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記事 4件
  • 立石雅昭氏:日本の地層に何が起きているのか

    2016-04-27 23:30  
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    マル激!メールマガジン 2016年4月27日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第785回(2016年4月23日)日本の地層に何が起きているのかゲスト:立石雅昭氏(新潟大学名誉教授)────────────────────────────────────── 今回の地震はどうもおかしい。震度7だった最初の「前震」から1週間以上が過ぎた今も、依然として震度3~4クラスの余震がひっきりなしに続き、一向に収束の様子を見せないのだ。既に震度7が2回、震度6弱以上の揺れも7回記録されている。震度3以上では300回を、震度1以上となると950回を超えている。(4月27日15時現在)しかも、震源が熊本から阿蘇、大分へと拡大し、行ったり来たりの移動を続けているのだ。 一体、日本の地層に今、何が起きているのか。新潟大学名誉教授で、活断層の問題や地震のメカニズムなどに詳しい地質学者の立石雅昭氏は、今回の地震はこれまで日本で発生した地震とは大きく性格が異なり、今後の見通しについては専門家でさえ頭を抱えている状態だという。気象庁も今後どの程度の期間、「余震」が続くかわからないが、当面1週間程度は大きな揺れに警戒するように呼び掛けるのが、精一杯のようだ。 元々、熊本市周辺には布田川・日奈久断層帯という大きな活断層の存在が確認されていた。一方で、大分県南部にも別府・万年山断層帯などの大きな断層があることは知られていた。国土地理院の断層地図を見ると、2つの断層帯は阿蘇山付近で一旦途切れるように見える。しかし、立石氏によると、その付近は活断層が確認されていないだけで、実際は多くの断層が分布している可能性が高いのだという。地図に活断層が書き込まれていない場合、そこには活断層が存在しないことを意味するのではなく、まだ断層が見つかっていないと理解すべきだと立石氏は言う。 今回インタビューした東京大学のロバート・ゲラー教授も、ハザードマップや断層地図を過信して、危険とされた地域に過度な地震対策を行う一方で、危険性が低いとされた地域は地震対策や防災対策が疎かになっている日本の現状に懸念を表明している。 ここまでの科学の知見で本当にわかっていることと、実はわかっていないことは何かを、今、あらためて整理した上で、現在のわれわれの地震に対する備えは十分と言えるのか、今回の地震の震源地から100キロ以内にあり、周辺の活断層の調査が十分に行われたとは言えない川内原発を今も稼働させておくことにどんなリスクがあるのかなどを、被災地を取材してきたジャーナリスト神保哲生の取材映像や専門家のインタビューを交えながら、地質学者の立石雅昭氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・熊本地震の特殊性とは・家を買う時、「直下に断層があるかどうか」を意識しているか・教訓が活かされないハザードマップ・リスクが「ある/ない」ではなく、「分かっている/まだ分かっていない」+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
     

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  • 上村雄彦氏:パナマ文書がわれわれに突きつけている歴史的課題とは

    2016-04-20 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2016年4月20日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第784回(2016年4月16日)パナマ文書がわれわれに突きつけている歴史的課題とはゲスト:上村雄彦氏(横浜市立大学国際総合科学部教授)────────────────────────────────────── いつから税は貧しい者から取るものになってしまったのか。パナマの法律事務所から流出したとされる文書によって、世界の富裕層や政治指導者らの多くが、タックスヘイブン(租税回避地)を使って税逃れをしている実態が白日の下に晒された。 今回流出した顧客リストは氷山の一角に過ぎないと考えられているが、それでもロシアのプーチン大統領の友人や中国の習近平国家主席ら指導部の親族らの他、イギリスのキャメロン首相の父親やアイスランドのグンロイグソン首相、シリアのアサド大統領やエジプトのムバラク元大統領の息子など、世界の有力者や独裁者、およびその周辺の人物らが軒並み名を連ねていた。世界規模で各国の富裕層がタックスヘイブンで税逃れを図っている試算の総額は20兆ドル(約2200兆円)とも30兆ドル(約3300兆円)ともいわれている。 経済成長の鈍化で税収が落ち込む中、世界各国は軒並み中間層や貧困層に対する課税を強化している。その中で富裕層だけがまんまと税を回避している現状が放置されれば、各国政府の正統性を揺るがしかねない。また、富裕層の税逃れは、既に大きく拡がった貧富の差をさらに拡大する。貧しい者が税負担を強いられより貧しくなる一方で、税を逃れた富裕層はさらにその富を再投資することで、さらに多くの富を蓄積していくことが可能になる。 横浜市立大学教授で、グローバル・タックス(国際連帯税)など国際課税の問題に詳しいゲストの上村雄彦氏は、パナマ文書の流出で富裕層やグローバル企業が、世界の富を独占している実態が露わになったことで、今後、その富を再配分させていく仕組みの必要性が議論されることに期待を寄せる。「21世紀の資本」で有名な経済学者トマ・ピケティも資産に対する国際的な累進課税を提唱している。さらに近年ではトービン税をより発展させ、通貨や金融商品の取引に課税する金融取引税など、新しい国際連帯税としてのグローバル・タックス導入へ向けた議論が始まっている。 それにしても、なぜタックスヘイブンなるものが未だに存在し、税逃れなどが可能になっているのか。実態が露わになったタックスヘイブンを放置すれば、世界やわれわれの社会はどうなっていくのか。パナマ文書が明らかにした社会的不正義と、タックスヘイブンによる租税回避の実態などを検証しながら、グローバル・タックスの可能性などについてゲストの上村雄彦氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・タックスヘイブン=租税回避地はいかにして生まれたか・アップル社の巧妙な租税回避スキーム・“合法的な税金逃れ”に有効な対策とは・マネーゲームとタックスヘイブン問題は、けっして他人事ではない+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
     

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  • 守屋英一氏:猛威を振るう新手のコンピューターウイルスとその対策

    2016-04-13 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2016年4月13日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第783回(2016年4月9日)猛威を振るう新手のコンピューターウイルスとその対策ゲスト:守屋英一氏(明治大学ビジネス情報倫理研究所客員研究員)────────────────────────────────────── 新手のコンピューターウイルスが猛威を振るっている。今回拡散しているウイルスはランサムウェア(Ransomware)と呼ばれるもので、感染したユーザーのパソコンに保存されているファイルを勝手に暗号化し、開けなくしてしまう機能を持っている。そして、ファイルを開くための復号キーと引き換えに金銭を要求するというもの。データを人質に取って身代金を要求してくるところが、ランサム(身代金)ウェアと呼ばれる所以だ。 トレンドマイクロ社の統計によれば、世界の法人利用者におけるランサムウェアの検出台数は、2014年の1万4400件から15年に3万1900件と約2.2倍になり、病院や学校などの被害も相次いでいるという。また国内法人の被害報告数は、15年は650件にのぼり、14年から約16.2倍に急増。3月には愛知県警がスマホへの被害を全国の警察として初めて確認した。 明治大学ビジネス情報倫理研究所の客員研究員で内閣サイバーセキュリティセンターの上席サイバーセキュリティ分析官を務めるゲストの守屋英一氏は、今回のランサムウェアの流行は、コンピューターウイルスが新たな次元に入ったことを示唆しているという。それは従来のウイルスが、金融機関やクレジットカードなどから資金を引き出すことを意図していたのに対し、ランサムウェアが個人を対象に、犯人と被害者の間で直接資金のやりとりをする方式をとっているからだ。 守屋氏によると、ネット上ではランサムウェアを製作するアプリケーションが10ドル程度で販売されていて、誰でもランサムウエアビジネスに参入できる状態にあるというから、今後、その猛威がさらに拡大していく可能性は高い。守屋氏は、こうした不正に対する防衛策の重要性を強調すると同時に、フェイスブックやLINE(ライン)といったSNS上から個人情報が収集されて偽装に悪用されていることにも注意を払うべきと指摘する。 利便性につられて無防備にコンピューターやインターネットの利用を拡大してきたわれわれだが、ランサムウェアの登場でネットセキュリティに対する認識を根本的に再考する必要があるのかもしれない。 ランサムウェアの流行状況やコンピューターウイルスの歴史などを振り返りながら、ウイルスの脅威やネット上に溢れる個人情報のリスク、そしてその対処法などについて、ゲストの守屋英一氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・猛威をふるう“身代金ウイルス”の恐怖・合理的なビジネスとしてのコンピューターウイルス・コンピューターウイルスの歴史とは・フェイスブックを利用する上で必要なセキュリティ対策+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■猛威をふるう“身代金ウイルス”の恐怖
    神保: 今回のテーマは「ネットセキュリティ」です。いまさらながらという話題にも思えますが、どうも実は旬なネタらしい。メールをチェックすれば、毎日のように何かの添付書類付きで、怪しいメールが来ている。
    宮台: 僕のところにも来ています。
    神保: 「誰が何の目的で送っているのか」ということもさることながら、「どうやってこちらのアドレスを知ったのか」ということも、重要なポイントのようです。ここに来て、どうもネットのコンピューターウイルス問題は、特に個人に対する攻撃という意味で、ひとつ新しい次元に入っているように見えるとのこと。一体何が起きているのか、これまでとどう違うのか、ということをきちんとおさらいをしたうえで、今後についても考えていきたいと考えています。 ゲストをご紹介します。明治大学ビジネス倫理情報研究所の客員研究員で、ネットセキュリティやSNSの問題に詳しい、守屋英一さんです。守屋さんは、去年2015年から、内閣サイバーセキュリティセンターの上席サイバーセキュリティ分析官も兼務されていますが、僕は『フェイスブックが危ない』(文春新書)で知りました。いわゆるSNSから、情報がどんどん取られている、ということに以前から警鐘を鳴らされています。 いま申し上げたメールですが、見たこともない名前で毎日10通くらいは必ず来ています。必ず添付ファイルが付いていて、もちろん開くようなことはしないのですが、これを開いてしまうと、後から問題にするような事態につながってしまうのでしょうか。
    守屋: そうですね。コンピューターウイルスにはさまざまな目的があり、神保さんはジャーナリストなので「金銭以外の目的」で情報を取ろうとする攻撃がくる可能性もありますが、一般的には金銭を目的としたものが多いと思います。
    神保: たまたま僕がここのところ攻撃を多く受けているのか、それとも日本、あるいは世界的に見て増えているのでしょうか。
    守屋: 例えば、今回話題にするランサムウエアであれば、この3月に新種が多く出ており、それがいろいろなところで猛威を振るっています。世界的に増えていて、そのなかに日本も含まれていますね。
     

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  • 鈴木直道氏:10年目を迎えた夕張破綻の教訓

    2016-04-06 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2016年4月6日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第782回(2016年4月2日)10年目を迎えた夕張破綻の教訓ゲスト:鈴木直道氏(夕張市長)────────────────────────────────────── 今年は夕張市の財政破綻から10年となる。2006年に約353億円の財政赤字が発覚して財政破綻した夕張市は、この10年間、増税を含む住民の負担増と、行政サービスの廃止・縮小による歳出削減による極度の緊縮財政政策のもと、地道に財政再建の道を歩んできた。2015年度末までに約117億円の返済が済む見通しだが、まだ200億円以上の債務が残る。 夕張市民は市民税や軽自動車税などの増税のほか、公共施設やサービスの利用料の値上げなどを受入れてきた。市長は給与の70%をカットし月給約26万円に、市議会議員の報酬も月20万円に満たないこところまで削り込んだ。破綻前の半分以下に減った市役所の職員の給与も全国最低水準だ。市内に9校あった公立小中学校は、今や小中それぞれ一校ずつに統廃合、市役所の出先機関も1ヵ所に集約されるなど、住民は大きな不便益に耐えている。 そんな夕張で2011年から財政再建の先頭に立つ35歳の鈴木直道市長は、元々東京都庁からの応援で夕張に派遣され、そのまま居ついて市長になった変わり種だ。破綻から10年目を迎えた夕張市の現状について鈴木市長は、債務返済の過酷さとともに、将来に向けた政策が一切打てないことに危機感を示す。夕張市は財政破綻後、市民の流出が止まらず、破綻当時に約1万3千人あった人口が、現在は9千人を割るところまで減少。しかも、65歳以上の高齢化率が5割近い。夕張を出て行ってもやっていける人は皆去り、出るに出られない高齢者や、地元で商売を営む商店主だけが取り残された状態にあると言っても過言ではない。 かといって、夕張市は定住促進策や子育て政策などの新規事業を一切打つことができない。財政再建途上にあるため、歳出を伴う新規事業が許されていないからだ。債務返済は必要だが、このままでは地域経済も市民も疲弊してしまい、仮に借金を完済しても地域が死んでしまいかねない危機感を持っていると鈴木市長は語る。 そこで鈴木市長は破綻から10年の節目に当たって、財政再建一辺倒だった政策を見直して、債務を返済しつつ同時に地域再生も目指すという方向に舵を切ることを政治決断したという。破綻から10年を迎えた夕張は今どんな状態にあるのか。極度の緊縮財政の下で、市民生活はどのような影響を受けるのか。そうした中でも再生に向けた強い意思を見せる市民の力はどこからくるのかなどを、ゲストの鈴木直道夕張市長とともに、社会学者の中澤秀雄とジャーナリストの神保哲生が議論した。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・東京都職員だった鈴木直道氏が、夕張市長になった経緯とは・市長も給与7割カット、市民もゴミ出しまで有料……夕張市の“痛み”・夕張市の財政状況と、市長が考える最優先課題・夕張再生の鍵――日本の希望になるために+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■東京都職員だった鈴木直道氏が、夕張市長になった経緯とは
    神保: 今回は普段と違って水曜日の収録ということで、宮台さんの代わりに中央大学法学部教授の中澤秀雄先生に司会をお願いしました。テーマは財政破綻から10年を迎えた夕張について。中澤先生、今回のポイントはどのあたりになるでしょうか。
    中澤: 夕張は日本唯一の再生自治体ですから、その経験がほかの自治体、あるいはより大きな単位にもたらす教訓はあると思います。厳しい財政再建によって地域も相当疲弊していますが、それでもどっこい住民自治は死んでいない。そうしたものの中から、最終的には地域の自治の底力を見出して、日本の地域の可能性や今後の方向性について議論できればいいと思います。
     

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