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記事 13件
  • 「この山」

    2021-01-29 07:00  
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     浜辺を通り過ぎて、漁港の船着き場を囲むように伸びる堤防まで歩くと、海から町を一望することができる。山の裾野から海の間に広がるとても小さな集落だ。目に入る住宅の半分は別荘利用だったり、空き家だったりなのでなので一年を通じて人通りは閑散としている。
     

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  • 「百年先に」

    2021-01-27 07:10  
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     水平線の上に山型の厚い雲が浮かんでいるように見えた。富士山が冬化粧したのだ。一月の始めからほとんど冠雪がなかったが、ここに来てようやく厚みを感じる深い雪が降り積もったようだ。
     

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  • 「彼女はここから自転していく」

    2021-01-25 07:00  
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     冬晴れの午後、補助輪のついた自転車が納車された。「明日から天気が悪いみたいなので一日早く持ってきちゃいました」 自転車屋のおじさんがそう言って笑った。白か、赤か、紫か、それとも水色か。迷い続けた娘に根気よくつきあってくれた。ぼくも妻もあえてなんの助言もしなかった。娘が自分で決めるのをひたすら待ち続けた。 仕事を切り上げ、いつより少し早く保育園に娘を迎えに行く。明日から雨だからという自転車屋さんのご厚意を無駄にしたくなかった。
     

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  • 「二〇三〇年の大寒も」

    2021-01-22 07:00  
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     海からの冷気が強い朝だった。車のハンドルも凍えている。分厚い手袋をしていても手が悴む。カーラジオが二十四節気の一つ「大寒」を告げる。人間が狂わせたと言われている地球環境の時計が正確なことに安堵した。
     

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  • 「春を待ちながら」

    2021-01-20 07:00  
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     サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」という戯曲がある。ゴドーという人物を登場人物たちがひたすら待ち続ける物語だ。なぜ待っているのか。いつ来るのか。そもそもゴドーというのはいかなる人物なのかなど肝心な部分は一切描かれない。空白になっているのだ。様々な解釈がされるこの物語りを「待つことは空白なのだ」と解く人もいるし、その空白にどんな絵を描くのかが人生なのだと解く人もいる。
     

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  • 「リア王の自転車」

    2021-01-18 07:00  
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     振り返ることのない人生だった―――なんて言い方は少し大袈裟ですかね。作品の話です。特に二十五歳くらいから書かせて頂くようになった脚本については放送が終わってしまえば読み返すこともありませんでした。完成した映像作品を見返すことも。発売されたDVDやブルーレイの見本盤の中には封を切らないまま棚に並んでいるものも少なくありません。終わったときにはすでに新しいものに向かっていて食指が伸びなかったこともあるし、そもそも改めて見返すまとまった時間がありませんでした。むしろ自分の作品を見返すことは老後の楽しみに取っておいたところもありました。つい最近までは。
     

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  • 「人生の可能性を拡げてくれるものは何か」

    2021-01-15 07:00  
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    「パパ、うしろがまわってるトラックはタンクローリーじゃなくてミキサー車なんだよ」 後部座席で車窓を見つめていた娘が唐突に言った。
     

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  • 「半径二㎞圏内の大宇宙」

    2021-01-13 07:00  
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     緊急事態宣言という非日常下。気がつくと行動範囲を半径二キロ圏内に縮小していた。海と菜園のある里山と丘の上の公園と保育園。それと買い物に行く鮮魚店と精肉店と酒屋と養鶏場。すべてが半径二㎞圏内に収まっている。その圏内を娘と散歩をしていて気づいた。それがこの海辺の町で生まれた四歳の娘にとっては日常の行動範囲だということに。
     

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  • 「悔いのない選択を」

    2021-01-11 07:00  
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     今だから告白するけれど、育毛剤を使い始めたのは十八歳のときだ。四十代前半の父親がみるみる薄毛になっていく姿に「血の繋がり」という逃れられない宿命を感じ、自分なりに先手を打って始めたのだ。以来、深酒し過ぎて歯を磨くのを怠ることがあっても、育毛を欠かした日はほとんどない。それがどんな結果をもたらしているのかは別として。
     

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  • 「だまし舟」

    2021-01-08 07:00  
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      福笑い、独楽回し、凧揚げ。正月遊びをひと通り体験させた中で娘がもっとも夢中になったのが折り紙で作った「だまし舟」だ。
     

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