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記事 13件
  • 「海を殺しているボクたち」

    2016-02-29 07:00  
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    「今年は不作かもしれないらしいね」
     浜で顔を合わせる近所のおばあさんや精肉店のご主人までもが時候の挨拶のように口にするのは、ワカメのことだ。ヒジキなどとともに2月から春にかけて解禁となる海草なのだけれど、今シーズンは不作かもしれないという情報が町一帯に口コミで駆け巡っていたのだ。原因は秋から冬にかけて海水温が思うように下がらなかったことだという。去年の夏、熊本の海草屋さんを取材させて頂いたときにももう4〜5年、海草が採れていないと伺った。沖縄にしかいないような熱帯魚がうようよ泳いでいると言っていた。いよいよ来たか、と思った。地球温暖化によって上がり続けている大気中の熱を海が吸収している為、秋になっても海水温が下がらないのだ。結果、秋に根付いて成長するワカメは根付くことができず、不作となってしまう。神奈川だけでなく、千葉県などでも今年は天然、養殖ともに不作だそうだ。
     

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  • 「裸足で砂浜を走ること」

    2016-02-26 07:00  
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     仕事後のランニングがてらいつもの精肉店に立ち寄ったときのことだ。白い息を吐いている僕を見て、店のご主人が言った。
    「この辺で生まれた同級生は20人くらいしかいないんだけど、なぜかみんなマラソンが速いんだよ。」
     理由を訊くと、ご主人は豚肉を切る手を止め、少し考えてから「子供の頃から裸足で砂浜を走り回っていたからなんじゃないかな。」と答えた。
     確かに砂浜を走ってトレーニングするボクサーや野球選手をスポーツニュースや映画などの描写で見たことがあったけれど、その効果とメカニズムについてちゃんと考えたことはなかった。
     

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  • 「春眠」

    2016-02-24 07:00  
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     春眠暁を覚えず、とまでは言わないものの、とにかく良く、そして快く眠っている。早いときで午後10時には毛布をかぶっていることも少なくない。毎日日の出とともに起きているせいもあると思うけれど、とにかく日が暮れる頃になると毛布と湯たんぽの温もりが恋しくなり始めるのだ。 
     生活環境のせいも多分にあるだろう。主だった産業と言えば農業と漁業しかないこの海辺の集落では日が暮れると誰もが家に帰る。切れかけた街灯と繰り返す灯台の明滅だけで、町全体が闇に包まれる。窓を少し開けると闇の中に家々から鰹出汁などの夕餉の匂いや風呂を沸かす薪火の香りが漂って来る。月明かりの下、波の音が静かに聞こえる。そんな中で夕餉を済ませ、湯船に浸かり、蝋燭の灯りの下でコルトレーンでも聴いていると、自然と心地良い眠気に包まれ始める。
     東京で生活していた20代の頃には考えられなかったことだ。
     

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  • 「春なのに甘夏」

    2016-02-22 07:00  
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     春の訪れを感じさせてくれるもののひとつが、甘夏だ。1年を通じて温暖な三浦半島では庭に甘夏がたわわに実っている光景をしばしば目にする。1月には橙色の実が目立つようになり、3月から5月に食べ頃を迎える。だから湘南では甘夏と言えば春を感じる果実のひとつということになっている。と、ここで多くの人が「春なのになんで甘夏なんだろう?」と思うだろう。僕もここで暮らすようになってから春が訪れるたびにそのことを疑問に思っている。
     毎年、甘夏のお裾分けを下さる子安の里の農家さんに以前訊いたけれど
     

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  • 「『私たちは捨て石』という同世代が放った言葉の重み」

    2016-02-19 07:00  
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    「私たちは捨て石だと思うんですよ。でも、いい捨て石になりましょうよ。この無念を良いエネルギーにして、世の中に貢献できること探しましょうよ」
     NHKの女性アナウンサーが同世代の女性スタッフの発言として紹介したこの「捨て石」という言葉が、今もまだ小さなトゲのように胸に突き刺さって消えないでいる。
     御覧になった方もいるかもしれない。今週NHKで放送されていた
     

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  • 「この服を誰がどこで作ったか僕らは本当に知っていただろうか?」

    2016-02-17 07:00  
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     異業種から農家に転身した方に取材させて頂くたびに多いと感じるのが、以前はIT業界にいたというケースだ。毎日無機的なコンピューターに向かっているうちに有機的な自然と向き合いたくなったのだと言う。多くの人がなるほど、と思うだろう。意外だなと思っていたのは次いで多いファッション業界から農家になった方々だ。そして、その多くが農業に転身した理由をあまり積極的には語ろうとしないのも不思議だった。
     その理由を、
     

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  • 「もたない男」

    2016-02-15 07:00  
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     今でもはっきりと思い出すことができる。長い冬の終わり、うたた寝してしまいそうな、のろまな陽射しの午後だった。高校の合格通知を手に家に戻った僕が真っ先にやったのは小学生の頃から使っていた学習机を粗大ゴミ置き場に捨てにいくことだった。事後報告でそのことを知った両親は唖然としていた。しかし当時、校内暴力とか家庭内暴力なんかか社会問題になっていたせいだろう。息子が受験勉強のストレスから衝動的にそんな行動を起こしたのだと判断した両親は「まあ、あんたがいいならいいよ」と理由すら聞かなかった。でも、そうじゃない。僕が勉強机を処分したのは「もう勉強しないのだから必要ないだろう」という目的合理性に則った、とても冷静な行動だった。
     そんなことを久し振りに思い出させてくれたのは、
     

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  • 「早春桜」

    2016-02-12 07:00  
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     日曜の午後、散歩に出掛けた。原稿が一段落したところだった。ひとりだったら走るところなのだけれど、奥さんがいたので「じゃあのんびり歩こうか」という話になったのだ。男と女なので一応デートということになるのだろう。なるのだろうが、玄関を出てすぐに
     

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  • 「太らない肝臓」

    2016-02-10 07:00  
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     検査結果が出た。生まれて初めて8.4まで上昇し黄色信号が灯っていた尿酸値が2ヶ月間で
     

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  • 「GOOD DAY SUNSHINE」

    2016-02-08 07:00  
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     良いことと悪いことが半分ずつあった一週間をぱちんと吹っ切ってくれるような気持ちの良い冬空だった。手に入れ掛けたものに不安を感じていても、失い掛けたもののことをくよくよ考えていても前には進めない。そんな気持ちで自分を鼓舞しながら一歩ずつ海沿いを歩いた。光がいっぱいのいい日和だった。太陽と海を感じるだけで、救われるような気がするのはどうしてなんだろう。葉山にある森山神社に辿り着く頃には、
     

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