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記事 13件
  • 「そもそも男性と女性がどうして満員電車の同じ車両に乗っているんだろう」

    2016-07-29 07:00  
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     上りの湘南新宿ラインが東京のターミナル駅で大量に乗客を降ろしたところでホームから女性の大きな声が聞こえてきた。
    「すいません!この人触りました!」
     語勢の強い、身が縮こまるような声だった。
    「知らねーよ!放せよ!急いでんだよ!」
     続いて反論するかのような男性の声。ホーム側の扉から一番遠い奥のシートに座っていた僕から二人の姿は見えなかったけれど、やりとりから推測するに女性は男性の腕か何かを掴んでいるようだ。
    「すいません!」
     助けを求め続ける女性の声に急速に人が集まって来たようだ。
    「この人痴漢です!」
     女性がはっきりとそう告げた時には、男性の声は聞くのも辛いほど悲痛なものに成り下がっていた。
    「知らないよ!やってないよー!」
     それは今この瞬間、自分の人生が終わったことをはっきりと宣告された人間の断末魔のように聞こえた。
     

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  • 「Simple menu」

    2016-07-27 07:00  
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     毎日の献立って本当に大変だと思う。作るのもそうだけれど考えるのはなおのことだろう。スーパーの生鮮食品売り場に並ぶ色とりどりの野菜。ランク付けされた肉。世界中の魚。そこからその日必要な食材を選び取るだけでもひと苦労だ。何を作るのかも決めずに食べたいと思う食材だけを手当たり次第買った結果、使いそびれて無駄にしてしまうことだってあるかもしれない。 
     毎日の洋服選びに頭を使いたくないという理由もあって服は必要最低限しか置いていない僕の家では、自家菜園を初めてから毎日の献立にもさほど頭を悩ませることがなくなっていたことが判明した。少なくとも最初の食材選びに関しては。
     

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  • 「うまれる」

    2016-07-25 07:00  
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     「勉強して来たこと全部忘れて。子宮で感じて考えるの」 
     息む妊婦に助産婦がぴしゃりとそう告げた。
     

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  • 「そして…夏がひとつ、終わった。」

    2016-07-22 07:00  
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     世界で一番美しいと言われているとうもろこしがある。その名も「グラスジェムコーン」。アメリカで農家を営んでいたカールおじさんが遺伝子改良ではなく掛け合わせによる品種改良で生み出した虹色のとうもろこしだ。
     

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  • 「君に伝えたい『せいめいのれきし』」

    2016-07-20 07:00  
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     逗子の商店街にある「ととら堂」という古本屋に絵本を探しに出掛けた。まだ産まれてもいないのに我ながら気の早い話だと思う。さらに言えばチャイルドシートとかベビー用の布団とか乳母車など現実的に用意しなければならないものは他にたくさんあるのに真っ先に探し始めたものが絵本だなんてどこまで浮き世離れなんだと我ながら呆れてしまった。
     

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  • 「海辺暮らしの飲み会問題」

    2016-07-18 07:00  
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      最寄り駅である逗子が夏祭りの縁日で賑わっていた夜のことだ。祭りの喧噪からは少しだけ離れた線路沿いの小料理屋で夏酒を呑んだ。
     

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  • 「妻の手仕事、母の手仕事」

    2016-07-15 07:00  
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     出産準備の為に長い夏休みを取っている妻がこんな時じゃないとできないからと日々台所でいつも以上の手仕事に取り組んでいる。
     

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  • 「ビールに合うのは日本の枝豆かスペインのピミエント・パドロンか」

    2016-07-13 07:00  
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     夏野菜が豊作だ。
     雨が少ないせいで相模半白胡瓜だけがやや収量が落ちているのを除いては、ステラミニトマト、レインボーコーン、ピーマン、みょうが、バジル、モロヘイヤ、スイスチャードと毎日のように収穫しなければ追いつかない時期に入ってきた。まさに夏の太陽の恵みだ。おかげで我が家の夏の食卓は自給率が70%近くまで跳ね上がる。
     

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  • 「顔の見えない得票数なんかより」

    2016-07-11 07:00  
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      週末は朝から喜雨だった。日照り続きの畑にとっては恵みの雨だったけれど、町内の人たちにとっては試練の雨になるのかもしれないと空を見上げ思った。今日は年に一度の夏祭りなのだ。五穀豊穣などを祈願する神輿が一日掛けて町内を練り歩く。担ぎ手たちの中にはこの日を楽しみに1年間頑張っているという人も少なくない。
     

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  • 「はやく大人になりたい」

    2016-07-08 07:00  
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     他力本願になれない子供だった。親の力に頼らねば生きられない自分の無力さがもどかしかった。子供ってなんて不自由なんだろう。大人になればこの不自由さから抜け出せして自由になれるんじゃないだろうか。ずっとそんな風に思っていた。 
     だから、七夕の短冊にはいつもこう書いていた。
     「はやく大人になりたい」
     精一杯の大人びた字で書いていた。
     

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