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岸見一郎氏:あなたが変われないのは実は変わりたくないから?!
2014-04-30 23:00550ptマル激!メールマガジン 2014年4月30日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第680回(2014年04月26日) あなたが変われないのは実は変わりたくないから?!ゲスト:岸見一郎氏(哲学者) ────────────────────────────────────── アドラー心理学をご存じだろうか。オーストリアの心理学者アルフレッド・アドラーが20世紀初頭に創始した心理学の一体系で、海外では同時代に生きたフロイト、ユングと並ぶ心理学界の三大巨頭と呼ばれることが多いアドラーだが、なぜか日本ではあまり広く知られてこなかった。ところが今、このアドラー心理学を取り扱った書籍『嫌われる勇気』が、20万部を超える大人気だと言う。なぜ今、日本でアドラーが受けるのか。 総務省のアンケートによると、今日本ではLINE, Twitter, Facebookなど何らかのソーシャルメデイアを利用している人は57.1%にも達している。ソーシャルメディアはネットを通じて物理的に離れている人たちと常時繋がることを可能にしてくれる便利なツールだが、逆に四六時中繋がり続ける中で、うっかり発した一言や、一度でも「いいね!」をクリックしなかった程度のことで人間関係に亀裂が生じるなど、常に対人関係で緊張感を強いられるような状況を生んでいることも事実だろう。そうした「SNS疲れ」の中で、「別に嫌われてもいいじゃないか」と言い切るこの本が多くの人を惹きつけているようなのだ。 この本の著者で日本におけるアドラー心理学研究の第一人者でもある哲学者の岸見一郎氏は、アドラー心理学の第一の特徴として、フロイトなどが説く人の今がトラウマなど過去の経験によって規定されるとするとする「原因論」ではなく、個々人がその経験に与える意味や目的によって自らを決定するとする「目的論」をあげる。「人が変わりたいと思っても変われないのは、変わらないことが目的になっているからだ」とアドラー心理学は説く。「変わらないこと」に対して、自分でも自覚しない何らかの目的やメリットを感じているからだというのだ。 「人間の悩みはすべて対人関係」と言い切るアドラー心理学では、キーワードとして「勇気」や「自由」という言葉がよく出てくる。例えば、変わりたいけど変われないと思っている人に対して、「現状の変更に向き合う勇気」を、嫌われることを恐れて恋人や友人との関係を変えられないで悩んでいる人に対しては、「嫌われてもいいじゃないかと思える勇気」を持つようなカウンセリングが行われると岸見氏は言う。そして、嫌われる勇気を持てて初めて人は自由になれるとアドラー心理学は説く。 とかく生きづらいと言われる昨今、もしかするとわれわれは知らず知らずのうちに自らの手で自分の自由を縛っていたのかもしれない。5月病など新年度疲れが出始めそうな今、勇気を持てば人は変われるし、勇気を持てば人はもっと自由になれると説くアドラー心理学の入門編を、岸見一郎氏とともにお届けする。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・ユング、フロイトと比較して「アドラー」がマイナーな理由・過去の「トラウマ」がその人を規定することはない・「不幸」であることに安心する人々・「やりたいけどできない」はありえない+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
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加藤朗氏:武器輸出解禁で日本が失うものとは
2014-04-23 23:00550ptマル激!メールマガジン 2014年4月23日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第679回(2014年04月19日) 武器輸出解禁で日本が失うものとはゲスト:加藤朗氏(桜美林大学リベラルアーツ学群教授) ────────────────────────────────────── 安倍政権は「武器輸出三原則」と呼ばれるその方針を破棄し、武器輸出を可能にする政策への転換を4月1日に閣議決定した。武器輸出三原則は1967年に佐藤政権が主に共産圏や紛争国に武器を輸出しない方針を表明し、76年には三木政権が基本的にどこの国に対しても武器輸出は慎むとの方針に格上げして以来、約半世紀にわたり日本が守ってきた一線であり、非核三原則と並び日本の戦後平和主義を象徴する政策でもあった。 しかし安倍政権は日本を取り巻く安全保障環境の変化を理由に、国会の議論を経ずに閣議決定という形で、重大な政策変更を強行してしまった。 政府は政策変更のメリットとして、米国をはじめとする友好国と最先端の武器の開発プロジェクトへの参加が可能になることで、高いレベルの技術共有が可能になると説明している。また、これまで地雷除去装置のような人道目的で使われる装置も、法律上は武器として扱われるため、友好国に輸出することができなかったが、それも可能になると、そのメリットを主張する。しかし、日本で作られた武器が戦争に使われて、殺傷される人が出る可能性が生まれることは、戦後政策の大きな転換となることはまちがいない。その結果として日本が失うものが何なのかを、政府は十分に精査できているのだろうか。 しかも、政府が強調するメリットそのものが、どうも怪しいという指摘が根強い。国際的な武器取引や安全保障問題に詳しい桜美林大学教授の加藤朗氏は、今回の政策転換で武器輸出を解禁したところで、そもそも日本の防衛産業には国際的な武器市場での価格競争力がないため、日本の武器が世界で広く流通するような状況にはないと語る。また、共同開発に参加をしても、最先端技術の部分はブラックボックス化されていて、日本にそのノウハウが落ちてくると考えるのは安易過ぎると加藤氏は指摘する。 加藤氏は、正に武器輸出三原則が「非核三原則とともに平和憲法を具現化する外交上の宣言政策」(加藤氏)だったからこそ、安倍政権にとってそれを破棄することに意味があったのではないかとの見方を示す。つまり、実質的な効果やメリット云々よりも、日本が「武器も輸出できる普通の国」になったことを世界に知らしめるアナウンスメント効果に今回の政策転換の真意があるのではないかと言うのだ。 しかし、安倍政権はその政策変更やアナウンスメント効果が、かえって中国や近隣諸国を刺激して、さらなる緊張の拡大や軍拡へと繋がる可能性を精査した上での政策変更だったのだろうか。それによって日本が失うものとは何なのか。ゲストの加藤朗氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・できることは変わらないのに、なぜ文言を変えるのか・「防衛装備移転三原則」で失われるもの・日本が持つ「平和ブランド」の価値とは・「平和ブランド」喪失のコストをどう払うのか+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
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八代嘉美氏:小保方問題にすり替わってしまったSTAP細胞騒動の核心部分
2014-04-16 23:00550ptマル激!メールマガジン 2014年4月16日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第678回(2014年04月12日) 小保方問題にすり替わってしまったSTAP細胞騒動の核心部分ゲスト:八代嘉美氏(京都大学iPS細胞研究所特定准教授)────────────────────────────────────── 事実であることが確認されれば、人類にとって歴史的な快挙となり得るSTAP細胞をめぐる論争が、奇妙な展開を見せている。端的に言えば、STAP細胞問題が小保方問題にすり替わってしまったようだ。STAP細胞は刺激惹起性多能性獲得細胞(=Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency -
小黒一正氏:消費増税では日本の財政は救えない
2014-04-09 14:00550ptマル激!メールマガジン 2014年4月9日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第677回(2014年04月05日)消費増税では日本の財政は救えないゲスト:小黒一正氏(法政大学経済学部准教授)────────────────────────────────────── 4月1日から消費税率が8%に引き上げられた。僅か3%というが、6割の増税である。今回の増税の大義名分は「日本の社会保障を守るための安定的な財源確保」とされ、社会保障の膨張で危機的な状況にある日本の財政を再建するためには、どうしても消費増税が不可欠であると説明されている。われわれの年金や医療保険を守るためにはやむを得ないと考え、厳しい経済状況の下で増税の苦難を甘受し -
廣瀬陽子氏:ロシアのクリミア編入に見る新しい国際秩序
2014-04-02 22:00550ptマル激!メールマガジン 2014年4月2日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第676回(2014年03月29日) ロシアのクリミア編入に見る新しい国際秩序ゲスト:廣瀬陽子氏(慶應義塾大学総合政策学部准教授) ────────────────────────────────────── ロシアによるクリミアの編入に世界が衝撃を受けている。大国が軍事力にものを言わせて小国から領土を分捕るような古典的な力の政治は第二次大戦以来、世界が経験してこなかったものだったからだ。半世紀に及ぶイデオロギー対立を前提とする冷戦と、その後の混沌たるポスト冷戦の時代を経て、世界は再び古い力の政治の時代に舞い戻ろうとしているのか。それともこれはこれまでとは全く異なる新しい世界秩序の始まりなのか。もしそうだとすると、対立の中身は資源なのか、それとも何か別の新しいものなのか。 2月下旬にウクライナで起きた政変は親ロシアのヤヌコビッチ政権を転覆させ、よりEU寄りの新政権の樹立に向かうかに見えた。ところがロシアは政変そのものに介入するのではなく、実を取りに出た。ロシア人の安全確保という大義名分の下、クリミア半島に軍を派遣し、クリミア自治州をウクライナから離脱させるという力技に打って出たのだ。 この事態にEU諸国やアメリカなどはロシアによる事実上のクリミア併合であるとして厳しく反発し、さまざまな制裁を行っているが、効果を上げているようには見えない。クリミアのためにロシアと本気で一戦交える気など誰にもないことが明らかだからだ。 しかし、それにしてもロシアはなぜいきなり力による領土の編入などという思い切った施策に打って出たのだろうか。ロシア問題に詳しい慶應義塾大学准教授の廣瀬陽子氏はクリミア半島にある軍港セバストポリがロシアにとって戦略上非常に重要な意味を持っていたことを強調する。ロシアの領土沿岸部はほとんどが寒冷地であるため、不凍港で黒海経由でアジアやアフリカへの玄関口となるセバストポリはロシアの安全保障上の生命線とも言っていいほどの重要な戦略的意味を持つ。ウクライナに親EU政権が成立し、クリミアにNATO軍の基地ができるような事態をロシアが恐れても不思議はない。 今回のクリミア問題には、国際政治の古くて新しい論争の要素もあると廣瀬氏は指摘する。クリミアはロシア系住民が6割を占める親ロシア地域だ。ロシアとウクライナのどちらかを選ばなければならない住民投票を行えば住民の多数がロシアを選ぶ可能性が高い。 ロシアによるクリミア編入は国際政治の歴史的な文脈の中でどのような意味を持つのか。これが今後の国際政治の流れの一つの源流を作る可能性はあるのか。そうした中で日本は何を考えなければならないのかなどについてゲストの廣瀬陽子氏、国際政治学者の山本達也氏とともに、ジャーナリストの神保哲生が議論した。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・地政学的なクリミアの重要性とは・国際社会のルールは「変わった」のか、「戻った」のか・「ポスト冷戦期」の新しい秩序・ロシアに対する欧米の立場と、苦境に立たされる日本+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
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