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高橋和夫氏:日本は『十字軍』の一員なのか
2015-01-28 21:00550ptマル激!メールマガジン 2015年1月28日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第720回(2015年1月24日)日本は『十字軍』の一員なのかゲスト:高橋和夫氏(放送大学教授)────────────────────────────────────── 1月20日、イスラム国が人質となった2人の日本人の殺害を予告する映像を公開した。それ以降、日本のメディアは人質問題の報道一色となっている。人命がかかった緊迫した状況下で、日本政府の対中東外交政策を議論するような「そもそも論」には違和感を覚える方もいるかも知れない。しかし、今回の人質問題の意味を正しく理解し、政府のとるべき対応や選択肢を考えるためには、ビデオの冒頭でイスラム国側が指摘している「日本は自らの意思で十字軍に加わった」とする指摘の検証は不可欠だ。 言うまでもなく十字軍というのは、中世に西ヨーロッパのキリスト教諸国が、聖地エルサレムをイスラム教諸国から奪還することを目的に派遣した遠征軍のことで、イスラム側から見れば武力による侵略者であり残忍な略奪者でもあった。とは言え、そもそも日本はキリスト教国ではないし、中東のイスラム諸国とはいたって良好な関係を維持してきた国だ。とかく外交においては「アメリカのポチ」と揶揄されながら、こと中東外交においてはイスラエル一辺倒のアメリカとは明らかに一線を画した独自の路線を守ってきた。 しかし、今回の中東訪問で安倍首相は単に「イスラム国」との対決姿勢を明確にしただけにとどまらず、イスラム諸国と激しい生存競争を繰り広げているイスラエルに寄り添う姿勢を明確に打ち出している。もしここにきて日本が、アメリカと足並みを揃えんがためにその中東外交を大きく転換させようとしているのだとすれば、その是非やプロ・コン(プラスとマイナス)は十分に検討されなければならないはずだ。 中東情勢や日本の対中東外交に詳しい高橋和夫放送大学教授は、今回の中東訪問における親イスラエル路線の表明はアメリカと足並みを揃えることと同時に、安倍政権がイスラエルに接近するメリットがあると判断していることを反映しているとの見方を示す。武器輸出やカジノ解禁など安倍政権が推進したい政策にはイスラエルや世界のその分野を牛耳るユダヤ資本との連携が不可欠なものが多いことを高橋氏は指摘する。 日本は十字軍に参加したのか。その結果、手にするものと失うものは何なのか。日本が政策変更によって、今回の人質事件のようにイスラムのテロリストの標的となる確率を高めてまで得られるものとは何なのか。高橋和夫氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・日本は「十字軍」に参加したのか・安部首相の中東歴訪の意図と、その影響とは・この戦いに“勝利”はあるのか・イスラム国はなぜ危険なのか+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
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南清貴氏:異物混入問題と危機に瀕する食システム
2015-01-21 22:30550ptマル激!メールマガジン 2015年1月21日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第719回(2015年1月17日)異物混入問題と危機に瀕する食システムゲスト:南清貴氏(フードプロデューサー)────────────────────────────────────── 食品への異物混入が相次いでいる。特にハンバーガーチェインのマクドナルドでは各地の店舗で人間の歯やビニール片、鉄くずなどの混入が報告され、メディアでも大きく取り上げられている。ビジネス誌などでは企業のガバナンスや品質管理のあり方が問題視されているようだが、果たしてこれはそのような次元の問題なのだろうか。 一連の異物混入事件について、自らもオーガニック・レストランを手がけた経験を持つフードプロデューサーの南清貴氏は、「混入が騒がれている商品はいずれも食品というより工業製品だ」とした上で、工業製品の製造工程では一定数のエラーが起きることは避けられないことから、異物の混入もそれほど驚くことではないと言う。しかし、より重要かつ本質的な問題は、製造工程でどの程度エラーが起きるかではなく、人間の基本的な営みである食が、工業製品として扱われているところにあるのではないかと、南氏は指摘する。 コンビニやファストフード店に行けば数百円で、十分にお腹を満たしてくれるだけの食料が手に入る。そのような「豊かさ」こそが、先進国の証であるかのように思われてもいる。しかし、そうした「消費者ニーズ」を満たすために、生産面でもコスト面でも、そして流通面でも、世界の食システムにはもはや限界を超えた負荷が掛かっているとの指摘が出始めている。100円でハンバーガーを提供する世界最大のファストフード・チェインのマクドナルドは、ある意味でその象徴的な存在と言っていいだろう。 この際、われわれは消費者として、その「100円ハンバーガー」や「290円牛丼」、「300円弁当」を提供するために、コストカットと称してどれだけの工業的な合理化が行われ、それと引き替えに農薬や化学肥料、食品添加物の濫用といった形で食の安全性が犠牲になっているかに目を向けるべき時が来ているのではないだろうか。 一連の異物混入事件の背後で日本の食システムに何が起きているのか。その結果として、異物混入以上に危険なことが起きていないのか。安全健全で持続的な食システムを守るために消費者として何ができるのかなどを、ゲストの南清貴氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・“工業製品”である以上、異物混入などのトラブルは避けられない・日本の食を変える、ファストフードと農業システムの問題・理想的な食事バランスを示す「オプティマル・フード・ピラミッド」とは・「食生活のシステム」をいかに築くか+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
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小熊英二氏:日本が日本であり続けるための条件
2015-01-14 20:00550ptマル激!メールマガジン 2015年1月14日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第718回(2015年1月10日)日本が日本であり続けるための条件ゲスト:小熊英二氏(慶應義塾大学総合政策学部教授)────────────────────────────────────── これから日本社会はどうなっていくのか。年始のマル激は、社会学者で慶應義塾大学教授の小熊英二氏を招いて議論した。 昨年末の総選挙の結果で自公政権が安定多数を得たことで、安倍政権の掲げる諸政策が当面は継続される見通しだ。その中にはアベノミクスと呼ばれる経済政策や集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更、秘密保護法制、原発の再稼働などが含まれる。安倍政権はメディアに対する影響力も強めており、一見、権力基盤は盤石であるかに見える。 しかし、小熊氏は、安倍政権は決して強い政権とは言えないと語る。安倍首相は大きな政策変更を成し遂げているように見えて、実際はそれほど大きなことはできていないというのが、その理由だ。小熊氏は現在の安倍政権の政策の大半は別の勢力が政権の座についていても、実施されている可能性が高いものだと指摘する。安倍首相は経済政策を前面に打ち出し、金融緩和や公共事業で株価が維持され、つかの間の好況感が続く間に、戦後レジームからの脱却と言われる施策を一つでも実現したいと思っているように見えるが、今の日本では政治が世論と大きく乖離した政策を実現することは所詮難しいだろうと小熊氏は言う。 むしろ深刻なことは、自民党の支持基盤が既得権益を維持しようとする特定の業界、いうなればオールド・オールジャパンに偏っているため、現在の政策が続く間は日本の衰退が続くことが避けられないことではないかと小熊氏は言う。 もはやジャパン・アズ・ナンバーワンの時代の栄華は望むべくもないが、かといって日本の現状は決して悪くないと言う。世界のどの街を見ても、日本以外に住みたいと思えるところはないからだ。しかし、治安の良さ、清潔さ、礼儀正しさ、勤勉さといった「日本らしさ」を支えている社会的共通資本も、ここに来て急速に劣化が進んでいる。このままそれを放置すれば、治安の悪化や社会インフラの劣化など、途上国でよく見かける光景が早晩日本で起きてもおかしくはない。 そのような最悪の事態を食い止め、経済的な豊かさはほどほどでも、分厚さを持った社会を作っていくために、われわれは今何をしなければならないのか。変化のきっかけをどこに求めればいいか。ゲストの小熊英二氏とともに神保哲生と宮台真司が議論した。+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・安倍政権は「強い政権」ではない・低下し続ける日本の社会力は、回復できるのか・「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の夢を捨て、目指すべきもの・安倍政権での「気づき」を次に活かせるか+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
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小林慶一郎氏:シリーズ 日本経済、危機の本質(1)破綻を避けるにはこの道しかない
2015-01-07 21:00550ptマル激!メールマガジン 2015年1月7日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第717回(2015年1月3日)シリーズ 日本経済、危機の本質(1)破綻を避けるにはこの道しかないゲスト:小林慶一郎氏(慶應義塾大学経済学部教授)────────────────────────────────────── 首相自らがアベノミクス選挙と位置付けた年末の総選挙に与党が勝利したことで、日本は当分の間、安倍政権下で金融緩和と公共事業を柱とする経済政策を続けることになった。 しかし、日本経済、とりわけその財政は、既にのっぴきならない状況にあると言われて久しい。アベノミクスでわれわれは危機を回避できるのか。 財政問題に詳しい経済学者の小林慶一郎慶應義塾大学教授は、アベノミクスによる金融緩和によって円安が進むことで一時的に輸出関連企業の業績が好転し、目先の景況感が改善する可能性があるが、そのことでかえって痛みを伴う根本的な施策が先延ばしにされる恐れがあるとの懸念を表明する。 2014年度は約96兆円の歳出に対し、歳入はほぼ半分の50兆円で、不足分は国債で穴埋めしている。長年にわたりこのような借金財政を続けてきたために、今年度、日本の債務の残高は1000兆円を突破してしまった。昨年12月には日本の国債の格付けがAa3からA1に1格下げされ、今や日本の国債はG7先進7カ国のなかではイタリアに次いで低くなっている。 このような財政状況を続けた結果、日銀が国債を買い支え続ければ、円安が進むことで日本の国富が失われ、インフレが制御不能な状態になる恐れが出てくる。一方、日銀が国債の買い支えをやめれば、日本の国債が暴落する危険性が顕在化する。いずれにしても、危機は避けられないと小林氏は言う。日本に残された選択肢は、大幅な増税か歳出の削減しかない。しかし、いかなる政党でもこのような痛みを伴う政策を主張すれば、たちまち選挙で大敗することは必至だ。昨年末の総選挙でも、増税を主張した政党は皆無だった。 それもそのはずで、2060年までに借金を現在の半分にまで圧縮するために、これを消費税だけで賄おうとすると税率を35%まで引き上げなければならなくなるし、これを歳出カットで対応しようとすれば、毎年の歳出を現在の3分の1程度まで削減しなければならない。 いきなり消費税を20%だの35%だのに引き上げることも、社会保障費を一律50%カットすることも、いずれも現実的ではない。だとすると、われわれはどこから手をつければいいのだろうか。日本経済が直面する本質的な問題について、経済学者の小林慶一郎氏とともにジャーナリストの神保哲生と宮台真司が議論した。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・日本経済の現状と、迫っている危機・日本で財政危機が話題にならないのは「最大の謎」・財政危機、深刻化のシナリオとは・経済の制度を変えれば済む問題を、変えられずに困っている日本+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
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