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上脇博之氏、郷原信郎氏:裏金が作り放題の政治資金規正法の大穴を埋めなければならない
2024-04-24 20:00550ptマル激!メールマガジン 2024年4月24日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1202回)
裏金が作り放題の政治資金規正法の大穴を埋めなければならない
ゲスト:上脇博之氏(神戸学院大学法学部教授)、郷原信郎氏(弁護士、元検事)
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政界を揺るがしてきた一連の裏金疑獄は、これから最も重要な局面を迎える。そもそも不正を引き起こした法律上、制度上の原因を探り、必要となる法改正をめぐる議論が国会で始まったからだ。
今回の裏金問題は元々、神戸学院大学の上脇博之教授が赤旗の取材を受けた際に、自民党の各派閥が政治資金パーティの収入を正しく報告書に記載していないことを知り、自らも調査を発展させた上で刑事告発したことが全ての発端だった。東京地検特捜部が捜査に着手すると、単なる派閥によるパーティ券収入の不記載や虚偽記載にとどまらず、多額の裏金が議員に還流されていたことがわかり、一大スキャンダルに発展していった。
その上脇氏は、現行の政治資金規正法に基づいて政治家や派閥、政党、政治団体などが提出している政治資金収支報告書は、その中身をチェックすることがとても困難なことを、自らの経験に基づいて強調する。総数にして数百万ページはあろうかという収支報告書はウェブ上で閲覧が可能になっているが、一つ一つのページがデータ化されていないPDF形式で公開されているため、検索をかけたりソート(並び替え)などができない。
驚いたことに現行制度の下では、政治資金規正法が守られているかどうかをチェックするためには、数十万から数百万ページはある報告書を一枚ずつ手繰っていくしかないのだ。
上脇氏は膨大な時間をかけて、報道などで各派閥のパーティ券を大量に買っていそうな政治団体の支出と、パーティ券を売っている派閥の収入を突き合わせることで、辛うじて4,000万円あまりの記載漏れがあることを突き止め、これが今回の刑事告発につながった。しかし、赤旗による地道な調査報道と上脇氏による刑事告発がなければ、今も当たり前のように還流や裏金作りが粛々と行われていたことになる。実際、パーティ券の売り上げの還流による裏金作りは少なくとも2005年には始まっていたことが、共同通信によって報道されている。
また、収支報告書は監督する権限を与えられた省庁や第三者機関が存在しないため、実際は報告内容が正確かどうかを誰もチェックしていない状態にあるというのも驚きだ。法律に基づいてどんな規制が設けられていようが、更にその規制をどれだけ強化しようが、最終的にそれが遵守されているかどうかを誰もチェックしていないし、したくてもそれが物理的に困難ということでは、そのような法律は法の体を成していないと言わざるを得ない。これは「ザル法」だとか「抜け穴」だとか以前の問題だ。
他にも現行の政治資金規正法に基づく制度の中で、「最低でもこれだけは変えなければならない」ことを列挙したものが、上脇氏が理事を務める公益財団法人政治資金センターとビデオニュース・ドットコムの人気番組『ディスクロージャー・アンド・ディスカバリー』の司会を務める三木由希子が理事長を務める情報公開クリアリングハウスから「政治にかかわる資金の透明性確保を求める意見書」という形で公開されているが、その内容を見ると、これまで政治資金規正法がいかにザル法だったかを痛感せずにはいられない。
その上で、政治資金の野放図な実態を熟知している上脇氏は、事実上の企業・団体献金の抜け穴となっている政治資金パーティも禁止すべきだし、政党交付金も廃止すべきだと主張する。企業・団体献金そのものには賛否両論があるが、上脇氏が問題にするのは、企業は政治資金収支報告書の提出義務がないため、受け取った派閥や政治団体側が正直にパーティ券収入を報告しない限り、その実態を知る術がないことだ。
どこかの企業が記載義務が生じる20万円以上のパーティ券を買っていても、あるいは150万円の上限を超えて購入していても、受け取った側がそれを記載せずにすべて裏金に回していても誰にもわからないことになる。
また政党交付金については、そもそも政治資金の規律を全く守れない政党や政治家に100億円単位の交付金を渡すことは、「盗人に追い銭」であり「依存症患者に麻薬を渡すようなもの」に他ならないからだ。
検事時代に政治家の裏金問題を捜査した経験を持つ弁護士の郷原信郎氏は、今回有権者の期待とは裏腹に裏金を貰っていた議員の摘発が3人にとどまった理由を、「政治資金規正法の真ん中に空いた大穴のため」と説明する。複数の政治団体を持っている政治家が、裏金をどの団体に入れたのかを明確にしない限り、検察は「起訴状が書けない」という刑事訴訟法上の問題が生じる。そのため政治家が政治資金の受け皿として使える団体を一つに限定するなどの法改正が必須だと指摘する。
国会では政治資金規正法の改正案の審議が始まろうとしているが、これまで与党側が出してきた改革案はあまりにもいい加減なものばかりだ。有権者がよほどしっかりしなければ、「私たちはこれからも裏金作りに勤しみます」と宣言されているような改革案でお茶を濁されて終わってしまいかねない。
政治資金規正法はその第一条で、政治を国民の「不断の監視と批判の下」に置くことがその目的であると宣言しているが、上脇氏や郷原氏が提唱する法律の改正案はいずれもそれを実現するためには不可欠なものばかりだ。現行の法律は不断の監視はおろか、まったく監視ができない代物になっている以上、抜本的な改正が待ったなしだ。一刻も早く「金のための政治」を終わらせ、国民のために働く政治を取り戻すためには、有権者のわれわれ一人ひとりが、まずは現行制度の問題点を知ることで、デタラメな改革案に騙されないようにすることではないか。
今回の自民党裏金問題の発端となった告発をした上脇氏と、弁護士の郷原氏、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が、日本の政治に先進国として当たり前の透明性を持たせるために最低限必要となる施策とは何かを議論した。
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今週の論点
・裏金問題が明るみに出るまでの動き
・裏金の実態を解明しそこなった検察と大穴を埋めるつもりがない政治家
・政治資金規正法の改正すべきポイント
・政治とカネの問題は根本的な制度改革がなければ解決しない
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■ 裏金問題が明るみに出るまでの動き
神保: 今日は2024年4月19日です。岸田さんがアメリカから帰ってきてから早速、政治資金規正法をめぐる審議が始まりますが、このままだとどうしようもない改正になりそうなので、何を変えなければならないのかをきちんとやりたいと思います。
政治が官僚の上位に立てない最大のからくりがここにあり、30年変われないどころか日米合同委員会図式が変わらない理由もここにあります。本来は有権者の信認を受けている政治が上位にあるのですが、日本には官僚と報道の官報複合体があるので、リークをして記者クラブを通じてニュースを出すと国民がそちらについてしまいます。
政治メディアは政治のドラマばかりやっていて、法案の中身を検証することが苦手です。受け手もドラマ仕立ての政治報道にひかれています。それではいけないと思うので、今回は法案の中身をしっかりやりたいと思います。
ゲストは弁護士で元検事の郷原信郎さんと、神戸学院大学法学部教授の上脇博之さんです。 今回は上脇先生のご尽力によるパーティ券収入の不記載、裏金の告発が全ての発端だったと思うので、そもそもどういう経緯でそうなったのかということを最初に伺ってもよいでしょうか。
赤旗の記事が出たのが2022年11月6日でしたが、そこから2024年1月までにいくつも虚偽記載や不記載の告発をされています。また裏金での告発もされていて、2024年4月11日には丸川珠代氏の告発を郷原さんと一緒にされています。告発状を見せてもらいましたが、大変な労力がかかっていてすごいとしか言いようがありません。
政治資金収支報告書を調べ、告発状を書くためにどのくらい時間を費やされたんでしょうか。
上脇: 一日ではチェックしきれないのでとにかく時間を使いましたが、正確に言うと、元々は赤旗日曜版の記者さんによる、僕よりもすごい努力がなければ告発できませんでした。彼らが僕の告発以前にいかにがんばったのかということを後ほど解説したいと思います。 -
遠藤乾氏:NATOの拡大で変わる欧州の安全保障と日本が考えるべきこと
2024-04-17 20:00550ptマル激!メールマガジン 2024年4月17日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1201回)
NATOの拡大で変わる欧州の安全保障と日本が考えるべきこと
ゲスト:遠藤乾氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
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昨年のフィンランドに続き、スウェーデンが今年3月7日、NATO(北大西洋条約機構)に加盟した。200年以上も非同盟中立を守ってきたスウェーデンの方針転換はヨーロッパの安全保障のあり方を根底から変えるかもしれない。
元々ロシアのプーチン大統領にとって、ウクライナへの軍事侵攻はNATO東方拡大への対抗の意味合いを持っていた。しかし、結果的に侵攻によってNATOが益々拡大することになった。遂にNATOという軍事同盟は、フィンランドの1,500キロに及ぶロシアとの国境を隔てて、ロシアと直接向き合うことになってしまった。
東京大学大学院法学政治学研究科教授でヨーロッパの安全保障に詳しい遠藤乾氏は、ロシアによるウクライナ侵攻がなければスウェーデン、フィンランドがNATOに加盟することはなかったという意味では、ロシアのオウンゴールのようなものだという。その上で、ロシアと近接しながらこれまでNATOには加盟せずに「ノルディックバランス」を保ってきた両国が加盟に踏み切った最大の理由は、ウクライナに対するプーチンによる核の脅しだったという。
核兵器の使用も辞さないプーチンの姿勢を目の当たりにして、もはやNATOの核の傘に入らなければ自国の安全を保てないとの確信を得たことが、NATOへの加盟を後押ししたと遠藤氏は指摘する。
結果的にスウェーデンとフィンランドがNATOに加盟したことにより、バルト海はNATO加盟国に取り囲まれることになった。これまではEUには加盟してもNATOとは一定の距離を置いてきたスウェーデン、フィンランドの両国がNATOに加盟したことで、EUとNATOの版図がほぼ一致することになり、結果的に東西の境界がより鮮明になった。また、NATOという軍事同盟がNATOを脅威に感じるロシアと直接向き合うことになったことで、自ずと欧州の軍事的緊張は高まることが避けられない。
さらにここに来て大きな問題となっているのが、NATOの盟主であるアメリカが果たしてNATOにとどまり続けるかどうかが怪しくなっていることだ。11月の大統領選挙で実際に再選される可能性が出てきているトランプ前大統領は、度々NATOからの脱退も仄めかしてきた。NATOというアメリカを中心に形成された同盟体制が、スウェーデンとフィンランドの加盟でより盤石になったように見えても、アメリカが抜けてしまえば、すべての前提が崩れてしまう。
遠藤氏はアメリカ抜きのNATOで各国が足並みを揃えてロシアに太刀打ちすることは難しいだろうと語る。アメリカの動静次第では、欧州の安全保障が第二次大戦後もっとも視界不良な時代に突入する可能性が出てきているのだ。
一方で、今週、訪米中の岸田首相が米連邦議会で演説を行ったが、その中で首相は、日本がアメリカと肩を並べて世界秩序の維持に邁進する覚悟があると大見得を切った。また、日本はグローバルな秩序の維持にもアメリカと一緒になって取り組むとまで約束している。国賓待遇で歓待してくれているアメリカへのリップサービスの面があるにしても、いつ日本はそんなことを決めたのだろうか。そもそも憲法の制約がある中で、そんな空手形を切って大丈夫なのか。
バイデン大統領から日本が最重要な同盟国などと持ち上げられて喜んでいる首相のはしゃぎ過ぎが心配だ。
欧州の安全保障も東アジアの安全保障も、結局のところ20世紀の大半で圧倒的な優位性を誇っていたアメリカの力が相対的に落ちているところに問題がある。そうした中で日本は引き続きアメリカ一辺倒の外交政策を続け、かつてアメリカが果たしてきた軍事的な役割を世界規模で肩代わりするところまでやるつもりなのか。その力が日本にあるのか。それが日本の真の国益に適うことなのか。今一度厳しく検証する必要があるだろう。
中立を保ってきた北欧諸国が軍事同盟に参加することで欧州の軍事バランスはどう変わるのか。「もしトラ」が実現しアメリカが再び極端な孤立主義路線に転じた時、欧州や日本の安全保障はどうなるのかなどについて、東京大学大学院法学政治学研究科教授の遠藤乾氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・北欧諸国のNATO加盟はヨーロッパをどう変えるのか
・ビクトリア・ヌーランドの退任とネオコンの行方
・なぜウクライナはNATOに加盟できないのか
・落ちていくアメリカにすがり続けることが日本にとっての国益なのか
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■ 北欧諸国のNATO加盟はヨーロッパをどう変えるのか
神保: 今日は2024年4月13日の土曜日です。メインのテーマは、フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟したことでヨーロッパの安全保障がどうなるのかということですが、それを見て日本は何を考えなければならないのかということも話したいと思います。
ゲストは東京大学大学院法学政治学研究科教授の遠藤乾さんです。子どもの頃からの常識として、中立といえばスイスやスウェーデンを思い浮かべるのですが、今回それが崩れ落ちました。スウェーデンのNATO加盟はロシアのウクライナ侵攻に対するリアクションという理解で良いのでしょうか。
遠藤: スウェーデンの場合はナポレオン戦争以来の国是のようなものを変えました。ただ中立といっても、冷戦時代にスウェーデンの統合参謀本部が持っていた軍事作戦は対ソ連政策しかなかったので括弧付きの中立ではあるのですが、ポイントはプーチンさんの核の脅しだったと思います。フィンランドは冬戦争の時に当時のスターリンの軍隊を撃退し、自分たちの中に反ソ的な人を入れないということで手を打ちました。
スウェーデンもフィンランドも通常兵器であればロシアを撃退する自信があると思うのですが、核の脅しを聞いた時、NATOに入り核の傘の下に入らなければ自分たちではどうしようもないと思ったのだと思います。
神保: 逆にこれまでスウェーデンがEUやNATOにあえて入らないという道を歩んできた道理は何だったのでしょうか。 -
佐藤彰一氏:現行の成年後見制度では認知症になった人の権利を守れない
2024-04-10 20:00550ptマル激!メールマガジン 2024年4月10日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1200回)
現行の成年後見制度では認知症になった人の権利を守れない
ゲスト:佐藤彰一氏(弁護士、全国権利擁護支援ネットワーク顧問)
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成年後見制度ができて四半世紀。数々の問題が指摘されてきたこの制度に、やっと見直しの動きが出てきた。
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などが理由で判断能力が低下した人の財産管理などを代理人が行う仕組みで、2000年にスタートした。成年後見人になるためには特別な資格は必要なく、家族のほか、弁護士や司法書士、社会福祉士などがなる場合が多い。また、その報酬は基本的には被後見人となる本人が負担する。
認知症によって判断能力が衰える人が増加し、後見制度の必要性が高まる一方で、現行の制度は課題が多く利用しにくいことが指摘されてきた。今年2月に法務大臣が見直しを法制審に諮問したのを受けて、今月から審議が始まる。
成年後見制度は、明治時代から続いてきた民法の禁治産制度を改正して2000年に始まった。禁治産は、判断能力がないとされた人に対して様々な行為を制限するもので、裁判所から禁治産者の宣告を受けると財産の管理能力がないとされ選挙権も与えられなかった。同年にスタートした介護保険が、サービスの利用を行政が措置する制度から、利用者が契約する制度と変わるのに合わせて、同様の考え方で現行の成年後見制度が作られたという経緯がある。
しかし、例えば遺産分割などで認知症の当事者に一度後見人をつけると、亡くなるまで利用をやめることができないほか、その後の介護サービスの利用などについても後見人の判断が求められるなど、非常に煩雑で使い勝手が悪い制度となっていた。
さらに、成年後見人には包括的な取消権、代理権が与えられ、被後見人の意思がまったく考慮されなくなる問題も指摘されていた。一昨年、国連は、障害者権利委員会の総括所見として「意思決定を代行する制度を廃止する」観点から民法の改正を日本政府に勧告している。
弁護士で2月まで全国権利擁護支援ネットワークの代表を務めていた佐藤彰一氏は、判断能力の有無を他者が決めることができないという理由から、判断能力がないことを前提とするのではなく、「能力存在推定」を前提に被後見人の意思決定を支援する制度を考えるべきだと主張する。
そのためには、被後見人の意思決定をどう支援するかが重要となる。しかし、本人の意思をどう引き出すかや、状況や環境によって変化する本人の意思をどう捉えるべきかは簡単な問題ではない。そのためには被後見人の生活歴や暮らしぶりなどがある程度わかっていることが重要で、地域や暮らしの視点が求められる。佐藤氏は司法書士や弁護士といった第三者の成年後見人にその役割まで求めるのは困難だと語る。
今回の見直しの議論のなかで、後見人が本人に代わって意思決定をする現行制度から被後見人の意思決定を支援するという形に180度転換することができるのか、法改正も必要だが生活支援や地域づくりこそが重要だと主張する佐藤彰一氏と、社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。
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今週の論点
・成年後見制度の見直しへ
・国連が廃止を勧告する成年後見制度
・意思決定支援とは何か
・判断能力が低下しても本人の権利を守るために
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■ 成年後見制度の見直しへ
迫田: 今日は2024年4月5日です。認知症などにより判断能力がなくなった時に使われる成年後見制度というものがあるのですが、今月から見直しの議論が始まるということで、これについて話していきたいと思います。自分の意思決定をどのようにしたら良いのか、責任能力とはどういうものなのかという基本的な話にも関わります。
今日のゲストは弁護士で全国権利擁護支援ネットワーク顧問の佐藤彰一さんです。2000年までは禁治産という制度が民法で続いていたんですよね。それが2000年に介護保険がスタートしたと同時に成年後見制度になり、それから四半世紀も経っているのですが、状況は当時とあまり変わっていません。佐藤さんには以前マル激プラスにご出演いただいたのですが、あまり成年後見制度を使わない方が良いとおっしゃっていました。
なぜ使わない方が良いのかということが今回の見直しにも関わってくるのですが、一度後見人を付けてしまうと亡くなるまでそのままでなければならないんですよね。
佐藤: 基本的には死ぬまで続くという仕組みになっています。
迫田: 認知症だから遺産相続のためにたまたま後見人を付けたらその後はずっと後見人の判断で色々なことが決まります。したがって家族が親のお金を動かそうと思っても動かせないということが起こります。 -
金明中氏:急激すぎる経済成長が韓国にもたらした超競争社会と超少子化から日本が学ぶべきこと
2024-04-03 20:00550ptマル激!メールマガジン 2024年4月3日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド (第1199回)
急激すぎる経済成長が韓国にもたらした超競争社会と超少子化から日本が学ぶべきこと
ゲスト:金明中氏(ニッセイ基礎研究所上席研究員、亜細亜大学創造学部特任准教授)
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月の5回目の金曜日に特別企画を無料でお届けする5金スペシャル。今回の5金は通常の番組編成で、韓国の社会問題に詳しい金明中(キム ミョンジュン)氏をゲストに迎え、超のつく低出生率が世界に衝撃を与えている韓国社会に今、何が起きているのか、その背景にある過剰な競争社会はどのように形成されたのかなどについて議論した。
韓国の昨年の出生率は0.72。1人の女性が生涯に産む子どもの平均的な人数である合計特殊出生率は2.07で人口が維持されるとされる。出生率1.26の日本でも少子化は十分に待ったなしの危機的状況だが、先進国の中で出生率が唯一1を下回る韓国は日本よりもさらに状況は深刻だ。
この急速な少子化の原因の1つに韓国社会の過度に熾烈な競争があると金氏は指摘する。韓国は人口と就業者の50%以上が、面積で12%に過ぎない首都圏に集中しているのだが、良い仕事を得て成功するために首都圏に集まった若者たちの間の競争は熾烈を極める。その競争環境の下で若者達は競争に打ち勝つために、結婚や出産よりもキャリアでの成功を最優先しなければならない状態に置かれている。その結果、人口の集中するソウルの出生率が0.55と、とりわけ低くなっているのだ。
競争を勝ち抜いた成功者は高い年収を得て、結婚し家庭を持ち、子どもを作ることもできるが、それは全体のほんの一握りに過ぎず、大半の負け組にはそれができない。
競争に勝ち抜くと簡単に言うが、それは並大抵のことではない。金氏によると有名大学に入るためには学校とは別に多くの塾に通わなければならない。中には月に30万円以上もかけて、ありとあらゆる塾に通い、さらに少しでも内申書の内容をよくするために、深夜に水泳教室に通ったり、資格を取得するための塾に通っている人も多いのだという。こうなると、子どもを産んで育て、競争に勝ち抜くための費用を負担できる家庭は限られてくる。
今や韓国では良い企業に就職できなければ結婚・出産はできないという感覚が社会の共通認識になっていると金氏は言う。これでは出生率が下がり続けるのも無理はない。
しかし、なぜ韓国はそのような状況に陥ってしまったのか。金氏は韓国の経済成長の過程に原因の少なくとも一端があると指摘する。韓国の戦後の発展は「圧縮成長」と言われるほど、日本の高度経済成長よりも更に短期間に急速な経済成長を実現した。金氏は、韓国が経済に力を入れすぎた結果、社会保障や福祉の整備がそれに追いつかず、それが結果的に格差を生む原因となっていると指摘する。加えて韓国は1997年のアジア通貨危機の際に経済破綻をきたしIMFからの支援を受けざるを得なくなった。
IMFへの債務を返済するまでは事実上韓国は経済主権を失った状態にあり、その間、開発経済の世界では批判の多いIMF・世銀の構造調整プログラム(SAP)の下で、極度に新自由主義的な経済・社会的制度の改革を強いられた。
その結果、韓国は先進国でも希にみるような格差社会へと変質してしまった。韓国の相対的貧困率、とりわけ年金が未整備の時代に働き、韓国の経済成長を支えた高齢者の貧困率は約4割とOECDでは最も高い水準にある。
格差社会の現実を目の当たりにして、韓国では何とか勝ち組になろうと、誰もが必死で高学歴を得ようとする。韓国の大学進学率は7割を超え、日本の57.7%を遥かに凌ぐ。そしてその大学生たちは誰もが狭き門の大企業を目指すのだ。日本でも中小企業の生産性や賃金の低さが問題視されているが、韓国ではほんの一握りの大企業と中小企業の間の賃金や労働条件の格差が非常に大きい。そのため、若者たちは何とか大企業に入りたいがために、まずは有名大学に入った上で資格やTOEICのスコアを上げるなどのスペックを上げることに血眼になるのだという。
さらに韓国では貧困の固定化も問題となっている。以前は自分が頑張れば上に上がれる社会だと言われた。しかし今は生まれた家庭によって生活水準が固定化されている。有名大学に入るためには塾などで莫大な教育費がかかるため、裕福な家庭でなければ競争に勝ち抜くための教育を受けることが難しくなっているというのだ。
平均賃金で日本を抜き去り、1人当たりGDPでも間もなく日本を抜き去りそうな勢いで成長を続けながら、極度の少子化に直面する韓国が内包している深刻な矛盾とはどのようなものなのか。韓国ではなぜここまで競争が激しくなってしまったのか。過度に急激な経済成長が韓国にもたらした諸問題を、ある面では共通し、ある面では異なる問題を抱える日本に住むわれわれはどう考えるべきかなどについて、ニッセイ基礎研究所上席研究員の金明中氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・日本よりも出生率の低い韓国
・少子化の背景にある行き過ぎた教育競争
・1997年経済危機に端を発する貧困の固定化
・過度に急激な経済成長が韓国にもたらした矛盾
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■ 日本よりも出生率の低い韓国
神保: 今日のテーマは韓国です。韓国には日本が参考にしなければならない部分と異なる部分がはっきりとあります。日本の出生率も低いですが、韓国はそれに輪をかけて低い。しかし、起きていることの背景には日本と違うところがあります。
宮台: 前提知識として、人口維持に必要な出生率は2.07です。これは200人の親から207人産まれればよいということですが、韓国の場合は200人の親から72人しか生まれていません。結局、税金や社会保険料を誰が払うのかという問題があります。現役世代ではない人が膨大にいる中で、現役世代がそれらを払うとなると、可処分所得がどれだけ減るのかが問題になります。
先進国は消費社会化していくと必ず出生率が下がり、貧乏な国ほど家業を助けてくれる労働力ということで子どもの数が多くなります。よく言えば都市生活には多様性がありますが、子どもが耐久消費財化してしまいました。子どもを産むということが自明ではなくなり、コストパフォーマンスから見て子どもを産み育てることが自分たちの幸せに資するのかどうかという自己中心的な考えがあります。
神保: 緩やかな減少であれば吸収が可能でも、日本の1.26や韓国の0.72などになるとあまりにも急激な減少になるので、支える年代の人口が極端に減り、負担が大きくなりすぎて年金が破綻するということも起きるかもしれません。せめて緩やかに減らせることができれば良いのですが、日本も韓国もそれができていません。
韓国の合計特殊出生率0.72ということが衝撃的なニュースとして出ましたが、70年代は4.53だったのが80年代には2を割りました。日本は70年代くらいからギリギリ2くらいで、ずっと落ち続けています。OECD平均は1.58で先進国の平均も決して高くありません。
これらを前提にお話を伺っていきたいと思います。ゲストはニッセイ基礎研究所上席研究員の金明中さんです。今日はじっくりお話を伺いますが、0.72という出生率について短いコメントを求められた時にはどういうふうに答えていますか。
金: 出生率がここまで落ちた大きな理由は2つあると思います。1つ目は韓国の若者が置かれている経済的状況があまり良くないこと、もう1つはソウルを中心とする首都圏に人口も経済も集中していることです。
神保: 中央と地方の格差が出生率低下につながるというのはどういう仕組みなのでしょうか。
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