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「成熟しつつある社会における一抹の淋しさと憂鬱」
2018-06-29 07:00110pt懐かしさとともに自分が子供の頃に撮られた映画やドラマを見ると、そこでは大人が所構わず煙草を吸っている。職場は勿論、子供のいる食卓でも、妊婦さんの前でも。平成生まれの人が聞いたらどこの国の話だと思うだろう。当時は電車の中も喫煙可だった。おそらく当時は周囲の人への影響など解明どころか考えられてもいなかったのかもしれない。受動喫煙なんて言葉すら存在していなかったんじゃないだろうか。子供だった僕も、煙草を吸わない母も、父のショートホープから漂う副流煙を当たり前のように吸い込む家の中で生活していた。
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「それはただしいのかな?」
2018-06-27 07:00110pt週末、娘の通う保育園で初めての保護者会があった。いつもの教室のいつもの席の後ろに両親が顔を揃えていることがくすぐったいのだろう。軽快なピアノの伴奏に合わせての出席確認でフルネームで名前を呼ばれた娘は恥ずかしそうに、でも元気よく、そして誇らしげに手を挙げて「はい」と返事をした。それだけで涙が込み上げている自分がいた。最近、フルネームで名前を言うようになった娘が、改めて自分の子供であることを認めてくれたような気がして嬉しかったのかもしれない。
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「夏至」
2018-06-25 07:00110pt -
「雨音」
2018-06-22 07:00110ptさわってみる、と少し鼻に掛かった声で言いながら、何にでも指を伸ばすのがこのところの娘のマイブームだ。ごはんの時、僕が飲んでいるビールの缶とかならまだ分かる。分からないのは同じ味噌汁を飲んでいるのに(そりゃ娘の方が味は薄いが)僕の味噌汁に「さわってみる」と涎のいっぱいついた指を入れる。そして「さわった!」と喜ぶ。
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「父の日」
2018-06-20 07:00110pt -
「いつも自由はここにある」
2018-06-18 07:00110pt妻が出勤前に作っておいてくれた朝ごはんを娘と二人で食べた。着替えをさせ、歯の仕上げ磨きをし、検温して体温と昨日からの様子を連絡帳に記入する。湯冷ましを水筒に詰め、着替えにおむつ、給食袋とおやつ用のエプロンなどを入れたトートバッグを担ぎ、朝八時に娘と手を繋いで家を出る。
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「介護」
2018-06-15 07:00110pt1直接携わったことはないけれど、介護をされている方のお話しは何度か伺ったことがある。中でも難しさとしんどさを感じたのは、介護対象者が認知症のケースだ。家族であることすら理解して貰えず、コミュニケーションが取れない。良かれと思ってしたことを激しく拒否される。それでも家族である以上、投げ出すことができない。責任に縛られ、辛抱を強いられ、消耗していく。
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「ひまわり」
2018-06-13 07:00110pt3生まれて初めて命を育てたのは小学生の時の朝顔だろうか。芽が出た時の感動も、咲いた花の色も憶えてはいないけれど、夏休み前に学校から支柱の付いた鉢を持ち帰った時の重さと運び難さだけは今もなんとなく憶えている。
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「街を編む」
2018-06-11 07:00110pt乗り継いだバスで降り立った夕闇の港。人通りのない商店街にレゲエミュージックが空気みたいに漂っている。シャッターの降りた薄暗い通りに仄かな灯りを洩らしている店の軒先で老若男女が穏やかに談笑している。よく冷えたビールサーバーに、地元産の海産物や野菜が炭火の上で香ばしい匂いを放っているバーベキューコンロ。梅雨入りしたとは思えない爽やかな夜風には微かに潮が薫っていた。
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「3人で」
2018-06-08 07:00110pt
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