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記事 13件
  • 「誰かこの現象に名前をつけて下さい」

    2021-07-30 07:00  
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     休みの日に限っていつもより早く起きる4歳の娘。僕がトイレに入っているときに限ってトイレに行きたがる4歳の娘。 誰かこの現象に名前をつけて下さい。
      三つ編みをしてとせがむ4歳の娘。まごついていると「こうやるんだよ」と説明してくれる4歳の娘。でも、自分ではできない4歳の娘。言われてもうまくできない52歳の僕。 誰かこの現象に名前をつけて下さい。 
     世界中の人がそうであるように、去年からずっと自粛生活だった。1年延期になった五輪も開催できるというので今年こそはと夏の小旅行を計画した。まあ、旅行と行っても車で行ける近場なんだけど。ところが出発の数日前になって、
     

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  • 「僕らだけが取り残された浜辺で」

    2021-07-28 07:00  
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     自分たちだけが世間から取り残されている、という孤独を感じることが増えたのは2016年に子どもが生まれてからだ。合理性とか利潤追求が重視される現実社会とは大きく懸け離れた神話的な時間軸にどっぷりと浸かって生きているからかもしれない。子どもが発熱して保育園を休んだりすると尚更だ。仕事もままならない中で、自分だけが社会から取り残されていくような不安に苛まれたりする。
     

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  • 「夏休みの家」

    2021-07-26 07:00  
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     海の日からの4連休。午前中は連日4歳の娘と海水浴だった。午後からはそれなりに賑わう浜辺も比較的涼しい11時くらいまでは地元の子どもたちが遊んでいるくらいで閑散としている。娘も浮き輪こそつけているとはいえ、2日目にはひとりで泳げるようになった。波の越え方やその推進力を利用した泳ぎ方もマスターした。さすがは1年を通じて海で遊んでいるだけのことはある。
     見上げればクレパスで描いたような青い空に真っ白な夏雲。浜の向こうには濃い緑の稜線。冷蔵庫で待っている地元産のスイカ。娘がどう思っているかはともかく、子どもにとっては絵に描いたような夏休みなんじゃないかと思った。そう思ってしまうのは、おそらく僕自身が子どもの頃に憧れ、望んでいた夏休みだったからだ。 

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  • 「海の日」

    2021-07-23 07:00  
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     静かな夏だ。夏休みが始まったものの、今年も海辺の町まで避暑に訪れる人の数は例年ほどではない。先月の土砂崩れで最寄りの高速のインターが今も閉鎖されたままなのが原因で134号線が時折り渋滞することを除いては、本当に静かな海の日だ。
     

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  • 「海辺の夏の風物詩」

    2021-07-21 07:00  
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     海辺の町で暮らすのに欠かせない道具のひとつに、「天突き」がある。木の部分に「心太」と書いてある奴だ。心太と書いて「ところてん」と読むことを僕はこの町で暮らすようになって初めて知った。
     

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  • 「人生って奴は本当に」

    2021-07-19 07:00  
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     梅雨が明けた。夏が始まった。海辺の町で迎える11回目の夏が。
     

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  • 「オバケキュウリって、なんて辛辣なネーミングなんだろう」

    2021-07-16 07:00  
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     菜園のキュウリが見たこともない大きさに成長していた。連日の雨で畑に入れない日が一週間以上続いたせいだろう。長さ40センチ。直径8センチ。重量は500gを越えていた。ある自治体のキュウリの出荷規格を見ると、長さ25センチ以下、直径重さは140g未満というから2倍近くあるのだろう。もちろんマーケットなどではお目に掛かることのないサイズ。もはや緑色の大根だ。ほとんどが水分でできているキュウリは水風船のように一日で大きくなる。これまでも収穫し損なって大きくしてしまったことはあったが、ここまでの大きさにしてしまったのは初めてだった。梅雨明け後だと里山のカラスが水分補給に食べてくれるのでそのままにしておくのだけど、さすがにこの雨続きではカラスでさえ目もくれない。
     

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  • 「とっておきの話」

    2021-07-14 07:00  
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     子どもを寝かし付けるとき、一緒に眠くなってしまうのはどうしてなんだろう。まるで子どもの身体から発せられる眠気が睡魔となって襲い掛かって来るような感覚。「絵本読んで」と言われても、手元にあるならともかく、一度ベッドに横たえた身体を起こして本を取りにいく気力すら奪われてしまうことさえある。「わかった。じゃあ、とっておきのお話を聞かせてあげよう」「やったー」 好奇心に満ちた娘の目が輝きを増す。興奮で目を覚まさせてしまったことを少しだけ後悔しながら、僕は重たくなった瞼を閉じたまま、ゆっくりと語り始めた。
     

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  • 「この夏に溶けていく」

    2021-07-12 07:00  
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     蝉時雨で目覚めた。そこに太陽があった。いや、太陽はいつもそこにあった。厚い雲に閉ざされていただけだ。雨を降らせる雲の厚さはおよそ3000メートル。夏の夕立を降らせる積乱雲になると10000メートルにも及ぶそうだ。10000メートルの壁なんて想像もつかない。ベルリンの壁だって20センチしかなかったのだ。
     

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  • 「2021年7月7日」

    2021-07-09 07:00  
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    「一年に一度、かささぎさんが橋になって織り姫と彦星を会わせてあげるんだって」 娘が暮れゆく空を見上げながら、保育園で聞いた七夕の伝説をそんな風に話してくれた。かささぎが橋になるなんて初めて聞いたような気がした。いや、子どもの頃に聞いたのかもしれないけど、とうの昔に忘れてしまったのかもしれない。なんせ、七夕伝説のディティールなんて目の前に広がっている現実とは何の関係もなかったから。
     

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