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記事 4件
  • 木村草太氏:日本の根本問題から逃げ回る最高裁とこの国のかたち

    2016-12-28 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2016年12月28日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第820回(2016年12月24日)日本の根本問題から逃げ回る最高裁とこの国のかたちゲスト:木村草太氏(首都大学東京都市教養学部教授)────────────────────────────────────── 今回は首都大の木村草太氏をゲストに、前半は「ニュースマル激」を、後半は「映画マル激」の2部構成でお送りする。前半のニュースマル激では「『生前退位は特例法で』で本当にいいのか」、「沖縄の基地問題から逃げ続ける最高裁」、「元国立市長への個人賠償請求は妥当か」の3つをテーマに、そして後半の映画マル激では「君の名は。」「この世界の片隅に」「聲の形」の今話題の3つのアニメ作品を取り上げた。 「『生前退位は特例法で』で本当にいいのか」は、高齢を理由に生前退位の意向を示した今上天皇のお気持ちに応える形で、政府の有識者会議が特例法方式で退位を可能にする提言をまとめる線で固まったことが報じられていることを受け、1)それで陛下の問題提起に応えていると言えるのか、2)皇位の継承は皇室典範で決めることを明確に定めている憲法2条に抵触する恐れはないのか、の2点を中心に議論した。 「沖縄の基地問題から逃げ続ける最高裁」では仲井真前沖縄知事が承認した埋め立て承認を翁長現知事が取り消した決定を巡り、政府が提訴していた問題で、最高裁が12月20日、取り消しを違法とする決定を下したことの根拠の妥当性を議論した。 「元国立市長への個人賠償請求は妥当か」では、上原公子元国立市長個人が市長当時の行為をめぐり国立市から賠償請求を受けていた裁判で、12月13日、最高裁が上原氏側の上告を棄却し、上原氏に賠償の支払いを命じる高裁判決が確定したというもの。 この判決で国立市が上原氏個人に対する求償権を認める根拠となった、国家賠償法が定めるところの市長の「重大な過失」とは何だったのか。首長はどのようなことをやれば個人で損害賠償の義務を負うことになり、どこまでならば「政治目的」や「公益的」として違法性が阻却されるのか。築地市場の豊洲への移転を独断で延期したことで、事業者に対して補償の責任を負うことになる東京都の小池都知事は大丈夫なのか。浜岡原発を止めた菅直人首相が、個人賠償を追及されることはないのか。今後、自治体首長の一つの行動指針となる可能性がある最高裁判決を検証した。 その他、「君の名は。」「この世界の片隅に」「聲の形」で描かれていたものと、描かれていなかったものは何かなどを、木村氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・『生前退位は特別法で』でいいのか・埋め立て承認取り消し判決にみる最高裁の究極のご都合主義・元国立市長への個人賠償請求確定の衝撃・アニメ3部作徹底討論+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■『生前退位は特別法で』でいいのか
    神保: 来週は「5金」に当たるので、特定のテーマで議論するマル激としては、2016年最後になります。今回は盛りだくさんでお送りするため、ゲストにはおなじみの木村草太さんをお迎えしました。収録日が天皇誕生日ということもあり、「1、『生前退位は特別法で』でいいのか」、また「2、埋め立て承認取り消し判決にみる最高裁の究極のご都合主義」、「3、元国立市長への個人賠償請求確定の衝撃」、「4、アニメ3部作徹底討論」という構成で議論していきます。 生前退位については、皇室典範そのものをいじるのではなく、特措法や時限法でやるという話になったので、その意味についてぜひ話そうと。2は沖縄の件で、オスプレイの事故と重なってしまったのだけど、実は最高裁で埋め立て承認取り消しをめぐる裁判が行われていて、取り消しはできないという判決が出たことについて、しっかり議論したい。3も実は前回の高裁判決の際に取り上げたのですが、今回最高裁で、元上原国立市長個人への賠償――要するに市長の当時に国立市として行った地元の高さ制限をめぐる不動産デベロッパーとの間の問題なんだけれど、市長に対して市が賠償を請求せよという判決が出たので、あらためて議論したい。4は少し突然ですが、前回、木村さんが宮台さんに対して、『君の名は。』について宣戦布告みたいなことをされたので、『この世界の片隅に』、『聲の形』という話題作も含めて、アニメ映画について最後に話したいと。
     

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  • 春名幹男氏:トランプ政権を甘く見てはいけない

    2016-12-21 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2016年12月21日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第819回(2016年12月17日)トランプ政権を甘く見てはいけないゲスト:春名幹男氏(早稲田大学大学院客員教授)────────────────────────────────────── アメリカではトランプ政権の閣僚候補がほぼ出揃い、1月の新政権発足を待つばかりとなった。ウィスコンシン州で行われていた投票の再集計の結果、トランプの勝利は変わらず。また、ミシガン州とペンシルベニア州の再集計請求も、州の裁判所によって退けられた。 12月19日の選挙人投票で一波乱起きる可能性は残されているが、来年1月から日本が、不動産王ドナルド・トランプ率いるアメリカ政府を相手にしなければならないことは、ほぼ確実な情勢となった。 トランプ政権については様々な観測が流れているが、一言でいえば「予測不可能」というのが、衆目の一致するところのようだ。確かにトランプ自身が行政経験や公職経験が皆無な上、閣僚にも国務長官に内定しているティラーソン・エクソンモービルCEOを筆頭に、政治的にはほとんど未知数のワシントンアウトサイダーが名を連ねる。しかも、その多くは、政権の政策に対して個人的な利害を抱える利害当事者ばかりだ。これで政権の方向性を予想しろというのが、無理な相談かもしれない。 トランプは先の選挙戦で、数々の奇天烈とも荒唐無稽とも言われる法外な政策をぶちあげてきた。その多くはあまりにも非現実的なため、「実際に大統領になれば、もう少し普通になるだろう」とする祈りのような予想をする専門家は多い。 しかし、トランプ政権を甘く見てはいけない。日本のメディアではトランプが選挙戦中、メキシコや中国やイスラム教徒を目の敵にした発言が、多く報道された。しかし、トランプは明らかに日本も対峙する対象として視野に入れている。日米安保の片務性や日本の防衛力の強化、ひいては日本の核武装容認にまで言及したのも、自分たちがいいようにしてやられている日本に対して、アメリカが一方的に防衛義務を負っているのはおかしいではないかという考え方が根底にある。 今後、トランプ政権から飛び出してくるかもしれない予想外の要求は、これまで日本が採用してきた日米安保を基軸とする軽武装・経済優先の政策路線にも大きな転換を強いることになる可能性がある。そうなれば日本の民主主義の強靭さが改めて問われる局面も出てくるかもしれない。 ロシアのクリミア併合や中国の南シナ海での埋め立て、そしてブレグジットにトランプ政権の誕生と、明らかに世界は新しい時代に突入している。アメリカと協力して第二次大戦後の秩序の維持を図っていきたいと考えていた日本も、肝心のアメリカに既存の秩序を否定する政権が誕生してしまった以上、それなりの覚悟が必要になるだろう。 共同通信ワシントン支局長などを歴任し、長年日米関係を取材してきた春名氏と、トランプ政権の見通しと日本への影響について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・そもそも米大統領選はフェアじゃない・親ロシアシフトの閣僚人事が示すこと・日本が「アメリカに追従している場合でない」理由・トランプ政権誕生を奇貨として、新時代の政治家は生まれるか+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
     

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  • 鳥畑与一氏:今さらカジノなんてやめておけ

    2016-12-14 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2016年12月14日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第818回(2016年12月10日)今さらカジノなんてやめておけゲスト:鳥畑与一氏(静岡大学人文社会科学部教授)────────────────────────────────────── 日本ではお隣りの韓国の政治やアメリカのトランプ大統領の動向により多くの関心が集まっているようだが、その間も、日本の国会では重要な法案が次々と審議され、成立している。 12月6日にはカジノの設置を謳うIR法案が衆院を通過し、14日の今国会会期末までに成立する見通しだ。しかし、このIR法案は実に多くの問題を抱えている。 カジノを中核とするIR(統合型リゾート)設置の推進を謳うこの法案では、日本にも大規模なカジノの導入が想定されている。賭博を禁止している刑法に、例外的な条件を設けようというものだ。 そもそも今回の法案が想定している大規模なカジノが採算をとるためには、外国人観光客の誘致だけではとても追いつかない。かなりの数の日本人に、カジノでお金を落としてもらう必要がある。 しかし、実は日本は既にギャンブル大国だ。公式の数値では日本には競馬、競輪などの公営ギャンブルしかないことになっているが、実際はパチンコという立派な20兆円ギャンブル産業を抱える。日本のギャンブルの市場規模は5兆円余りとなっているが、パチンコの売り上げ23兆円を加えると、日本は29兆円のギャンブル市場を抱える世界に冠たるギャンブル大国なのだ。 その分、日本ではギャンブル依存症も非常に深刻だ。厚労省の調査では人口の4.8%、実に500万人以上がギャンブル依存症の状態にあるという。 脳の機能にまで異常をきたすギャンブル依存症は立派な疾病だが、日本ではギャンブル依存症に対する理解が進んでいないため、依存症になっても実際に治療を受ける人は少ない。また、実際に患者を適切に診断できる医師の数も非常に限られている。 500万人のギャンブル依存症を抱え、その対策もまともにできていない日本に、新たに大規模なカジノが導入されたらどうなるか。 経済効果ももう少し慎重な精査が必要だし、依存症対策もまず新たにカジノを始める前に、既存の依存症患者の対策が先決ではないか。カジノ法案に批判的な鳥畑教授とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・日本人が大負けしないと成立しない、カジノ法案・日本はすでに、ギャンブル大国である・十分に検討されていない、カジノが生む“社会的コスト”・依存症対策は「ギャンブルをさせないこと」以外あり得ない+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
     

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  • 木村草太氏:美濃加茂の逆転有罪判決と米大統領選再集計問題を掘り下げる

    2016-12-07 23:30  
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    マル激!メールマガジン 2016年12月7日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第817回(2016年12月3日)美濃加茂の逆転有罪判決と米大統領選再集計問題を掘り下げるゲスト:木村草太氏(首都大学東京都市教養学部教授)────────────────────────────────────── 今週はその週のニュースを深掘りするニュースマル激。 今週のテーマは、(1)美濃加茂市長収賄事件の逆転有罪判決の疑問点とその影響、(2)保守派ほど天皇陛下の生前退位に反対する理由、(3)米大統領選挙・ウィスコンシン州の再集計が露わにする電子投票の問題点の3つのニュースを、憲法学者の木村草太氏とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が掘り下げた。 美濃加茂市長収賄事件は、大方の予想に反して藤井浩人市長に逆転有罪の判決が下った。判決自体も多くの疑問が残るものだったが、より深刻なのがその影響だ。 この裁判では、藤井氏が会社社長から現金を受け取っていたことを裏付ける物証は何も出ていないため、カネを渡したという会社社長の言い分と、もらっていないという藤井氏側の言い分のどちらがより信用できるかが、唯一の争点となった。 これが有罪になるようでは、政治家は業者や市民からの提案を受け、その実現のために積極的に動くことが大変なリスクとなってしまう。 また、今回の事件は贈賄側の会社社長と検察の間に、事実上の司法取引が行われていた疑いが持たれていた。4億円近い金融詐欺で逮捕された会社社長が実際には2000万円分しか起訴されず、その取り調べの中で突如として藤井氏への贈賄の話が出てきたことから、会社社長が検察から「藤井への贈賄を認めれば、金融詐欺の方は軽くしてやる」などと取引を持ち掛けられていた可能性を、弁護側は強く追及していた。 検察にとってはケチな金融詐欺よりも現職の市長を巻き込んだ汚職事件の方が、事件としての価値は遥かに高い。検察幹部や担当検事にとって、より大きな手柄になるということだ。一方、詐欺事件で逮捕されている会社社長も、刑が減刑されるのであれば、その取引に乗らない手はない。当事者の証言のみで、そのような裏取引までが疑われた事件で、現職市長に逆転有罪判決が下ったことの影響は計り知れない。 次に、天皇陛下が生前退位の意向を示されたことを受けて、政府がその対応を検討している問題では、有識者会議が16人の専門家から相次いでヒアリングを行い、その結果が今週出揃った。様々な意見が出された中で、今回のマル激では、なぜ日頃から天皇への尊崇の念を強く表明している保守派の論客ほど、陛下ご自身の意向を無視するかのような意見を表明しているのかに注目した。 実際、保守派の論客として知られる渡部昇一上智大学名誉教授、大原康男国学院大学名誉教授、八木秀次麗澤大学教授、ジャーナリストの櫻井よし子氏らはいずれも陛下の生前退位に反対するのみならず、陛下ご自身の意思での退位を認めるべきではないとの考えを示すなど、陛下の思いや人権を無視したかに見える発言を繰り返しているのはなぜか。 最後は米大統領選挙の再集計問題。現在ウィスコンシン州で再集計が行われており、ミシガン州とペンシルベニア州でも再集計の請求が出されている。この3州は11月8日の本選ではいずれも僅差でトランプが勝利しており、その選挙人数を合計すると36となる。もし再集計の結果、3州全てでクリントンが逆転すれば、大統領選挙の結果がひっくり返る計算となる。 今回の再集計は大統領候補の一人だった緑の党のジル・スタイン氏からの請求を受けたものだが、スタイン氏は再集計を請求した理由として、ミシガン大学のアレックス・ハルダーマン教授らのグループが、今回の選挙で電子投票に使われたコンピューターがハッキングなどによって操作されていた可能性があることを指摘したことを受けたものであることを明らかにしている。 ウィスコンシン州の再集計の結果が、当初の投票結果と大きく異なるものになった場合、ハッキングの疑いが濃厚となり、他の州でも再集計を求める動きが出る可能性がある。その意味で、ウィスコンシン州の再集計は重大な影響を与える可能性がある。++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・美濃加茂市長収賄事件の逆転有罪判決の疑問点とその影響・保守派ほど天皇陛下の生前退位に反対する理由とは・米大統領選挙の再集計が露わにする、電子投票の問題点+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■美濃加茂市長収賄事件の逆転有罪判決の疑問点とその影響
    神保: 817回目のマル激です。以前、ゲストを招かず宮台さんと二人でニュースを扱うようなマル激を何度かやったことがあり、「たまにはそういうものもやりたいよね」と話していました。今回はそうしてテーマを考えているうちに、ぜひもう一人仲間を呼ぼうということで――最初に紹介してしまいますが、木村草太さんをお呼びしました。ただ、ゲストというよりも、宮台さんと木村さんが自分の立ち位置から、ニュースを切っていただくことを期待しています。 今回扱いたいニュースは3つあります。ひとつは、僕がずっと取材をしてきた美濃加茂市長の「贈収賄事件」に大きな進展があり、なんと逆転有罪判決が出ました。控訴審なのでまだ有罪確定ではありませんが、実は日本中の政治家の政治活動に大変な影響があり、司法取引の導入をやめたほうがいいんじゃないか、と思うような事例でもあります。 もうひとつは、木村さんにゲストに来ていただいたときにも議論したのですが、天皇陛下の生前退位、あるいは譲位と言われるものについて、有識者からのヒアリングが揃いました。中でも、退位に反対する意見が一部から出ており、その論拠が非常に興味深かったので、その点を中心に議論したい。 それからもうひとつは、米大統領選挙です。ウィスコンシン州で投票の再集計が行われていることは報じられているのだけれど、その背景になにがあるかということが十分に認識されていないと思います。電子投票、コンピューターを使った選挙をやる場合に、日本にも関係してくることでもあり、場合によっては選挙の結果がひっくり返る可能性もまだあるという意味で、この問題も扱いたいと思います。
     

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