日本銀行の黒田総裁が物価目標率2%を達成するために、従来の2倍以上の通貨供給(マネタリーベース分)を日銀が行うと発表してから、急激な株高、債券高、円安が起きている。
このような状況になるであろうことは、このブロマガでも以前から繰り返しお伝えしてきた。
今のところは市場の期待を反映しての影響だが、実際に日銀の通貨供給量の増加が、株高や円安を引き起こすのは、会計的な根拠がある。
今回は、前回の
<リンク>日銀による量的緩和が資産バブルを作り出しやすい根本的な理由 銀行の会計上の性質から①
の続きとして市場に対する日銀の大規模な通貨供給が、金融商品の資産の上昇圧力と円安圧力を高める理由を銀行の会計上の視点からお伝えする。
前回お伝えしたとおり、銀行が通貨を作り出す方法は二つある。
1つは、銀行貸し出し。
2つめは、資産(国債などの有価証券や不動産など)の購入。
2つめの資産の購入を行うことによって通貨を作り出す場合は、銀行が保有する資産として「現金」が必要であった。
銀行が国債などの金融商品を購入するには、購入する金額分の「現金」が必要なのである。
一方、「銀行貸し出し」の場合は、現金を必要としない。貸し出しは無から銀行の帳簿上で行えてしまうためである。
貸し出しをするには、預金の1%分の現金が日銀当座預金に入っていればよく、現在のように量的緩和によって日銀当座預金が超過状態では、貸し出しの制限は事実上無いも同然である。
それでは、日銀の量的緩和による通貨供給が、銀行の2つの通貨創造の機能のうち、どちらに影響を与えるだろうか?
直接的に影響を与えるのは、銀行による金融資産の購入である。
何故なら、日銀が行う量的緩和は、銀行の国債などを日銀が買い上げ、銀行に「現金」を渡すためだからだ。
ここで、日銀の通貨の作りかたを説明する。
日銀のような中央銀行が通貨を作る場合、これも民間銀行と同じように2つ方法がある。
・貸し出し
・資産の購入
下記の図は、その2つの通貨の創造の流れを、中央銀行と民間銀行の二つの帳簿から見たものである。
この二つの通貨創造の方法のうち、量的緩和は資産購入の政策である。
国債を売却して、日銀当座預金に売却分の通貨を振り込んでもらう。この日銀当座預金に入っている日銀預金は、銀行の資産であり、現金として市場で販売されている金融商品の購入が出来る。
量的緩和とは、銀行が金融商品を購入するための原資を提供することなのである。
今後、2年間で日銀の資産を量的緩和によって現在の135兆円から、270兆円に拡大するのが黒田総裁の政策である。
つまり現在よりも135兆円分の通貨が銀行に渡されるわけである。
今まで見てきたように銀行が受け取った日銀預金は、銀行会計の性質上、貸し出しではなく、銀行の資産運用にまわされる。
銀行は増加した通貨の資産運用を行うために、国債、公社債、株、不動産、などを購入するだろう。
そうなれば、各金融商品の取引が増加し、値段の上昇圧力となるだろう。
これが会計上の性質から見た、黒田日銀による大規模な量的緩和が引き起こす資産インフレ(行過ぎればバブルの発生)の可能性である。
黒田総裁が目指しているのは物価上昇率2%のインフレ状態にすることだ。資産市場に流れた通貨が、実体経済に流れてくるまでには時間がかかる。物価とは実体経済で行われる取引の価格のことだ。
物価上昇が起こる前に、資産インフレが起きやすい原因である。
円安圧力の理由については、後日お伝えする。
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