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記事 13件
  • 「なんとかなるんじゃないかな」

    2020-03-30 07:00  
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     雨上がりの空にうっすらと虹が掛かっていた。洗濯物を干し、朝食後のコーヒーを飲んでから散歩に出た。海沿いの国道は車通りがほとんどない。信号待ちをしていたぼくらの前を空っぽのバスが通り過ぎていった。浜へ続くゆるい小径を下って砂浜に出る。娘がうれしそうに駆けだしていく。その小さな背中が逆光で白い闇に包まれる。強い陽射しに思わず目を細めていた。初夏のような陽射しだった。
     

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  • 「ぼくのくれよん」

    2020-03-27 07:00  
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     夜、娘の絵本棚から適当な一冊を酒の肴に拝借する。シングルモルトを舐めながら読書灯の下で味わう絵本が疲弊した脳をほぐしてくれることを最近知った。
     

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  • 「いましかできないこと」

    2020-03-25 07:00  
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     日曜日、妻を駅まで送った後、娘と二人で逗子のミサキドーナツを訪れた。ショーケースに並ぶ色鮮やかなドーナツの中から娘はいちごが丸ごと乗ったものを、ぼくは大好きなレモンクリームドーナツをそれぞれ選んで、窓際の席に向かい合って坐った。店内にはあたたかな陽射しが射し込んでいた。今年初の夏日だった。昼前の店内はぼくらの他に若い女性客が二人だけというのどかな時間だった。
     ドーナツとともに娘にはりんごジュースが、ぼくには淹れたてのコーヒーが運ばれて来た。ドーナツのポーズ、と言って両手で大きな輪を作った娘を笑いながら写真に撮った後、ワープロを広げた。ここに来たのは、娘と約束した手作り絵本の物語を紡ぐ為だった。
     

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  • 「希望」

    2020-03-23 07:00  
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     季節外れの雪。早過ぎる桜の開花。目の前の事象が去年父が亡くなったときに刻まれた心象風景と重なる。三月の命日を前に執り行う予定だった父の一周忌法要を延期することにした。直前まで家族が集まるくらいはと楽観視していたのだけれど、その二週間前に弟が発熱したのをきっかけに延期を決めた。年老いた母と高齢の住職の万が一を考えて、というのが表向きの理由だが、実際はマスクの下で萎縮していく心が自粛させただけなのを父にだけは見抜かれているような気がした。
     

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  • 「やさしいはなし」

    2020-03-20 07:00  
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     あたらしい季節を前に娘の気持ちが不安定なことがあった。進級したら担任の先生が変わってしまうのではないかと思い悩んでいるらしい。一年前、進級とともに先生が代わったとき、五月半ばまで慣れることができず親子ともども苦労したことを思い出した。ともあれ、別れがあれば出会いもあるのが人生の摂理だ。こればかりは受け入れるしかない。そう思って何も言わずにいたら、ある日の夕方。迎えに行った保育園で担任の先生からこんな報告があった。
     

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  • 「堂々と生きてやろう」

    2020-03-18 07:00  
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     小さな町だ。名前まではともかく、顔のわからない人はほとんどいない。海辺の通りですれ違えば誰もが挨拶を交わす。そんな小さな町に、エジプトから海を越えて未知のウイルスが持ち込まれた。
     

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  • 「恐怖の産物」

    2020-03-16 07:00  
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     70年代、小学生だったぼくは核戦争で人類が滅亡するような映画ばかり見ていた。「猿の惑星」「博士の異常な愛情」 米ソが水爆実験を繰り返し、核のボタンに手を置いたまま睨み合っている時代だった。町の上空を昼夜問わず米軍の戦闘機が爆音とともに飛んでいく。映画の中の核戦争と人類滅亡という結末は当時のぼくにとって自分の高校進学よりもリアリティのある未来だった。
     

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  • 「つくしんぼ」

    2020-03-13 07:00  
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    「ちょっと、おたずねしますが」 朝餉の席で娘がぼくに言った。最近気に入っている絵本のフレーズらしい。昨晩からぼくや妻に話し掛けるときは毎回このフレーズを枕詞にしている。「これね、○○くんがかわいいっていった服なの」 娘はそう言って立ち上がると着ていた虹色のセーターの裾を翻してうれしそうに笑った。
     

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  • 「こういう時だからこそできることをしよう」

    2020-03-11 07:00  
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     娘がドライヤーの音が怖いからと濡れた髪の毛をブローさせてくれません。音のしないドライヤーを作っているメーカーはないものでしょうか?
                             (神奈川県 三歳の娘の父)
     

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  • 「へんなかおジャンケン」

    2020-03-09 07:00  
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     保育園の帰り道のことだ。「おともだちに、へんなかおジャンケンしようっていったら、しらないっていったよ」 桜の木の下でぼくの手を握り締めて娘が言った。ちっちゃくて、やわらかい手だ。「そうかあ、知らないって言われちゃったかあ」 友達が知っているはずがないことをぼくは知っている。「ヘンなかおジャンケン」というのは、
     

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