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明石順平氏:アベノミクスとは結局何だったのか
2019-03-27 20:00550ptマル激!メールマガジン 2019年3月27日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第937回(2019年3月23日)アベノミクスとは結局何だったのかゲスト:明石順平氏(弁護士)────────────────────────────────────── アベノミクスと呼ばれる経済政策の妥当性をめぐる経済学会界隈の議論は、門外漢であるわれわれにとって、今一つ釈然としないところがあった。 アベノミクスに批判的な経済学者たちは、金融政策だけで経済成長を実現することなどあり得ないと指摘し、実際に効果があがっていないことがその証左と主張してきたが、一方でアベノミクスを支持する経済学者やエコノミストたちは、金融緩和が不十分だから成果があがらないのであって、その理論自体は間違っていないと主張し続けてきた。 そして、そこから先の議論は専門用語が飛び交う難解なものになりがちで、門外漢にとっては空中戦を見せられているような疎外感を禁じ得ないものだったのではないだろうか。 ところがここにきて、まさに経済学の門外漢そのものといっていい、労働法制を専門とする一人の弁護士が、アベノミクスの矛盾点や欺瞞を素人にもわかる平板な言葉で指摘した本が話題を呼んでいる。弁護士の名前は明石順平氏。彼が2017年に著した『アベノミクスによろしく』がその著書の名前だ。 明石氏は大学も法学部出身で、「経済の素人」を自任する。その明石氏がアベノミクスのカラクリを彼なりに分析してみた結果、経済学者の説明を待つまでもなく、これがまったくもって無理筋な政策であることがすぐに理解できたという。なぜ日本人の多くがこんなデタラメな政策に、いとも簡単に騙されてしまったのかと驚いたと、明石氏は語る。 アベノミクスのデタラメさは、名目賃金から物価上昇分を割り引いた実質賃金が、安倍政権発足後コンスタントに下がっていることにさえ気づけば、誰にもわかることだった。「なぜ誰もそれを指摘しなかったのか不思議でならない」と明石氏は言う。 実際、実質賃金が下がり続けた結果、経済の大黒柱である民間の消費支出も下がり続けた。その間、支出に占める食費の割合を示すエンゲル係数は上昇の一途を辿った。アベノミクスによって国民生活は苦しくなる一方だったことが、難しい計算などしなくても、ネット上から入手が可能な公表データだけで簡単に明らかになっていたのだ。しかも、アベノミクスには、最近になって露呈した統計偽装を彷彿とさせる巧妙なカラクリが、いくつも仕込まれていたと明石氏は言う。 国民生活に直結する選挙の争点は難解な経済論争に惑わされず、常識で判断することの重要さを説く明石氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が、アベノミクスの虚像と実像について専門用語を一切抜きで議論した。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・アベノミクスの失敗は、データを見れば誰でもわかる・不要な矢だけが放たれ、不可欠な成長戦略がなかったアベノミクス・「粉飾決算」されたGDP・日本は一度、大クラッシュを経験するしかない+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
■アベノミクスの失敗は、データを見れば誰でもわかる
神保: マル激では「アベノミクス」というテーマを何度も取り上げてきました。基本的には経済学者、エコノミストの方々に様々な立場から論じてもらいましたが、今回は、いわゆる専門家ではない方が検証した結果どうだったか、という話です。われわれがやらなければならないことを逆にやられてしまった、というところもあるのですが、中立的な立場から見ているという意味で、非常に意味のあることだと思います。
宮台: 今回のゲストの方はもともと法学の出身です。実は経済学だろうが法学だろうが、社会学だろうが、特に日本ではインナーサークルのつばぜり合い、ポジション取りの優先順位が高い人が多く、真実性や妥当性についても、それを念頭に話すことが多いです。アカデミズムなる世界に意味があるとすれば、動機として利害から離れた真実性に対する強い要求があるべきだけど、そうなっていません。日本の場合は、役人だからとか、芸術家だからとか、大学の先生だから、専門家だから、ということで信用しないほうがいいです。
神保: そんななかで、弁護士でありながら『アベノミクスによろしく』という本を書かれた、明石順平さんをゲストにお招きしました。
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木内登英氏:5Gを巡る米中の覇権争いと日本の選択
2019-03-20 22:00550ptマル激!メールマガジン 2019年3月20日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第936回(2019年3月16日)5Gを巡る米中の覇権争いと日本の選択ゲスト:木内登英氏(野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)────────────────────────────────────── 米中の覇権争いが激しさを増している。貿易摩擦の解消へ向けた両国の交渉が山場を迎え、早ければ来週にも合意に達する可能性が出てきている。しかし、1970年代以降の日米貿易摩擦がそうであったように、これとていつまた再燃してもおかしくない。安全保障面でも南シナ海などを舞台に両国のつばぜり合いが続いている。かと思えば、中国の通信大手ファーウェイの創業者の任正非氏の娘で同社のCFOを務める孟晩舟氏が、アメリカの依頼を受けたカナダ当局によって逮捕され、これに対して中国が在中のカナダ人を次々と拘束するなど、報復とも思える措置に出たことで、米中間の覇権争いがいよいよ本格化してきたとの印象を持った方も多いだろう。 いわゆる「帝国」というものがこの世に出現して以来、世界の覇権は圧倒的に軍事力に依拠していた。しかし、21世紀の覇権は意外なところに主戦場が移ってきているようだ。それが、次世代通信規格となる5G(第5世代移動通信システム)だ。 これまで1980年代に最初の携帯電話が登場して以来、移動体の通信規格は1Gから4Gへと、概ね10年ごとに次の世代へと進化を遂げてきた。世代が1Gから5Gへと進化する中で、確かに通信速度は夢のように速くなった。しかし、なぜ突然5Gだけが、これを握った者が世界の覇権を握るというような壮大な話になっているのだろうか。 「高速大容量」、「超低遅延」、「多数端末接続」の3つの特徴を持つ5GはIoT(Internetof Things=もののインターネット)の柱になると言われ、遠隔で手術が行われるようになったり、自動運転を実現するなど、すべての「モノ」がネットワークでつながれる時代を下支えする技術となることが期待されている。しかし、これが覇権の条件となる理由は必ずしも自明ではない。アメリカはファーウェイにネットワークの基幹技術を握られると、その背後にある中国政府が世界のあらゆる情報を独占するようになってしまうとして、その危険性を喧伝し、同盟国にもファーウェイ製品のボイコットを呼びかけている。しかし、それはまさに4Gまでアメリカがやってきたことに他ならないことが、エドワード・スノーデンの内部告発などで明らかになっている。 今のところアメリカの呼びかけに対して、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの、諜報活動についてUKUSA協定を締結しているいわゆる「ファイブアイズ」のアングロサクソン諸国に加え、日本とドイツがこれにファーウェイ製品の排除に歩調を合わせる姿勢を見ている。しかし、低価格で進んだ技術を提供できるファーウェイを排除するということは、より割高なインテルやクアルコムの技術を買わなければならないことを意味しているため、他の国々がアメリカの動きに同調するかどうかは未知数だ。 元日銀の審議委員で米中の覇権争い問題にも詳しいエコノミストの木内登英氏は、中国はファイブアイズ以外の国々に対して、着実にそのネットワークを拡げており、気がつけば冷戦時代のようなファイブアイズを中心とするアメリカ陣営と、それ以外の中国陣営に世界が2分化される可能性が現実のものとなってきていると指摘する。例えば、ファイブアイズ諸国では利用できる携帯電話や家電が、それ以外の国では利用できないなどということが起きても不思議はない状況だというのだ。 問題は日本だ。地政学的に新たな覇権国家となる可能性が高い中国の、ごくごく近隣に位置する日本が、これまでの冷戦時のような発想で無条件でファイブアイズに付いていくことが本当に得策なのかどうかは、慎重に考える必要があるだろう。日本が2つの陣営の間を取り持つことで地政学的なメリットがあり、世界にとっても無用な摩擦や不便益を避けることにつながるような、そんな役回りを日本が演じられる可能性はないのだろうか。 ITジャーナリストの石川温氏のインタビューなども参照しながら、5Gの登場を機に顕在化している米中の覇権争いの行方の日本にどのような選択肢があるのかなどについて、木内登英氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・米中貿易摩擦の本当の理由・そもそも「5G」とは何なのか・5G技術のより、中国が覇権を握るシナリオ・世界が二分化に向かうなかで、日本はどう立ち回るか+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
■米中貿易摩擦の本当の理由
神保: 今回は「5G」というテーマながら、技術の話というより、世界の趨勢や米中の覇権争いのような大きな視点から見ていきたいと思います。
宮台: 技術の進化で僕たちの生活、社会が変わっていくかもしれないという話のなかで、国民国家間のつばぜり合いが起こっているのを見ると、20世紀的な縛りからの過渡期を表しているように思います。どのみち、いまわれわれが突き当たっている図式は越えられてしまうと思いますし、産みの苦しみなのかなという気がしますね。
神保: 覇権といえばかつては明らかに軍事的、あるいは経済的な力でしたが、21世紀特有の要素として「技術」というものがあり、なぜか5Gという言葉で入ってきています。
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河田昌東氏:原発被災地の現状を正しく知るために
2019-03-13 23:00550ptマル激!メールマガジン 2019年3月13日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第935回(2019年3月9日)原発被災地の現状を正しく知るためにゲスト:河田昌東氏(分子生物学者)────────────────────────────────────── 東日本大震災と未曾有の原発事故から8年。 福島第一原子力発電所では今も懸命の作業が続くが、廃炉への道筋は遅々としており、除染土の処分の見通しもたっていない。原発敷地内は処理水の貯蔵タンクですし詰め状態になってきており、被災地は依然として復興からほど遠い状況にある。原発事故から避難している人の数は、県外・県内避難を合わせて4万人を超えている。 避難者の帰還の最大の障害となっている放射能汚染の現状はどうなっているのか。 2011年4月から南相馬に通い、自らがはじめたNPO法人の仲間や地元の人たちと一緒に、2011年6月から年に2回、空間線量の測定を続けている分子生物学者の河田昌東氏は、空間線量は当初の予想以上に下がっているという。 500メートルメッシュで測定された線量マップの経年変化をみれば、線量の低下は一目瞭然だ。空間線量に影響を与えている放射性セシウムのうち福島原発事故の場合半数を占めるセシウム134の半減期が2年であることや雨が多く地表面のセシウムが流されていることなどが、線量の低下をもたらしていると考えられるという。 一方、出続ける汚染水の処理については、重要な局面にきているという。このままでは原発の敷地が汚染水の貯蔵タンクでいっぱいになるのは時間の問題で、かといって原発の敷地内から汚染水を外に出すことも許されない。東京電力はできる限り汚染物質を取り除いた上で、地元の理解を得て海に流すことを想定しているようだ。しかし、同位体元素のトリチウムだけは、性質が水と同じなこともあり、現在の技術では分離することが難しい。体内に入るとDNAに直接影響を与えるため、安易に海に流してはいけないと河田氏はいう。 河田氏のグループは、土壌の汚染マップの作成や、南相馬市内に開設した放射能測定センターに住民が持ち込んだ農産物や土壌を無償で測定し続けてきた。その結果、様々な知見が集まっている。事故前の状況に戻ることは難しいという現実を前に、住民たちは食べ物や土壌を測定しながら、自分たちで判断して暮らしている。河田氏がチェルノブイリ支援で探り当てた植物による除染や、油にはセシウムが移行しないという科学的事実から、菜種の栽培などにも取り組んでいる。 だからこそ、きちんと事実に目を向けてこなかった政府や専門家を含む社会の姿勢に、河田氏は危惧を覚えている。 東大名誉教授らが個人被曝量と空間線量について英科学誌に発表した論文が、去年暮れに撤回された問題についても、住民の同意がないデータが使われていたという倫理的な課題だけでなく、単純な計算ミスのほか、手法などに技術的な問題があると河田氏は指摘する。科学的データがほとんどないなか、こうした態度では、放射能汚染による影響を過小評価したいという政治的な意図が入り込んでいるという疑念が拭いきれない。 原発被災地の現状を正しく知り、未知なことに向き合う科学的な態度とはどういうことなのか、福島支援を続けてきた科学者である河田昌東氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・政府が「測定」しなかった、被災地の現実・正確なデータは不安を煽るものか、安心を呼ぶものか・個人被曝量に関する論文は、なぜ撤回されたか・データに基づく復興と、データ無視で再稼働進む原発+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
■政府が「測定」しなかった、被災地の現実
迫田: 今日は2019年3月8日ということで、あと3日で東日本大震災、福島第一原子力発電所の事故からちょうど8年になります。被災地の現状はどうなっているのか、2011年4月から南相馬に毎月通い、線量を測定し、住民が無料で農産物や土壌を測定できるように放射能測定センターを開設、農地再生の支援も続けておられる、科学者の河田昌東先生をゲストにお招きしました。まず、あれから8年、宮台さんはいまどんなことを思われますか?
宮台: 日本がポストトゥルースの時代だということを実感したのが、3.11の事故に際して、政府、役人、あるいは原子力村の人たちのさまざまな言動でした。いまに至ると、みなさんご存じのように、役人が「嘘はついたが隠蔽はしていない」などというわけのわからないことを言う時代になっています。
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デービッド・アトキンソン氏:日本人が知らない日本の「スゴさ」と「ダメさ」
2019-03-06 23:00550ptマル激!メールマガジン 2019年3月6日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第934回(2019年3月2日)日本人が知らない日本の「スゴさ」と「ダメさ」ゲスト:デービッド・アトキンソン氏(小西美術工藝社社長)────────────────────────────────────── デービッド・アトキンソン氏はかつてゴールドマン・サックス証券で金融調査部長を務め、90年代の日本の不良債権危機にいち早く警鐘を鳴らしたことで知られる。アトキンソン氏は今、小西美術工藝社という漆塗、彩色、錺金具の伝統技術を使って全国の国宝・重要文化財の補修を専門に行う会社の代表に就いている。そのかたわら裏千家に入門し茶名「宗真」を拝受するなど、日本の伝統文化への造詣はそこらあたりの日本人よりも遙かに深い。 そのアトキンソン氏にイギリス人の目で見た日本の魅力とダメなところを聞くと、どうもわれわれ日本人は、自分たちがすごいと思っているところが外国人から見ると弱点で、逆に必ずしも自分たちの強さとは思っていないところに、真の強さが潜んでいるようなのだ。 例えば、日本人の多くは、日本が1964年の東京五輪や1970年代の万博を経て、経済大国への道を駆け上がることが可能だったのは、日本人の勤勉さと技術や品質への飽くなきこだわりがあったからだと信じている。 しかし、アトキンソン氏はデータを示しながら、前後の日本の経済成長の原動力はもっぱら人口増にあり、他のどの先進国よりも日本の人口が急激に増えたために、日本は政府が余計なことさえしなければ、普通に世界第二の経済大国になれたと指摘する。だから、勤勉さだの技術へのこだわりなどを神話化することは得策ではないと言うのだ。 逆に、日本は人口増のおかげで経済規模を大きくする一方で、一人ひとりの生産性や競争力を高めるために必要となる施策をとってこなかった。そのため、規模では世界有数の地位にいながら、「国民一人当たり生産性」は先進国の中では常に下位に甘んじている。 その原因についてアトキンソン氏は、日本は長時間労働や完璧主義、無駄な事務処理といった高度成長期の悪癖を、経済的成功の要因だったと勘違いし、その行動原理をなかなか変えられないからだと指摘する。その成功体験に対する凝り固まった既成概念故に、日本人、とりわけ日本の経営者は一様に頭が固く、リスクを取りたがらない。人口増加局面では、無理にリスクなど取らず、増える人口を上手く管理していけば自然に経済は成長できたが、人口の減少局面に直面した今、日本流のやり方は自らの首を絞めることになる。 しかし、その一方でアトキンソン氏は、日本人の清潔なところや治安の良さ、住みやすさ、細やかな気配りや器用さ、真面目さといった素養は、日本人の潜在的な能力の高さを示していると言う。日本人は潜在能力は非常に高いが、過去の成功体験に対する間違った認識から、その潜在力を発揮できず、逆に改めるべき点がなかなか改められないというのがアトキンソン氏の見立てだ。 日本の潜在力を引き出すためのウルトラCとして、アトキンソン氏は政府が最低賃金を全国一律で毎年5%引き上げることを提唱する。そうなれば「頭の固い」「リスクテークをいやがる」日本の経営者でも、厭が応にも毎年5%以上の生産性を上げる必要性に駆られることになり、過去の過った成功体験にすがっている場合ではなくなるからだ。 外国人だからこそ見える日本の長所、短所を厳しく指摘するアトキンソン氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・日本の高度成長は、急激な「人口増」こそが要因だ・なぜ誤った神話が生まれ、認識が修正されないのか・日本はその潜在能力を発揮できていない・処方箋は「最低賃金の引き上げ」にあり+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
■日本の高度成長は、急激な「人口増」こそが要因だ
神保: われわれ日本人は、ある種の神話というか、前提を共有してしゃべっています。今回はその前提自体をひっくり返せたら、という企画意図でテーマを設定しました。一言でいえば、われわれは日本の強さと弱さがわかっていない、あるいは勘違いしてしまっているのではないかということです。そこで、元ゴールドマン・サックスの金融調査部長で、文化財の補修などを手がける小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソンさんをゲストにお迎えしました。 最初に、2015年に上梓された『イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」』からまとめさせていただくと、日本の強みは「経済力、治安が良い、清潔、住みやすさ、細かさ、器用さ、真面目さ、高い技術力、職人魂、極める美学、技術力、アレンジのうまさ、足し算」など、逆に弱みは「効率性の低さ、生産性の低さ、柔軟性に欠ける、頭が固い、長時間労働、行き過ぎ、完璧主義、無駄な事務処理、面倒になることを極端に避ける、リスクを取りたがらない」と書かれている。僕は、面倒なことをとにかく嫌がるということが特に面白いと思いました。一章を割かれて、実はこのことが日本人の行動の根底にあるのではないか、と分析されていました。
アトキンソン: 自分が日本に住んでいて、ビジネスを行なうにあたって、これが一番問題になります。私は観光や文化などの分野で、さまざまな政府委員会に入っていますが、こうしたほうがいい、と新しいことを提案すると、反発反論、人格否定、暴言暴論が多く出てきます。何事も現状を変えるのが嫌で、面倒を嫌います。そして、一番無難な方向を選ぶんです。
宮台: 僕らは電力の仕組みについてずっと議論してきましたが、本当に変わりません。
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