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記事 4件
  • 古矢旬氏:オバマの8年間に見るトランプ政権誕生の背景

    2017-01-25 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2017年1月25日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第824回(2017年1月21日)オバマの8年間に見るトランプ政権誕生の背景ゲスト:古矢旬氏(北海商科大学教授)────────────────────────────────────── トランプ政権が発足し、オバマの8年間が終わった。 初のアフリカ系アメリカ人大統領として、多くの期待を背負って発足したオバマ政権は、積極的な財政出動によってリーマンショック後の金融危機を未然に防いだほか、2000万人の無保険者に新たに医療保険の加入を可能にしたオバマケアを実現するなど、好調な出だしを飾った。オバマ自身も「核なき世界」を提唱することでノーベル平和賞を受賞するなど、期待に違わぬ存在感を示した。 しかし、発足当初こそ60%を超える高支持率を誇ったオバマ政権の支持率は、その後低迷を続け、支持率と不支持率がほぼ均衡する状態が続いた。結果的にそれが、オバマ政権下での議会選挙での民主党の敗北につながり、オバマ政権の選択肢を奪っていた。 初の黒人大統領を選んだ時、既にアメリカ社会はオバマ一人の力ではどうにもならないほど、大きく分断されていた。オバマ政権の最大の功績ともいうべきオバマケアでさえ、反対派にとってはオバマ政権が許せない最大の理由になっていた。 とかく理念主導と批判されることの多いオバマ政権だが、その実績は決して歴代の政権に見劣りするものではない。にもかかわらず、人種的マイノリティーで市民運動や人権を重んじたオバマ政権の後に、全く対称的なトランプ政権が誕生したのはなぜだったのか。 アメリカ政治の専門家で希代のオバマウォッチャーでもある古矢旬氏とオバマ政権の8年を振り返るとともに、トランプ政権誕生に道を開くきっかけを作ったアメリカ社会の分断について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
    +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・勝者なき大統領選挙・オバマの経済政策をどう評価するか・ブッシュ時代の遺産を引き継いだ、オバマ外交の苦悩・多国間主義の終焉がもたらすもの+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■勝者なき大統領選挙
    神保: 1月20日(収録日)は、米トランプ大統領の就任式及び就任演説が予定されています。これからまさに大変なことが起きようとしており、アメリカの政治をテーマに番組をつくるのに最悪のタイミングですが、逆に議論するなら今しかないと思ったのが、「オバマの8年間は何だったのか」ということです。つまり、トランプの登場を理解するには、どうしてもオバマの8年間を総括する必要があるのではないかと。実際、今回のためにいろいろと取材やリサーチをするなかで、トランプ政権が出てきた背景、原因というものがより鮮明にわかったような気がしました。アメリカの新政権発足日、宮台さんはどうですか?
    宮台: 雑駁にいえば、ブッシュからオバマに、そしてまたトランプへという振れ幅の大きさに仰天しますね。特にオバマからトランプというこの落差は想像を絶する。
     

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  • 水野和夫氏:そして世界は中世に戻る

    2017-01-18 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2017年1月18日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第823回(2017年1月14日)そして世界は中世に戻るゲスト:水野和夫氏(法政大学法学部教授)────────────────────────────────────── 2016年はイギリスのブレグジットやアメリカ大統領選のトランプ勝利に世界が大いに揺れた1年だった。今年も世界の主要国で重要な国政選挙が相次ぐが、世界の歴史が大きな転換点を迎えていることは、もはや誰もが感じているところではないだろうか。 しかし、それは世界が何から何に転換しているということなのだろうか。 エコノミストで法政大学法学部教授の水野和夫氏は、金利の水準から判断して、今世界はイギリス・アメリカなどの「海の国」が世界を支配した近代から、かつてイタリアやスペインなどの「陸の国」が君臨した中世に戻りつつあると説く。 16世紀にイギリスがアルマダでスペインの無敵艦隊を破り、地中海の制海権を獲得して以来、世界はパクス・ブリタニカ、そしてパクス・アメリカーナの時代が約500年続いた。この時代は「海の国」が世界を支配する中で、国際交易が盛んに行われ、世界経済が大きく成長した時代でもあった。経済成長と並行して世界の人口は増え続け、同時に金利も高い水準が維持されていた。 しかし、その成長は米英を始めとする先進国が、途上国からただ同然で石油やその他の天然資源を獲得できることを前提としたものだった。しかし、経済成長の恩恵が世界の隅々まで及ぶようになると、途上国が資源ナショナリズムに覚醒し、これまでのような資源の搾取が次第に難しくなった結果、世界、とりわけこれまで繁栄を独占してきた先進国は、未曾有の低成長に喘いでいる。金利も中世以来という低金利が続いている。 実は近代に先立つ中世の時代、世界は1000年近くもの間、経済はほとんどゼロ成長が続き、人口もほとんど増えなかった。むしろ、「海の国」が牽引した近代の500年の方が、世界史的には異例の時代だったと見ることができると、水野氏は言う。 昨年のブレグジットやトランプ政権によるアメリカ第一主義は、近代を牽引してきたイギリスやアメリカには、もはや世界を率いていく余力も、そしてその気概もなくなっていることを示していると見ることができる。パクス・アメリカーナの終焉は「海の国」の支配から「陸の国」の支配への転換を意味し、それは同時に近代から中世への回帰を意味していると水野氏は語る。 しかし、われわれ人類は、民主主義や自由と平等、基本的人権など、多くの貴重な価値規範を近代に確立している。経済が中世のような低金利・ゼロ成長の時代に回帰した時、われわれが近代とともに築いてきたそうした価値基準も崩れる宿命にあるのか。それともわれわれは、近代に確立した価値を維持しながら、低成長の中で新たな時代を切り開くことができるのか。 ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が、エコノミストの水野氏と考えた。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・世界は危機の真っ只中にある・「海の国」が支配する近代から、「陸の国」が君臨した中世に逆戻りする世界・国民国家は、もうもたない・理念の不在がもたらす、社会の混乱への懸念+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■世界は危機の真っ只中にある
    神保: 新年ということで、まずは宮台さん、2017年という年をどう見ますか。
    宮台: 僕は映画批評家でもあるから、黒沢清の映画を例にとって言うと、彼の映画は過去二十数年間ずっと、「既に人は死んでいて、この世は廃墟である」というテーマを扱ってきました。このモチーフはまったく理解されることがありませんでしたが、一昨年、昨年あたりから急速に理解されるようになった。つまり、この社会はすでに終わっている、という感覚が共有されつつあり、その“終わり”を明るみにするためにはトランプに当選してもらう必要がある、というのが僕の考えでした。終わりがはっきりしないと、死体がゾンビのようにうろついている状態で、次が始まらない。2017年は、永久にうろつく可能性もあるゾンビを一掃していく、というプロセスが始まった年と考えたいですね。
    神保: そんなことも念頭に置きながら、番組を進めたいと思います。ゲストはもう3回目のご出演になります、法政大学法学部教授の水野和夫さんです。 最初はリーマンショック直後(2008年2月2日配信第357回「サブプライム問題が露にしたグローバル経済の実相」)に出ていただき、その後に「『経済成長』という呪縛からの解放」というテーマで2013年2月23日(第619回)に出ていただきましたが、今回はブレグジット、トランプ勝利というところでお話を伺いたい。エコノミストであり、もともと金融関係におられた水野さんの目から見て、アメリカのトランプ現象、ブレグジットなど一連の状況はどういうふうに映っていますか。
    水野: ウォーターゲート事件(1972年)以降、歴史の危機に入っていると思います。つまり、近代資本主義システム、あるいは主権国家システムという、英米がつくり400~500年続いたシステムが上手く機能しなくなり、新しいシステムが何かということもまだわからない。なぜウォーターゲート事件からかというと、19世紀のスイスの歴史学者、(ヤーコプ・)ブルクハルトが指摘しているように、歴史の危機のスタートは弾劾から始まるからです。事実上、世界の大統領で権威を一身に集めていたニクソンが、盗聴事件で権威をなくし、レーガン大統領が出てきて、クリントン、ブッシュと右に左に振れて、オバマさんを経て、その政策をすべて否定するようなトランプに希望を託す――という、茶番劇が始まっている。こうなるとみんなの意見が無定見というか、見識のない意見が噴出し、多数の人がそこに参加してくる。それが今まさに始まって、これからますます面白くなりそうです。イギリスの国民投票も、人々はEU側にとどまるべきか離脱したほうがいいか、ということを天秤にかけたのではなく、「キャメロンけしからん」という、一種の弾劾だったでしょう。お隣の韓国もそうですし、日本はすでにロッキード事件で田中角栄を引きずり下ろしています。歴史の危機は1世紀以上かかりますから、まだ後半戦に入っていないくらいだと思います。
     

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  • 内山節氏:座席争いからの離脱のすすめ

    2017-01-11 23:00  
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    マル激!メールマガジン 2017年1月11日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第822回(2017年1月7日)座席争いからの離脱のすすめゲスト:内山節氏(哲学者)────────────────────────────────────── 2017年の最初のマル激はゲストに哲学者の内山節氏をお招きし、ブレグジットやトランプ旋風に揺れた2016年を振り返るとともに、ますます生きにくくなってきたこの時代を如何に生き抜くかについて、神保哲生と宮台真司が議論した。 高校を卒業後、独学で哲学を学びつつ、群馬の山村に移り住み、地域社会と関わりながら独自の世界観を開拓してきた内山氏は、まず国家が人々の幸福を保障できる時代がとうの昔に終わっていることを認識することが重要であると語る。 先進国が、かつて植民していた途上国からただ同然で資源を調達できたことに加え、工業生産による利益を自分たちだけで独占できた時代は、先進国の政府が国民に対してある程度の豊かさを保障することが可能だった。しかし、そのような時代が長く続くはずがなかった。グローバル化の進展で、先進国から新興国へ、そして途上国へと富の移転が進むにつれ、先進国は軒並み、これ以上大きな経済成長が期待できない状況に陥っている。閉塞を打破するためのイノベーションが叫ばれて久しいが、そのような弥縫策で乗り切れるほど、この停滞は単純なものではない。昨今の先進国の経済停滞が構造的なものであることは明らかで、そうした中で無理に成長を実現しようとすれば、弱いセクターを次々と切り捨てていくしかない。当然、格差は広がり、共同体は空洞化し、社会は不安定化する。 内山氏はむしろ、これまでの考え方を根本から変える必要性を強調する。国家に依存することに一定の合理性が認められた時代は、国家が提唱する価値基準を受け入れ、学歴や出世のために頑張って競争することにも意味はあったかもしれない。しかし、国家がわれわれを幸せにすることができないことが明らかになった今、この際つまらない座席争いからは離脱し、自らの足で立ち、自ら何かを作る作業に携わってみてはどうかと、内山氏は語る。それは単なる「物作り」とか「手に職を」といった類いのものだけではなく、例えば共同体を作るといった作業も含まれる。 これまでの方法で国家が人々を幸せにできなくなった時、人々は2つの選択肢に頼るようになる。一つは、これまでのルールや価値観を曲げてでも、より強いリーダーシップを発揮できる指導者を待望することで、ロシアのプーチンやハンガリーのオルバーン、フィリピンのドゥテルテなどにその兆候は顕著だったが、ここにきて遂にアメリカまでトランプ大統領を誕生させるに至った。もう一つが、新たな枠組みを模索する動きだ。アメリカ大統領選でもサンダース候補を支持する若者の間にその萌芽が見えたが、実際は世界中で新たな社会のかたちを模索する動きが始まっていると内山氏は指摘する。 その2つの動きのうち、今後、どちらが優勢になるかはわからない。しかし、これまでの民主的な政府にはもはや寄りかかれそうもないので、より強権的な指導者を待望するというのは、少々危ういように思えてならない。どうせやるのなら、新しい時代を切り開くムーブメントに自分なりの方法で参加してみてはどうだろうか。内山氏とともに考えた。
    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++今週の論点・建前より本音で生きよう、という時代へ・国民国家、市民社会、資本主義は、欧州の特殊事情でできたもの・キーワードは「関係性」と「場」・「自己実現」という言葉から卒業を+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
    ■建前より本音で生きよう、という時代へ
    神保: 2017年、宮台さんはどういう年になると見ていますか?
    宮台: 「産みの苦しみの年」になればいいなと思いますね。僕はトランプの当選を待望していたし、実際ある程度予想もしていました。それは今までの直線的な、あるいは激しくなっていく流れに抗う、ブレーキをかけるいいチャンスになるからです。遅ければ遅くなるほどマズく、クリントンが当選すれば遅くなる。しかし、このトランプの当選に始まる混乱、あるいはブレグジットの予告に始まる混乱をどのぐらい早く収集できるのかということ次第では、そのブレーキがかかって新しい道に歩むということではなくて、ただカオスの中に怒涛のように突入して終わる可能性もあります。
    神保: もっとヤバい方にいくルートもある。
    宮台: つまりマクロにはなかなか難しいが、やはりこれで気付いた人たちがたくさんいるので、ミクロにはいろんな試みがなされて、ある種の戦いになるんだと思う。行政や市場の巨大システムへの依存を続ける人たちと、自分たちの共同体自治、あるいは生活世界という場を立て直し、再構築しようという動きがおそらく、拮抗するのでしょう。
    神保: 今回はまさにそんな話をしたくて、哲学者の内山節さんにお越しいただきました。この番組は初めてですが、以前からご著書を読ませていただいています。また、個人的には釣りの話も非常に関心があります(笑)。
    宮台:『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』という本を出されたのが10年ほど前(2007年)ですが、大変印象深くて。
    神保: さて、内山さんは哲学者ですが、大学などではなく、独学で学ばれたと。
    内山: はい。ただ、哲学の歴史を見ると、そういう人は多いんです。もともと哲学は総合学問のような意味合いから来ているので、旅をし続けているような哲学者もたくさんいました。ですから、今が妙にある型で生きる時代になっているだけであって、長い歴史で見ると、そんなに珍しい話ではありません。
    神保: そもそもなぜ哲学者を志されたんですか?
     

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  • 年末恒例マル激ライブ 「トランプ時代を生き抜くために」

    2017-01-04 20:00  
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    マル激!メールマガジン 2017年1月4日号(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )──────────────────────────────────────マル激トーク・オン・ディマンド 第821回(2016年12月31日)5金スペシャル年末恒例マル激ライブ 「トランプ時代を生き抜くために」────────────────────────────────────── 恒例となった年末のマル激ライブ。今年はいつもの新宿ライブハウスとは趣向を変えて、12月26日(月)に東京・永田町の憲政記念館ホールで開催され、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が2016年を振り返った。 今年もさまざまなニュースがあったが、中でも6月のイギリスのEU離脱を問う国民投票で離脱派が勝利したことに続き、11月にはアメリカの大統領選挙で大方の予想を裏切っ

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