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記事 4件
  • 栗崎周平氏:日本の独自防衛をシミュレーションしてみた

    2016-05-25 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2016年5月25日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第789回(2016年5月21日)日本の独自防衛をシミュレーションしてみたゲスト:栗崎周平氏(早稲田大学政治経済学術院准教授)────────────────────────────────────── 「日本は自国防衛のコストを負担していない。米軍の駐留費を支払うか、さもなくば自力で防衛しろ」。他でもない、アメリカ大統領選挙で共和党候補としての指名が確実視されているドナルド・トランプが何度も繰り返し主張している、いわば彼の自論だ。トランプ大統領誕生の可能性がどうあれ、暴論が売り物のトランプが、日米間で長らく封印されてきたパンドラの箱を開けたことは間違いないだろう。 現在の日本の防衛は日米安保を基軸としている。基軸というよりも在日米軍に依存しているといった方がより正確だろう。日本は、思いやり予算や米軍のグアム移転費用の負担なども合わせて、2016年度予算で6303億円を在日米軍関係の費用として負担しているが、在日米軍に関してはアメリカが年間約6050億円(約55億ドル)を支出しているので、日本の負担分は在日米軍駐留コストの約半分ということになる。 毎年6050億円というのは決して小さな金額ではないが、一方で、もし日本が日米同盟を解消し、自力で国防を担うことになった場合、仮に他の条件が現状と同等だとすると、そのコストは毎年23兆円を超えると、防衛大学の武田康裕教授らは試算している。 早稲田大学政治経済学術院准教授で国際政治学者の栗崎周平氏は、日本にとって日米同盟は独自防衛よりもはるかに安価で効率的な仕組みだと指摘する。つまり、現在の日米関係が日本にとって有利な、米国にとっては過度な負担を強いられたものになっているというトランプの指摘は、まんざら間違っているわけではないようだ。 戦後の日本が、日米同盟に依存することで軍事負担を免れ、その分、経済活動に専念したことで今日の経済的繁栄を手にしたことは言を俟たない。しかし、戦後の日本がそのような幸運な立場を享受できたのは、東西冷戦など国際政治上の条件が、たまたま日本にとって有利なものになっていたからだ。 21世紀の地政学の下で、日本にはどのような選択肢があるのか。このまま日米同盟一辺倒でいくことが、日本にとって本当に得策なのか。日米同盟の真のコストと、日本が独自防衛をした場合のコスト、そしてその際に生じるリスクなどについて、紛争発生のモデルケースやゲーム理論などを参照しながら、ゲストの栗崎周平氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・トランプの主張――米軍の日本駐留は“一方的な贈与”だったのか・とは言え、日本にとって圧倒的に有利にも思える日米同盟・日本が進む道は“重武装・同盟強化”か、それとも……+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
     

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  • 尾松亮氏:なぜ日本にはチェルノブイリ法が作れないのか

    2016-05-18 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2016年5月18日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第788回(2016年5月14日)なぜ日本にはチェルノブイリ法が作れないのかゲスト:尾松亮氏(関西学院大学災害復興制度研究所研究員)────────────────────────────────────── ロシアやウクライナにできたことが、なぜ日本にはできないだろうか。史上最悪の原発カタストロフィと呼ばれたチェルノブイリ原発事故から今年で30年になるが、チェルノブイリ原発があるウクライナとその周辺のロシア、ベラルーシにはチェルノブイリ法という法律が存在する。そして、各国政府はそのチェルノブイリ法に則って、事故によって健康被害を受けた可能性のある人々や、避難や移住を強いられた人々の補償にあたってきた。 しかし、日本では事故の第一義的な責任は東京電力が負うことになったため、強制的に避難させられた被害者への賠償は東電が行っている。そして、政府は除染作業を進めることで、年間被曝量が20ミリシーベルトの基準を下回った区域から順に帰還を進めている。避難指示が解除され、避難が強制的ではなくなった区域の住民から順次賠償は打ち切られることになるため、5年にわたる避難を強いられた被害者は被曝のリスクを覚悟の上で、まだところどころホットスポットが残る故郷へ戻るか、賠償の支払いが止まることを前提に、故郷へは帰らないことを選択するかの、二者択一を迫られることになる。 ロシアの研究者でチェルノブイリ法に詳しい関西学院大学災害復興制度研究所研究員の尾松亮氏は、チェルノブイリ事故と福島事故の決定的な違いが、国家が補償の責任主体とした点と、避難を必要とする放射能汚染の基準にあったと指摘する。チェルノブイリ法では、原発からの距離に関係なくICRP基準の年間被曝量が1ミリシーベルト以上の地域に住む人が、避難のための移住や健康被害に対する支援の対象とされ、国が「世代を超えて補償を続ける」ことが定められた。 一方、福島では1ミリシーベルトの被曝基準は2011年3月11日の原子力緊急事態宣言の発令によって一時的に20ミリシーベルトに引き上げられ、それがそのまま現在の基準となっている。政府が進める帰還政策も、年間20ミリを下回った区域から順次行われている。健康被害についてはいまだに因果関係をめぐる議論に終始している有様だ。 なぜロシアやウクライナはチェルノブイリ法を制定することができたのか。そして、なぜ日本にはそれができないのか。その結果、原発事故の被害者たちは今、どのような状態に置かれているのか。チェルノブイリ法の仕組みや背景と日本の現状をゲストの尾松亮氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・国が責任を負うチェルノブイリ法・日本にない、被災者への手厚い補償はなぜ盛り込まれたか・数値で定義された“復興”が招く、正義なき自己責任・「甲状腺がんは5年後から増える」の落とし穴+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■国が責任を負うチェルノブイリ法
    神保: 今年の4月26日で、チェルノブイリ原発事故から30年の節目を迎えました。3週間遅れになってしまいましたが、このタイミングでこれだけはどうしてもやっておきたい、と考えて今回企画しました。熊本でも避難生活が続いていますが、今年は東日本大震災、福島原発事故から5年目で、こんな言葉を本当は使ってはいけないのですが、現実問題として3.11が“風化”し始めているように思います。
    宮台: 少し抽象的な話になりますが、物事が正しいか正しくないか、つまり正義があるかないか、法が貫徹しているかどうかということは、人々が関心を持つかどうかとは別の問題です。しかし、僕たちは人が関心を持ち、それについて非難や批判をしていれば悪いことだと考え、人が関心を失って非難が小さくなると、もう悪くなくなった、場合によっては禊が済んだ、という話になってしまう。これは山本七平さんが最初に議論した心の習慣の問題で、あらためて悲しく思い出します。
     

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  • 田中俊之氏:男の生き方が変わらなければ日本は何も変わらない

    2016-05-11 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2016年5月11日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第787回(2016年5月7日)男の生き方が変わらなければ日本は何も変わらないゲスト:田中俊之氏(武蔵大学社会学部助教・社会学者)────────────────────────────────────── 結局日本は男が変わらないと何も変わらないってことか。このゴールデンウィークもメディアは相変わらずの出国、帰国ラッシュを取り上げている。あたかも日本中がバケーションモードに入っているような感覚を受けるが、あるアンケートでは今年のGWが10連休だったと答えた人は6%程度。3分の1はカレンダー通りに出勤していたそうだ。 かつては「24時間戦えますか」などとCMががなり立てていた時期もあった日本が、経済停滞期に入って20年が経った。年間の総労働時間は多少短くなっているが、その一方で、一日あたりの労働時間は逆に増えている。 社会学者で男性学を専門に研究している武蔵大学助教の田中俊之氏は、日本人の働き方が変わらないことの原因が、男が変われないところにあると指摘する。日本の男性中心の労働環境や労働慣行が変わらない限り、働き方のみならず、われわれの生き方もなかなか変わることができない。このままでは日本の前途は暗いと田中氏は警鐘を鳴らす。 近年、働き方や価値観が変わったと言われるが、日本人男性が一家の家計を支えることが全ての前提になっている点はほとんど変わっていない。しかも、日本では男性が40年間フルタイムで働き続けることを前提に、職場も家計も成り立っている。しかし、これは経済成長が見込める時代に人為的に作られた制度であり前提だ。その前提が変わっているのに働き方を変えられない男性が抱える矛盾は大きくなる一方だ。 『男が働かない、いいじゃないか!』などの著書のある田中氏によると、日本の男性は物心ついたときから競争に勝つことを要求されてきた結果、理不尽な慣習や制度でも競争の一環と捉え、それに順応してしまう傾向が強い。女性のように新しい友人のネットワークを作ることが不得手で、結果的に友達もできず趣味も見つからず、仕事に没頭することが男性の生き方そのものになってしまう場合が多い。 最近、1998年から続いていた年間3万人を超える自殺者数がようやく2万5000人まで減ったことが報じられているが、そのうち3分の2に当たる1万7000人強を男性が占めている。なぜ日本の男はこうも生きづらいのか。それが社会にどのような影響を与えているのか。男が変わるためにまず何が必要なのか。日本が抱える諸問題の根っこにある日本の男の問題を、田中俊之氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・日本人の労働観はいかにして生まれたか・男の子に競争を求める教育は、マイナスになる・“イクメン”VS“粘土層”という不毛な構図・ポイントは「別の生き方がある」と思えるか+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■日本人の労働観はいかにして生まれたか
    神保: 今日は5月6日金曜日です。5月2日月曜日も平日ですが、この2日を有給か何かで休めば、最大で10連休になるという話です。大学は暦通りですか?
    宮台: ええ。大学によっては月曜日に授業があるところも、今日金曜日に授業があるところも普通にあります。それだけではなく、大学は今、いわゆる祝祭日にも授業を行うところが出てきている。文部省から「半期15コマ最低ライン」通達が出ていますから。
    神保: “15コマ問題”ですね。「とにかく15コマやれ、中身は問わない」と。要するに、いま休んでしまうと、試験前の忙しいときに補講を行わなければならなくなるかもしれないと。だったらむしろ、こんなどこに行っても混雑しているようなときに休むより、授業をやってしまったほうがいい、という話になるかもしれませんね。
    宮台: 今日のお話のひとつの重要なモチーフになることですが、そもそも昔から「早く連休終わらないかな」と考える人がいます。家族と仲がいいわけでもなく、義務としてどこかに連れて行くのも面倒だし、つまりワーク・ライフ・バランスという言葉を使うとすれば、「ワーク」とバランスをとるべき「ライフ」が非常に貧しく、せいぜい個人的な趣味に毛が生えたようなものしか想像できない。仕事をしている自分についてはイメージを明確に持つことができ、承認可能性も十分に期待できるが、プライベートにおいてそれなりに分厚い承認可能性や、充実した何かがないのです。だから、単に仕事を減らせばいいかというと、それだけでは難しい。
     

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  • 岩波明氏:誰が何に対してそんなに怒っているのだろう

    2016-05-04 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2016年5月4日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第786回(2016年4月30日)5金スペシャル 誰が何に対してそんなに怒っているのだろうゲスト:岩波明氏(昭和大学医学部教授・精神科医)────────────────────────────────────── 次は誰が叩かれるのだろう。5週目の金曜日に特別企画を無料でお届けする恒例の5金スペシャル。今回の5金では昭和大学医学部教授で精神科医の岩波明氏をゲストに迎え、蔓延する「不謹慎叩き」と、その背景にある日本社会の不寛容化の原因を議論した。 ここのところ日本では、常に誰かが叩かれている。原因は不倫だったり、生意気な態度だったり、不適切な発言だったりとさまざまだが、どうも理由は何だっていいようにも見える。不正を働いた公人に怒りを覚えることは必ずしも悪いことではないが、「不謹慎」だの「生意気」だのといった理由で、一般の企業や一般人までが次々と吊し上げに遭っている状況は、やや常軌を逸しているようにも見える。 精神科医で『他人を非難してばかりいる人たち バッシング・いじめ・ネット私刑』などの著書のある岩波明氏は、ネット上で横行するバッシングに加担している人たちは、実際に何かに怒っているのではなく、他者を叩くことを自分が社会から受けているストレスのはけ口にしている場合が多いのではないかと指摘する。 ネット上のバッシング情報は、マスメディアにとっては格好のネタとなる。早晩テレビや週刊誌がこれを取り上げ、バッシングは社会現象の様相を呈するようになる。これまでもそうしたネタがテレビや雑誌に持ち込まれ、取り上げられることはあったが、今やマスメディアの側が、常にネット上でネタを探し回っている状況だ。 また、精神科医として今も多くの患者を診ている岩波氏は、そもそも他者を攻撃せずにはいられない人が増えている原因として、われわれが日々社会から受けているストレスが、量的にも質的にも変質してきていることを指摘する。今や、行く先々でコンプライアンスが叫ばれ、会社でも大学でも、常に規範性やガバナンスの徹底を強制されるようになった。その生き辛さは精神疾患のような形で表面化することも多いが、異常なまでに他者を叩くことに執着する人が増えているところにも、その片鱗を見ることができると岩波氏は言う。 われわれは一体いつからこんなに不寛容になってしまったのか。事あるごとに大勢の人間が寄ってたかって特定の個人や団体を叩いて溜飲を下げる社会が、健全な社会と言えるのか。日本特有の原因があるとすれば、それは何なのか。常に誰かを叩かずにはいられなくなっている日本の現状とその背景について、精神科医の岩波明氏とともに議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・増え続けるバッシング、ネット炎上騒動・原因は「世界が小さくなったこと」「社会の変化」「日本人の特性」・社会のモードが変わらなくなり、“世間”がなくなった・「自分に不利益はないではないか」という考え方+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
     

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