• このエントリーをはてなブックマークに追加

記事 4件
  • 武貞秀士氏:遂に核兵器保有国となった北朝鮮とどう向き合うか

    2016-09-28 23:00  
    550pt
    マル激!メールマガジン 2016年9月28日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第807回(2016年9月24日)遂に核兵器保有国となった北朝鮮とどう向き合うかゲスト:武貞秀士氏(拓殖大学海外事情研究所・国際協力学研究科特任教授)────────────────────────────────────── 遂に北朝鮮が本格的な核兵器の保有国になってしまった。というよりも、公然と核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対し、国際社会はみすみす核武装を許してしまったと言った方が、より正確かもしれない。われわれはどこで政策選択を誤ったのか。 今年に入ってから北朝鮮は確認されているだけで、21発のミサイルを発射し、2回の核実験に成功している。一般的には核実験を5回成功させれば、核兵器をミサイルに搭載できるレベルまで小型・軽量化が可能になっていると考えられている。早い話が、既に北朝鮮の核ミサイルは優に日本を射程内に収め、アメリカ本土にも届こうかというところまで来てしまったのだ。 そもそもなぜ日本を始めとする国際社会は北朝鮮の核武装をみすみす認めるようなことになったのか。元防衛研究所の教官で朝鮮半島情勢を長年ウォッチしてきた武貞秀士・拓殖大学特任教授は、北朝鮮はいずれ崩壊するに決まっているという国際社会側の決めつけが、北朝鮮に核武装の隙を与えたと強調する。 北朝鮮の国家体制は民主主義国のわれわれから見ると、無理な点が目に付くことは確かだ。しかし、北朝鮮崩壊説に確たる根拠が示されているのを一度も見たことがないと、武貞氏は言う。日本から見ると北朝鮮は世界から孤立しているように見えるが、実際は北朝鮮はヨーロッパやアフリカ、中東の国々と国交があり、貿易も行われている。確かに北朝鮮はまだ貧しく、食糧さえ不足しているが、独裁政権の下で国富を核・ミサイル開発に集中させれば、それが実現可能であることは、パキスタンやリビアなどが実証している。 問題は、北朝鮮が核武装してしまった今、その状況に日本はどう対応すべきかだ。 武貞氏は北朝鮮の核武装は、アメリカに対する交渉力を得ることが最大の目的で、核を持つことでアメリカに、北朝鮮は簡単に捻り潰せる相手ではないと認識してもらうためだという。しかし、北朝鮮の真意は、アメリカが朝鮮半島から手を引けば、北朝鮮主導で朝鮮半島の統一が可能になるというもので、それは日本にとっても受け入れがたい状況だ。 朝鮮半島から地政学的にも至近距離にあり、北朝鮮との間に拉致問題を抱える日本は、この状況にどう対応すべきか。希代の朝鮮半島ウォッチャーの武貞氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・外国人観光客であふれる、“普通の国”としての北朝鮮・過小評価されてきた、北朝鮮の軍事力・「北朝鮮崩壊説」にとらわれる、アメリカ外交の失敗・北朝鮮と本音で語り合い、問題解決に向かう機は熟している+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■外国人観光客であふれる、“普通の国”としての北朝鮮
    神保: 9月はさまざまなニュースがありましたが、今回は本当はもう少し早くやりたかった「北朝鮮」を取り上げます。今年に入って、ミサイルの発射や核実験が立て続けにニュースになっており、事実上、核クラブのメンバーになったような状態になってしまったという話ですが、総論的な意味で、宮台さんは北朝鮮の動向をどう受け止めていますか。
    宮台: 一部の人が非常に危惧していた事態になりました。特にSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の実験に今後成功すれば、例えば僕たちが先制攻撃しようが、あるいは戦争が始まってから北朝鮮を徹底的に叩こうが、核ミサイルで確実に反撃されるようになる。そういう意味では、まったく新しいステージに入ってしまう。本当は事前にわかっていたはずなのに、その可能性を見ずに、「崩壊直前の国が瀬戸際外交をしているんだろう」とみなしてきてしまいました。
    神保: 放っておけば自然に崩壊するから大丈夫だと。
    宮台: 実際には瀬戸際外交ではなく、覇権外交のレベルに移りつつあります。
    神保: 外交政策のひとつの失敗として位置づけなければいけないでしょう。ここに至って、どこで道を誤ったのか、という検証が必要だと思います。その上でどうしていくか、という話をしなければマズいはずなのですが、なかなか「外交政策の失敗」という論調で報じるところがない。要するに、「向こうがおかしいんだ」という話になっていて、確かにそうなんだけど、結果的にそれで日本が窮地に陥っています。 ゲストのご紹介をいたします。マル激には4回目のご出演となる、拓殖大学特任教授の武貞秀士さんです。思えば、武貞さんが防衛研修所に勤めているころから来ていただいていますが、一貫して危惧されてきたことが現実になってしまったように思えます。細かい点に入る前に、半島ウォッチャーとして、ここ最近の北朝鮮の状況をどう捉えていますか。
    武貞: 非常に深刻です。20年前から「北朝鮮は崩壊するから、何を考えているとしても大丈夫だ」という議論がありましたが、それが崩壊したんです。そこには核兵器の論理があり、軍事戦略がある。1948年の建国以来、北朝鮮主導で半島を統一しようと考え、そのために必要なものとして、早い時期に核兵器が目玉だということにたどり着いた。そして、核兵器を持ってアメリカと握手して、イスラエル・アメリカ関係のような形になれば、韓国を取れるだろうと考え続けてきたものが、いま一挙に爆発して浮上しています。それにまだ気づいていない論者たちもいるわけで、非常に残念です。
     

    記事を読む»

  • 木村草太氏:象徴天皇制と天皇の人権が両立するための条件

    2016-09-21 23:30  
    550pt
    マル激!メールマガジン 2016年9月21日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第806回(2016年9月17日)象徴天皇制と天皇の人権が両立するための条件ゲスト:木村草太氏(首都大学東京都市教養学部教授)────────────────────────────────────── 天皇陛下がご高齢や健康上の理由から象徴天皇としての責務を果たせなくなることに不安を抱いていることを、自らの言葉で語られるビデオが公表された。間接的、かつ非常に慎重な言い回しではあったが、「生前退位」の意思表示だったことは明らかだ。 世論調査などを見ると、国民の圧倒的多数は陛下の生前退位を認めるべきと考えている。しかも、大半の国民は一過的な対応ではなく、恒久的な制度にすべきだと考えていることも明らかになっている。しかし、今のところ永田町界隈では、皇室典範の改正までは踏み込まず、一過性の対応で切り抜けようという意見が、大勢を占めているようだ。 そもそも天皇は憲法で政治権力の行使が禁じられているので、陛下の「お気持ち」の表明を受けて直ちに法改正に乗り出すこと自体が、天皇の政治権力の行使を認めることになる可能性があり、問題なのだという。しかも、一部の識者たちは、天皇の生前退位を認めること自体に強く反対している。いやしくも天皇という地位は、個人の意思でそこに就いたり就かなかったりするべきものではないと考えているからだ。 基本的な人権の尊重を謳う日本国憲法下で、国民統合の象徴とされる天皇に職業選択の自由や移動の自由、婚姻の自由といった基本的な人権が認められていないことに加え、高齢や健康を理由に退位する自由さえ認められていない今日の事態を、われわれはどう考えればいいのだろうか。 現在の象徴天皇制が規定されてから約70年、日本人は象徴天皇制という名の下で、統合の象徴たる天皇の存在を享受してきた。しかし、その一方で、その制度が、天皇および天皇家という人々の犠牲の上に成り立っているという現実からは、目を背けてきた。そして、今上天皇がご高齢となり、健康にも不安を覚えるようになった今、われわれは否が応にもその問題に向き合わなければならなくなった。今こそ、象徴天皇という制度と天皇の人権をいかに両立させるかについての議論を始め、合意形成を図るべきではないか。 戦後のあり方そのものを問い直すことにもつながる象徴天皇制の現状と天皇の人権問題、そして民主憲法との整合性などを、憲法学者の木村草太氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・旧皇室典範と新皇室典範にある“裏の議論”・「宣言者」ではなく、「遂行者」としての天皇・近代憲法は天皇の存在を許容するか・生前退位を巡る議論では、「伝統」と「人権」を深く考えよ+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■旧皇室典範と新皇室典範にある“裏の議論”
    神保: 本編でこの問題を取り上げるのは初めてです。巷的な言い方をすれば、「生前退位」とか「譲位」問題ですが、それだけの問題ではなく、われわれとしては天皇の人権、憲法のことをやはり考えるべきだろうと。日本国憲法ができて70年、ようやくご本人からの意思表示によって……というのが情けないんだけど、これを議論しなければならないところに来ました。しかし、どうもなるべく本質的な議論をせずに終わらせようとしているという感じがする。そこでマル激では、憲法、人権という大事な問題を真正面から取り上げたいと考えています。 ゲストはもはやご紹介するまでもない、憲法学者の木村草太さんです。まずは天皇陛下のお気持ちの表明を、さわりだけあらためてご覧ください。
    ----------------------------------2016年8月8日 天皇の高齢化に対する対処の仕方が、国事行為や、その象徴としての行為を限りなく縮小していくことには、無理があろうと思われます。また、天皇が未成年であったり、重病などによりその機能を果たし得なくなった場合には、天皇の行為を代行する摂政を置くことも考えられます。しかし、この場合も、天皇が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま、生涯の終わりに至るまで天皇であり続けることに変わりはありません。 天皇が健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、これまでにも見られたように、社会が停滞し、国民の暮らしにもさまざまな影響が及ぶことが懸念されます。更にこれまでの皇室のしきたりとして,天皇の終焉に当たっては,重い殯(もがり)の行事が連日ほぼ2カ月にわたって続き,その後喪儀に関連する行事が、1年間続きます。その様々な行事と、新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残される家族は、非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません。こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが、胸に去来することもあります。 初めにも述べましたように、憲法の下、天皇は国政に関する権能を有しません。そうした中で、このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました。国民の理解を得られることを、切に願っています。----------------------------------
     

    記事を読む»

  • 久保利英明氏:第三者「御用」委員会が後を絶たないのはなぜか

    2016-09-14 23:30  
    550pt
    マル激!メールマガジン 2016年9月14日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第805回(2016年9月10日)第三者「御用」委員会が後を絶たないのはなぜかゲスト:久保利英明氏(弁護士・第三者委員会報告書格付け委員会委員長)────────────────────────────────────── 最近、第三者委員会という言葉をよく聞く。独立調査委員会や外部委員会などと呼ばれることもあるが、企業や組織に不祥事が起きた時、組織から独立した委員たちが事実関係を検証した上で、その責任の所在や原因を究明したり改善策を提言する委員会のことだ。 ところがこの第三者委員会が機能していないばかりか、第三者委員会の大半は御用委員会と化し、大甘の調査報告書を出してお茶を濁す程度で終わっている。その結果、企業では更なる信頼の失墜につながったり、公職者の場合、辞任に追い込まれたりするなど、かえって状況が悪くなるケースが続出しているが、それでも御用委員会は後を絶たない。 企業では東芝の不正会計の調査委員会が代表例だ。朝日新聞の従軍慰安婦報道の調査委員会のように、あれこれ辛口なことは言いながら、何ら有効な提言をできず、企業の信頼回復に寄与できなかった委員会も多い。個人レベルでは不適切な公金の流用が疑われた舛添要一元都知事も、元特捜検事が行った大甘な調査の結果、辞任に追い込まれている。東京五輪招致をめぐる不正な支出疑惑を調査したJOCの調査委員会も、ほとんどろくな調査もせずに「問題なし」の結論を出したことで、かえって疑惑が深まる結果を生んでいる。 企業の第三者委員会の報告書を評価する「格付け委員会」を主宰する弁護士の久保利英明氏は、第三者委員会の多くが御用委員会と化す理由について、日本では第三者委員会の委員に選ばれた弁護士や有識者たちが、調査の依頼主の方を向いているところに原因があると指摘する。企業のステークホルダー(利害当事者)は経営陣や社員だけではない。顧客は言うに及ばず、株主、市場、地球環境、地域社会、消費者など、企業の影響は社会全体に及ぶ。第三者委員会がそのステークホルダー全体に対して説明責任を負っているという認識が、日本ではまだ希薄だと久保利氏は指摘する。 こんなことを続けていると、社会が持たない。企業は市場から見放され、政治不信は高まるばかりだ。日本や所属組織という内集団の掟だけに縛られ、それを守っている限り、後は全てなあなあで済まされた時代は、とうの昔に終わっている。 なぜわれわれは自らを顧みることが、こうまで苦手なのか。その最も身近な例であり、その試金石ともなる第三者委員会を機能させるために今、われわれは何をしなければならないのか。久保利弁護士と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・五輪招致の不正をめぐる、「滑稽」な調査報告書・中立性も独立性もない、第三者委員会メンバー・朝日新聞、従軍慰安婦報道問題の本質・内集団ではなく、「良心」に従うことができるか+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■五輪招致の不正をめぐる、「滑稽」な調査報告書
    神保: 今日のテーマは「第三者委員会・独立調査委員会」です。宮台さん、このテーマで最初に思い当たることはありますか。
    宮台: 日本の審議会制度のある種の奇妙さ、デタラメぶりについては、特に原発行政、3.11以降の問題として、何度も繰り返し扱ってきました。その意味では、僕たちにとっては実は馴染み深い問題です。しかし、これにどう手を入れることによってまともなものになるのか、ということは、まだ十分に議論していませんでした。イギリス的な制度にすればいい、という暫定的な結論は出ましたが、なぜそういう制度を持ち込めないのか、という疑問がさらに進むだけです。
     

    記事を読む»

  • 小川勝氏:間違いだらけの2020年東京五輪

    2016-09-07 23:50  
    550pt
    マル激!メールマガジン 2016年9月7日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第804回(2016年9月3日)間違いだらけの2020年東京五輪ゲスト:小川勝氏(スポーツライター)────────────────────────────────────── リオ五輪が終わり、いよいよ4年後、東京にオリンピックがやってくる。 52年前の東京五輪で日本は、先の大戦からの復興と国際社会への復帰を世界に印象づけた。2020年の五輪で日本はどのようなメッセージを発するつもりなのだろうか。 実は安倍政権にとって2020年東京五輪の位置づけは明確に示されている。それが昨年11月に政府が閣議決定した「2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の準備及び運営に関する施策の推進を図るための基本方針」(以下基本方針)だ。 この文書には2020年東京五輪で政府が何を目指しているかが明確に書かれているのだが、五輪取材経験が豊富なスポーツライターの小川勝氏は、どうも政府は五輪をホストすることの意味を根本からはき違えているようだと指摘する。「海外に日本の力を見せる」「過去最高の金メダル数獲得を目指す」などホスト国の日本が享受すべきメリットばかりが強調されており、それは五輪の本義、オリンピア精神の推進とはかけ離れているからだ。 オリンピック憲章はその冒頭で精神と肉体のバランス、平和主義、差別の撤廃などを謳っている。そうした考え方に賛同を示し、それを更に発展させることに一役買う覚悟のある都市だけが、五輪のホスト国になる資格を有する。 小川氏によると、五輪の目的は以下の4つの「ない」によってあらわすことができるという。それは1) 開催国のためのものではない、2) 国同士の争いではない、3) 経済効果を求めてはならない、4)勝つことが目的ではない、の4つだ。 五輪のホスト国は自らの利益は度外視した上で、オリンピック憲章に則ったオリンピズムの精神への支持を明確にし、持ち出しになることを前提に五輪を開催する。それがホスト国の務めだと小川氏は言う。 オリンピズムの精神は簒奪され捻じ曲げられ続けてきたが、その物語はまだ生きているのだ。2020年の東京大会はそれを生かす大会となるのか、それを殺す大会となるのかが問われている。 リオ五輪が終わり日本が2020年の東京大会に向けて動き始める今、五輪ホスト国に相応しい基本的な姿勢と考え方とは何かを訴える小川氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・オリンピックに「恩恵」を期待する欺瞞・立ち返るべき、オリンピック憲章の根本原則とは・ホスト国がやってはならない4つのこと・日本が目指すのは「メダル大国」か、「スポーツ大国」か+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■オリンピックに「恩恵」を期待する欺瞞
    神保: 8月にドーピング問題を取り上げたばかりですが、あえてもう一度、オリンピックをテーマに議論したいと思います。今回はリオではなく、2020年東京五輪の話です。国立競技場がどうだとか、コストがどうだとか、さまざまな問題がありますが、根本的に間違った方向に進んでいるように見えるため、まだ4年あるうちに、一度確認したほうがいいと思いました。 宮台さんは2020年という年に東京にオリンピックが来るということの意義について、どういうふうに捉えていますか。
    宮台: 「終わりの始まり」ということでしょう。安倍政権は基本的に、金融政策と財政政策を最も大きな柱のひとつと位置づけており、ある種の財政出動の口実として、最後に成り立つのがオリンピックということになる。しかしその後、恐らくそのような図式はもう維持できませんから、そのような図式のもとで支えられていた日本のレジーム、あるいはエスタブリッシュメントというものはどんどんガタガタになっていくでしょうね。言い換えれば、オリンピックがなければ正当化できない政策がそこまで正当化されて、継続されるということに、滅びの予兆としての意味があるということです。
     

    記事を読む»