。番組内容から窺える現場の認識は、「コロナなら何でもいいから持ってこい」、しかも、「コロナを相対化したり、コロナはそこまで恐れる必要はないというような言説は一切持ってくるな」だったのだろう。
     一旦恐怖を煽られてしまったテレビの視聴者は、途中から「今はそこまで恐れる必要がない」などという話をされても納得しない。しかも、僅かでも安心側に立って報道した結果、その何週間か後にコロナがオーバーシュート状態になったりすれば、その報道の責任を問われることにもなりかねない。つまり、一旦エンジンを吹かしてしまった以上、途中からブレーキをかけるような報道は受け入れられないし、むしろエンジンは吹かしっぱなしにしておいた方が報道する側にとっても安全なのだ。
     問題はなぜそのような報道になってしまうのか、ということだ。メディア学が専門の林氏の見立ては「メディアが十分な問題意識を持たないまま惰性で報道を続けている結果」だという。無理をしてリスクのあるスタンスを取ったところで報われる可能性は低い。それよりも横並びで危険を煽っている方が遙かに安全で、しかもそれで数字が取れるのであれば、それ以外のことをやろうと思う動機は起きないのは当然のことなのかもしれない。
     しかし、このような「子供騙し」の報道を続けていると、誰も既存のメディアを信用しなくなるのは時間の問題だ。実際、新聞やテレビを主たる情報源としている人は60代以上がほとんどで、その下の世代では新聞、テレビの情報を頼りにしている人の割合は今や少数派だ。10代、20代にいたっては新聞を読む人の割合は1桁台に落ち込んでいるし、一人暮らしの大学生で家にテレビがある人もほとんどいなくなった。
     コロナ危機は、もはやマスメディアが報道機関としてこのようなスケールの危機に対応する能力も気概も持ち合わせていないことを露わにした。しかし、マスメディアが社会から完全に見放されたとき、われわれの社会はコロナのような危機に対応していくことができるのだろうか。新聞やテレビが果たしてきた社会を束ねるような機能をネットが代替することは可能なのか。コロナ報道で見えてきたマスメディアの終焉と社会への影響などについて、林氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。 
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    今週の論点
    ・恐怖を煽る「感染者数」という不正確な言葉
    ・“コロナ様様”でルーティンを続けるテレビ報道
    ・終焉に向かうマスメディアと、議論をしない国民
    ・やはり日本は一気に沈むべきか
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    ■恐怖を煽る「感染者数」という不正確な言葉
    神保: 今回のテーマはコロナとメディアです。宮台さん、最初に言っておきたいことはありますか。
    宮台: 前々から言っていることですが、感染した人以外にとってコロナウイルスは身近なものではありません。感染判明者がこれだけいると言っても、医者でない限り目の前で苦しんでいる人を見たわけではありません。コロナに関する情報、あるいはそれをめぐる不安というのは、すべて語義通りのバーチャルであり、メディアによって力を与えられたイマージュなんです。 

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  • 白井さゆり氏:日本経済はコロナと五輪ショックを乗り切れるのか

    2020-07-15 20:00  
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    マル激!メールマガジン 2020年7月15日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第1005回(2020年7月11日)
    日本経済はコロナと五輪ショックを乗り切れるのか
    ゲスト:白井さゆり氏(慶応義塾大学総合政策学部教授)
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     コロナ禍に見舞われるはるか以前から、日本経済には危険信号が灯っていた。かなり危うい状況下で、日本が最後の心の支えにしてきたのが、2020年の東京五輪だった。
     安倍政権が日銀総裁に黒田東彦氏を指名し大々的にアベノミクスの旗を掲げた時期(2013年2月)と、2020年の東京五輪の開催の決定(2013年9月7日)時期はほぼ重なっていることには重要な意味がある。日本は大胆な金融緩和に加え、五輪のためのインフラや環境整備の名目で大量の公共支出が正当化され、また民間も五輪需要を当て込んだ積極的な投資が行われてきた。端的に言えば、あまり期待できるニュースがない中で、日本経済はこの7年間、アベノミクスによるインフラ期待と五輪特需期待だけで回ってきたといっても過言ではなかった。
     ところが今や一向に達成できないインフレターゲットに加え、データを誤魔化してまで辛うじて上昇していたことになっていた賃金が実はまったく上がっていなかったことまで明らかになると、アベノミクスの神通力は完全に消え失せてしまった。それどころか、一時は「黒田バズーカ」だの「異次元」だのと囃された金融緩和が、今やその出口シナリオさえ描けないままその副作用にのたうち回っているのが実情だ。
     そこで最後の期待が集まっていたのが五輪特需と言われる五輪の経済効果だった。しかし、元日銀の審議委員で慶應大学総合政策学部教授の白井さゆり氏は、20兆と見積もられている五輪の経済効果のうち日本は既に16兆を消費済で、もともとそれほど多くの弾は残っていないのが実情だという。
     しかも、本来であれば再来週にも開会式を迎えるはずだった東京五輪が、新型コロナ感染症の蔓延によって、今のところは来年7月まで延期されることになった。現時点では「延期」とされているが、現実問題としてまだ世界中にこれだけコロナが広がり続ける中、来年の夏までに世界中の国々が各競技で五輪予選や選考会を開いて代表を決めることなど到底不可能だろう。五輪頼みだった日本経済が、五輪という目標を失った時、一体何が起きるのか。
     白井氏はまた、金融破綻による需要の落ち込みが世界経済全体の足を引っ張る形となったリーマンショックと比べて、今回のコロナに起因する経済への打撃は、需要と供給の両方が落ち込んでいることから、そこからの立ち直りは容易ではないとの見方を示す。
     外食産業のようにコロナが恐くて一時的に客が利用を控えているものもあるが、例えば今回のコロナで国際会議などは遠隔で行うのがデフォルトになってしまった結果、これまで当たり前のように利用されていた国際会議場や飛行機、ホテルなどの旅客業はもう二度と以前のような状態には戻らない可能性も高い。
     そもそもコロナが来る前からやばかった日本経済が、コロナの襲来によって、一体今どんな状態になっているのか。また、そもそも五輪後が危ないと言われつつも、7年間五輪頼みでやってきた日本にあって、その五輪の中止がほぼ確定的となった今、その影響はどのような形で出るのか。
     白川総裁と黒田総裁の2人の総裁の下で日銀の審議委員を5年にわたり務め、現在は大学教員のかたわらで企業のESG化(ESG=Environment, Social, Governance)の啓蒙に積極的に関わる白井氏に、コロナと五輪の延期、あるいは中止による「五輪ショック」の日本経済への影響と、この先、日本が経済的に生き残る道としてどのような選択肢があり得るのかなどを、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が聞いた。
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    今週の論点
    ・リーマンショックとの対比と、コロナ以降の不可逆的な変化
    ・出口のない経済政策と、ただ“安心”を求める国民性
    ・五輪開催での「レガシー効果」という幻想
    ・あきらめた日本人が立ち向かうべき課題
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    ■リーマンショックとの対比と、コロナ以降の不可逆的な変化
    神保: 感染者数を見ると「コロナ後」なんて言葉を使ってはいけないのではないか、というくらい、まだ全然終わっていないのですが、ここまでの状況をきちんと見て、特に経済面での影響をテーマにしたいと考えました。宮台さん、最初に何かありますか。
    宮台: 感染判明者が2日続けて200人を超えていますが、検査数は倍には増えておらず、1.5倍強なので、第二波が来ていることはほぼ確定です。楽天的な人は第二波は来ないと言っていましたが、どんなに僕らがコロナ風邪の免疫を持っているとしても、スケールは欧米より小さいが当然、第二波は来るわけです。政権はそれを針小棒大化して政治利用したという経緯はありますが、ここから「大したたことない」と言っても、もうちょっと遅いですね。 

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  • 郷原信郎氏:河井夫妻逮捕で問われる検察の本気度と「政治活動」再定義の是非

    2020-07-08 20:00  
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    マル激!メールマガジン 2020年7月8日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第1004回(2020年7月4日)
    河井夫妻逮捕で問われる検察の本気度と「政治活動」再定義の是非
    ゲスト:郷原信郎氏(弁護士)
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     東京地検特捜部は2020年6月18日、河井克行前法務大臣とその妻案里参議院議員を公職選挙法の買収容疑で逮捕した。安倍政権の発足以来、政治が絡む事件に手出しができずにいた検察がようやく重い腰をあげたと、巷ではこの逮捕劇を歓迎する向きが多いようだ。
     確かに、2人区とはいえ長年与野党で議席を分け合ってきた参院広島選挙区で、安倍首相に批判的だった現職の溝手顕正参院議員に対して、あたかも刺客をさし向けるかのような形で首相側近の妻を2人目の候補として擁立し、その候補に党から溝手氏の10倍にあたる1億5,000万円もの活動費が支出され、夫婦でそのカネをばらまくような選挙運動が行われたことが広く報じられる中、それが典型的かつあからさまな選挙買収事件だったと理解されるのも無理からぬところだろう。
     しかし、検察官として公職選挙法や贈収賄事件を捜査した経験を持つ郷原信郎弁護士は、この事件は世の中が思っているほどクリアカットな選挙買収事件ではないので、今後の成り行きは注視する必要があると警鐘を鳴らす。
     報道では克行氏が中心となり、かなりあからさまな買収が広範囲で行われていたかのような情報が流布されているが、ご多分に漏れずこれは記者クラブメディアが検察のリークを垂れ流しているだけなので、100%真に受けてはならない情報だ。
     郷原氏は克行氏が党から支出された資金を広島県内の有力な首長や市議会議員らに配りながら妻案里氏の応援を依頼して回った時期は実際の参院選の4か月以上も前に始まっており、その多くはこれまで政治の世界で「地盤培養行為」と呼ばれる「政治活動」の範疇に入るものだった可能性が高いと指摘する。
     公職選挙法は「特定の候補者を当選させる目的で選挙人や選挙運動者に金品を供与」することを禁じているが、選挙とは直接関わりのない形で地元の有力な政治関係者にカネを渡し、支持層の拡大や応援を依頼することは合法であり、実際にそのようなことは今も広く行われているという。
     今回も具体的に票の取りまとめの依頼があったとか、具体的に票を買いたいという申し出があったという話があれば別だが、河井夫妻がカネを方々でばらまきながら「案里をよろしく」と支持を依頼して回った程度の話であれば、これまでの基準では買収とはならなかったと郷原氏は言う。その上で、今回広島地検が公職選挙法の買収容疑で逮捕に踏み切った以上、検察はこれまでの「地盤培養行為」と「買収」の境界線を踏み越える決断を下したと見るべきだろうと郷原氏は言うのだ。
     まずは河井氏の事件を理解する上で、検察のリークの垂れ流し報道だけを見て事件の概略を理解したつもりになってはまずい。その上で、今回の河井氏の行為が従来の政治活動と選挙運動の境界線を本当に超えていたのかどうかを見極める必要がある。また、もし今回は境界線を越えていなかったとしても、明らかに既存の境界線がおかしいとすれば、それは検察の一方的な解釈変更によってではなく、法改正によって動かされるべきものではないか。
     河井氏逮捕で検察はどこまで本気でやるつもりなのか。政治活動と選挙運動の境界線を動かすところまで踏み込む覚悟があるのか。仮にその覚悟があるとしても、それを検察が一方的に行うことが許されるべきことなのか。また、それで裁判に勝てるのか。さらに、政治には自分たちに不都合となる法改正を期待できない時、それが検察の解釈変更によって実現することを期待することは許されることなのか。市民社会にとってリスクはないのか、などについて、公職選挙法や政治資金規正法に精通し、今回の河井氏の事件についても多くの発信を行っている郷原氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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    今週の論点
    ・違法な「買収」なのか、黙認されてきた「地盤培養行為」なのか
    ・「悪しき慣習の排除」にとどまらず、政治活動を制約する可能性
    ・政権と対立する検察幹部の意向
    ・首相官邸への強制捜査はあり得るか
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    ■違法な「買収」なのか、黙認されてきた「地盤培養行為」なのか
    神保: マル激ではこれまで度々、検察の問題を取り上げてきました。7月18日に関連の議論をまとめた、マル激としては12冊目の本が光文社から出ることもあり、ここのところ原稿の直しも含めて、あらためて検察の問題を多くやっています。今回は検察の問題であると同時に、政治の問題でもありますね。
    宮台: 黒川問題で、とりわけ検察と政治の関係がクローズアップされました。
    神保: 今回は河井事件というものをめぐり、そういう切り口で議論をしたいと思います。法律の解釈など含め、重要な争点がいくつかありますが、最初に宮台さんから何かありますか。
    宮台: 日本人はやはり近代司法を知らないから、岡っ引き根性になりやすいです。つまり、「悪い奴は引っ括ってしまえ」でカタルシスを得て、また日常に戻るという感じになります。 

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  • 指宿昭一氏:ポストコロナが問う、日本は外国人と共生できる国なのか

    2020-07-01 20:00  
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    マル激!メールマガジン 2020年7月1日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド 第1003回(2020年6月27日)
    ポストコロナが問う、日本は外国人と共生できる国なのか
    ゲスト:指宿昭一氏(弁護士)
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     今、日本では165万人の外国人が働いている。そのうち永住者を除くともっとも多いのが、建設、縫製、農業、介護の現場などで働く技能実習生でその数は41万人にのぼる。しかし、彼らが新型コロナウイルスの感染拡大とそれにともなう自粛の嵐の中で、軒並み解雇されるという事態が起きている。
     既に日本で働き始めていた実習生たちは、まだ実習途中のため帰国するわけにもいかず、その一方で、毎月1万人の新規の実習生たちの来日もストップしたままになっている。
     長年、外国人労働者の相談にあたっている弁護士の指宿昭一氏は、技能実習生の場合、まだ弁護士や支援団体になどに相談するところまでたどり着いていない人が大勢いる可能性があると話す。日本語もままならず、職場以外には日本国内にほとんど人脈を持たない彼らにとっては、外部に相談すること自体のハードルがとても高い。リーマンショックの時も、外国人労働者の窮状が認識されるようになるまでには、数か月の時間を要したという。指宿氏はこのままでは今後、仕事がない、住むところがない、帰国もできない彼らの多くが、命にかかわるような事態を迎える恐れがあると指摘する。
     こうした事態を受けて出入国在留管理庁は、在留資格を延長したり、仕事を失った技能実習生たちの農業や介護の分野への転職を認めるなどの救済措置を設けているが、「国際貢献」の名目で始まったこの制度が、実際は人手不足の日本社会の雇用の調整弁となっていたことの矛盾が、ここに来て明確に表面化してしまっている状態だ。労働者としての基本的な権利を守るためのトータルな仕組みは、国籍、働き方の区別なく保障されるべきであり、外国人労働者への支援は、日本人の非正規労働者に対する考えと地続きであると指宿氏は指摘する。
     今、日本がこの問題にしっかりと対応できなければ、日本で働いていた外国人たちが帰国した後、日本のことを批判したり悪く言う可能性が高く、その国の日本に対する印象が悪化する恐れがあることも懸念される。日本の在留資格は排除の発想が強く、新型コロナウイルスのために外国人の配偶者の入国が認められないなどの事例が頻出したため、今や外国人の間では“ジャパン・リスク”という言葉が常套句になっているという。
     アフターコロナを見据えて、外国人労働者政策をどうするか。移動の自由を保障しながら日本に定住したいと考える外国人と共生する施策をとるのか、これまで通り雇用の調整弁のような一時的な労働力として都合よく使い捨てにし続けるのかが問われていると、指宿氏は語る。
     「生存のためのコロナ対策ネットワーク」のメンバーとして、現場に根差したさまざまな活動や提案をしている指宿昭一氏と、社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。
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    今週の論点
    ・外国人労働者の“現場”を知らない入管庁
    ・“労働人口の調整弁”として使い捨てられる外国人労働者
    ・「それでも日本は魅力的で、人は来る」という傲慢さ
    ・“ジャパンリスク”を解消し、共生への道を
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    ■外国人労働者の“現場”を知らない入管庁
    迫田: 本日は6月26日。緊急事態宣言全面解除から1ヶ月経ちましたが、東京の感染者数は54人ということで、いまはどういう状況だと捉えたらいいのでしょうか。
    宮台: 東京アラートが最初に出たのは34人で、どういう理由で基準が緩和されているのか説明すべきですね。もちろん僕や皆さんが首長であれば、説明できます。つまり、コロナだけが問題であるはずがなく、それによって廃業や失業に追い込まれてしまった人たちが非常に困った状態になるからです。特に日本は失業率と自殺率が高い相関を示しており、「死者」でいうのであれば、コロナ死と経済死としての自殺者数の合計が最小になるようにしなければいけない。そういうバランスの観点から、経済的に第一次の東京アラートのときと比べると、はるかに経済的に困窮している人が増えているから、と説明すればいいんです。なぜこれほど簡単な説明をしないのか、という問題です。
    迫田: 緊急事態宣言が解除され、社会がもとに戻っていく、というようなニュースばかり出ていますが、その陰で非常に厳しい状況に置かれている人たちがたくさんいるということですね。そういう人たちの姿が見えてきません。 

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